抜けるような青空、壮大な城、鮮やかな緑の庭、なんともすがすがしいこの場所で、若いざわめきが跳ねる
そんな中ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはどうしていたかと言うと、困り果てていた。
同時に、恐ろしく恥をかいてもいた。理由は簡単、ちょっとした意地から大風呂敷を広げてしまった春の使い魔召喚の結果がこれだからだ。
一応一発で召喚はできた。あくまで『召喚』はできた。
しかし同時にいつもの爆発も起こしてしまったし、…こちらの方が重要だが、召喚された対象もイレギュラー中のイレギュラーだった。
そんな中ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはどうしていたかと言うと、困り果てていた。
同時に、恐ろしく恥をかいてもいた。理由は簡単、ちょっとした意地から大風呂敷を広げてしまった春の使い魔召喚の結果がこれだからだ。
一応一発で召喚はできた。あくまで『召喚』はできた。
しかし同時にいつもの爆発も起こしてしまったし、…こちらの方が重要だが、召喚された対象もイレギュラー中のイレギュラーだった。
何しろまず、人間である。しかも、平民である。
その平民は、タキシードを着て、銀髪をオールバックにしていた。そして今、いや、召喚直後から目の前で背中を地面につけて、白目のままキリモミ回転している。
最初は爆煙を巻き込んで小型の渦巻きを作っていたほどの高速回転もそろそろ終了らしく、今はのろのろと回転しているだけだった。
「ゼロのルイズ!平民なんて召喚してどうすんだよ?」
「黙りなさい!ちょっと間違えただけでしょ!?」
「間違えなかったことあるのかよ?」
「召喚できないからってそこらへんの平民捕まえてくるんじゃねーよ!」
ルイズは頭痛のしてくるこめかみを押さえ、周りの嘲笑を受けながら髪の薄い中年へ振り返った。
「ミスタコルベール!もう一度やらせてください!」
だが、コルベールは首を横に振る。
「駄目だ、春の使い魔召喚は大切な儀式なのだから、早く契約なさい」
「でも、平民じゃないですか!」
「決まりだ。例外は認められない、早くしなさい」
ルイズはむぅ・・と黙り込んだ。薄い髪の毛が、こんなときは何故か逆らえないような強制力を持つ。髪の薄さは年季の濃さのようなものをまとうのだ。
覚悟を決めた。一歩踏み出し、コントラクト・サーヴァントの呪文を
その平民は、タキシードを着て、銀髪をオールバックにしていた。そして今、いや、召喚直後から目の前で背中を地面につけて、白目のままキリモミ回転している。
最初は爆煙を巻き込んで小型の渦巻きを作っていたほどの高速回転もそろそろ終了らしく、今はのろのろと回転しているだけだった。
「ゼロのルイズ!平民なんて召喚してどうすんだよ?」
「黙りなさい!ちょっと間違えただけでしょ!?」
「間違えなかったことあるのかよ?」
「召喚できないからってそこらへんの平民捕まえてくるんじゃねーよ!」
ルイズは頭痛のしてくるこめかみを押さえ、周りの嘲笑を受けながら髪の薄い中年へ振り返った。
「ミスタコルベール!もう一度やらせてください!」
だが、コルベールは首を横に振る。
「駄目だ、春の使い魔召喚は大切な儀式なのだから、早く契約なさい」
「でも、平民じゃないですか!」
「決まりだ。例外は認められない、早くしなさい」
ルイズはむぅ・・と黙り込んだ。薄い髪の毛が、こんなときは何故か逆らえないような強制力を持つ。髪の薄さは年季の濃さのようなものをまとうのだ。
覚悟を決めた。一歩踏み出し、コントラクト・サーヴァントの呪文を
「はて、ここはどこ、あなたは誰、そして私は誰ですかな?」
唱える前に平民は起き上がった。
「は?アンタ記憶喪失なの?」
「いえ、全然」
「じゃあなんで私は誰とか言うのよ!」
しかし平民ははっはっはと笑うだけで、ルイズの問いに答えない。周囲もゼロのルイズが使い魔にからかわれてるぜと笑い出す。
ルイズは怒りに肩を震わせ、
「アンタ、どこの平民よ!貴族に対する礼儀がなってないんじゃないの!?」
勢い任せに怒鳴りつけた。
「ふっ、あなたは誰にモノを言っているのか解っているのですかな?」
不敵に顔を歪めるその銀髪オールバック男に、ルイズはたじろいだ。周りもしんと静まり返る。
それは、相当な身分なんじゃないかと疑念を持ち、すぼまった硬い空気。とんでもない無礼を働いてしまったのではないかと言う、恐れ。
「あ…あんた、何なの?」
「私は…そう」
その、一人で若い貴族たちを圧倒した銀髪オールバックの男がパチリと指を鳴らすと、彼の背後の地面が爆発した。どかーんと、ぼかーんと
そして腰を落として天を指差し指差し、声を高らかに張り上げる
「マギー家執事見習い、キース・ロイアルッ!」
執事見習いに尽くす礼儀はないと、周囲の生徒の攻撃魔法が一斉にキースに群がった
唱える前に平民は起き上がった。
「は?アンタ記憶喪失なの?」
「いえ、全然」
「じゃあなんで私は誰とか言うのよ!」
しかし平民ははっはっはと笑うだけで、ルイズの問いに答えない。周囲もゼロのルイズが使い魔にからかわれてるぜと笑い出す。
ルイズは怒りに肩を震わせ、
「アンタ、どこの平民よ!貴族に対する礼儀がなってないんじゃないの!?」
勢い任せに怒鳴りつけた。
「ふっ、あなたは誰にモノを言っているのか解っているのですかな?」
不敵に顔を歪めるその銀髪オールバック男に、ルイズはたじろいだ。周りもしんと静まり返る。
それは、相当な身分なんじゃないかと疑念を持ち、すぼまった硬い空気。とんでもない無礼を働いてしまったのではないかと言う、恐れ。
「あ…あんた、何なの?」
「私は…そう」
その、一人で若い貴族たちを圧倒した銀髪オールバックの男がパチリと指を鳴らすと、彼の背後の地面が爆発した。どかーんと、ぼかーんと
そして腰を落として天を指差し指差し、声を高らかに張り上げる
「マギー家執事見習い、キース・ロイアルッ!」
執事見習いに尽くす礼儀はないと、周囲の生徒の攻撃魔法が一斉にキースに群がった
結局、ルイズは寝ている(気絶している)執事見習いにキスをして契約した。その間も他生徒からの嘲笑は絶えなかったが、もはや気にしない。
そして今、コルベールは執事見習いのルーンを確認し、
「珍しいルーンだなぁ」
などとスケッチしている。確かに全く見たことのないルーンで、勉強家であるルイズにも見覚えが無かった。やはり飛び切りのイレギュラーなのだろう。
何しろ、まず人間だ。そして言動が意味不明だ。行動も謎だ。
更にさっき、常人であれば半分死んだような状態になっているはずの量の魔法を受けたというのに、気絶しているだけで外傷は見られない。
ルイズの頭痛は強まる一方だった。呼んだのがただの執事見習いならまだしも、変態的な執事見習いだ。もうイヤだ。家族に顔向けできない。
そして、頭痛の原因がにょっきりと起き上がった。
「さて、ここはどこ、あなたは誰、私はキース・ロイヤルですかな?」
ルイズはこめかみを指で押さえながら後のキースへ振り返る。
「ここはハルケギニアのトリステインの魔法学院の中庭、私はヴァリエール家三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、で、あなたはキース・ロイヤルで合ってるんじゃないの?」
もはややけっぱちだ。
「で、結局あんたはどこの平民なのよ」
「キヒエルサマ大陸、アーバンラマ商業家、マギー家の執事見習い、キース・ロイヤルですが。」
「どこよそれ」
全く聞いた事が無い。むしろこの変態執事にマトモな返答を期待した私が馬鹿だったわ、と、ルイズは肩を落とす。
「まあ、異世界というところでしょうな。さて、私はボニー様のランチを用意しなくてはなりませんので、これにて」
そういうと執事はくるりと振り向いて駆け出した。かなり速い。馬の全速力と大差ないのではなかろうか。
「ちょ、ちょっと!あんた、召喚されたのに、どこに行けば帰れるのか解ってるんでしょうね!?」
土煙を巻き上げて疾駆するキースははっはっはと笑い、
「大丈夫ですぞ!大抵異世界とかに呼ばれたときは…とうっ!」
ぱりん!
急にキースは二階の窓へと飛び上がり、ガラスをタックルで突き破った。澄んだ音色を奏でながら学院の窓ガラスが割れる。
そして割れた窓から首だけをニュッと突き出し、
「異世界に通じる場所は大抵、ガラスか鏡と相場が決まっておるのです!では片っ端かられっつらごー!でございます」
まるで、魔法学院の壁に波縫いでもするかのようにガラスを割って中に飛び込み、割って外へ出る執事
マシンガンの掃射を受けたかのように端から割れてゆく窓
「や、やめなさいよ馬鹿!」
暴れているのはルイズの使い魔だ。責任は自分にある。しかし執事はまたもやはっはっはと笑って言うことを聞かない。
そんなとき、青髪の少女タバサが、指を指して笑う学生の群れから一歩前へ出て、杖を掲げた。
同時に、暴走していた変態が凄まじいまでの速度で吹っ飛んで中庭へ叩きつけられた。着弾点から土煙が立ち上る。
風の攻撃魔法『エアハンマー』だ。そしてタバサはぽつりと、消えそうな声で呟いた
「捕まえるならいま」
「痛いではありませんか青魔術師どの」
「!?」
真後からの声にタバサはびくりと向き直る。そこには、学生達からの唖然とした視線を受けている無傷の銀髪オールバック。
今が戦闘ならば自分は死んでいる。北花壇騎士として裏の仕事を何度もこなしているタバサだが、今のは全く気配が読めなかった。
むきになってもう一度『エアハンマー』を放つ。しかし、キースはそれを体を反らすだけで避けた。
さらにもう一度、相手を地面から打ち上げるようにエアハンマー。しかしキースはくるりと左に身を回して避ける。
また、エアハンマー。今度は左右から挟みこむように高さを変えて。しかしキースは一歩前に踏み出しながら上体を後に倒し、上手く隙間へ体をねじ込む。
つららやら風の刃やらを連発するが、全てを避けられる。おかしかった。何かがおかしかった。
基本的に魔法は避けるものではない。防御魔法で防いだり、攻撃魔法で相殺させるものなのだ。それをあの執事は全て避けている。
「何故っ!」
「青魔術師どのはやはり青いですな。」
今度は含みのある笑み
そして今、コルベールは執事見習いのルーンを確認し、
「珍しいルーンだなぁ」
などとスケッチしている。確かに全く見たことのないルーンで、勉強家であるルイズにも見覚えが無かった。やはり飛び切りのイレギュラーなのだろう。
何しろ、まず人間だ。そして言動が意味不明だ。行動も謎だ。
更にさっき、常人であれば半分死んだような状態になっているはずの量の魔法を受けたというのに、気絶しているだけで外傷は見られない。
ルイズの頭痛は強まる一方だった。呼んだのがただの執事見習いならまだしも、変態的な執事見習いだ。もうイヤだ。家族に顔向けできない。
そして、頭痛の原因がにょっきりと起き上がった。
「さて、ここはどこ、あなたは誰、私はキース・ロイヤルですかな?」
ルイズはこめかみを指で押さえながら後のキースへ振り返る。
「ここはハルケギニアのトリステインの魔法学院の中庭、私はヴァリエール家三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、で、あなたはキース・ロイヤルで合ってるんじゃないの?」
もはややけっぱちだ。
「で、結局あんたはどこの平民なのよ」
「キヒエルサマ大陸、アーバンラマ商業家、マギー家の執事見習い、キース・ロイヤルですが。」
「どこよそれ」
全く聞いた事が無い。むしろこの変態執事にマトモな返答を期待した私が馬鹿だったわ、と、ルイズは肩を落とす。
「まあ、異世界というところでしょうな。さて、私はボニー様のランチを用意しなくてはなりませんので、これにて」
そういうと執事はくるりと振り向いて駆け出した。かなり速い。馬の全速力と大差ないのではなかろうか。
「ちょ、ちょっと!あんた、召喚されたのに、どこに行けば帰れるのか解ってるんでしょうね!?」
土煙を巻き上げて疾駆するキースははっはっはと笑い、
「大丈夫ですぞ!大抵異世界とかに呼ばれたときは…とうっ!」
ぱりん!
急にキースは二階の窓へと飛び上がり、ガラスをタックルで突き破った。澄んだ音色を奏でながら学院の窓ガラスが割れる。
そして割れた窓から首だけをニュッと突き出し、
「異世界に通じる場所は大抵、ガラスか鏡と相場が決まっておるのです!では片っ端かられっつらごー!でございます」
まるで、魔法学院の壁に波縫いでもするかのようにガラスを割って中に飛び込み、割って外へ出る執事
マシンガンの掃射を受けたかのように端から割れてゆく窓
「や、やめなさいよ馬鹿!」
暴れているのはルイズの使い魔だ。責任は自分にある。しかし執事はまたもやはっはっはと笑って言うことを聞かない。
そんなとき、青髪の少女タバサが、指を指して笑う学生の群れから一歩前へ出て、杖を掲げた。
同時に、暴走していた変態が凄まじいまでの速度で吹っ飛んで中庭へ叩きつけられた。着弾点から土煙が立ち上る。
風の攻撃魔法『エアハンマー』だ。そしてタバサはぽつりと、消えそうな声で呟いた
「捕まえるならいま」
「痛いではありませんか青魔術師どの」
「!?」
真後からの声にタバサはびくりと向き直る。そこには、学生達からの唖然とした視線を受けている無傷の銀髪オールバック。
今が戦闘ならば自分は死んでいる。北花壇騎士として裏の仕事を何度もこなしているタバサだが、今のは全く気配が読めなかった。
むきになってもう一度『エアハンマー』を放つ。しかし、キースはそれを体を反らすだけで避けた。
さらにもう一度、相手を地面から打ち上げるようにエアハンマー。しかしキースはくるりと左に身を回して避ける。
また、エアハンマー。今度は左右から挟みこむように高さを変えて。しかしキースは一歩前に踏み出しながら上体を後に倒し、上手く隙間へ体をねじ込む。
つららやら風の刃やらを連発するが、全てを避けられる。おかしかった。何かがおかしかった。
基本的に魔法は避けるものではない。防御魔法で防いだり、攻撃魔法で相殺させるものなのだ。それをあの執事は全て避けている。
「何故っ!」
「青魔術師どのはやはり青いですな。」
今度は含みのある笑み
「そう殺気を放って狙っていては、来る場所を予測することは容易ですぞ。ほれ」
そう言いながら、キースは避ける。軽やかに、舞うように。
その言葉に、タバサは方向性を変えた。相手を中心に竜巻を起こす。
「むっ?」
そして相手を暴風の中に囲い、その内部に向かって氷の槍をランダムに、大量に飛ばす。
それはさながら日の光を乱反射するオブジェのようだった。
『ウィンディアイシクル』の応用だ。本来は竜巻の中から外へ大量のつららを吐き出すのだが、それをすべて内側に向かわせた。
今思いついた応用法だが、相手単体には恐らく最高の応用技となるだろう。
他の生徒達は、二人を唖然として見ていた。彼らは呆けるしかなかった、タバサの魔法の腕に、何より、それを全て避け切るゼロのルイズの使い魔に。
そして、光と風のオブジェが消え去ったときには、そこにはつららが生えた地面と
「む?」
誰も居なかった。生徒達はざわめき、辺りを見回す。そして、間もなくキースの姿を見つけた
「はっはっは、やはりそう思いますかなヴェルダンテどの!」
「きゅー!」
そいつは庭の端の深い穴の傍らで、ギーシュの使い魔の大きなもぐらと笑顔で語り合っていた。
もぐらもろとも皆の攻撃魔法がキースを吹き飛ばした。今度はルイズの失敗魔法も含まれていた。」
そう言いながら、キースは避ける。軽やかに、舞うように。
その言葉に、タバサは方向性を変えた。相手を中心に竜巻を起こす。
「むっ?」
そして相手を暴風の中に囲い、その内部に向かって氷の槍をランダムに、大量に飛ばす。
それはさながら日の光を乱反射するオブジェのようだった。
『ウィンディアイシクル』の応用だ。本来は竜巻の中から外へ大量のつららを吐き出すのだが、それをすべて内側に向かわせた。
今思いついた応用法だが、相手単体には恐らく最高の応用技となるだろう。
他の生徒達は、二人を唖然として見ていた。彼らは呆けるしかなかった、タバサの魔法の腕に、何より、それを全て避け切るゼロのルイズの使い魔に。
そして、光と風のオブジェが消え去ったときには、そこにはつららが生えた地面と
「む?」
誰も居なかった。生徒達はざわめき、辺りを見回す。そして、間もなくキースの姿を見つけた
「はっはっは、やはりそう思いますかなヴェルダンテどの!」
「きゅー!」
そいつは庭の端の深い穴の傍らで、ギーシュの使い魔の大きなもぐらと笑顔で語り合っていた。
もぐらもろとも皆の攻撃魔法がキースを吹き飛ばした。今度はルイズの失敗魔法も含まれていた。」