あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-21


21.最高の盗賊に栄光あれ

最近、才人は家に帰ると自室の押入を開けその中に入る。
オブリビオンの門がそこに開いているのだ。
正確にはヴァーミルナの領域、クアグマイヤーへの門が。

『おお、ぼーやか。おもしろかったぞこれ』

と、ヴァーミルナはご満悦そうに言った。
ドリルが格好良くて怖かったらしい。たしかにそうだ。

「また怖くできそう?」
『ああ。もっともっと怖くできるだろうなぁ』

にんまり顔の彼女はひどく可愛らしい。
そりゃ、才人が頼んだ姿形に変わってくれるのだから当然だが。

「ところで、ここっテさ」
『なんだ?』

「いや、ヴァーみルナが創った化け物とかは見るケど、
元からいルのっておマえだけダよなって思ってさ」

時間が経って二人の仲は良くなった。ヴァーミルナからしてみたら恐怖の情報源であり、
自身の信奉者なのだから、それなりに礼は尽くそうと思っている。
才人からしてみれば、何というか姿形もそれはそうだが、
どこか儚げな感覚が常に付きまとう彼女に、面と向かって見られると、
顔が赤くなってしまったりもする。
それをネタにからかわれたりもしているが。

『ああ、いらないからな。寂しくなんかないぞ。全くな。全然寂しくなんかないからな』

これ以上ないくらい寂しいから、
構ってくれオーラを出しながら言う彼女を見て、
案外、神様っていウのも人間くサい所があルんダな。
頬を膨らませながらも、何もしないヴァーミルナの頭を撫でながら、
そんな事を才人は考えた。

言うべきかナあ。昨日何かコこで出来ないカなト思ったら、
何デか知らないケど俺にも『創レた』っテ事。

『どうした?ぼーや』
「イや、何デもナいヨ」

そんなこんなで、また二人で悪夢の世界を過ごすのだった。
『Welcome to Quagmire』と書かれた霧の町の中の、
綺麗な湖の畔、二人は佇んでのんびりと過ごす。
何もせずにただ、それだけで何となく二人とも気分が良い。
車が湖に落ちた。だが、それが彼にとっての幸せなのだ。
例えそれが妻の望みでないとしても。

才人の精神は摩耗しているかもしれない。
マーティンのような英雄でもない常人の身で、
人でない存在の領域、オブリビオンに居続けるということはどういう事か。
彼はまだ理解できていないのだ。ヴァーミルナは気付いてすらいない。

あいつは、いなくなった。私よりもどこかに消え去る事を選んだ。
エセリウスにすらいない。どこに行ったか未だ分からない。
けど、こいつは。いや、何を考えているんだ私は。
ヴァーミルナに芽生えたそれは、ずっと昔に忘れた感情の一つであった。



アルビオン王国最後の砦、ニューカッスル城。
『イーグル号』と『マリー・ガラント号』は、
その城の隠された港を通り、ルイズ一行は現在、
ウェールズの居室にいた。

ここが王子の部屋?私の寝室よりひどいぞ。
マーティンはそう思いながら、曇王の神殿を思い出す。
北国故食う物はワイン以外悪く、オブリビオンの門を完全に塞ぐ為に、
デイドラ研究の毎日だった。しかしそれでも寝床は、
ちゃんとした皇帝らしいベッドで眠れた。
皇帝直属の護衛部隊である、ブレイズ側からしてみれば、
これぐらいはしないといけない。と考えていたらしかった。

「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、たしかに返却したぞ」
「ありがとうございます」

ルイズが恭しく手紙を受け取ってから、明日の便でトリステインに帰りなさいと、
ウェールズは言った。

「その、殿下。王軍に勝ち目は無いのですか?」
「ああ。万に一つすらね。今我々に出来ることは、勇敢な死に様を奴らに見せる事だけだ」

言いながら笑うウェールズを見て、マーティンはいたたまれなくなった。
自分も、下手をすればこうなっていたのだ。そう思って。

「殿下…この手紙は――」

それは恋文であり、アンリエッタとは恋仲だった。そうウェールズは言った。
ルイズは彼に亡命を勧めたが、結局彼は折れようとはしなかった。

「君は正直だね、ミス・ヴァリエール。だが、亡国への大使としては適任だろう。
もはや我らに隠す事などない。誇りと名誉だけが我々を支えているのだ」

さぁ、パーティが始まる。最後の客である君たちを是非とももてなしたい。
ウェールズの言葉を聞き、マーティンとルイズは部屋を後にした。
ワルドがウェールズに頼み事をして、ウェールズはそれを引き受けた。


「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる――」

王の言葉がパーティ会場のホールに響く。
彼はおそらく、本心から皆の事を気遣っての事だったのだろうが、
むしろ、余計に明日の最後の戦いへの士気を上げる事となってしまった。
だが、それで良いのかもしれない。
彼らは、もう助けることが出来ないのだ。

もしトリステインに入れてしまったら何が起こる?
貴族派へトリステインを攻め入る口実を作るだけだ。
それに、ここで助ける事ができても彼らはどう生きていけば良い?
最後の最後まで残った彼らは、決して他の王へなびきはしないだろう。
一人の君主に仕える、彼らの意地と誇りを汚そうとする真似なんて、
マーティンには出来なかった。もしかしたら、デイゴンを倒せなかったら、
自身がこのような事を言っていたかもしれないのだ。

だからこそ、マーティンは彼らの勧める物を一つ残らずいただく事にした。


「おお、良い飲みっぷりですな!それでこそ勧めた甲斐があるという物。ささ、もう一杯!」

彼らは、悲しみだとか恐怖を忘れ、どうやって格好良くあの世へ逝くかを考えているのだろう。
この雰囲気は北の街『ブルーマ』近く、決戦場と今では呼ばれる、あ
のデイゴンの軍隊と戦った時の空気と殆ど同じだった。
勝てるかどうか。そんな事は全くもって分からなかった。
だが、勝たなければ定命の存在全ての命が脅かされてしまう。
勝つ他無かった。あの時も友がいたからこそ何とかなったな――

昔を思う。皆と、かの英雄がいたからこそ上手く行ったのだな、と。
ふと、辺りを見回してみると、ルイズの姿が見あたらない事に気付いた。
おそらく、この空気が嫌になったのだろう。分からないでもない。
だが、ワルド子爵も気付いたらしい。私に礼をすると、
彼女を探しにホールから出て行った。

気が付いたら、隣にウェールズ皇太子がいた。

「人が使い魔というのは珍しいものですね」
「いやはや、トリステインでも珍しいそうですよ」

違いないでしょうね。ウェールズは笑った。心からの笑みだった。
彼も恐怖が無いわけではない。ただ、忘れて進もうとしているだけだ。
だから彼は司祭だという彼に祈って欲しかったのだ。

「貴男の様な若い方に先に逝かれるのは聖職者としてでなくても悲しい事です」
「そうですかな?けれど、おそらく私たちは祖先の下へ行く事が出来るでしょう。祈って下さいますか?明日の為に」
「その、私はこの辺の国の司祭では無いので――」

おお、とウェールズは驚いたらしい。目を見開きしっかりとマーティンの顔を見た。

「いや、失礼。では、あなたの国の神でも構いません。祈ってくださいますか」
「ええ、分かりました。九大神よ、民草を守り導いた戦神タロスよ。どうかこの者達にご加護をお与え下さい…」

マーティンの古い祖先、タイバー・セプティムが神格化した存在、タロス。
北の竜の異名を持つ彼は死後、神格化して後戦いの神となり、
旧八大神に加わって、今のタムリエル帝国の国教『九大神』に奉られる神の一つとなったのだ。

「ありがとう。始祖と更に異国の神の加護を得られたのだ。
明日の戦は敵に目に物見せることが出来るだろう。感謝するよ。ミスタ・セプティム」

どういたしまして。本来なら負け戦になんてなって欲しくないが、
しかし、もうどうしようもないのだ。ほんの少しの人間で、
どうすれば大勢の敵にかなうと言うのか。
マーティンは、ウェールズが遠のいた後、
自分の寝床はどこかを給仕に尋ねていると、ワルド子爵に肩を叩かれた。

「マーティンさん。すこしお話したいことが」
「ええ。どうかしたのですか?ミスタ・ワルド」

ウェールズ皇太子を仲人に、明日結婚式を挙げるとの事だった。
勇敢な戦士、もしかすれば英雄になりえる者からの祝福は、
とてもありがたい物だ。マーティンはそう思い、
邪魔者にならない様に先に帰るべきか聞いた。


「いえ、問題はありません。グリフォンでも滑空で帰りますから」

それならあまり労力を使わないで帰ることが出来るらしい。
なるほど。そういう事なら出席しよう。マーティンはホールを離れ、
今日の寝床へと、ロウソクの燭台を持ちながら進んだ。


嗚呼、何故己はこうなのであろうか?
ジェームズ王は、ベッドの中一人ため息をついた。
いつも、いつも自分の行いたい事を伝える事が出来ぬ。
思えばモードの時も――

「夜分遅く、申し訳ありません陛下」

何人かの従者が困惑する中、扉から男が現れた。
嗚呼、なるほどな。王はこの男を見たことが無かったが、
おそらく先ほどのパーティで、
本当の所逃げたいと言いたかったのだと思った。

熱狂とは怖い物だ。いつだって正常な思考判断を無くしてしまう。
何故、私はこの様な事ばかり…己が無能だからだな。

コホンと王は咳をして、人払いを命じた。
立ったままの男と、ベッドに入った王が対峙する。

「用件は、先ほどの席の話かね?」
「いえ、プリンス・モードについての事です」

心臓が、凍った。

「な…」
「娘がまだ生きているのです。そして、何故かような事をしたのか、何があっても聞いてきて欲しいと」

ああ、そうだった。何が王に続くが良い、だ。
自身に戦場で散る様な名誉が、
残っているはずなかろうというのに。

「ああ、全て話そう。何があったか。全てをな」


マーティンが廊下を歩いていると、ルイズが廊下の窓を開けて、
月を見ているのを見た。涙を流している。
マーティンは何も言わず、彼女の近くへと行った。
ルイズは彼に気付いて、どうにか泣くのをやめようとしたが、
止めどなく涙があふれ出し、どうにもやめることが出来なかった

「泣きたい時は泣けるだけ泣いた方が良い。後で泣かなかった分後悔するからね」

優しく諭すようにマーティンは言った。
ルイズはマーティンに抱きつき、声を上げて泣き出した。
彼はルイズの頭を優しく撫で続けた。

少し落ち着いたらしい。ルイズが口を開いた。

「いやだわ…あの人たち…どうして、どうして死を選ぶの?
わけわかんない。姫さまが逃げてって言ってるのに、
恋人が逃げてって言ってるのに…」


「逃げたとして、どうするね?」
「トリステインで、匿えばいいじゃない。バレたりしないわ」
「彼らも貴族だよ。誇りや意地を無くす事は出来ない」

それでも、それでも。とルイズはまた泣きそうになって言う。
よしよしとマーティンは頭をなで続けた。
ルイズも理解はしている様だ。ただ、
それを是とは何があろうとしたくないのだろう。
当たり前だ。どうして今日知り合った友人の死を許すことが出来るか。
だが、どうしようもないのだ。本当に、どうしようもないのだ。


「それが、真でございますか」

真実が語られ、沈黙に包まれた寝室の中、見知らぬ者が小さく言った。

「うむ。さぁ、朕を討て。あの娘にはそれをするだけの理由がある」
「何か勘違いしておりますな。陛下」

男はニヤリと笑った。

「何が違うと言うのか。汝は朕の命を狙いにあの娘から頼まれたのであろう?」
「残念ですが、命を盗む事は我らの流儀に反するのです」
「何…盗むだと?」

男は灰色頭巾を被った。途端に王の顔色が変わる。

「き…貴様まさか!!」
「待たせたな!と言うべきだろうかな。テファにあんたと王子を助けろと言われて来たのだ。手ぶらで帰る気は全くないぞ?」

グレイ・フォックス。彼が起こすは不可能な任務の成功劇。
やがて起こる、一連の伝説的な時代の幕開けを飾るとも言えるこの事件は、
後の世では歌劇として親しまれた。灰色狐の伝説が、今また一つ書き記されようとしている。

クエスト『灰色狐の強奪』が更新されました。




新着情報

取得中です。