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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-12


12.王家の乙女

舞踏会から一週間が過ぎた。
平凡な日常が続く。マーティンにとってはありがたい休暇である。
そして、この地についての調べ物の日々でもある。
何故ハルケギニアとタムリエルの魔法が全く互換性が無いのか、
ここはニルンのどこら辺なのか。等が主にそうだが、
デルフリンガーについても調べたいし、
自分を養っているルイズの魔法が何の系統なのか、
おそらく『虚無』ではないかと当たりはつけてあるが、
しかし、証拠も確証もない。

そんなわけで、学院の図書館塔で、
マーティンはずっとこれらの情報を漁っているが、
未だ有益な情報は見つかっていない。

魔法の互換性については、根本から違う為と思われる。
天にあると言われるエセリウスの概念が、この世界にはない。
魔法力ではなく精神力を用い、無くなったら気絶してしまう。
また完全な自己生成である為、エセリウスの加護が無くても、
魔法が使えるのだ。当然、タムリエルと全く違う術式の物を。
タムリエルの魔法とは生まれから違うのが理解できた。
また、始祖ブリミルが魔法を初めて使った存在らしい。
そして、精霊の力を使うと言われるものの、
詳細が一切分からない、エルフの先住魔法という物がある事が分かった。

おそらくルイズは、私の魔法をそれだと勘違いしたのだろう。
全く違う存在を既存の何かに無意識に置き換えてしまったようだ。
最も、これが案外タムリエルと同じ可能性も否定出来ないが――

そう思いながら、エルフについて書かれた文献を棚に戻した。
ニルンのどこかについては、やはりサッパリである。
タムリエル側でも、支配地域以外の事はあまり分かっていないのだ。
以前ギーシュに言ったように、タムリエルの外にある海「ムンダスの大海」。
そこは、ニルンとオブリビオンの境界線が非常に曖昧になる空間である。
ニルンとその他全てを合わせてムンダス界と呼ぶが、そこからこの海の名は取られたのだろう。
この海は、いくつか空間のゆがみがあるとされ、
そこからオブリビオンへと入る事もあると言われている。
そんな訳で、大洋に出ること自体オブリビオンの門に入る事と同じくらい危険なので、
滅多にタムリエル帝国以外の大陸や島々の事が、シロディールには伝わらない。
別段それで問題無かったから良いが、しかし今となっては大問題である。


デルフリンガーについては、喋る剣であるインテリジェンスソード。
その概念しか分かっていない。本人(本剣か?)は結構な長生きらしいが、
どうにも未だ喋る気配が無い。しかも、本気で忘れている節もある。
困る。非常に困る。もしかしたらタムリエルについて何か知っているかもしれないのに。
マーティンはそう思いつつ、やはり雷の魔法でショックでも与えてみようか。と、
後でちょっとしたショック療法を行う事にした。死なないから良いのだ。

『虚無』もやはり分からない物であった。
シュヴルージュ教諭から聞いた話は伊達でなく、完全にお手上げである。
せめて簡易呪文の一つでも残っていてくれたなら、
ルイズが虚無なのかどうかちゃんと調べることも出来たのだが。
そう思いながら棚に本を戻す。浮遊の呪文は使えないが、
遠くの物を動かす念動の呪文は使えるので、それなりに問題は無かった。

大体読み漁ったか。さて、どうしたものか。
そんな事を思って次にどの棚を調べるか考えていたところ、
彼は外が騒がしい事に気付いた。
外で大慌ての使用人を一人捕まえて聞いてみる。
ああ、実は。と、彼は丁寧に答えてくれた。
どうもこの国の姫様が来るらしい。
何でも予定が狂ってしまい、いつ来るのか分からないので、
準備がそれほど出来ておらず、
使用人どころか貴族様まで慌てているのです。
との事だった。呼び止めた事を謝って、
何か手伝えることは?と使用人に尋ねたところ、
ありがたい!とりあえずこちらへ、とマーティンは連れて行かれた。

マーティンはメイジでありながら、この国の大部分のそれの様に、
高慢な振る舞いをする訳でもなく、
かといって、どこかで平民を哀れだとか何とか思って、
見下している訳でも、無視する訳でもなく、気さくに話しかけたり、
暇だから、と情報が集まらない事によるちょっとしたストレス発散の、
気分転換に仕事を手伝ったりする。
貴族として平民とみだりに話したりしてはいけない、
という意識がハルケギニアではあるかもしれないが、しかし、
彼にしてみればそういうものなのか?と思ってしまうのだ。
シロディールの地方領主は大抵の市民となら平気で話をする。
自分の領内に住んでいる者や、旅の冒険家と世間話をしたりもしている。
そういう文化的な違いを理解してはいるが、
名前を覚えて親しくした方が、ここでやっかいになる以上、
何かあった時に分かりやすい。自分は司祭だと言っているから、
人を手助けしても文句はあるまい、そう思って彼らに協力している。

そんなわけで手伝いをするマーティンは、
学院の使用人からはある程度親しまれていた。
司祭になるまでの、下積み時代で培った雑用の経験は、
急な時の助けとしてはありがたがられてもいる。
とりあえず体も動かさないと。情報が少なく煮詰まりやすい。
働いて頭をスッキリさせよう。そう思いながら、使用人の後を付いていくマーティンだった。
この後結構な量の仕事が言い渡され、お昼のご飯が美味しくいただけるのであった。


ゲルマニアへの訪問からの帰り、アンリエッタは馬車の中にマザリーニ枢機卿と共にいた。
政治の話をする為に、マザリーニが彼女の馬車に乗ったのだが、
どうにも様子がおかしい。アンリエッタは小刻みに体を震わせている。
これでも馬車から顔を見せるときは、
王家として相応しい笑顔で周りに手を振るのだから、
大した物だとマザリーニは思った。

「あー…殿下?」

思い切り体を震わせる。とりあえず何かを隠しているのは明白だった。
マザリーニは肩をポンと叩き、優しく言った。

「吐いて楽になることもございます。どうかこの老僕めにお話下さいますよう、お願いいたします」

「な、ななな、何を言っているのかしら。枢機卿?そ、そんな事何も無いに決まってますわ」

声が震えていてまるで説得力がない。この姫が何を考えているのか?
何となくは分かる気がしないでもないが、しかしもしもの事がある。
丁寧にマザリーニは言った。

「アルビオン――」

また震えた。ああ、やはりか。

「アルビオンの貴族派につけ込まれる隙があるのですな?」

「いえ、いえ、何を言っているのかしら。有る訳ないでしょうそんな事。
ああ、可哀想なアルビオン王家。あんな恩知らずの貴族達に王族が処刑されるなんて」

必死だが、何か違う気がする。とりあえず、マザリーニは別の件で揺さぶってみることにした。

「全くですな。そういえば、一昨日から昨日辺りどこへ雲隠れを?女官の一人と共に消えて、皆大慌てだったのですぞ?」

ゲルマニアからの帰り、そのルート上にある館に家臣共々泊まっていたのだが、
一人の女官と共に姫が消え去り、館を貸していた貴族もろとも大慌てとなったのだ。
今日の朝フラリと帰ってきて、先ほどマザリーニに叱られたばかりである。
自重しろ。と暗に言っている。というかほぼ全員の従者から目で言われた。

「ええ、ええ、それは申し訳ありませんでした。しかし、ゲルマニアから帰ってきて、
ふと一人になりたかったのです。彼女にはそれを手伝ってもらいましたの」

こちらは、あまり問題無いらしい。女官も急な我が儘に苦労した事だろう。

「では、何故先ほどからそのように落ち着きが無いのですかな?殿下」

面倒なので確信を付いた。ビクッと大きく体を震わせて、彼女はため息を一つ吐く。

「その、ええと、ゲルマニアの皇帝との結婚の事で……」

この姫は、王族か乙女かと言えば乙女である。
つまり、同衾で寝てしまわなければならないのですね?そう言ってマザリーニを見る。
ああ、そういう事かと多少地雷を踏んでしまった気になりながらも、マザリーニは答えた。

「ええ、まぁ。世継ぎの件もありますし――そうなるでしょうな」


トリステインは年々国力を落としている。
隣国ゲルマニアの政策と、トリステインの王の不在が主な理由である。
ゲルマニアは、金さえ積めば誰でも貴族になれる国である。
それが例え平民であってもなれるので、ある程度の金と力があり、
野心に燃える若き平民は、こぞってゲルマニアへ行くのだ。
王家というカリスマが、この状態である今のトリステインでは、
それを止める手だてが無い。仕方ないのだ。

最も、それは上手い話に聞こえるように作られているだけであり、
実のところは、よそ者がなれたとしても殆ど領地の無い下級貴族が関の山。
まれに、地方領地まで買い取る元非貴族メイジもいない訳ではないが、
上級である大量の領地持ち貴族は、最初にゲルマニアを造った、
非聖戦派の血族しかなれない暗黙の了解がある。
ちなみに、救民法なんてない。失敗したら出戻るか、
隷属に近い形で働かされてお終いである。
しかし、嘘ではない。貴族には確かになれるのだ。
システム的には100人に1人なれるかどうか、
いや、もっと低いかもしれないが。

また、貴族に幻想を抱いている平民からしてみれば、
どれでも同じ様に見えるが、お金と友達の貴族と、
そうでない貴族に分かれる。平民はどう頑張っても、
友達でない側にしかなれないのだ。

さて、ゲルマニアが今最も欲しいものは何か?
それは即ち歴史である。
造られて比較的日が浅いゲルマニアは、歴史が無い。
始祖の名の下に造られた国でもなく、
間違いなく、金の為に諸侯の貴族達が造った国だからだ。
だからこそ、国力増強の為に他国が見れば浅ましい、
とすら思う事を平気で行っている。

今回、アルブレヒトがアンリエッタと結婚する代わりに、
軍事同盟を結ぶのは、自国とトリステインを、
いずれ同一化する腹づもりもあったからだ。
もちろん、自分の代では不可能だ。
自身の子の次か、その次。それにより歴史を得て、
尚更ゲルマニアは発展することだろう。という目算である。
ゲルマニアを、始祖の血統にすれば多少の問題があるかもしれないが、
その時にはアルブレヒトはいない。だから問題はない。
平民の貴族化をさせるかどうかは、その時の皇帝が決めればいいのだ。

マザリーニもそれらについては分かっているし、
トリステインを売り渡すとも言える行為をしている自覚もあるが、
しかし、他に解決案が思い浮かばなかったのだ。
結局の所、政治と言うのは目先の問題を解決するか、
または先延ばしにするのが常である。
ゲルマニアは今のところ解決できたが、
トリステインは、先延ばしにしか出来ない状況なのだ。
仕方ないのだ。そう心を鬼にして、マザリーニはアンリエッタを見る。
モジモジと指を動かしている。少々顔が赤くなっていた。

「初めては、その、痛いとか」

「あー…そういうのは私ではなく、女官達とお話下さい。変な事をお聞きして誠に申し訳ありませぬ。殿下」

やはり、この娘は王家ではなく、平民として生まれた方が幸せだったに違いない。
そう思いながら、後半から天然ながら話題をそらされたとも知らず、
マザリーニは自身の政策を心の中で彼女に詫びた。




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