あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの超律-05


 シエスタの案内で一応の身だしなみを整えたマグナは、再びルイズの部屋の前にやってきていた。
 マグナは女性の寝室に入ることに抵抗を覚えつつも、自らの手をドアノブに伸ばす。
 ガチャリと音をたてて、ドアはあっさりと開いた。

(無用心だなあ)

 そろそろ反省したかもとカギを開けてみたら、当の使い魔が野宿を決め込んでいた時にルイズが抱いた感情を差し引いても、それはもっともな意見だった。
 恐る恐る部屋に足を踏み入れると、学生寮とか宿舎と言った響きとはかけ離れた空間が出現する。マグナは改めて広いなあ、と感想を抱いた。
 十年近くを過ごした見習い召喚師の宿舎は、相部屋で二段ベッドと机が一つと言う狭いものだったのでなおさらだ。
 その広い部屋の一角、部屋の相応しい大きさを備えたベッドの上に、ルイズはいた。とても上品とは言えない寝相である。
 すーはーすーはーと平常心の維持に努めんとするマグナ。チラチラと見える足とか肌が心臓に悪かった。

「ルイズ、様、朝ですよ起きて下さい」
「うにゅ」

 眠っているとはいえ、なるだけ丁寧な言葉遣いを心がけるマグナ。背中がかゆくなるものの、キックよりはマシだと思う。
 一方のルイズは、奇妙な鳴き声とともにむくりと起き上がると、ぼやける視界でマグナを眺めていた。髪の毛には寝ぐせが少し。

「あんた誰?」

 ぶっ倒れるマグナ。

「冗談よ」

 「……嘘だ、絶対に本気で忘れてた」 などと言えるはずもなく、マグナはとほほとうなだれた。
 ルイズはその様子を気にすることもなく時刻を確認する。多少早いが、起こされたことを怒鳴るほどの早朝ではなかった。

「ところであんた、昨日は帰ってこなかったみたいだけど、どこで寝たの?」
「外で寝ましたけど?」
「そ、そう」

 マグナの答えに、ルイズは表情を引きつらせた。
 使用人の宿舎にもぐりこむくらいを想像していたので、予想の斜め上である。当然野宿など経験したこともなく、その様子を想像もできないルイズには文句一つも言えなかった。

「まあ、いいわ。とりあえず、着替えをするから」
「ん、分かったよ。それじゃあ外で待って……ぐ」

 ごく当たり前のように部屋を出ようとするマグナの襟首を、ルイズの手がむんずとつかんだ。首が絞まってうめくマグナ。
 振り向くと、ルイズは良い笑顔だった。

「手伝いなさい」

 良い笑顔で命令するルイズ。硬直するマグナ。彼は健康な男子である。

「俺がルイズ様くらいの歳にはもう一人で着替えて……」

 何とか逃れようと、苦し紛れにそう言ったところ、使用人が居るときには云々と言われ、さらにルイズが16であることを良い含められつつ殴られた。
 え、同い年? と聞いたところ、今度は乗馬用のムチが飛んできたので、マグナは素直にゴメンナサイをした。
 ルイズによって昼食抜きを宣告された。
 素直に謝ったのにとは思いつつも、原因は大体自分なので反論はできなかった。
 少年の心臓の鼓動を多いに速めつつも、着替えを済ませたころには、部屋を出て食事に向かうにはちょうど良い時間を迎えていた。

「それじゃあ行きましょう」


「あら、おはよう。ルイズ」
「おはよう。キュルケ」

 ルイズの先導で部屋を出てカギをかけると、錠前がおりるのと同じタイミングで、正面の部屋のドアが開いた。
 正面の部屋から現れた人物とルイズが、挨拶を交わす。
 褐色の肌の少女キュルケは、マグナの姿を認めると、焔色の髪を揺らしてくすくすと笑った。
 いきなり笑われてさすがに不機嫌になるマグナであるが、キュルケの視線が自分の頬に存在するパンチの痕跡であることが分かると、その感情も霧散してしまい、苦笑して返すほかなかった。

「へえ、本当に平民なのね。名前を教えて下さる? 使い魔さん」
「マグナです。ええと……」
「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は微熱、微熱のキュルケよ。よろしくね」
「よ、よろしく」
「ちょっと! ツェルプストーの相手なんかしなくていいのよ!」

 悲しいサガ故に、キュルケの胸元に視線を向けてしまったマグナに、あからさまに不機嫌そうなルイズの声が飛んだ。
 主人の様子に戸惑うマグナであったが、キュルケが悪戯が成功したようにクスクス笑っているのを認めると、ほっと息をついた。分かってやっていたらしい。
 このキュルケという少女は、人をからかうのが趣味なのかもしれない。

「ところで、剣を持っているってことは、マグナは傭兵なのかしら?」
「え? あ、ああ、うんそんなところだよ」

 マグナは言葉を濁しながら答えた。
 ここがリィンバウムなら、誰にはばかることもなく召喚師を名乗るのだが、基本的に召喚術は秘匿されるべきものだ。
 具体的には、戦争に使えてしまう技術である。それを考えれば、やはり召喚師と名乗るには慎重になってしまう。
 キュルケはマグナの態度を訝しみながらも、とりあえず詮索はしないことにした。顔は悪くないと思っているが、それ以外に彼女の興味を引くものがなかったからだ。
「ふあっ!?」

 話を切り上げて食事に向かおうとしたところで、ルイズが驚いて声を上げた。
 キュルケの隣をすり抜けて、虎ほどもある巨大で真っ赤なトカゲがのっそりと顔を出していたのである。その尻尾は、燃えている。
 巨大なサラマンダーの登場によって目を白黒させるルイズに、キュルケは悪戯っぽく笑う。

「私の使い魔、フレイムよ。驚かせちゃってゴメンねー。ル・イ・ズ」
「お、驚いてなんてないわよ! サラマンダーなんか珍しくない……ん、だから」
「あら、気が付いた? いいわよねー、この尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーですもの」

 使い魔自慢をする隣室の住人の言葉に、ルイズはフレイムとマグナを見比べた。
 方や堂々たる体躯のサラマンダー。
 方やただの少年。
 身びいきするつもりも無いので、あっさりフレイムに軍配が上がった。
 自分の使い魔が、宿敵ツェルプストーの使い魔に負けたので、ちょっとだけルイズの機嫌が悪くなる。

「フレイムって言うのか。よろしくな」

 もっとも、当のマグナは主人の機嫌など知らぬ様子で、のん気にフレイムの頭をなでていた。
 フレイムもまんざらではないらしく、機嫌よさそうにきゅるきゅる鳴いている。

「あなた、フレイムを見ても驚かないのね」
「ん? ああ、フレイムくらいの大きさの幻獣だったら結構身近に……って、舐めないでくれよフレイム! 熱い、唾液が熱いッ!??」

 何気ないマグナの言葉は、しかし少女二人に大きな衝撃を与えていた。
 フレイムは大きい。平均的なサラマンダーに比べてもかなりの大きさである。
 そのフレイムほどの大きさの幻獣が身近……自然の成り行きで、キュルケとルイズの脳裏には、マグナの故郷として断崖の山脈や、深い密林が投影されていた。
 実際は、水竜が100メイル級の船舶をけん引し、馬の代わりに幻獣が馬車を引く文明的な場所なのだが、今の彼女達が知るところではない。
 知ったら知ったで驚くが、それも別の話である。

「あんた、一体どんな秘境の出身なのよ……」

 特に昨夜、里帰りさせて上げる宣言をしたルイズは、秘境を踏破する自分の姿を暗澹たる気分で想像していたのであった。
 今後は慎重に発言しよう、などと思いつつ。


ゼロの超律5「ルイズとキュルケ」 了



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