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毒の爪の使い魔-15b



プチ・トロワの前庭に出たタバサとジョーカーは、待機していたシルフィードと合流した。
「では早速、ラグドリアン湖へと参りましょうかネ、シャルロットさん」
相槌を打つでもなく、タバサは無言でシルフィードの背に乗る。
その様子に、やれやれ、といった感じで両手を広げ、首(身体?)を左右に振るジョーカー。
そしてジョーカーもシルフィードに乗ろうとした時、

「キキキ…、こんな夜中に逢引か~。イイ御身分だなァ、タバサ嬢ちゃんよ~?」

小馬鹿にするかのような声が響いた。
タバサとジョーカー(と、シルフィード)は、声の聞こえてきた方へ顔を向ける。
暗闇に浮かぶ紫色の影がそこにあった。
「おやおや?ジャンガちゃん、こんな所へ何用ですか?…まさかワタクシにお会いに――」
「あいにくと、そっちのガキが目当てでな」
「あらま」
ジョーカーは全く変化の無い表情で、落胆したかのような声を上げる。
ジャンガはシルフィードへと歩み寄り、タバサを見上げる。
シルフィードは低いうなり声を上げて威嚇した。が、ジャンガは軽く流している。
「こんな夜中にこんな所で…一体何をしてるんだ?」
「…貴方には関係無い」
「オイオイ、随分と冷てェなァ?昼間、協力してあの盗人を捕まえた仲じゃネェかよ?」
「……」
黙るタバサにジャンガはニヤニヤ笑いを浮かべながら、言葉を続ける。
「まァ、今し方のあの意地の悪そうな嬢ちゃんとのやり取りは見せてもらったからよ…。
大体の所は理解してるさ。…面白そうじゃネェか?」
「…何が?」
「お前の任務って奴がさ…」


「キキキ、こいつは快適だなァ~。実に気分がいいゼ」
シルフィードの背鰭を背凭れにし、風で飛ばないように帽子を押さえながら呟くジャンガ。
タバサ、ジョーカー、ジャンガを乗せたシルフィードはラグドリアン湖へと向かっていた。
最初、シルフィードはジャンガを背に乗せるのを激しく拒否した。
だが、余計な揉め事を回避したいタバサの説得により、しぶしぶ乗せる事にしたのだ。

暫く飛び続け、ラグドリアン湖の上空へと差し掛かり、タバサの指示でシルフィードは岸辺へと着地した。

シルフィードを降り、ジョーカーは目の前の光景に驚きの声を上げる。
「これは凄いですね~?村が丸まる一つ沈んでいるのは…。見ると聞くでは違うと言いますが、いやはや」
目の前に広がる湖の所々から木々や藁葺きの屋根が突き出ている。
暗くて解り辛いが、水面の下にも家を初めとして、様々な物が沈んでいるのが見えた。
そんな湖の状況を冷静に分析するかの如く、先程からタバサはジッと湖を見つめている。
「で、どうするんだ?」
湖を一通り見渡し、ジャンガは呟く。
ジャンガの言葉に、ちょっと待ってください、と答えジョーカーは波打ち際に近づき、水面に手を翳す。
暫くそうして、手を戻すや口元に手を当てて考え込む。
「どうしたんだ?」
「いや……どうやら、増水の原因は水の精霊さんの、ご機嫌斜めが原因のようですね」
「あン?」
ジョーカーの言葉にジャンガは怪訝な表情をする。
「…水の精霊が怒っているの?」
「そうなのね!きゅい!」
タバサの言葉にシルフィードが太鼓判を押す。
「水の精霊が怒っているのがハッキリと伝わってくるのね。きっと、罰当たりな誰かが失礼な事をしたのね。
だから、村が沈んだのも当然な事なのね。これは人の言葉で言う自業自得なのね、きゅい!」
そう言ってシルフィードはタバサの顔を覗き込む。
「お姉さま、今回は正直不味いのね。水の精霊はお姉さまの風の魔法では傷つかないのね」
「あの~」
シルフィードの話の腰を折るようにしてジョーカーが割り込む。
「何も最初から退治する方向で、考える必要は無いかと思うんですがネ~?」
「きゅい?」
「どうするの?」
首を捻るシルフィードを余所に、タバサは尋ねる。
「まァ、取り敢えず探してきますね」
「あン?おい、何をだよ?」
ジャンガが聞き返す。
「勿論、精霊さんをですよ。では、ちょっと行って来ますネ~」
そう言い残し、ジョーカーは湖に飛び込んだ。


「チッ、一人で勝手に行きやがって…」
ぼやきながら、ジャンガは波打ち際に座り込んだ。
増水し、村を一つ飲み込んだ湖は、夜空に掛かる二つの月を鏡の如く映し出す。
夜空と湖面、四つの月が淡い輝きを放つそれは一種、幻想的な光景でもあった。
時折、風が吹く以外はとても静かであった。…そう、本当に静かだ。
ジャンガはチラリと横を見る。
タバサは先程から立ち尽くしたままだ。
先程のイザベラとの会話の時も…いや、いつもそうだが、必要な事意外は何もしようとしない。
まるで”向こう”のルナベースで使われていた自動機械のようだ。
ジャンガは軽く鼻を鳴らす。
「オイ…」
「……」
「お前…シュヴァリエだとか言う称号は、こんな仕事をしているから与えられたのか?」
「……」
「あの二人はお前が騎士だって聞いた時、豪く驚いていたよな?しかもだ…、
この仕事に来る際、誰にも見つからないようにあのパーティ会場を抜け出していたな?
あの”雌牛”にすら内密で出てきてよ…」
タバサは答えない。ちなみに、ジャンガが言った”雌牛”とはキュルケの事である。
「なんで…秘密にしてるんだ、こんな仕事をしてるのをよ?」
タバサは答えない。――代わりにシルフィードが口を挟んだ。
「お姉さまにはお姉さまの、人には言えない深~~~い事情があるのね!
人の事を馬鹿にして、傷付けて、笑っているようなお前なんかに話す理由は無いのね、きゅい!」
そんなシルフィードの訴えも何処吹く風。ジャンガは完璧に無視すると、タバサの隣に座った。
「言えない理由か……どんな理由だ、教えろよ…あの意地の悪い小娘に仕えている理由をよ?
まさか…”恥ずかしい秘密を知られたから仕方なく”ってか?
それなら、確かに言えないよなァ~、格好悪くてよ…キキキ」
「…貴方には関係無い」
そんなジャンガの、からかいの言葉も一言で切り捨て、タバサは湖を見続けた。
ジャンガも、フンッ、とつまらなさそうに鼻を鳴らし、湖に視線を戻し、それっきり口を開かなかった。


――それから数分後…

「きゅい!?」
シルフィードが湖の方を鋭い目で見つめる。
「来たのね!」
「何がだ?」
ジャンガがそう聞き返すと同時だった。

ザバァッ!!!

大きな水音がして、湖面の水が天高く、噴水のように吹き上がる。
そんな湖の異常にジャンガは弾かれる様に立ち上がる。
「な、何だァ?」
突然の事に驚き目を見開くジャンガに、タバサはポツリと呟く。
「水の精霊…」
「こいつが…?」
タバサの言葉にジャンガは改めて吹き上がる水を見つめる。
と、ジャンガの背に差されているデルフリンガーが鞘から飛び出した。
「おう、懐かしいな?」
「あン?テメェ…知ってるのか」
「ああ…、もっとも何となく昔に会った事がある…って位だがな」
「ほゥ?」
と、湖面から何かが飛び出してきた。――ジョーカーだ。
岸辺に降り立ち、身体を振り、水滴を落とす。
ジャンガはジョーカーに歩み寄る。
「よう、見つかったみたいだな?」
「ええ、意外と簡単に見つかりましたよ、のほほ」
そのまま、ジョーカーは波打ち際まで歩くと、吹き上げる水を見つめながら話しかける。
「突然のご訪問、失礼しますネ。ワタクシ…ジョーカーと申しまして。
実は少~しばかり、貴方に話があるのですよ…水の精霊さん。
ですから、ワタクシ達に解るような形と言葉でお相手願いませんかネ~?」
ジョーカーの言葉を理解したのか……吹き上がっていた水がこねられる粘土のように形を変え始める。
暫くそんな事を繰り返していた水の固まりは、やがて一つの形を成した。
――それは水で出来た透明なジョーカーだった。



「我に如何なる用か、単なる者の使いよ?」
水の精霊が口を開く。透き通るような女の声だったが、ジョーカーの姿では些か違和感があった。
ジョーカーは水の精霊の問いかけに答える。
「いやいや、大したようではあるのですがね。この湖の増水は貴方がしていらっしゃるんですよね?」
「そうだ」
「何で、いきなりこんな事を?今までは上手くやってきたんじゃないですかね。
今頃になって、陸を水で侵食する事に何の意味が有るというのですか?」
「貴様達に話していいものか、我は悩む」
「悩む事なんかねぇ、こいつらに話しやがれ。お前の言う単なる者達よりか、頼りにはなるんじゃねぇか?」
そう言ったのはデルフリンガー。その言葉に水の精霊はデルフリンガーに視線を向けたようだ。
「貴様は、そうかガンダールヴの使いし剣」
「おうよ。俺を覚えててくれたか?嬉しいね」
デルフリンガーは金具を鳴らして笑う。
水の精霊はそれまでのジョーカーの形を崩し、水の塊と化す。
グネグネと粘土をこねる様に暫く動いていたが、やがてジョーカーの姿へと戻る。
「良かろう」
その言葉にジョーカーは満足げに笑う。そして水の精霊は語りだした。


「数える事も愚かしいほど月の交差する時の間、単なる者達の同胞が我の守りし秘宝を奪い去ったのだ。
それは月が三十ほど交差する前の晩の事」
「おおよそ二年前…」
タバサがポツリと呟く。
そのタバサの言葉を聞きながら、ジャンガは水の精霊に言った。
「んじゃ何か?テメェはその事に対する復讐で、人間が暮らしてる土地を水に沈めようってのか?」
「復讐?我にはそのような目的は無い。ただ、秘宝を取り戻したいと願うだけ。
水が秘宝に触れれば、我はその所在を直ぐに突き止められる。故に、我は水を増やしている」
「それはまた…気の長い話だな?二年間でこんだけの規模じゃ、この先どんだけ掛かるんだよ?」
「我にはお前達とは時の概念が違う。我にとって全は個、個は全。時もまた然り。今も未来も過去も、
我である事に変わりは無い。何れも我が存在する時間ゆえ」
「ふ~ん…」
この水の精霊とやらには、そもそも寿命と言う物が存在しないらしい。
だから、このような気の長い方法で、広い世界から秘宝を探し出そうとしているのだろう。
ようするに…根本からして、普通の生き物とは違うのだ、何もかもが。
「まァ…理由は解った」
そう切り出すジャンガ。
「で、その秘宝とやらは何だ?」
「秘宝の名は『アンドバリ』の指輪」
「『アンドバリ』の指輪…聞いた事があるのね」
そう言ったシルフィードに視線が集中する。
ジャンガはシルフィードの顔を覗き込む。
「どういう物だ?」
「顔を近づけないでほしいのね!
…偽りの命を死者に与える、『水』系統の伝説のマジックアイテムなのね、きゅい」
「偽りの命だ?」
「つまり死者を蘇らせる事が出来ると?」
ジョーカーが聞き返すと、水の精霊が口を開いた。
「そのとおり。誰が作った物かは解らぬが、我と共に永き時を過ごした秘宝だ」
「思い出の品…って訳か」
そう呟き、ジャンガは首に巻いたマフラーを掴む。
逡巡し…水の精霊に言う。
「いいゼ?この俺が…『毒の爪のジャンガ』様がその秘宝とやらを見つけ出してきてやる。
…持っていったのはどんな奴だ、名前位は解らねェのか?」
「固体の一人は、こう呼ばれていた。『クロムウェル』と」
「聞かねェ名だな?…まあいい。テメェは不死なんだよな?だったら期限は俺の寿命まで…って事で良いか?」
「構わぬ。ガンダールヴは前に我との誓いを守った。故に信ずるに値する」
「なら交渉成立だ。それじゃあ、この増えた水も元通りにしてくれるよな?」
「約束しよう」
そうして水の精霊はゴボゴボと音を立てて湖の中に戻ろうとする。
と、タバサが水の精霊を呼び止めた。


「待って、水の精霊」
これにはジャンガも驚いた。無理も無い、目の前のガキが誰かを呼び止めるなど見た事が無いのだから。
「何だ、単なる者よ?」
「貴方は『契約』の精霊と呼ばれている、その理由を知りたい」
「我にはお前達の考えは理解できぬ。我とお前達では存在の根底が違うのだから。
だが、察するに我が永き時を変わらず存在するが故に、そう呼ぶのだろう。
変わらぬ何かを誓いたいが為に」
タバサは頷き、そして跪くと手を合わせて目を瞑る。
誰に何を約束しているのか…それを窺い知る事は出来ない。
だが、この少女がくだらない事を誓うような者ではない事を、ジャンガは察していた。
(変わらぬ思い…か)
暫し考え、ジャンガも胸に片腕を当て、目を閉じた。
その時、脳裏には桃色髪の懐かしい顔が浮かんだ。

ズキンッ!

「ぐっ!?」
走った激痛に左手を押さえるジャンガ。
その様子にジョーカーやタバサも顔を上げる。
「ジャ、ジャンガちゃん!?どうしたんですか!?」
「どうしたの?」
「…チッ、なんでもねェ…」
そう言ってジャンガは平静を装う。
そんなジャンガを見て、タバサとジョーカーは顔を見合わせた。

水の精霊の一件が解決し、イザベラへの報告をジョーカーに任せたタバサとジャンガは、
シルフィードに乗り、魔法学院への帰路についていた。
「あ~あ……面倒な約束をしたもんだゼ」
背鰭に凭れ掛かりながらジャンガは一人ごちる。
タバサもシルフィードも相槌すら打たない。
「まァ、いい暇潰しが出来たと思えばいいか…キキキ」
ジャンガの笑い声を聞きながら、タバサはポツリと呟く。
「一つ借り……不本意だけど」
「あン?何か言ったか?」
ジャンガは尋ねたが、タバサはもう何も答えなかった。



所変わって、ヴェルサルテイル宮殿の中心――グラン・トロワ。
青色の大理石で組まれたそれは、見る物の心を奪う美しさと神々しさに溢れている。
そんな宮殿の中……僅かに明かりが照らし出す薄暗い部屋にジョーカーは居た。
「と言う訳で、ワタクシからの報告は以上ですよ」
それまで自分の見聞きした事を、ここの主に伝えたジョーカーは相手の反応を待つ。
奥の方で玉座に座り、話に耳を傾けていた人物=ガリア王ジョゼフは笑みを浮かべた。
「興味深い話だな。爆発させる事しか出来ない『ゼロ』と呼ばれる無能のメイジの少女の爆発が、
強固な”固定化”が掛けられた上で魔法の障壁に守られた壁を、一撃で砕いたか…」
「ええ…それはもう、驚きのパゥッワァーーでしたよ。
…色々と御事情があって、お伝えるのが遅れましたけどね…のほほ♪」
そう言って笑うジョーカーを見ながら、ジョゼフも笑う。
「そうか、そうか、なるほど…。間違いない、そやつは担い手だ」
ジョゼフの言葉にジョーカーは片方の目の形を変え、口元に片手を当てる。
「ほうほう?やはりそうでしたか」
「よもや、学院の生徒などが担い手として選ばれるとはな…。しかし、トリステインの奴等は情報が無い。
故に、そやつの爆発を”失敗”の一言で片付ける。傑作だな!伝説を失敗の一言で片付けるのだからな。
まだ目覚めておらぬだけだと言うのに、制御ができていないだけだと言うのに、実に傑作だ!」
そう言ってジョゼフは高らかに笑った。
「…そんな文字通りの『無能』共よりは、余の手元に置いていた方が良いとは思わぬか?」
「同感ですネ。風のルビーも時期が来れば手に入るでしょうし…のほほ」
そんなやり取りをしながら、ジョーカーとジョゼフは笑う。
「何より、そやつは『ゼロ』と呼ばれて周りから蔑まれているのだろう?
余も同じだ…、そやつの悔しさなどは良く理解できる。だから、手を差し伸べてやろうではないか」
「物は言いようですネ~。解りました、ですが…こちらの用事の片付けなどもありますので、
今直ぐにとは行きませんネ。もう暫くお待ちいただきたいのですが…宜しいですか、ジョゼフさん?」
「構わぬ。余のミューズと共に上手くやれ、ジョーカー」
「はいな~了解です♪それでは失礼しますネ、のほほほほ♪」
笑い声を残し、ジョーカーは暗闇に消えた。

一人になったジョゼフは傍らの台座に置かれた、一冊の書物を手に取った。
古ぼけたその書物のページをジョゼフは捲っていく。
「シャルル、ようやくだ…ようやく準備が整ってきたぞ。駒も盤も、全てが揃いつつある。
全ての準備が整ったその後は、このハルケギニアを舞台にした素晴らしいゲームが始まるぞ。
ああ、そうだとも!素晴らしいゲームがな!全ての命と信仰と、それらを踏み躙る物がな!
それが始まれば、あの時の後悔に、あの時の苦しみに、あの時の悲しみに、
匹敵する物を俺は得られるだろうか?再び涙を流す事が出来るだろうか?
…全ては始まってみないと解らぬな。所詮、俺も人の身なのだ。だがな、シャルルよ…もっと簡単な解決策があったよ」
パタン、と閉じた書物を高々と掲げる。
「この書物にはこう記されている。”英雄は夢に飢え、他者の悪夢を求めた”と。
そうだ、簡単な事だったのだ。自分だけで得られぬのであれば、他人の悪夢を…苦しみを味わえばよいと!
数多くの人間が経験する苦しみや悲しみ、後悔、恐怖、絶望……それら『悪夢』を集めれば、
俺が涙を流せる物が一つ位ありそうではないか?そうさ、在るとも絶対にな!」
そこまで言って、ジョゼフは懐から円盤のような物を取り出す。それは金色に輝いていた。

「シャルル、俺が望む事は人としてもう一度泣きたい。ただ、それだけだ」




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