あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-26


当麻が目を覚ました時、そこは既に王宮の中であった。
「ってもう着いたのかー」
失神していた為、時間の経過には鈍感であった。当麻はのんびりと周りを見渡す。
そこには、沢山の兵士達が自分達を囲んでいる。ついでに言うと、レイピアみたいな杖を持っており、いつでも戦闘準備完了のご様子。
(…………待て待てここは目的地のトリステインの王宮じゃないんですか!? それともあれですか、実はタバサさんには方向音痴属性が備わっているんですか!?)
口に出してしまったら殴られそうな雰囲気なので言わない。
当麻は困った。最後は不幸であったがとりあえずグッドエンドを迎えたはずだ。
なのに目が覚めるたら、夢オチと言わんばかりの超展開。とにかく、状況を把握しなければならない。
当麻は近くにいたルイズに話しかけようとした。
「なあルイ――――」
「杖を捨てろ!!」
しかし、向こうのいかにも隊長らしい顔付きの男の声によって掻き消された。
いきなりピンチフラグですかー!? と物語冒頭から自分の不幸を呪う当麻である。
そんなうなだれる当麻をよそに、他のみんなはむっとした表情に変わる。
下手をしたらそのまま戦闘に発展しそうな状況になるが、タバサがそれを回避する。
「宮廷」
たった二文字の言葉であるが、説得力は十分足りている。他のみなはしぶしぶ頷き、杖を地面にへと放り投げた。
一人当麻は、仲間ハズレされたかのように、あんぐりと口を開いて事の成り行きを見ている事しか出来なかった。
「今現在王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」
(待て、それならここはやっぱり目的地じゃねーか)
俺の心配はなんだったんだ!? と思うと、途端に疲れがのしかかってきた。
すると、ルイズがシルフィードから飛び降りて、毅然とした態度でそれに応える。
「わたしはラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。怪しいものじゃありません。姫殿下に取り次ぎ願いたいわ」
向こうの隊長が、ご自慢であろう口髭をひねってルイズを見つめる。本当かどうか判断しているからだ。
隊長はとりあえず掲げた杖を下ろす。
「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」

ルイズは胸をはって隊長の目をまっすぐに見つめた。当麻達には見えなかったが、その瞳の奥にある意思の強さははかりしえない。
その強さに隊長は以前に感じた記憶を思い出した。
「なるほど、見れば目元が母君にそっくりだ。して、要件を伺おうか?」
「それは言えません。密命なのです」とルイズは首を振った。
「では殿下に取り次ぐわけにはいかぬ。要件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」
困った口調で隊長は応える。
正直これじゃあ話にならない。このまま投獄エンドとかになってしまったら今までの展開が水の泡となってしまう。
「だったら密命の意味なくね? それともあれですか、あんたらに一言も言わずに姫様に報告しちゃうべきですかな?」
当麻は勢いでシルフィードから飛び降り、ルイズの横に並ぶ。
と、気付く。そういえば背中や腕の火傷はいつの間にか消えていた。誰かが治したのであろうか?
隊長は当麻の姿を見て、小さく舌打ちをした。見たこともない服装だし、鼻は低く、おまけに肌の色は黄色い。
どこの国からはわからないが、貴族ではないと確信を得た。
「無礼な平民だな。従者風情が貴族に話しかけるという法はない。黙っていろ」
ピキッ、と当麻のこめかみが動く。さすがにそのような態度をとられて黙っているわけがない。
「これは失礼。わたくし上条当麻は従者ではなく使い魔であります。して、使い魔が貴族に話しかけてはいけない法はございますかな?」
片膝を立ててかしこまったように喋る当麻に、隊長は言葉を詰まらせる。
確かに使い魔が貴族に話しかける法はない。しかし……
「貴様が使い魔であるとは限らないだろう?」
「この時点でわたくしはあなた様に話しかけないといけないのですが?」
今度は隊長のこめかみがぴくぴくと動く。ルイズは慌てて小声で、
「なにしてるのよ。相手を挑発してどーするのよ」
「向こうはどうあっても取り次いでくれない様子だしな。ていうかあの態度はどうかと思うぜ?」
「いいから、ワルドを倒したからって調子に乗らないの」
そういうわけじゃないんだが……、と当麻は返答に困った。
そんな中、隊長は二人のやりとりの中からある単語を頭に浮かべて目を丸くした。
ワルドとはあのグリフォン隊隊長のワルド子爵以外いないはず。そのワルドを倒しただと?
意味がわからない。
それでも、「ワルドに勝った」という言葉は確かに言った。それだけは間違いない。
隊長は警戒の為、再び杖を構えようとした時、
「ルイズ!」
驚きと嬉しさが込められた叫び声が中庭に響き渡った。
皆がその叫び主の方を向くと、鮮やかな紫色のマントとローブを羽織った人物――アンリエッタ王女がこちらに駆け寄って来た。
「姫さま!」
ルイズの顔が嬉しさ一杯に溢れ変えり、こちらもまた駆け寄る。
二人は、中庭にいる全員が見守る中、がしっと抱き合った。
「ああ、無事に帰ってきたのね。うれしいわ。ルイズ……」
「姫さま」
あまりの嬉しさに、ぽろりとルイズの目から涙が零れた。
「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
しかし、感激に浸っているままではなかった。ルイズはシャツの胸ポケットから手紙を見せた。
アンリエッタの表情が明るくなり、ルイズの手をかたく握り締めた。
「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
「もったいないお言葉です。姫さま」
アンリエッタはシルフィードに乗っている人達を見渡す。そこにウェールズの姿がいない事を知ると、顔を曇らせる。
「やはり……ウェールズさまは父王に殉じたのですね」
はい……、とルイズは顔を俯かせて小さく答えた。
「……して、ワルド子爵は? 姿が見えませんが。別行動をとっているのかしら? それとも……まさか……? いやあの子爵に限ってそんなはずは……」
アンリエッタがおろおろと焦る度に、ルイズは顔を曇らせる。おそらく、彼女の口からは出したくないのだ。そんな様子を見て、当麻が助け船を渡した。
「それ込みで報告したいのですが、ここじゃちょっと……」
アンリエッタはそういわれて、魔法衛士隊の面々がこちらを見つめている事に気付いた。

「彼らはわたくしの客人ですわ。隊長どの」
「さようですか」
アンリエッタに説明された隊長は、今までの態度とは一変、杖を収めて、隊員達を促し、この場から去っていった。
アンリエッタは、再びルイズの方を向くと、
「とにかくわたくしの部屋でお話しましょう。他のかたがたは別室でお休みになってください」

結局、アンリエッタの居間に入れられたのはルイズと当麻であった。
そこで、ルイズはアンリエッタにことの次第を説明し始めた。
もちろんワルドが裏切ってウェールズを殺害した事も、時間はかかったがはっきりと言った。
手紙は奪われずにこの手に取り戻せた。敵『レコン・キスタ』の野望はつまずき、こちらの任務は成功したのだが、
アンリエッタは悲しみの表情で一杯だった。
「あの子爵が裏切りものだったなんて……。まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて……」
アンリエッタは、ルイズから貰ったウェールズへの手紙を手に、自分の過ちに耐え切れないように涙を流した。
「姫さま……」
ルイズは、思わずアンリエッタの手を握った。
「わたくしが、ウェールズさまのお命を奪ったようなものだわ。裏切り者を使者に選ぶなんて、わたくしはなんということを……」
当麻はギリッと奥歯を噛み締める。あの場にいた自分らだったら守れたはずだった。もっと早くに気付いてさえすれば……
このままでは、アンリエッタはずっと後悔という重りを引っ張ってしまう。
当麻は少しでも楽にさせようと口を開いた。
「皇太子は、生きててもあの国に残るつもりでした。だから姫さまのせいではないです……」
「あの方はわたしの手紙をきちんと最後まで読んでくれたかしら? ねぇ、ルイズ」
ルイズは頷いた。
「はい、姫さま。間違いなくウェールズ皇太子は姫殿下の手紙をお読みになりました」
当麻は気付く。アンリエッタが何を思っているのかを。
「ならば、ウェールズさまはわたくしを愛しておられなかったのね」
アンリエッタは、寂しげに首を振った。その様子を見て、当麻は確信を得た。

ルイズも同じように感じたのか、アンリエッタに尋ねた。
「では、やはり……皇太子に亡命をお勧めになったのですね?」
悲しげに手紙を見つめたまま、アンリエッタは小さく頷いた。
「ええ。死んで欲しくなかったんだもの。愛していたのよ。わたくし」
ウェールズが言っていた言葉、「アンリエッタは私に亡命など勧めてはいない」と。それはやはり嘘であった。
それからアンリエッタは窓から見える景色を見ながら、ぽつりと呟いた。
「わたくしより、名誉の方が大事だったのかしら?」

「それは……違う」
当麻は知らず内に口から出てしまった。
当麻にはわかる。本当に、本当に誰かを愛している男と話した事がある当麻だからこそわかる。
ウェールズの、アンリエッタに対する愛は本物だったに違いないのだ。
アンリエッタは、ぼんやりと沈んだ目つきで当麻の方を見た。
「あの人は、反乱勢が攻め入る恰好の口実を与えたくなかったと思います」
「ウェールズさまが亡命しようがしまいが、攻めてくるときは攻めよせてくるでしょう。攻めぬときには沈黙を保つでしょう。個人の存在だけで、戦は発生するものではありませんわ」
「それでも」
当麻は知っている。同じように誰かを愛して、それを当麻に託した人。
きっとウェールズも迷っていたはずだ。なにせ、亡命すれば愛しているアンリエッタに再び会えるのだから。
だけど、ウェールズはアンリエッタを傷つけたくなかった。
アンリエッタのいるこの世界を壊したくなかった。
そんなわがままを叶える為に、自分の命を捨てたのだ。自分の命一つで守れるなら安いものだ、みたいな感じで。いや、実際そうであった。
そして、その望みを当麻は渡された。正確には違うのだが、実際問題あまり変わらない。
「それでも、たとえ僅かな時間でさえも平和に暮らせる世界を過ごして欲しいと願ったのですよ」
アンリエッタは何も言わなかった。ただ、再び視線を窓へと向けた。
当麻は、ウェールズに頼まれた事の一つを果たそうと、続けた。
「勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと。そう伝えてくれといってました」
「勇敢に戦い、勇敢に死んでいった……」
小さく復唱し、アンリエッタは寂しそうに微笑んだ。
その表情を当麻は知っている。かつて、一人の白い少女が自分に向けた表情。それがどれだけ苦しいのかも。
「殿方の特権ですわね。残された女はどうすればよいのでしょうか」
悲しげに聞かれた質問に、当麻は答えられなかった。
これだけは、何も言えない。そんな自分が悔しいのか、当麻は強く拳を握るしかなかった。
「姫さま……。わたくしがもっと強く、ウェールズ皇太子を説得していれば……」
自分の行為に後悔するルイズの両手を、アンリエッタは握り、胸元へと持っていく。
「いいのよルイズ。あなたはちゃんとお役目どおり、手紙を取り戻したのだから。それにわたくしは亡命を勧めて欲しいなんて、あなたに言ったわけではないですから」
でも……、と何かいいたげなルイズに、アンリエッタはにっこりと笑った。
「わたくしの婚姻を妨げようとする暗躍は未然に防がれたのです。わが国はゲルマニアと無事同盟を結ぶことができるでしょう。
 使い魔さんの言ったとおり、危機は去り、平和な時間に戻ったのですよ。ルイズ・フランソワーズ」
アンリエッタは無理矢理にでも明るい声を出した。いつまでも落ち込んではいけないと考えたのだろう。
その後、ワンテンポ置いて、ルイズはポケットから水のルビーを取り出した。
「姫さま、これをお返しします」
すると、アンリエッタは首を振った。
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」
アンリエッタの言葉に折れたのか、ルイズは頷くとそれを指にはめた。

そういえば、と当麻は思い出す。何かアンリエッタに渡そうと思って、ウェールズの指から抜き取った指輪の事を。
ズボンのポケットに入ったそれを取り出す(もちろん左手で)と、アンリエッタに渡した。
「これ、ウェールズ皇太子がせめてものと思って、預かってました」
目を大きく見開いたアンリエッタは、ただ当麻を見つめる。
「これは、風のルビーではありませんか。ウェールズ皇太子から預かってきたのですか?」
ええ、と当麻は呟く。
嘘ではあったが、この場ではこういった方が王女の為だな……、と思ったからだ。
アンリエッタは早速風のルビーを指に通した。ウェールズがはめていたものなので、アンリエッタの指にはゆるゆるだった。
しかし、小さく呪文を紡ぐと、あっという間に指輪のリングの部分がぴたりとおさまった。
アンリエッタは、風のルビーを愛おしそうになでた。そして、当麻にはにかんだような笑みを向ける。
「ありがとうございます。優しい使い魔さん」
当麻っす。と伝えて、アンリエッタは言い直してくれた。
その笑みを、当麻は『強い』と感じる。まだウェールズの事を引きずってはいるが、優しく、全てを包んでくれるようなイメージを持てた。
「あの人は、勇敢に死んでいったと。そう言われましたね?」
はい、当麻は頷く。アンリエッタは、指に光る風のルビーを見ながら、何かに決意したかのように顔をあげた。
「ならばわたくしは……、勇敢に生きてみようと思います」

「ねえ、結局どんな任務だったの? それにあの子爵が裏切り者だっていうし、ホントワケわかんないわ」
王宮から魔法学院に戻っている間、ルイズは誰とも喋ろうとはしなかった。
もっとも、タバサはいつも通り無口で、ギーシュは薔薇の杖を弄って遠くを見つめている。
なので、騒いでいるのはキュルケだけであった。
キュルケは一体何があったのか、と二人に何回も聞いてきたが、ルイズは無視して当麻は曖昧な返事を返すだけ。
キュルケは諦めきれないのか、ギーシュをターゲットに変える。
「ねえギーシュ」
「なんだね?」
薔薇の杖を口にくわえて、ぼけっと物思いに耽っていたギーシュが振り向いた。
「あなた、アンリエッタ姫殿下があたしたちに取り戻せと命じた手紙の内容を知っているでしょ?」
ギーシュは目をつむって、首を振った。
「そこまではぼくも知らないよ。知っているのはルイズだけだ」
「ゼロのルイズ! なんであたしには教えてくれないの! ねえタバサ! あなたどう思う? なんかとっても、バカにされてる気がするわ!」
キュルケはのんびりと本を読んでいるタバサを揺さぶった。タバサは嫌がりもせず、なすがままにガクガクと首が上下左右に動く。
そんな風にキュルケが暴れたおかげで、バランスを崩した風竜はがくんと高度を落とした。
「ぎぃやぁぁぁあああああ」
その拍子に、ギーシュはバランスを崩して空へと放り出された。
しかし、ギーシュなのだろうか誰ひとり助けようとはしない。当麻も、俺より不幸じゃね? と思ってしまう程。
ギーシュは慌てて『レビテーション』を唱えて宙浮かぶ。どうやら命は助かったようだ。寿命に関してはわからないが……
ルイズもバランスを崩したが、その事に気付いた当麻がそっと支えてあげた。当麻の手の感触がルイズの頬を赤く染める。

(……なんでだろう。どうしてこんなにもドキドキするの?)
好きという簡単な結論をルイズは振りほどく。
貴族でもない使い魔なんかに恋心を抱くなんて想像したことすらない。ゆえにこの気持ちがわからぬまま過ごさなければならない。
結局、どうすればわからず、とりあえず怒ったような口調で言った。
「き、気安く触らないでよ」
「ん? ああ、悪い悪い落ちそうだったからさ」
当麻は慌ててルイズから手を離した。
「そ、そんなことないもん。わたしが落ちるわけないじゃないの」
ふんっという擬音が似合うような仕種で当麻から顔を背ける。しかし、怒っているようには見えない。
「おまけになんだかなれなれしいし。失礼しちゃうわ。ホントに、ホントに」
ルイズはぶつぶつ文句を言いながらも、体を当麻に預けるように寄り添ってくる。
(これは一体何ですか!? 新手のトラップかー!?)
一方の当麻は、普段のルイズからは考えられない行動に驚きを隠せない。
すると、キュルケが当麻達の方に振り向くと、まぁ、と片手を口に当てて呟く。
「いつの間にできてたの? あなたたち。そういえばダーリンが失神してた時必死に――」
ルイズは、キュルケにこれ以上話させまいと大声をあげて、当麻を突き飛ばした。
「できてなんかないわよ! ばかじゃないかしら!」
「うぉい! 死ぬ、死ぬって! 俺には魔法効かないから落ちたら死ぬんだぞ!?」
ひゃー、と悲鳴をあげながらも、なんとか翼にしがみつく当麻であった。


とある魔術の使い魔と主 第三部


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