わたしとダネットは、キュルケのげんこつとタバサの杖で付けられたたんこぶを冷やす為、医務室に来ていた。
なんか最近、医務室と縁があるわね。こんな縁は嬉しくないけど。
なんか最近、医務室と縁があるわね。こんな縁は嬉しくないけど。
「全く……何なんですかあの青い髪したちび女は。お前より凶暴です。」
「誰が凶暴よ!!」
「誰が凶暴よ!!」
怒鳴りつつも少しホッとする。どうやら、召喚した最初の時、タバサが風の魔法で吹っ飛ばして気絶させたのは知らないみたいだ。
知ってたらタバサに掴みかかりかねないもんねこいつ。
まあこんな感じでダネットと睨み合いながら、恒例行事と化してきている口喧嘩をしていると、医務室のドアからノックの音が聞こえた。
知ってたらタバサに掴みかかりかねないもんねこいつ。
まあこんな感じでダネットと睨み合いながら、恒例行事と化してきている口喧嘩をしていると、医務室のドアからノックの音が聞こえた。
「誰よ?」
ダネットと喧嘩していたせいで、若干怒り混じりの声を出すと、少し遠慮がちにドアが開いた。
「ギーシュじゃない。何よ? まだ決闘の横槍で言いたいことでもあるの? でもあれはむしろ感謝してもらいたいぐらいよ。全く……危うく目の前で惨殺死体見せられるとこだったわ。」
わたしが一気にまくし立てると、ギーシュは少し頬を引きつらせ、「ハハ……いや、それはもういいんだ。そうじゃなくてだね」と言って、ダネットをちらりと見た後、何かを決心したような顔になり、わたしに向き直った。
「な、何よ? わたしに文句でもあるの?」
「すまなかったルイズ。」
「は? どうしたのあんた? 熱でもあるの?」
「すまなかったルイズ。」
「は? どうしたのあんた? 熱でもあるの?」
いきなり謝られても困る。流れが全くわからない。
本気で熱でもあるんじゃないかしらこいつ。
本気で熱でもあるんじゃないかしらこいつ。
「いや、実はだね。決闘の前に彼女と言い合いになった際、僕は君を侮辱してしまってね。まあ、それが彼女に火を付けてしまい、ああして決闘騒ぎにまでなってしまったんだ。」
おい、どういう事だダメット。わたしは何も聞いてないわよ。
そんな目線をダネットに送ると、ダネットはばつが悪そうに頬を掻いてそっぽを向いた。
ん?もしかして照れてる?
そんな目線をダネットに送ると、ダネットはばつが悪そうに頬を掻いてそっぽを向いた。
ん?もしかして照れてる?
「聞いてないのかい? うーむ……いやね、僕はあの時、興奮して言ってしまったんだ。『ゼロ』のルイズと同じで、使い魔も無能だと。」
「あんた喧嘩売ってんの?」
「あんた喧嘩売ってんの?」
わたしが頬をひく付かせてギーシュを睨むと、ギーシュはぷるぷると顔を横に振って、必死に弁明しだした。
「お、落ち着いてくれルイズ。続きがあるんだ。それで、僕がさっきの侮辱の言葉を言ったら、彼女何て言ったと思う?」
「キザ男!! ぺ、ぺらぺらと何でも喋るんじゃありません!!、く、首根っこへし折りますよ!?」
「キザ男!! ぺ、ぺらぺらと何でも喋るんじゃありません!!、く、首根っこへし折りますよ!?」
何故か真っ赤になりながら、手をばたばたさせてるダネットを睨みつけて黙らせ、ギーシュに話の続きを言うよう促す。
「彼女は、自分が侮辱されたことよりも、君が侮辱されたことに腹を立てた。『あいつはゼロじゃない。何も無いゼロなんかじゃない。その言葉を取り消しなさい。謝りなさい。』ってね。」
それを聞いた後にダネットを見ると、真っ赤な顔で、何故か「うー」と威嚇の声をあげた。ダネットなりの照れ隠しなのだろうか。
「まあそんな訳で、僕は謝罪しにきたと言う訳だよ。そして改めて、すまなかったルイズ。それに使い魔の……」
「ダネットよ。ご主人様に大切な事を何も言わない、ダメな使い魔のダメットでもいいけどね。」
「だ、誰がダメですか!!ダネットです!!」
「ダネットよ。ご主人様に大切な事を何も言わない、ダメな使い魔のダメットでもいいけどね。」
「だ、誰がダメですか!!ダネットです!!」
ギーシュは、また「うー」と唸りながら頬を膨らませるダネットを見て微笑み、薔薇を模した杖を口元に近づけながら、最後に「いい使い魔を持ったね、ルイズ。」と言って部屋を出て行った。
部屋に取り残されたわたしとダネットは、お互いに顔を背けながら無言になる。
うー、ダネットにつられてわたしまで顔が赤くなっちゃうじゃない。何なのよ全く。
5分ほど経っただろうか。突然、ダネットが沈黙を破る為か、赤い顔をしながら言った。
部屋に取り残されたわたしとダネットは、お互いに顔を背けながら無言になる。
うー、ダネットにつられてわたしまで顔が赤くなっちゃうじゃない。何なのよ全く。
5分ほど経っただろうか。突然、ダネットが沈黙を破る為か、赤い顔をしながら言った。
「お、お前!! お腹が空きました!! ご飯にしましょう!!」
「そ、そうね。そうしましょうか。」
「そ、そうね。そうしましょうか。」
どこか他人行儀になりながら、わたしとダネットは医務室を出て、食堂に向かう。
食堂の手前まで来て、ダネットは厨房の方に向かおうとした。
多分、使用人の使ってる食堂に向かおうとしたのだろう。
わたしは、そんなダネットに思わず声を掛けていた。
食堂の手前まで来て、ダネットは厨房の方に向かおうとした。
多分、使用人の使ってる食堂に向かおうとしたのだろう。
わたしは、そんなダネットに思わず声を掛けていた。
「だ、ダネット!!」
「な、何ですか?」
「な、何ですか?」
お互いにぎくしゃくしながら向き合う。
「その……あり、あり……」
「あり?」
「あり?」
『ありがとう』そんな簡単な一言がどうしても言えない。
プライドが邪魔してるんじゃなく、単純に恥ずかしい。
使いまに感謝の念を抱くなんて、わたしはメイジ失格かもしれない。
いや、今はそんな事より言わなきゃ。『ありがとう』って。
表情がコロコロ変わるわたしを見て、不思議に思ったのかダネットが怪訝そうな顔で尋ねる。
プライドが邪魔してるんじゃなく、単純に恥ずかしい。
使いまに感謝の念を抱くなんて、わたしはメイジ失格かもしれない。
いや、今はそんな事より言わなきゃ。『ありがとう』って。
表情がコロコロ変わるわたしを見て、不思議に思ったのかダネットが怪訝そうな顔で尋ねる。
「どうしたんですかお前? お腹でも痛いんですか?」
「違うわよ!! その……あり……あり……有難く思いなさい!!今日の夕飯はわたしと一緒に摂る事を許すわ!!」
「違うわよ!! その……あり……あり……有難く思いなさい!!今日の夕飯はわたしと一緒に摂る事を許すわ!!」
違うでしょわたし!! ここは『ありがとう』でしょ!!ほら、ダネットもぽかんとしてる!!あーもう何でいっつもこうなのよ!!
必死に弁解しようと、わたしは両手を振って訂正しようとする。
必死に弁解しようと、わたしは両手を振って訂正しようとする。
「あ、そうじゃなくてあのね。そのね。えっとね!!」
「仕方ありませんね。そこまで言うなら、一緒に食べてやらないこともないのです。感謝しなさい。」
「仕方ありませんね。そこまで言うなら、一緒に食べてやらないこともないのです。感謝しなさい。」
ダネットは、そんなわたしの心中を知ってか知らずか、微笑みながら言った。
いや、あの笑い方はわかってやってる。いや待て、こいつはダメットだ。実はわかってないのかもしれない。きっとそうだ。うん。そういう事にしとこう。
いや、あの笑い方はわかってやってる。いや待て、こいつはダメットだ。実はわかってないのかもしれない。きっとそうだ。うん。そういう事にしとこう。
「い、行くわよ!!」
「ええ。お腹一杯食べましょう!!」
「ええ。お腹一杯食べましょう!!」
その後、ダネットの『お腹一杯』の基準を思い知らされ、また食堂にわたしの怒号が響き渡ったのは余談である。
戦争のような食事も終わり、わたし達は部屋に戻った。
ここで、重要な事にわたしは気付く。
ここで、重要な事にわたしは気付く。
「そう言えば、あんたの着替えって無かったわね。」
「言われてみればそうですね。じゃあ、明日は狩りにでも行きましょう。」
「言われてみればそうですね。じゃあ、明日は狩りにでも行きましょう。」
斜め上の返事をされ、わたしの思考が止まる。
「は?」
「ですから狩りです。獲物の皮を剥いで服にするのです。もしくは、獲物と引き換えに乳でか女にでももらいましょう。」
「ですから狩りです。獲物の皮を剥いで服にするのです。もしくは、獲物と引き換えに乳でか女にでももらいましょう。」
どこの原住民だこいつは。
皮をなめして服にするなど、何日かかるかわからないし、わたしはそんな血生臭そうな光景見たくもない。
引き換えと言っても、キュルケもいきなり動物の肉なんぞもらって服をよこせと言われたら困るだろう。
皮をなめして服にするなど、何日かかるかわからないし、わたしはそんな血生臭そうな光景見たくもない。
引き換えと言っても、キュルケもいきなり動物の肉なんぞもらって服をよこせと言われたら困るだろう。
「服ぐらい買えばいいでしょ。」
「私、お金持ってませんよ?」
「それぐらいわたしが出すわ。使い魔の服も用意できないとか言われたら、ヴァリエール家の恥よ。」
「おお、お前いい奴ですね!!見直しました!!」
「私、お金持ってませんよ?」
「それぐらいわたしが出すわ。使い魔の服も用意できないとか言われたら、ヴァリエール家の恥よ。」
「おお、お前いい奴ですね!!見直しました!!」
こんな事で見直されるわたしって一体……。
「後、ベッドとかも用意しなくちゃね。いつまでも一緒のベッドっていう訳にもいかないし。」
「私は一緒で構いませんよ?」
「あんたと一緒に寝てたら、いつかわたしが凍死しそうだから却下。」
「お前はたまに、よく判らない事を言います。このぐらいの気温なら、毛布があれば凍死なんてしません。」
「その毛布をわたしから剥ぎ取ったのはどこのどいつよ!!」
「私は一緒で構いませんよ?」
「あんたと一緒に寝てたら、いつかわたしが凍死しそうだから却下。」
「お前はたまに、よく判らない事を言います。このぐらいの気温なら、毛布があれば凍死なんてしません。」
「その毛布をわたしから剥ぎ取ったのはどこのどいつよ!!」
怒鳴られてふてくされたダネットを余所目に、今後の事を考える。
買い物は明後日の虚無の曜日に行くとして、それまでは同じ服で我慢してもらおう。わたしだって凍死の危険がありつつもベッドを使わせるんだからお相子よね。
でも、せめて寝巻きぐらいどうにかしないと、一緒に寝るのは抵抗がある。
ここはキュルケに……いや、あいつに貸しは作りたくない。絶対に今後、何かある度にネチネチ言ってくるに決まってる。
となると……。
買い物は明後日の虚無の曜日に行くとして、それまでは同じ服で我慢してもらおう。わたしだって凍死の危険がありつつもベッドを使わせるんだからお相子よね。
でも、せめて寝巻きぐらいどうにかしないと、一緒に寝るのは抵抗がある。
ここはキュルケに……いや、あいつに貸しは作りたくない。絶対に今後、何かある度にネチネチ言ってくるに決まってる。
となると……。
「お前の服、丈が短くてスースーします。もっと大きいのはないのですか?」
「それが一番大きいのよ!! 小さくて悪かったわね!!」
「あと、胸がきついです。」
「う、うるさいわね!! な、何よその笑顔!! 喧嘩売ってんの!? 買うわよ!! 買ってやりますとも!! 表に出なさい!!」
「外は寒いから嫌です。こんなちっちゃい服じゃ凍えてしまいます。」
「ちっちゃいって言ったわね!? しかも胸の部分を見ながら!! 胸の部分は寒さと関係無いでしょ!!」
「ルイズ!! ダネット!! あんた達うるさいのよ!! 少しはあたしの身にもなんなさい!!」
「それが一番大きいのよ!! 小さくて悪かったわね!!」
「あと、胸がきついです。」
「う、うるさいわね!! な、何よその笑顔!! 喧嘩売ってんの!? 買うわよ!! 買ってやりますとも!! 表に出なさい!!」
「外は寒いから嫌です。こんなちっちゃい服じゃ凍えてしまいます。」
「ちっちゃいって言ったわね!? しかも胸の部分を見ながら!! 胸の部分は寒さと関係無いでしょ!!」
「ルイズ!! ダネット!! あんた達うるさいのよ!! 少しはあたしの身にもなんなさい!!」
こうして決闘の夜はふけていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何だろうここ?真っ暗だ。わたし、どうしたんだっけ?あれ?
あ、そうか。この感じは夢だ。
あ、そうか。この感じは夢だ。
『……………………』
誰よあんた? わたしに何か用?
『……た……す……ね』
はっきり言いなさいよ。聞こえないわよ。
『時がき…・・・で……ね』
は?何?
『あなた……らの性を望み……すか?』
せい?せいって性?
失礼な奴ねあんた。どこからどう見たって女でしょう?
失礼な奴ねあんた。どこからどう見たって女でしょう?
『では、あなたの望みの名は?』
名前って、わたしの名前はあれよ。あれ。
あれ?名前……名前……あれ?
あれ?名前……名前……あれ?
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「あれ?」
部屋の外はまだ暗い。どうやら夜中のようだ。
隣では、すやすや眠るダネットの姿。
どうやらわたしは変な夢を見たようだ。
とは言っても、夢の内容は思い出せない。まあ、思い出せないということは、取るに足らない夢だったという事だろう。
隣では、すやすや眠るダネットの姿。
どうやらわたしは変な夢を見たようだ。
とは言っても、夢の内容は思い出せない。まあ、思い出せないということは、取るに足らない夢だったという事だろう。
「寝なおそ。」
二つの月が、とても綺麗な夜だった。