あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

お前の使い魔 1話




「え……エルフ!? あああああんた誰っ!?」
「える……ふ? 何ですかそれ? それよりもお前こそ誰ですか!! ここはどこですか!!」

 それがわたしの呼び出した使い魔との最初の会話だった。

 ここはハルケギニアのトリステイン魔法学院。
 そこで行われていた、春の使い魔召喚の儀式で、わたしことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、奇妙な亜人の女を召喚してしまった。
 エメラルドグリーンの髪の上には、小さな角が二本あり、瞳の色はワインレッド。
 服装はお世辞にもお洒落と言える物ではなく、動物の皮か何かをなめしているような藍色の上下に、赤い紐やリボンのようなものでお情け程度にアクセントを付け、首に鐘のような物を下げているている。
 何よりも目を引いたのは、エルフの証拠と言われている長い耳。その長い耳には金色の板の付いたピアスをしており、日の光を反射してキラキラと綺麗だ。
 その長い耳ですっかり腰が引けてしまっていたのだが、彼女の最初の返答と、目線を下げたことで解消した。
 何故なら、彼女の足は柔らかそうな毛が生えており、足の先は動物のような蹄だったからだ。

「亜人……?」

 わたしがそう言うと、その亜人の女は少し頬を膨らませ、髪の色と同じエメラルドグリーンの輝きを持つ短刀をこちらに向け言った。

「セプー族ぐらい珍しくないでしょう! それよりも、ここはどこかと聞いているんです! そしてお前は誰ですか! 私をさらって何を企んでいるのです!」

 そう言って、今にも飛びかかりそうな剣幕で怒り出す。
 そんなわたし達を見て、教師であるミスタ・コルベールが割って入ろうとしたのだが、わたしが向けられた短刀を見て怯えた表情をすると、亜人の女は少し驚いた顔をし、短刀を向けるのをやめ、先ほどより落ち着いた声でわたしに話しかけた。

「お前からは嫌な感じがしません。だから答えてください。ここはどこで、お前は誰で、私は何でこんなとこにいるんですか?」

 そんな様子を見てわたしは少し落ち着き、彼女の質問に答えた。

「ここはトリステイン魔法学院で、わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。そしてあなたはわたしが召喚したの」
「とり……巣? るい……るい……ルイなんとか!!」
「だ……誰がルイナントカよ!! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!!」

 あまりにも失礼な名前の覚え方に、わたしが声を荒げるも、亜人の女は全く聞いている様子も無く、少し警戒の色を濃ゆくした瞳を向けながら強い口調で言葉を続けた。

「そんな事はどうでもいいのです! お前!! 今、私を召喚したと言いましたか!?」
「そ……そうよ。あんたはわたしがサモン・サーヴァントで召喚したの。使い魔としてね。」

 そのあまりの剣幕に、少したじろぎながら答えると、亜人の女はぐわしとわたしの肩を掴み、揺さぶりながら怒鳴り散らしだした。

「私をまた支配したのですかお前の中のお前っ!! ええい、黙っていてはわかりませんよ!! 説明しなさい!! それとも首根っこへし折って欲しいんですか!?」

 凄まじい勢いで、がっくんがっくん揺さぶられるわたし。

「ちょ、おちちちち、つつつつつい、てててててて」
「ええい!! 何を言ってるかわかりません!! ほら!! 説明はまだですか!!」

 あ、何か川の向こう側で誰か手を振ってる気がする。あれ? あそこにいるのは肖像画で見たことのあるご先祖様?
 わたしがそんな危険な逃避行をしだした時、慌てた様子でミスタ・コルベールが横から入り、亜人の女を引き剥がしてくれた。危ない、もう少しで名前の後ろに(故)とかつくところだったわ。

「落ち着いて下さいミス! 落ち着いて!」

 そう言って、どうにか押さえつけたミスタ・コルベールに、怒りの表情でまくしたてる亜人の女。

「何ですかこのハゲたおっさんは!! どきなさい!!」

 あ、時が止まった。
 おお、ミスタ・コルベールが肩を震わせながらも耐えている。流石は教師。

「説明します!! 説明しますからどうか落ち着いて!!」

 そんな、ミスタ・コルベールの必死の説得により、どうにか落ち着いた亜人の女は、ぜえぜえと肩で息をしながらようやく話を聞く態度になった。
 ちなみに、落ち着かせ間にも「ハゲ」や「おっさん」といったミスタ・コルベールの心をえぐる単語が何度も飛び出し、最後は少し涙目だったのだが、優しいわたしは心の奥に仕舞っておく事にした。


「つまり、あんたは別の大陸で、崩壊する世界を救うために『世界を喰らう者』とか、それを裏で操ってた奴を倒して、ようやく平和になった世界で暮らしていたところを呼び出されたと……そういう訳?」
「そうです。私達が首根っこへし折ってやったんです。そのお陰で今の世界は平和なのです。感謝しなさい。」
「へー、そうなんだー。すっごーい」
「そうです。凄いのです。わかったらホタポタをお腹一杯食べさせた後、私を元の場所に戻すのです。それで勘弁してやります。」
「そうねー、それが本当なら、わたしとんでもない方を召喚しちゃったってことだもんねー。わー、たいへーん。トリステインの一大事だわー」
「そうです! 一大事なのです! その……トリ……なんとか?も大変なのです!」
「…って、信じられる訳がないでしょうがあああああっ!!!!!」

 あれからこのセプー族とかいう種族の亜人(わたし達が亜人というと「セプー族です!」と何度も言いかえを強要する)の『ダネット』という女に、どうにかこちらの現状を説明し(何よりも、わたしが魔法で召喚したという点を説明するのに時間がかかった。支配って何?わたしの中のわたし?馬鹿だこいつ)、使い魔の契約を結ぶよう言ったところ、世界を救った私を家畜扱いかと騒ぎ出したので、話を聞いてみたところがコレである。
 世界の命運をかけた戦い? 世界を喰らう者とかいう巨大な三体の巨人? ホタポタ?
 もう訳がわからないを飛び越えて、どう見たって聞いたって頭がアレな奴である。
 周りで聞いていた生徒も「目を合わせるな」といった雰囲気が出来上がり、最早失笑すら聞こえない。
 最初は「ふぅむ」などと言いながら聞いていたミスタ・コルベールでさえ、遠い空を見ながら「空が青いなあ」などとのたまっている。
 そんな中、わたしの魂の叫びを聞いたダネットは、額に青筋を立てながら反論してきた。

「お前はあの世界を喰らう者達を忘れたというのですか!? あの長く続いた地震を覚えてないとでもいうのですか!? 世界の悲鳴を聞かなかったのですか!?」

 そんな事を言われても、知らないものは知らないし、地震(地面が揺れる災害らしい)なんて生まれてこのかた聞いたことがない。
 なので、呆れた顔でわたしが「知らないわよそんなもの」と答えると、今まで勢いよく喋り続けていたダネットは俯いた。
 ようやく諦めたのだと思い、わたしはこの茶番を早く終わらせたい一心でダネットに話しかける。

「ホラ話は終わり? 諦めたのなら使い魔の契約をさせなさい。もうこれ以上話してても無駄だろうし、わたしも疲れたからさっさと終わらせたいの」

 すると、俯いたダネットがポツリと何かを呟いた。

「……じゃ……です……」
「え?何ですって?聞こえないわよ」

 少し苛立ちながらわたしがそう返すと、ダネットは俯いていた顔をバッと上げた。
 赤い瞳に涙をいっぱいに溜めて。

「ホラじゃ……ないのです!!」

 その余りの剣幕と瞳に、わたしは思わず少し後ずさったが、あんな話を信じろという方が無理である。

「ほ……ホラじゃないなら妄想よ!! ありもしない戦いやら、ありもしない敵!? バッカじゃないの!? そんな……ありもしない妄想、誰が信じるもんですか!!」

 わたしのその言葉が引き金となり、ダネットは怒りの表情で何かを叫びながらわたしに飛びかかってきた。
 ミスタ・コルベールの「危ない! ミス・ヴァリエール!!」という声が聞こえる。
 しかし、身体は硬直し、まともに動けないわたしは、小さく悲鳴をあげ、身体を竦まることしかできなかった。

「ひっ!!」

 もうだめだ。そんな言葉が脳裏をよぎる。だが、ダネット身体はわたしに触れる寸前で、横へと吹き飛び、小さな悲鳴をあげて動かなくなった。どうやら気絶したようだ。
 ダネットが吹き飛んだ反対側を見てみると、同級生の青髪の少女『タバサ』が、長い杖を構えていた。
 どうやら、ダネットが飛びかかるのを予測してウインド・ブレイクの呪文を詠唱していたらしい。
 正直、助かった。
 ダネットは刃物を持っていたし、あのまま飛びかかられていては、今頃、無事だったかどうかわからない。
 そんな事を考え、わたしが肩をブルっと震わせると、タバサの隣で様子を見ていた赤髪の同級生のツェルプストーがこちらへ近づいてきた。

「……何よ?」

 頬を膨らませてそう言ったわたしに、ツェルプストーはいつものように憎たらしい笑みをニヤリと浮かべると「怪我は無いみたいね。タバサに感謝しときなさいよ。ゼロのルイズ。」と言って、気絶したダネットの元に歩いていった。
 言われなくとも判っている。誇り高きヴァリエールは、卑しいツェルプストーとは違って、感謝すべき所は感謝する。
 そう考えたわたしは、タバサの方を見て、一言「一応、感謝しておくわ」とだけ言い、顔を背けた。
 後ろでタバサの「別にいい」という声が聞こえた気もするが、そんなのはどうでもいい。
 わたしは、気絶したダネットを念のために警戒し、近くで杖を構えるミスタ・コルベールと、その横で同じく杖を構えのるツェルプストーを押しのけると、気絶したままのダネットへ近づいた。
 ミスタ・コルベールの「危険です!」という声が聞こえたが、無視したまま詠唱を始める。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 呪文を唱え終わった後、ゆっくりとダネットの唇に自分の唇を合わせる。
 それを見たミスタ・コルベールが、慌てた様子でわたしに言う。

「ミス・ヴァリエール! その亜人は危険です! それを使い魔になど……」

 しかし、わたしは冷静に言葉を返す。

「ですが、使い魔と契約しなければ、わたしは進級できないのではないでしょうか? ミスタ・コルベール」

 それを聞いたミスタ・コルベールはぐっと唇を噛み「それは……そうなのですが……」と呟く。

「それに……もし、わたしが契約しなければ、ダネットはどうなります? 貴族を襲った危険な亜人として、良くて監禁。悪ければ……処分。違いますか?」

 それを聞いたミスタ・コルベールは、無言という肯定の意思を示す。
 そんなわたしの様子を見ていたツェルプストーが、わたしに言った。

「でも、何で急にその亜人の事を庇うような真似をするの? 貴女、その亜人に襲われそうになったばかりなのよ?」

 言われなくてもわかってる。今も膝が少しカクカクしていて、心臓はバクバク音を立てている。
 だが、それでもわたしはダネットを守らなくてはいけない。なぜなら――

「でもね、ツェルプストー。それでもダネットはわたしが呼び出した使い魔なの。だから守る。わたしが言ってること、間違ってる?」

 わたしがそう言うと、ツェルプストーは「へぇ……」と少し感心したように言い、憎たらしい笑みを浮かべて「まあ頑張んなさい」と言ってくるりと後ろを向き、タバサの方へ歩いていった。
 そう、呼び出した者として、わたしはダネットを守らなくてはいけない。
 そして何より、ダネットが見せたあの涙を浮かべた瞳。あれは、嘘を言っている眼じゃなかった。
 でも……だとしたら、あのホラ話が嘘じゃないとしたら……わたしは、世界を破滅させるような巨人を倒した英雄の一人を召喚したという事になる。
 しかし、わたしはそんな考えを頭を振って打ち消す。
 そして、今だ気絶したままのダネットを見ると、その左手が薄っすらと輝き、使い魔のルーンが刻まれようとしていた。
 それが痛みを伴うのか、ダネットは少し身をよじると、閉じたままの瞳から一筋涙をこぼし「お父さん……お母さん……」と呟いたのだった。



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