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蒼い使い魔-28


生家の庭で、シエスタは幼い兄弟たちを抱きしめ、不安げな表情で空を見つめていた。先ほど、ラ・ロシェールの方から爆発音が聞こえてきた。
驚いて庭から空を見上げると、恐るべき光景が広がっていた。
空から何隻もの燃え上がる船が落ちてきて、山肌にぶつかり、森の中へと落ちていった。
村が騒然とする中、雲と見紛う巨大な船が下りてきて、草原に鎖のついた錨を下ろし、上空に停泊した。
その上から何匹もの火竜が飛び上がる。
シエスタは不安がる兄弟たちに促して家の中に入る。
中では両親が不安げな表情で窓から様子を伺っていた。
「あれは、アルビオンの艦隊じゃないか? アルビオンとは不可侵条約を結んだってお触れがあったばかりなのに……」
「じゃあ、さっきたくさん落ちてきた船はなんなんだい?」
そう話している間にも、艦から飛び上がった火竜が、村めがけて飛んできた。父は母を抱えて窓ガラスから遠ざかる。
その直後、騎士を乗せた火竜は村の中まで飛んできて、辺りの家々に火を吐きかけた。
ガラスが割れ、室内に飛び散った。村が炎と怒号と悲鳴に彩られていく。平和な村は一瞬にして灼熱の地獄に変わった。
シエスタの父は気を失った母を抱えたまま、震えるシエスタに告げた。
「シエスタ! 先に弟たちを連れて逃げろ!」
父の言葉に従い、シエスタは弟たちを連れ急ぎ森の中へと逃げる、後ろを振り返ると
平和だった村は炎上し、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
「なんで…私たちがなにをしたっていうの…?」
シエスタは悲しそうにそう呟くと、両親の無事を祈りながら森の中を駆け抜けた。

広大な草原に、アルビオンの軍隊が集結している。対して、トリステイン軍隊は港町ラ・ロシェールに立てこもっていた。
両者睨み合ったまま時間だけが過ぎていく。いつ決戦の火ぶたが切られるのかおかしくない状態。
また、タルブの村の上空では、空からの攻撃を部隊から守るため、『レキシントン』号から発艦した竜騎士隊が見張りを兼ねて飛び交っている。
実際何回かトリステイン軍の竜騎士隊が攻撃をしかけてきたが、いずれもこちらにそう被害なく返り討ちに合わせた。
決戦を行う前に、トリステイン軍に対し艦砲射撃が実地する事をアルビオンは決めていた。
これで一気に敵の士気を下げようとする。そのため、『レキシントン』号を中心としたアルビオン艦隊はタルブの草原の上空で、砲撃の準備を進めていた。

「………」
シルフィードの背の上で、険しい表情をしたバージルがタルブの村の方角を睨みつける、
学院を飛び立ってあまり時間はたっていなかったが、ここからでも、アルビオン艦隊
『レキシントン号』ならびに多数の戦艦、そこから出撃した竜騎士隊が視認できる。
「なによあれ…あんなにたくさん…タルブは…シエスタは無事なの…?」
その光景を見たルイズが呟く、知った場所がほんのわずかな時間で戦場と化し、
蹂躙されているなど想像しにくいことであり、受け入れがたいことである。
そしてタルブの村へと近づくにつれ、アルビオン艦隊によって蹂躙しつくされた村の光景が目に飛び込んできた。
つい一日前に見た、素朴で美しい村はそこにはなかった。ほとんどの家は燃やされ、所々黒い煙りが立ち昇っている。
「嘘よ…そんな…」
その光景はバージルの視界にも飛び込んでくる、シエスタと眺めた草原は
アルビオンの軍隊で埋まっていた。綺麗だったその光景は、いまや醜く蠢いているものでしかない。
一騎の竜騎兵が村のはずれの草原に向かって、炎を吐きかけた。瞬く間に草原は燃え広がる。
その方向にはゼロ戦が奉納されている祠があった、
「あっ! 祠が!」
ルイズが思わず声を上げる、その声に反応したのかバージルが素早く顔をあげ、タバサに指示を出す。
「向こうへ飛ばせ」
その言葉にタバサは無言で頷き、シルフィードを急旋回、急ぎ祠のある方向へと飛ばした。
火を放った竜騎兵が上空へ飛びあがり、こちらへ向かってくる一匹の風竜を確認する。
「一騎だと? トリステインの生き残りか?」
竜騎兵はそう言いながら迎撃態勢を整える、
お互いの距離が近くなり、竜騎兵の駆る火竜が炎のブレスを吹きかけようとしたその刹那
風竜は突如身を翻し、背中から一人の男がこちらに向け飛び出してきた。
「バカめ! 気でも違ったか!」
そう叫ぶと、竜騎兵は火竜にブレスを吐かせ、男を焼きつくそうとした。
だが、その巨大な火球は―ゴォッ!っという音とともに男の抜き放った剣により両断、霧散する。
「なっ―」
―ゴシャッ!
竜騎兵が驚愕の声を上げるよりも先に飛び込んできた男が空いた左手で背中の剣を抜き、竜騎兵の頭蓋を叩き割る、
その一撃は頭だけに留まらず鳩尾にまで食いこみ、哀れな竜騎兵は派手に血肉を噴出しながら地上へと落下していった。

「………」
墜ちて行く竜騎兵の死骸を火竜の上に乗りながら無言で見ていたバージルは
すぐに祠へと視線を送る、だが祠はすでに炎に包まれており、どう見てもゼロ戦は無事ではないだろう。
上空を旋回する竜騎兵達、草原に陣取る兵士、そしてアルビオンの艦隊を睨みつける。
「おい、相棒、まさかアルビオン軍に喧嘩売る気か?」
「奴らは帰還の糸口を灰にした。生かして帰すつもりはない」
デルフの問いに短く、だが怒りに満ちた声で返すと、バージルは天高く跳躍する。
足場になっていた火竜は真っ二つになり竜騎兵と同じく地上へと落下していった。

「敵だ! 討ち取れ!」
小隊長の号令とともに上空を旋回していた竜騎兵達がバージルへと襲いかかる、
火竜がバージルに炎のブレスを吹きかけようとした時、バージルの姿がフッと掻き消える
竜騎兵が慌てて周囲を見渡すといつの間に移動したのか、
突然火竜の目の前へ再び姿を現し、火竜の頭へ強烈な踵落としを叩きこむ。
ベオウルフ無しとはいえ強烈な一撃、火竜は脳を激しく揺さぶられぐらりと体勢を崩す。
「う…うぉっ!」
それに驚き竜騎兵が火竜にしがみつき振り落とされまいとした、
バージルは踵落としを叩きこんだ衝撃を利用し、その火竜の後へと飛びあがり
―ガシッ! と火竜の尻尾を掴む、そして勢いよく振り回し始めた、
「くっ…! 何をっ!」
竜騎兵が声をあげるが、気にすることもなく火竜をフレイルのように振りまわし、
迎撃に飛んできた竜騎兵に叩きつける!

しがみ付いていた竜騎兵の体は、叩きつけられた衝撃で千切れ飛ぶ。
バージルは尻尾を掴んだまま放そうとはせず、次々と同じように迫る竜騎兵に火竜を叩きつけ、
衝撃を利用し空中を移動、叩き落としていく。
やがて一通り竜騎兵を殲滅し終えたバージルは身を翻し、数百メイル下の歩兵が犇めく地上へ向け勢いよく地面に火竜を投げつけた。
―ビッダァン! という水の入った革袋を勢いよく地面に叩きつけたような音が響く。
ぐちゃり…と叩きつけられた火竜の体から血だまりが出来上がった。
重力に従い地面に向かい落下し始めたとき、飛んできたシルフィードがバージルを受け止める。
「相変わらずデタラメよね…アンタ…」
今まで呆然と見ていたルイズが呆れたように声を出す。
タバサもそれには同意したのか無言でうなずく。
バージルはそれには応じず、レキシントン号を静かに睨みつけた。
「それで、どうしようっていうの?」
「あの艦を落とす」
ルイズのその問いにバージルは当然のように即答する。
「ちょ…ちょっと待ってよ! いくらあんたでもアレを落とすのは無理よ! そもそもシルフィードでは近づけないわ!」
「無理」
「きゅいきゅい!」
ルイズとタバサはブンブンと首を横に振りシルフィードまで抗議の声を上げる、
確かにシルフィードで近づけば、たちまち砲撃の雨に晒され撃墜されてしまうだろう。
だがそんなことは知らんとばかりにバージルは続ける。
「無理に近づけとは言わん、ただ、アレの真上へ飛べばいい、真上なら砲撃をするわけにはいかんだろう。
そこから俺が直接降下して中の人間を殲滅する、それで問題あるまい」
「あ…あんたはそれでいいんだろうけど私達はどうするのよ!?」
「知らん、着いてきたのはお前だ、自分の身くらい自分で守れ」
「うっ…それは…そうだけど…って! あんたは私の使い魔でしょうが! 
主人をほったらかすってどういうつもりよ! ちゃんと守りなさいよ!」
喚き散らすルイズを見て小さく鼻を鳴らすとバージルはタバサに指示を出す。
「タバサ、俺が降下した後はお前の判断に任せる。行け」
タバサは無言で頷くとシルフィードの高度を上げつつ『レキシントン』号の上空へ向けシルフィードを飛ばした。

途中こちらへ向かってくる竜騎兵達に向かい、バージルは大量の幻影剣を飛ばし容赦なく叩き落としていく。
タバサもそれに倣いウィンディ・アイシクルを放ち援護を行っている。
幻影剣に貫かれた竜騎兵が火竜もろとも息絶え、地上へと落下していく。
バージルやタバサはそんな彼らに一切目をかけることなく、次の敵の標的を捕捉して距離を縮める。
もはやここまでくるとルイズの必要性が全く感じられなってきた。
(なっ…なによ! なによ! わ、私にだって出来る事はあるんだから!)
そう考え模索するが、浮かばない。これではバージルとタバサが戦っているようなものだ。
何か、何かないかと、ルイズは手を服にあてる。
すると、マントの裏には始祖の祈祷書が入ってあった。そしてアンリエッタ王女から貰った大切な水のルビー。
(こ…この二つでどうするのよ!?)
何も書かれていない本とただの指輪に、ルイズは項垂れる。
しかし、だからといって現実が変わるわけではない。残る手段としては、神に祈る事ぐらいである。
雰囲気を出す為、水のルビーを指に嵌めて、両手を胸の前で強く握る。
「姫様…、私達を…お守りください」
呟くと、もう一つこの場にもってきた本を手に持ちそっとなでた。
思えば、詔を考えるために渡されたが、結局思いつかなかったな…。
こんな状況でも、いつもと変わらない事を思ってしまう自分が不思議だ。
それでも一応、本物かはわからないが一応始祖にまつわる大切なものなのだから、せめて始祖にも祈っておこう、
そう考え、何となく開いた。特に理由もなく、本当になんとなく。
だから、その瞬間、水のルビーと始祖の祈祷書が光を放った時、心底驚いた。
ルイズは恐る恐る光の中の文字を読み始める、
それは古代のルーン文字で書かれていた、真面目に授業を受けていたこともあり
ルイズはその古代語を読むことができた。

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』

「ね…ねぇ、バージル?」
「何だ」
始祖の祈祷書を読んでいたルイズが顔を上げバージルにおずおずと声をかける
「わ…私…選ばれちゃったみたい…」
「………?」
その一言に怪訝な表情でバージルとタバサが振り向く
「そ…その…『始祖の祈祷書』が…えっと…光ってて…読めるんだけど…」
「…何のことだ?」
「いいから! とにかくあの戦艦に近づけて、あんたが直接突入したほうが早いかもしれないけど
あんたがいないと私達が危ないわ、だから私がやる、やるしかないわよね、やってみましょう」
ルイズのその独り言のような言葉にバージルが『何を言ってるんだ? コイツは』いった表情でタバサを見やる。
タバサも理解できないのだろう、わからない、と言いたげに肩をすくめた。
「だから! さっさと近づけなさい! あんたは使い魔! 詠唱中のご主人さまを守るのがあんたの役目でしょうが!」
「………」
「こうなったら聞かない、やるだけやらせてみる」
沈黙するバージルに変わりタバサがあきらめたように呟き、シルフィードを駆った。
その時、雲間から一騎の風竜が飛び出して来た事に気がついたものはいなかった。

ワルドは風竜の上で、にやりと笑う。
彼はこの時を、『レキシントン』号の上空の雲に隠れ、ずっと待っていたのであった。
味方の竜騎士隊を生身で次々墜落させていった謎の騎士…
その報告はワルドの耳にも届いていた。
そんな化け物じみた事が出来る者はただ一人、ガンダールヴ、いやスパーダの血族しかいない。
奴の目的は、おそらく旗艦『レキシントン』への直接攻撃、
ゆえにここで待っていれば奴は必ずくる、そう睨んで待ち伏せしていたのだった。

バージルが振り返り険しい表情で後方を睨みつける、
見ると背後から猛スピードで風竜が飛んでくるのが見える、
そしてそれに乗っている人物、ワルドを視認すると、バージルが口を開く
「邪魔が入ったか」
「どうしたの?」
「詠唱を続けろ、蠅を叩き落としてくる。俺が戻るまで戦艦には近づくな」
不安そうにバージルを見るルイズとタバサをよそにそれだけ言い残すと、
バージルが突如シルフィードから身を投げる。そして後ろから迫り来る風竜に向けダイブ、そのままデルフを引き抜き
風竜を駆るワルドを一刀のもとに両断するべく頭蓋めがけ振り下ろす。

だがワルドの体はバチッ!という音とともに稲妻と化し掻き消えた。
「―ッ!?」
風竜の上に着地したバージルが驚いたように目を見開く、
立ち上がり周囲を見渡すと、風竜の周囲を稲妻が弾け飛ぶ。
すると突然稲妻がワルドの姿を形作る。
ワルドは魔力で雷の剣を生成し背後からバージルに斬りかかる、
それをバージルは振り返ることもなくデルフでそれを受け止め切り返す。
バージルは風竜から飛び降りると、稲妻となったワルドもそれを追う、
二人の壮絶な空中戦、地上へと落下していくバージルに次々と稲妻が襲いかかる。
それらを紙一重でバージルが切り返し受け流す。
やがて地上へと着地したバージルの前に稲妻が人の形を作りワルドが姿を現した。
「また会ったなガンダールヴ! いや…スパーダの血族!」
地上で二人が対峙する、
「…また貴様か…大体予想はつくが一応聞いてやる、なぜ生きている?」
「ムンドゥス様に新しく命をもらったのさ! 俺は悪魔として生まれ変わった!」
その言葉を聞き、バージルは不快そうに眉間にしわを寄せる
「やはりか…、貴様の様な者を蘇生させるなど…暇な奴だ」
「魔帝の御為! ここで貴様を討たせてもらう!」
その言葉とともにワルドは雷の剣を作り出す。
「貴様の『二つ名』…たしか『閃光』だったな」
それをみたバージルがふと思い出したようにワルドに話しかける
「そうだ、悪魔の力を得てついに俺は文字通り『閃光』の力を得た!」
雷の剣を構えながら高らかに笑うワルドを見てバージルがフッと軽く鼻で笑う、
「そうか、ならば」
バージルがそう言うと閻魔刀から手を放しゆっくりと構えをとる。
するとバージルの両手両足が光り出し、『閃光装具ベオウルフ』を装着した。
「本物の『閃光』がどういうものか、貴様にたっぷりと味わわせてやる」
「面白い…やってみるがいい!」
ワルドが叫び、自身の体を稲妻に変え再びバージルの周囲を飛びまわる
ガァン!という音とともに雷の剣とベオウルフが激突する。
お互いの激しい攻撃の応酬が続く。
速度はほぼ互角、最初は均衡を保っていたが次第に力で勝るバージルが押していく。
「くっ…」
不利になったワルドは一度距離をとり遍在一体をバージルの背後に作り出す。
生み出された遍在はバージルへ襲いかかった。
「死ねッ!」
バージルの後頭部目がけ鋭い突きが繰り出される。
だがバージルはそれをひょいと避けると、その腕を掴み
突っ込んできた勢いを利用し遍在を一度地面に叩きつけると、そのまま本体のワルドに投げつけた。
「なっ!」
それに驚いたワルドはとっさに回避する。
そして慌ててバージルに視線を戻すと、蒼い影が目の前に躍り出る。
「エアトリック」で一瞬で間合いを詰められていたことに気がついた時には既に遅く、
バージルの上段蹴りがワルドの下顎に叩き込まれる。

意識を刈り取られたワルドがカクンと膝をつく、だがバージルがそれを許すはずもなく…
まるでゼロ戦を失った鬱憤を晴らすかのように陰鬱に口元をゆがませると…
跪いたワルドの胸倉を掴むと鼻っ柱を数回殴りつけ、無理やり意識を覚醒させる。
「う…ぐッ…」
ワルドがうめき声をあげた瞬間、バージルは空中高くワルドの体を放り投げ、
それを追うように空中に飛び上がったバージルがガシリとワルドの頭部を掴む。
そしてそのまま空中でぐるんと豪快に振り回すと、そのまま地上へワルドを顔面から叩きつけた。
「ぐぇっ!」
凄まじい勢いで地面に叩きつけられたワルドは衝撃のあまり再び宙へと跳ね上がる、
その浮いたワルドの胴に地面への落下を許さないとばかりにバージルの連撃が叩き込まれた。
前回、ラ・ロシェールで食らったボディブローとは比べ物にならない威力の拳がワルドの胴体へ次々突き刺さって行く
人間の身体なら一撃で身体が千切れ飛んでいるだろう、
だがワルドの体は悪魔として強化を受けており、その程度では死に至ることはなかった。
今回は、その身体強化が不幸にも苦痛を長引かせる結果となる…
一撃叩き込まれるごとに、骨が砕け内臓が破裂する、大量の血を吐き出し、
息も絶え絶えになりながら跪く様にバージルへしがみつく、
「ぐ…ぐぉっ…」
苦悶の表情を浮かべ、再び頭を掴まれ引きはがされる。
「Show down...(―終わりだ…)」
バージルはニヤリとしながらそう呟くと頭を掴んでいた左手をパッと放すと、
崩れ落ちるワルドの腹部目がけ渾身のアッパーを叩きこむ。
凄まじい衝撃とともにワルドの体は宙へと跳ね上げられ…
やがて重力に従い地面に叩きつけられた。
「Rest in peace.(―眠れ)」
呻くワルドを尻目にバージルは背を向けるとすっと腕を横に出しパチンと指を弾く
すると倒れ伏すワルドの上空から大量の幻影剣が降り注いだ

「がぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
ワルドが苦痛に悲鳴を上げる、地面に縫い付けていた幻影剣が砕け散る。
「コ…殺ス…殺ス…スパーダ…血族…」
幻影剣の雨に体中を貫かれ地面に這いつくばりながらもジリジリとバージルへと近づいて行く。
もはやワルドの体は原形を留めておらず崩壊を始めていた。
「俺ハ…! 俺ハ!! 悪魔ノ…チカラヲ…!!」
ワルドから紅い電流が迸り、体を包み込む、
苦悶の悲鳴を上げながらのたうちまわり、ワルドの体は爆発し砕け散った。
「品のないセリフだ」
自爆したワルドを後ろ目でちらりと見て呆れるように吐き捨てたバージルは周囲を見回す。
あたりには既に動くものはなく、黒焦げになりブスブスと音を立て煙を上げるアルビオン軍の兵士達の死体が転がっている。
上空を見上げると、シルフィードが急降下し、バージルへ近づいてきた、
ワルドとの戦いに決着がついたのを見て迎えに来たのだろう。
ワルドの襲撃により地上まで降りてきてしまったため、もう一度『レキシントン』号の上空まで飛ばなくてはならない、
バージルは地面を強く蹴ると地面スレスレに飛んできたシルフィードに飛び乗った。

「まだ終わらんのか?」
シルフィードに飛び乗ったバージルが『始祖の祈祷書』を開き熱心に見入っているルイズに呆れたように声をかける。
ルイズはその声が届いていないのか険しい表情で『始祖の祈祷書』を睨みつけ詠唱していた。
そんなバージルに短くタバサが話しかける。
「詠唱中、邪魔しちゃダメ」
「……」
言われてみれば確かにルイズから強い魔力を感じる。
ルイズが詠唱を進めれば進めるほどその力が増していく。
「…わかった、このまま進め」
それを感じ取ったバージルは短く指示を出し、砲撃を続ける『レキシントン』号を睨みつけた。
長い詠唱の後、呪文が完成した、その瞬間、ルイズは己の呪文の威力を理解した。
巻き込む、すべての人を、一瞬だけ悩む。殺すべきか否か。
しかし、答えは決まっていた。自分の視界一面に広がっている戦艦『レキシントン』号。
ルイズはシルフィードの背から立ち上がり、虚無の魔法『エクスプロージョン』を放とうとする。
だが、放とうとした途端、軽い眩暈を感じ、思わず座り込んでしまいそうになった。
その時、杖を持ったルイズの右手を包み込むようにバージルが左手で掴み、
ルイズの身体を引き立たせ、再び『レキシントン号』に狙いを定める。
「世話が焼けるな」
バージルがため息を付きながら短く呟く、するとルイズがいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「あんた達の"決めゼリフ"知ってるわよ」
その言葉に少々驚いたような表情を浮かべるも、バージルはニヤリと口元を緩める。
ルイズとバージルが『レキシントン』号目がけ杖を振り下ろす。

「「JACK POT!」」

同時、光の球があらわれた。太陽のような眩しさをもつ球は、膨れ上がる。
そして……、包んだ。
上空にある、全ての艦隊を包み込む。
それだけでは終わらない。さらに膨れ上がって、見るもの全ての視界を覆い尽くした。
誰もが目を焼いてしまうと思い、つむってしまう程光り輝くそれ。
そして……、光が晴れた後、上空の艦隊全てが炎によって包まれていた。

「…………………」
タバサが唖然とした表情でそれを見ている。
目の前に布陣していたアルビオンの艦隊が綺麗さっぱりなくなっていたのだ。
「次はもっとマシな相手に使うんだな」
それに対しバージルは特に驚くような様子は見せずにそれだけ言うと、ルイズの右手をパっと手放す。
するとルイズは力尽きたのか、崩れるようにバージルに背中を預ける。
それをバージルは今しがた離したばかりの左手で襟首を掴み倒れないように再び引き起こした。
ルイズは全ての精神力を出しきり、疲れ切った表情を浮かべている。
「安全な所へ降りろ」
それをみたバージルは茫然としているタバサに安全な場所へ降下するように指示を出す。
その一言に我に返ったのかタバサは頷くとシルフィードの高度を下げて行った。


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