あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの工作員-10



トリステイン魔法学院の宝物庫にはコルベールのガラクタから
強力なマジックアイテムまで古今東西のあらゆる貴重品が納められている。
分厚い鉄扉の管理はスクウェアメイジたる学長のオールド・オスマンが管理し、
強力なメイジによる<固定化>がかけられ鉄壁の防御を誇る。

腰まで掛かるウェーブの入った長い緑の髪と、フレームなしの眼鏡を付けた
気の強そうな女性が目録の確認をしている。オスマンの秘書、ロングビルだ。
「さぁさ、皆様、教材を選んだら出てって下さいな」

先日ルイズの魔法で吹き飛ばされ、二度と彼女に魔法を唱えさせまいと誓った
『赤土』のシェヴルーズが「レビテーション」で硫黄を運び、
陰気で高慢な『疾風』ギトーが力を見せ付けているのか必要以上に高度な魔法、
<偏在>で分身をつくり四人になって運ぶ。
また生徒を実験台にするつもりだろう、平民びいきの変者『炎蛇』のコルベールが
自分の造ったガラクタを台車で運ぶ。

「ミス・ロングビルはでませんの?」
教師達は思い思いの品を手に取り運び出す。
杖を手にしたまま出てこないロングビルにシェヴルーズが気がついた。

「ええ、私は宝物庫の目録を作ろうと思いますの。
せっかく宝物庫に来ましたので、ついでにやっておきますわ」
「今日は定期整理の日でしたね」
面倒な夜の見回りをしない彼女は、真面目なロングビルに感心した。


ロングビルは教師達がいないか再度確認してから宝物庫の扉を閉めた。
ランタンで部屋を照らす。雑多な品に紛れて秘法や財宝が無造作に置いてある。
「困ったね。スクウェアクラスの<固定化>に分厚い壁、簡単に壊せそうにないじゃないか」

棚の上にある金属製の鞄を引き寄せ大事そうに触る。
「こいつが学院秘蔵の破壊の杖、ねえ」
出来損ないの竜、ワイバーンさえ一撃で倒す曰く付きの武器である。
闇で売れば良い値になるだろう。

鞄にはいくつかのバラバラになった金属製の部品が灰色のスポンジに包まれ入っていた。
金属製の円筒やレンズの入った筒、金属の卵、どれも部品は黒く鈍い輝きを放っている。
「どうやって組み立てるかだけど、さっぱりだわ」

部品の所々に掘り込んである紋様を見る。
「たぶん文字だとおもうけど・・・読めもしないし、使い方もわからない、か」
「出所もわからないとはねぇ」
王家や職人のものだったら使い方が判らなくても骨董品として売れると考えていたのだが。

「やればなんとかなると思ってたんだけど、甘かったかね」
転がっていたガラクタを蹴飛ばした。



「メイジが集まる場所だからいいものがあるはずだったんだけどねぇ」
自嘲の笑いを浮かべた。

トリステイン魔法学院は貴族達のメイジ育成の場である。
平民は魔法を使えず、貴族たるメイジのみが使える。メイジは貴族の象徴だ。
魔法の力は絶対だ、<錬金>で生活必需品を精製し、土の魔法で橋を造り、
戦場では一人のメイジが他を圧倒する。

主要な生活用品の殆どはメイジの手が入っていて、建設も土のメイジ達が関わる、
広場で決闘に負けたグラモン家の子供、<青銅>のギーシュ、
彼はメイジの中では最低ランク、ドットランクのメイジだった。
その彼が造りだすゴーレム達でさえ、平民の精鋭部隊一個小隊の戦力に匹敵する。
最高ランクのスクウェア級のメイジと平民の差など、考えるのも馬鹿らしい。

メイジの未来、国の次代を担う貴族達が集まる名門校、それがトリステイン魔法学院だ。
生徒には国の重鎮たるヴァリエール家の三女や、グラモン元帥の三男、
ゲルマニアのツェルプストー家など、政治家や財界人に名立たる顔ぶれだ。

それらを守る学院側の防御も硬い。
トライアングル、スクウェアメイジが多数在籍し、並みの軍事施設よりも強固。
施設そのものも多数設置された見張り台や強固な壁など、要塞並みの防衛設備だ。
軍で活躍した「炎蛇」のコルベールや風のスクウェア「疾風」ギトー
各地の名立たるメイジ達が講師を務めていて難攻不落。

その学院の保管庫なのだから、それなりの物が収められている。
          • そうなのだと彼女も思っていた。


「くたびれ儲けかもねぇ・・・」
オスマンのセクハラに耐え、秘書として潜入してしばらく経つ。
厳重に守られた宝物庫には秘宝財宝が眠っているのだと思い、蓋を開けてみれば驚きだ。
宝物庫の中は物置と化していた、あるのはガラクタばかりである。
ガラクタは異界の品物らしいが、使い方を知らないロングビルにはゴミも同じだ。
特にルイズの使い魔の女が召還されてからというもの、
コルベールが閃きを得たようで日に日にガラクタが増えてゆく。
前にまとめてゴミを捨てようとことがあるが、泣きつかれて止めた。
大の大人が鼻水まで垂らして泣かないで欲しい。
機械の性能を聞いたら二時間ほど監禁されて懇切丁寧に延々と聞かされ続けた。
二度と聞くまいと心に誓う。

トリステインの教員達は弛み過ぎている。
教員たちの夜の見回りも殆どなく、宝物庫の管理もずさんだった。
一つぐらい盗んでも、しらを通せばごまかせそうなぐらい酷かった。
むしろ、アタシが来てから良くなったぐらいだ。
整理整頓を完璧にやってしまってから、しまったと頭を抱えた。

これでは盗めないではないか。

余りに宝物庫が酷くて勢いで整頓してしまった。
カッとなってやった。今は後悔している。
頭の中でオスマンが余裕綽々で笑っているのが見えた。
エロジジイに上手く使われている気がする。
辞めようにも相場よりかなり高めの給料と、部屋付き、豪華な貴族向け三食休暇付き、
非肉体労働と、セクハラを除けば待遇も悪くないので、辞められずに
盗みの先延ばしを今日まで続けていた。

ああ、忌々しい。


新しく買ったパーカッション式のリボルバーに慣れる為、安全装置を外して準備する、
姿勢を変えても妨げなく一挙動で射撃準備が整うことを丹念に確認した。
満足するまで触った後、ハルケギニアでは薬莢や規格品の概念がないから
弾薬をどうやって補給しようかとリボルバーを眺めながら考えていると、
コルベールが通りかかった。
「そそそ、それは!」

10m向こうから興奮した面持ちで走ってくる。
「どうしたの?コルベール」

「手に持っているのは銃かね?」
「そうよ。パーカッション式のね」
フリーダが事も無げに応じる。
コルベールの眼がきらきら輝く。研究者の瞳だ。

「研究室で調べさせてくれるかね?」
「いいけど、あなた講義があるじゃない」
彼女は放課後、タバサの講義があるまで暇だ。反面、夜は図書館に籠もり切りになる。
コルベールは昼間、講義で教えなければならないので、二人はちょうどすれ違いになるのだ。

「授業は自習だ。じっくりと話しを聞こうか」
久しぶりに恋人に会った上気した顔で話す。
視線は最初からずっと銃に釘付けになっている。
きびすを返すと、コルベールが教室へ全力で走っていった。
余りに勢いよく走るので、廊下の生徒達はなにごとかと驚いていた。

「恋は盲目。…相手は銃。報われない恋ね」


ジャン・コルベール、「炎蛇」の二つ名を持ち、重度のメカフェチにして
オスマン曰く「彼以上に女好き」、異世界の技術に惹かれる「賢者」で「変者」。
異世界に理解がある学長オスマンの計らいで研究室を校内に持ち、
自らの財産を切り売りしながら学院の宝物庫に異世界の品を集めている。
宝物庫には彼の作品が所狭しと詰め込まれていて、
ロングビルに<物置>と酷評させた元凶である。

今回のコルベールの「彼女」はフリーダが持っていた拳銃であった。

研究室には秘薬が入ったビーカーや試験管、計測器が並べられ、
壁には設計図とメモが貼り付けられ魔法使いの研究室より、近代的な科学者のものに近い。
「なるほど、シリンダーに直接雷管を詰め撃鉄で着火する。火打石より確実で賢い方法だ」
「弾が複数入っているシリンダーで交換を行い、シリンダー内で燃やすため悪天候に強い」

メモをとりつつ、コルベールはフリーダが解体した銃を触る。
「珍しいものなの?」
「もちろんだ。ハルケゲニアでは此処まで高度な銃は存在しない。異界の品だよ」

熱心に部品を紙に写す彼の横でフリーダは複雑な表情をしている。
聴く所によると、ハルケゲニアではフリントロック式の銃が最新だそうだ。
彼女の世界ではパーカッションは枯れた技術で、レーザーライフルやリニアガンが主流だ。
少数だが信頼性の高さから金属薬莢式の銃を使用している国もある。
骨董品でさえかなりの衝撃なのだから、彼女の手首にあるリニアガンを見せたらと
誘惑に駆られた。
だが見せない。強すぎる力は不幸を引き寄せてしまうから。

「この銃は我々の技術を凌駕している。量産できれば平民と貴族の間に革命が起こるよ」
「そうかしら?」
トリステインは周辺国のゲルマニア、アルビオンに比べメイジの力が強い国だ。
トリステイン自体の国力低下と、長い歴史は捩れを産み育て歪みは大きくなっている、
近年はアルビオンを中心として<レコンキスタ>が<<貴族からの開放>>
を掲げ紛争が続いている。土壌は十分にあった。
それでも、革命は起こらない。たとえ起こったとしても失敗するとフリーダは考えている。

メイジとは労働者であり生産者であり資本家だ。
杖一つで金属を精製し、一体のゴーレムで数十人分の肉体労働をこなす。
彼等は生活基盤に深く関わり彼等なしでは成り立たない。
平民には運営のノウハウも、資産も、技術もない。
貴族無しでは一週間ライフラインを保つことすら不可能だろう。
彼等は上前を跳ねるだけの存在ではないのだ。

裕福な生活をしているのは一握りの正しい意味での貴族だけで、
「名門の次男三男は下街の工場などで働いている。僕はそんなのにはなりたくない」
だからトリステインで学ぶのだとギーシュがグチを言っていた。
無論、平民達にも彼等並かそれ以上に裕福なものも居る。
ギーシュはトリステインの貴族、軍の重鎮、グラモン元帥の三男だ。
出征のため見栄を張って大量の出費をしていてあまり財はない。
元帥の子供である上流階級の中で上位に当たる、庶民の生活とはかけ離れた
彼でさえ、貴族が厳しいと知っている。

貴族も平民も苦しい、見えて来るのは貴族と平民の対立はコルベールの考える
傲慢な貴族と、虐げられる平民、単純な構図では説明できない姿。
あるのは、増えすぎた下級貴族が旧来の貴族に反発し、利権を奪い合う。
メイジのメイジ達によるメイジのための戦争。
今も昔も戦場の主役はメイジ達だ。
平民達は貴族達の態のいい道具にされているに過ぎない。

現実はコルベールの考える更に下をいっていた。


「衝撃だけで火を付ける発想はなかった。弾丸は一発撃つごとに薬室を空けるものだと」
「薬室ごと入れ替えるなんて考えもしなかったよ。密閉式の薬室は飛距離も威力も上げる」
銃弾が連発できるようになることで、平民は確かにメイジに匹敵する火力を得るだろう。
一発目を呪文で防いでいる間に二発目が息の根を止める。弾の威力はベテランメイジ並だ。
飛距離が伸び精度があがることで、魔法並みの射程を得られるだろう。
銃の射程外からひたすら嬲られ、無力さに打ちひしがれるのもなくなるだろう。
銃は誰にでも使える。魔法が使える使えないに関わらず。
女子供でも横暴なメイジに怯えなくても良くなるかもしれない。

「引き金を引くたびにシリンダーが回転するんだね。魚に似た弾丸の形も合理的だ」
コルベールは興奮している。
この異界からの銃は、武器の歴史の集大成だ。
トリステインは他の国より100年先に立てる。

「いずれ大砲も銃の技術を引き継ぎ同じになるだろう」
技術は磨かれ応用され、国を豊かに、自分の周りの人へ笑いを与える。
自身とトリステインの人々と平民が共に幸せを得る。

「最高の技術だ。最高すぎて私は恐ろしいよ」
長年、私のしてきた研究は間違いではなかったのだと思った。

「君の世界にはもっと素晴らしい技術があるんだろうね」
「どうして。思ったの?」
フリーダの声は冷たい。
どうしてだろう?コルベールは彼女の手を取って踊りだしたい気分だった。

「君はパーカッション式と言ったね。名前が付くからには
君の世界で武器体系が完成している。違うかね?」
「……………」
彼女は黙っている。
それでもティンと来た。彼の推測は当たりだと確信した。
彼女は異界からの客だ。それも、ハルケギニアを凌駕する技術を持った。
100年先を進んだといっても、技術は模倣されるのが常だ。
しかし、彼女は異界の人間だ。
異界の品を解読するのと教えてもらうのとでは当然、理解の速度は違う。
彼女の世界の技術、制度の一端でも判れば底知れない恩恵を受けられる。
トリステインは常に時代の先を走るだろう。
それを彼女の周囲は気付いていない。知っているのは彼だけだ。
都合の良い完璧な状態過ぎて恐ろしい。

「出っ張りは滑り止めかい?もしかしたら金属製で重いのにも意味があるのかもね」
「………聴きたい?」
彼女が口を開いた。


一つの武器で世界が変わる。
いかにも技術者の考えそうなことだとフリーダは思った。

画期的な武器があっても、造るのはメイジである。
銃は誰にでも使える、もちろんメイジにもだ。
貧乏人と金持ちが居た場合、最初に金持ちへ武器が行き渡る。
平民達が武器を手に入れるには、安く大量に作らねばならない、<画期的な新技術>で
産業革命が起きるだろう。音頭を取るのは貴族達だ。
平民達の<自由の武器>で彼らは儲ける。
メイジ用の銃も出てくる。<メイジが銃で戦う時代>が来る。
結果、何も変わらない。

理想を追い求めるほど理想から遠のく。

武器が必要になる分、かえって生活は貧しくなるかもしれない。
のちに彼らは過去を振り返る
「昔は良かったんですがねぇ。不景気で」
と場末の武器屋で客に愚痴るのだろう。



コルベールは即答した。
「もちろんだ」
「条件があるわ」

フリーダはコルベールの考えが理解できた。
「ミスタ・コルベール。あなたが異界のものに執着する理由は?」
だから動機が知りたかった。
コルベールは天才だ。
人より抜き出ているものがあるからには、忘れてきたものもあるはずだった。

「異界の素晴らしい技術を知りたいからでは、駄目かな」
「あなたが執着しているのは、武器への興味よ」
ハルケギニアでまだ技術的に存在しえないスナイパーライフルを一目で見抜き、
フリーダが持つリニアガンを拳銃と警戒し、パーカッション式拳銃に感動し、
最新式のフリントロック式と性能比較までした。
はじめて見る銃の性能を数時間で看破したのは執着の成せる業だ。

「私が、軍人だった頃平民達が銃を使って来てね。敵の武器は知らないといけないよ」
<普通の人>はありふれた理由で此処まで捻じれない。

「嘘。あなたの執着は異常よ」
「・・・・・・・・・・・・」
コルベールは少し躊躇ったあと下を向いてぼそぼそと話した。

「………任務でとある村を焼いた。平民達の村だ…彼等は武器を取り出して、
ささやかな抵抗をしたよ」
「殲滅…虐殺は実に容易かった。持たざるものとの差だ」
コルベールは杖を触る。


「女子供を残らず抹消した。火に包まれる村で少女を見つけたんだ。
私はその子を殺せなかった」
「それから私は杖を捨てた。杖は人に向けられるものでなくなった」
「………腐ったのね」
フリーダが冷ややかに斬った。瞳の奥に困惑を湛える。
彼女にも似た経験があったから。
人間は、変質する。熱湯に入れた卵がゆで卵になるように、
人間は絶えず周りから影響を受け、二度と元の形には戻らない。
冷血な軍人だった彼が、一晩で変わってしまうのもありえた。

「私は持たざる者に牙を持たせる」
「身勝手な押し付けよ。それでもいいの?」
理想では何も変えられない。彼は<正しいこと>を決断した。
それなのに、どうしてこんなに寒いのだろう。

「焼かれた彼等への義務……………贖罪だ」
コルベールは弱々しく首を振った。




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