あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ロリカードとギャンブラー-2






 アーカードは個室へと通された。
小めのテーブルと二つの椅子、そして大きな棚がいくつも並んでいる簡素な部屋。
しかしそれら全てがシンプルながら、高価な物であることが素人目にもわかる。
特別なギャンブル、それは単純に賭け金の上限が無いということであった。
元々レートの高いカジノであったが、それでも賭け金には限度がある。
その限界が取っ払われ、よりスリリングなゲームが出来るという計らいであった。

 トーマスは棚からいくつものギャンブルの名称が羅列された紙を取り出すと、アーカードに渡す。
「そちらがリストになります。一応簡単な説明も書かれておりますが、ご要望があれば詳しく説明致します」
アーカードは椅子に座り、足を組む。ずらっと文字が並べられたリストに目を通した。


「トーマスと言ったか・・・・・・マルグリットお嬢さまとは知り合いらしいの」
リストを眺めながら、アーカードは繋ぎに話を振る。
「えぇ、昔私の父がコック長をしておりまして。まだ若かった私はお遊び相手をしておりました」
(ルイズとアンリエッタのような関係に少し似てる・・・・・・か)
幼少時の男と女、淡いロマンスくらいあってもおかしくはない。
だが今のタバサを見る限り、そういうことは特に無さそうであった。

「なぜシャルロット・・・・・・いえ、マルグリットお嬢さまは何故お帰りいただけなかったのでしょうか」
「これ以上は勝てないと?」
「そうです・・・・・・これ以上は決して勝てないのです。ですから――――――」
「かつての恩義からわざわざ小切手にして、帰るよう進言したと」
トーマスは目を細め、納得いかないという顔をしている。

「はい、ギルモア様が相手をする以上は・・・・・・絶対に勝てる筈がないのです」
「イカサマでもやっているのか?」
リストをテーブルに置く、トーマスを射抜くように見つめながらアーカードは聞く。
「・・・・・・私からは何も申し上げられません」
トーマスは目を瞑り、やや澄ました顔で黙する。

「マルグリットお嬢様だけでなく、私もお前には勝てない(・・・・・・・・・・)か?」
ギルモアがタバサを相手に巻き上げようとしているならば、同じように稼いでいる自分も標的にされておかしくはない。
「いえ、そのようなことは・・・・・・。ここはあらゆるギャンブルを楽しんでいただく為のものですので」
「左様か」
この部屋には二人しかいない。
よって合図を出せる者はいないし、細工出来るようなテーブルにも見えない。
リストを見る限り相当な量のギャンブル、これら全てにイカサマを用意しておくとも思えない。
それにそもそもギャンブルを続けるかやめるかは、いつでも客の自由となっている。
恐らく客から金をふんだくるのは、ギルモアの役目となってるのだろう。


 アーカードはフッと笑う。
「我々は、勝ち負けにはさほどこだわってない」
「単に、楽しむ為だと・・・・・・?」
アーカードはうんうんと頷く。任務を決して悟られないよう、顔にも声色にも一切油断は見せない。
トーマスは腑に落ちないといった表情を浮かべていたが、すぐに営業用の笑みをつくった。

「・・・・・ご希望のギャンブルはございましたか?」
「そっちも見て構わんか?」
アーカードはそう言って、ギャンブル道具が収納されている棚を指差す。
イカサマが仕込まれている可能性を考えれば当然の申し出。
これを断るのであれば、不正をしていることを念頭に置かなければならぬだろう。

「えぇ、どうぞ。ゆっくりお選び下さい」
あっさりとした答えが返ってきて、少しばかり拍子抜ける。
アーカードは整然と棚に並んでいるいくつもの道具を、一つ一つ手にとって見ていく。
素人目にはわからないかも知れない。しかしこうも簡単にイカサマ道具を触らせるとも思えない。

(本当に純粋なVIP専用の遊戯部屋なのかも知れんな・・・・・・)
リストと照らし合わせながら、アーカードは道具を調べる。
一通り見ていっても特におかしなところは見当たらない。


「お決まりになりましたか?」
あらかたを調べ終えて、座ったアーカードにトーマスがたずねる。
「・・・・・・そうだな、チンチロリン」
そういえばサイコロを使用したギャンブルはやっていない。
タバサが既に大勝ちをしまくっていたので、特にやろうと思わなかった。
「かしこまりました」
トーマスは棚から丼とサイコロを取り出してくる。

 『チンチロリン』。
サイコロを三つドンブリに投げ込み、その出た目で勝ちが決まる博打。
賭け金は青天井。親は交代制だが、金額は常に客が決められるようになっている。
出目の倍率は通常の勝ちで一倍、123は二倍払い、456は二倍。
1のアラシ、即ちピンゾロは五倍。それ以外アラシは一律三倍であった。


 ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・
これでもう何回目の張りになるのか、トータルするとかなり負けていた。
たった今も結構な額を張り、負けてしまった。
(条件は対等の筈、だのにこれほど負けるのは・・・・・・)

 単に運で負けているとは思えない。
やはり何らかのイカサマをやっている可能性がある。

 最初にやったルーレットを思い出す。
負けが少々露骨だった上に、ディーラーのふとした吐息のおかげであの時は気付けた。
だが、今はどうだ?トーマスのポーカーフェイスは完璧で、表情から感情は読み取れない。
話術にも長けていて、客を飽きさせない。今までやってきて、別段不自然なことも感じられなかった。
純粋にギャンブルに興じることが出来ている。それだけトーマスの客を楽しませる術が優れているのだ。

(イカサマをやっているとすれば、美事なものよ・・・・・・)
他のギャンブルをやっていた時も、似たような状況はあった。
ここから持ち直して勝てる可能性も当然有るかもしれない、だが――――――。

(確認してみる価値はあろう喃)
このカジノがイカサマをやっていることを知っているという前提。
そしてチンチロリンのルール上、互いに五分の筈の条件。
その上でトータルでかなり負けが込んできている故にこそ抱けた疑念。

(さて、どう引き出したものか・・・・・・)
恐らくは要所要所をきちんと抑えて、トーマスは勝っているのだろう。

(看破できるタイプのイカサマだったらいいが、ルーレットの時のように技術とかだったら困りものだな・・・・・・)
技術であれば、そこに確証を見出すことは出来ない。
相手より強い目を出すというチンチロリンのルールでは、ルーレットの時のような相手の技術を利用した大勝ちも不可能。


 親はトーマス、アーカードはまず軽く張った。
今まで気付かれず何かをやっているとするなら、トーマスは相当なやり手である。
二回連続で勝負に出れば、必ず訝しむに決まっている。
まずはさっきまでと同様、普通に張って頃合を見る。
大きく張って誘導し、イカサマを使わせるのはその後だ。

 何回か続けてアーカードの親番となりさらに続く。
賭け金は常に客側が自由に決められるので、いよいよ大きく張った。
今アーカードがやや勝ちしている流れ、くるとすればそろそろと踏んでのことだ。
「では振らせてもらおう」

 ドンブリにサイコロを放り込む。2、5、2、出た目は五だ。
「なかなかの目でございますね」
トーマスの言葉に黙ったまま、サイコロの入ったドンブリを自分の手元まで引き寄せる。

 ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・
「アーカード様は一体どのような功績で若くしてシュヴァリエに?」
そう言いながらトーマスはサイコロを振る。
「ん・・・・・・とある元メイジの盗賊を捕まえてな」
「元メイジの盗賊を?ですか」

 その時、アーカードに電流走る――――――!

 アーカードは、受け答えするのを一瞬忘れそうになる。
しかし何とか動揺も見せることなく、「あぁそうだ」と肯定した。
そしてサイコロの回転が止まる。出た目は5、5、5、ゴゾロ。三倍づけであった。
「アーカード様は五、私は五のアラシですので私の勝ちでございますね」

 ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・
「何という名の盗賊を捕まえたのですか?」
「・・・・・・いや、言うほどのことでもない」
「謙虚なのですね」
トーマスは会話を続けながらチップを計算し、ゆっくりとサイコロを拾った。


 アーカードは、この一回に限っては神経を集中させていた。
トーマスの表情、呼吸、手の動きはもとより心理的動きまで。
そして――――――サイコロと、その回転。
ようやく気付けた小さな綻び。トーマスによって、一つ一つ丁寧に組み立てられた勝ちへの仕組み。
見たのはほんの数秒であるが、吸血鬼の目だからこそ捉えられた――――――そのカラクリ。

(なるほどなァ・・・・・・むかつくが、感心せざるをえまい)
技術でなかったのは幸いした、だがそれは明らかな"イカサマ"。
本来であれば"そのこと"をすぐさま言及し、不正を理由に追い込むところであろう。

(だが・・・・・・許してやろうじゃないか、その寛容な精神で・・・・・・!)

 アーカードは表情に出さず、心の中だけでこれ以上ない邪悪な笑みを浮かべた。
そう、そんなことでは面白くない。別に金が欲しいわけではないのだから。


「では続けて、私の親でございますね」
続いてアーカードが賭け金を決める、またも大きく賭けた。
トーマスは特に反応を見せず、サイコロを振った。一回目は目なし、二回目で出た目は四。
さすがに連続でイカサマを仕掛けてくることはなかった。

 だが関係なかった、仮にイカサマをしていても(・・・・・・・・・・)最早何の問題にもならないのだ。
そして次にアーカードが振った。出た目は、1、1、1、ピンゾロ五倍づけ・・・・・・!

 ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・
「なんと、なかなかやりますねアーカード様」
先ほどの負け分を取り返して余りある。トーマスはポーカーフェイスを崩さない。
博打なのだから確率的にもあって当たり前。驚くほどのことでもない。

「私の親番・・・・・・だな」
アーカードが唇の端をあげる。
「残った全てのチップを賭けようか」
そう言ってもトーマスの表情は微塵にも動かない。

「全てですか・・・・・・先ほど勝った分を含めて6200エキュー分のチップですね。
 負けてしまいましたら終了となりますが・・・・・・よろしいのですか?」

(ほォ・・・・・・微塵にも感情がブレずに平静を保つか、よく訓練されてることだ)
アーカードは残ったチップを全て積む。
「構わん、全てだ」
「・・・・・・かしこまりました」


 トーマスに手番が回ってくる事はなかった。
何故なら親となったアーカードが出した目が、またもピンゾロだったからだ。
6200エキューの5倍づけ、即ち31000エキュー分のチップに一気に膨れ上がる。
「なっ・・・・・・!!」
驚愕の声を漏らすが、それでもトーマスは表情を崩さない。
心底筋金入りのポーカーフェイスであった。

「おやおや・・・・・・なんという豪運か。明日にでも私は死んでしまうかも知れんな」
死ぬ筈のないアーカードはそう言って笑う。
「そうそう、この時点で私の勝ちは確定だが・・・・・・トーマス、お前も振ってよいぞ?」
そう言って、アーカードは全てを悟り見透かしてるという表情で言葉を続ける。

「ただこの私と引き分ける(・・・・・)には、お前も己が"運"に頼らざるをえまいがの」

 その言葉でようやくトーマスの目が見開かれる。
「くっくっく・・・・・・ようやくお前のいい顔が見れたな。目には目を、外法には外法を、イカサマにはイカサマだ」
トーマスはアーカードの言う事に、さらに驚きを禁じえない様子であった。
確率ではなく・・・・・・なるべくしてなった結果、負けるべくして負けたのだと。

「ミス・ディレクションのおかげで全然気付けなかったよ。まさか"ジゴロ賽"とはな」
「全て・・・・・・お見通しというわけですか」
トーマスは大きく息を吐き、観念したように呟いた。


「マルグリットお嬢さま・・・・・・シャルロットさまが幼き頃、得意の手品を使って楽しんでいただいておりました」
トーマスは郷愁の入り混じった笑顔を浮かべる。
「なるほど。ミス・ディレクションも、すりかえに必要な器用な指先も、お得意だったわけか」
トーマスが「えぇ」と頷き肯定する。

「しかしよく出来た賽だ、一方向から見たらなんの矛盾もないのだから」
アーカードはジゴロ賽を手に取って、コロコロと弄ぶ。
4と5と6の目しかないサイコロ。1と2と3はなく、振れば必ず何らかの目が出るという優れもの。

「私ならば例え回転していたところで、その様子を見てさえいれば、ジゴロ賽を見抜くことなど造作もなかった。
 普通の人間じゃ、コレが回転していても見極められよう筈がないが・・・・・・念には念をか。
 違和感を覚えた客が、サイコロを改めるということくらいはあるかも知れんしな。
 それをミス・ディレクション、巧みな話術で以て意識をそらすことで、決して気付かせない。
 ほんに大したものだよ。当然乱用などせずに、ここぞという時にしか使わず・・・・・・。
 勝負所では必ず会話を途切れさせることなく、さらには質問で受け答えをさせるようにしていた。視線を自分に向けさせて、悟られぬことのないように。
 三回あるサイコロを振るチャンスも最大限利用し、最も効果的なタイミングを狙い、目が出た後も決して焦らず会話を続けてチップを計算。
 自然な流れを保ちつつ、何気なくサイコロを回収する。本当に美事な手際だ、物的証拠であるイカ賽など真っ先に回収したくなるのが人の心理だというのにな」

 トーマスの顔が少し険しくなった。
「回転している賽を見抜いたのですか・・・・・・?」
「そうだ。回転する賽を見極めるのも、狙った出目を出すことも、私には造作もない。何てことのない芸当よ」
本来であれば吸血鬼の能力にあかせた行為は慎むべきこと。しかし相手がイカサマをやっているのなら別であった。

私は(・・)最初から楽しみに来たと言っているのに、余計な不正をするから大負けするハメになるのだよ」


「・・・・・・ルーレット担当から話は聞き及んでおりました。黒髪の幼い少女に"喰われた"と、タダモノではないと。
 しかしまさかこれほどとは・・・・・・完全に私の負けです。そして文句なく貴方様の勝利です、アーカード様」

 トーマスは深く頭を下げた。

「その礼は誠意のつもりか?私に誠意を見せたいなら焼き土下座くらいしてもらわんと」
「焼き・・・・・・土下座?それは一体どのような・・・・・・良い印象はありませんが、私に出来ることであれば――――――」

「ククッ、焼き土下座は冗談さ。器具も無いしの。それにはっきり言えば、心底感心したよ。ルーレット担当の奴とは別のベクトルでな」
アーカードは足を組み直して腕を組む。

「丁寧に積み重ねられたロジック。お前はそれを一切崩さず、さらに揺るぎないものに昇華させた。技術・話術・判断それら全てが高次元でまとまっていた。
 ルールで五ゾロ、六ゾロあたりを最高の役、安易に最高倍率にせず一番強い目をピンゾロにする配慮、これも素晴らしい。
 そうしておけば印象がぼける・・・・・・勝つには勝つがそう奇跡的ってわけでもない印象、演出になる。・・・・・・それと、イカサマ行為については別に咎める気はない」

 アーカードは一拍置いてから続ける。
「私は私で少々"失敬"させてもらったからな」
「はぁ・・・・・・」

「ところで一つ聞きたいのだが、リストにあったギャンブルから私は無作為にチンチロリンを選んだ。
 マジシャンズ・セレクトはされてない筈だが・・・・・・リストに書いてある全てのギャンブルにイカサマが用意してあったのか?」

「全てがイカサマというわけではありません、私の技術を応用したものもあります。ですがどれを選んでも勝敗を調整する事が可能です」
「ふむ、道具も私なりに調べた筈だが・・・・・・イカ賽など見当たらなかったようだが?」
「実は収納棚には隠しスペースがあるのです。小物であればそこにしまえるようになっています」

「なるほど合点がいった。つまるところ、やはりここは儲けた客から搾取する為の特別室ということか」
「ええまぁ、噛み砕いて言えば・・・・・・そうなります」

 アーカードはゆっくりと立ち上がって、大きく伸びをした。
なんだかんだで結構長引いてしまった、そろそろタバサの様子も見ておきたい。
勝つにせよ負けるにせよ、決着がついていてもおかしくない時間だ。

「とりあえずゲームは終了だ、マルグリットお嬢さまのところへ行きたい」
トーマスは少し考える。ギルモアに言われてアーカードのチップを毟り取る筈だったが失敗。
イカサマがバレてしまった以上、続けられる理由もなし。なによりもうアーカードに勝てる気がしなかった。
最早自分が止められる理由はない。

「かしこまりました、チップの方はいかがいたしますか?」
「そのまま持ってきてくれ」

 アーカードとトーマスは、共にタバサの元へと向かった。


 ギルモアとタバサの一騎討ちギャンブルが行われていた場所は厨房であった。
今日二回目のギルモアが出張ってきた大勝負なので野次馬もかなりいる。

「これは始祖の思し召しということになるのでしょうかな」
高貴なる風は、唯一高貴なる炎に負ける。タバサは大敗を喫していた。

 『サンク』、ポーカーと似たゲームでトランプではなくこの世界のカードを使う。
風のロワイヤル・ラファル・アヴェニュー。最高に近い役を二人とも引いた勝負。
タバサが自力で出したにせよイカサマで出したにせよ、その役に対してさらに僅差で上回る役で勝つとは。
あまりに露骨。しかしそれだけ露骨なのにも拘わらず、タバサはイカサマを見抜けていないようだった。

 タバサは今ので全てのチップをすってしまったようで、ド・サリヴァン家の名前で金を借りるかを打診されている。
タバサは当然その打診を断る。あくまで偽名であるので、好き勝手にそんな真似は出来ない。
俄かに肩が震えているのが遠めから見て取れた。イカサマを見抜けず、憤懣やるかたないといったところか。
「お嬢さま、こういうのはどうです?お金がないなら、服を賭けては――――――」
ギルモアは下世話な提案を持ちかける。とにかく貴族を扱き下ろしたくてしょうがないと言った感じである。

「その必要はない」
アーカードは高らかに言った、すぐにその場を割って入っていく。
タバサ、ギルモア、野次馬達、皆の視線がアーカード一点にそそがれた。

 ギルモアはアーカードの後ろにいるトーマスの姿を捉えて顔が歪んだ。
大量のチップを持って控えている。ということは、つまり負けたということだ。

「交代だ」
アーカードはタバサの肩に手を置く。顔を上げたタバサの目には信念が浮かんでいた。
イカサマを絶対に見つけてやる・・・・・・と。しかしアーカードはそれを軽くあしらう。
既にチップはなく服を賭けようとしている、これ以上やってもほぼ無駄だろう。金を貸してやってもいいが、それは甘えというものだ。
それに自分もギルモアのイカサマを看破してみたい。そのカラクリが一体どれほどのものであるのか知りたい。
感情を殆ど表に出さないタバサであるが、それでも精一杯悔しそうな顔をし、仕方なくアーカードと交代する。


 チップを置いたトーマスは、ギルモアに睨みつけられる。トーマスはただただ黙って頭を下げていた。
ドンッと積み上げられた大量のチップ。軽く見積もっても3万エキューくらいあるのではないか?
ギルモアは心の奥底で笑う、結局頼れるのは自分自身だけということか。
トーマスも案外役に立たない男だ。いや、この黒髪の少女アーカードが凄まじいのか。
いずれにしても・・・・・・己のイカサマが見破られることなどありはしない。

 アーカードが騒いでいないところを見ると、イカサマは恐らく看破されていないのだろう。
仮にバレたとしても問題ないよう、二人だけの個室を用意してあるのだ。
いざとなったら知らぬ存ぜぬで通せるように。

「これは、アーカード様。随分とお稼ぎになったようですね」
「はっはっは、なんだか一生分の運を使ったかのような馬鹿勝ちだよ」
主人の敵討ちか、トーマスが上手く誘導したのか、この際どちらでもいい。
勝負の席についてくれたということが重要だ。サンクで自分が負けることなど無いのだから。

「ルールの方は大丈夫ですかな?」
「問題ない、他のテーブルで一度やったからの」
ギルモアとアーカードは互いに笑みを浮かべあい、勝負は始まった。


 なるほど、とんでもない負けっぷり。
あっという間に1万エキューほどのチップをすってしまった。
だがトーマスとはまるで役者が違う、ギルモアは大根もいいところであった。
貴族を扱き下ろす事に充足感を得ているのか、何かと鼻につく言動も目立つ。

 ひたすら技術を練磨し、狙った場所に落とすコントロールを得たルーレットのディーラー。
一つ一つを洗練し積み上げ、一分の隙も見せずに常に冷静沈着であったトーマス。
そんな二人とは比べるべくもない。

 ギルモアは表情も言動も素人のそれであり、実に滑稽極まりない。
だが逆に言えば、こんな愚鈍でもバレないイカサマ。絶対の自信を持ったカラクリを用意しているのだ。
事実、今までの貴族は誰一人見抜けず金を巻き上げられた。タバサですら為す術なく負けてしまった。
己も1万エキューもすったものの、まだ突破口どころか糸口すら見えてこない。

 カードを切るのは常に客側。吸血鬼の目でもって鋭く観察していたが、ギルモアがカードをすりかえている様子はなかった。
ここはタバサが無作為に選んだ厨房、実際に見ていておかしな点はないしテーブルにイカサマはないだろう。
タバサの最後の勝負の時に野次馬を注視していたが、怪しい動きをしている奴もいなかった。

(やはり、カードそのものに細工がしてある可能性が一番高いか・・・・・・)
カードを変えるように言って、イカサマを封じ込めるのも面白いかもしれない。
勝負に勝つという目的であったなら、当然実行すべき対策である。
だがそれでは本来の任務からはずれてしまう。チップを稼ぐのではなく、イカサマを暴くのが目的なのだ。

(まっ・・・・・・看破出来ないなら出来ないで、やり方というものがあるさ)


「いやはや、随分と負けてしまったなあ」
「いえいえ、これからでございますよ。まだ2万エキューほどは残っているではないですか」
白々しいギルモアの態度に、アーカードはケラケラと愉快に笑って合わせる。
これから一体どのような表情を見せてくれるのか、すこぶる楽しみだ。

「そうそう、一つ提案があるんだが」
「なんでしょう?」
「一度だけでいい、私が親をやりたい。無論、賭け金はそっちがご自由に決めてくれて構わん」
ギルモアの眉間に皺が寄る。
「・・・・・・構いませんよ」
「ぉお!そうかそうか、ありがとう」

 ギルモアは受ける。今までにもイカサマを疑って、この手の提案を持ちかけてきた奴は何人もいた。
役を自由に操作できる自分が、たまたま相手に強い役が揃って負ける可能性は限りなく低い。
だが可能性が0ではない以上、親は必ず自分がやる必要性がある。しかし無下に断っては相手はさらに疑いを深めるだろう。

 しかしこういうケースの場合は賭け金を吹っかけるのを仄めかすだけで、相手が撤回することをギルモアは経験から知っていた。
後から際限なく上乗せしてやったっていい、そうすれば勝手に降りてくれる。
所詮は根拠なく、こちらのイカサマを疑ってる状態に過ぎない。だからこちらが強気に出れば間違いなく迷う。
イカサマをやってるという確信もないのに、見破れる保証もないのに。
負けるとわかっているのに、大金を賭けて勝負に出るのは愚者だけだ。


「そうですな・・・・・・では1万エキュー分ほど、最初から賭けさせていただきますがよろしいですかな?
 仮にアーカード様が負けたとしてもまだ1万も残りますし。なかなかのスリルでございましょう。
 勿論カード次第ではさらなる上乗せも構いませんよ。仮に残った1万エキュー分のチップ全て上乗せしても私は勝負に応じます」

「ふ~む・・・・・・」
少女は迷っている、ギルモアはほくそ笑んだ。これは勝負から降りる反応だ。
今までの相手となんら変わらない、そう思った直後だった。

「オーケー、少々きついが受けよう。元は私が言い出したことだ」
アーカードはそう答えると――――その動きは躊躇いなく――――チップの半分を積んだ。
これは流石にギルモアも予想外であった。
だが元々2万エキューもあるのだから、半分くらい大丈夫と考えているのかもしれない。

 ギルモアは考える、このまま勝負を進めてしまってよいのか?
確率的に考えれば低いが、相手が親である以上カードを開くのは子である自分から。
1万エキュー分も賭けた手前、万が一にも負ければ大損失である。
どうやってこの話をなかったことにしようかと考えてると、すかさずアーカードはそれを急かしてきた。

「さっ、カードを切ってくれ」
(くっ・・・・・・)
既にアーカードはチップを積み、客達も盛り上がってる。
もはや引くに引けない状況、ここまできたらもう諦めるしかなかった。

「いえいえ、カードを切るのは常にお客様にお願いしております」
ギルモアは一息ついて、笑顔を浮かべるとそう言った。

「今まで子であった私がカードを切っていた。だが今回だけは私が親、カードを切るのも逆でいいさ」
ギルモアの心に猜疑心が生まれる。一体何を考えているのだろう。
なにか思惑があるのか?単に気まぐれなのか?だがすぐに思考を停止する。
なんだって構わない。勝てばいいのだ、ただそれだけのことだ。


「・・・・・・では、失礼して」
ギルモアはカードを切り、それぞれにカードが配られる。
「チェンジしなくてよろしいのですか?」

 ギルモアはアーカードに問い掛ける。一発で役が揃うことなどなかなかない。
自由に役を操作するギルモアですら、余計な疑いをかけられぬよう一応形だけチェンジをおこなう。
しかしアーカードはちらっと覗いただけで、カードを置いてしまった。

「構わんよ、このままで」
ギルモアは手の平に汗が滲んでいるのがわかった。妙な重圧が体全体にのしかかる。
賭け金は1万エキューだ、負けるわけにはいかない。
相手は大層な自信。確率は低いがかなりの役が揃ったのかもしれない。

 上乗せは互いになし。ギルモアはかなり迷ったが、ラファル・アヴェニューの役で勝負する。
「今日の私は、なんと幸運に恵まれているのでしょうか」
カードが開かれ周囲が沸くと同時に、アーカードは笑い声をあげた。

「ははははッははははははは!!」
ギルモアは眉を顰めてアーカードを見つめる。
「なっ・・・何がおかしいのですか?」
他の客が大勢いる中、その視線をものともせずに、何度も強い役ばかりを提示するとは浅はか過ぎる。
自分が親でないとはいえ、先にカードを提示しなくちゃいけないとはいえ、ここまであからさまだと笑うしかなかった。
そうやって繰り返して広まった風評がどのような結果をもたらすのか、そこまで考えが至らないのかこの阿呆は。

「いやなに・・・・・・なんでもない、失礼した。では、こちらもカードを開こうか」


 次いでアーカードが笑いの余韻を残したままゆっくりと開くと、野次馬から一層大きな歓声があがった。
「風のロワイヤル・ラファル・アヴェニュー、私の勝ちだな」
「ばっ・・・・・・馬鹿なッ!?」
「馬鹿な?おかしな事を言うな」
思わず口走ってしまったことに、はっとしてギルモアは口をつぐんだ。
「これ以上ない理想的な・・・・・・お嬢様の敵討ちになったかな」
タバサが負けた高貴なる風の役で勝ち返す、痛快なことこの上なかった。

 ギルモアはトーマスに視線を送る。
トーマスは首を静かに、少しだけ横に振った。ということはアーカードが、何か不自然なことをした様子がなかったということ。
しかもカードをチェンジしていない。一発でロワイヤル・ラファル・アヴェニューが揃うなんて、どのような確率になるというのか。
カラクリの種である『エコー』が裏切った?しかしそれは考えにくい、理由もない。

(こうも都合よく一度で高貴なる風の役が出るだと・・・・・・!?イカサマか!?だがカードを切ったのは私だ、すり替えたのだとしたら一体いつ!?)
「さて、元に戻って私が子だな」
ギルモアが疑念と思考の袋小路に嵌まっている中、アーカードは追い討ちをかけるように続ける。

「・・・・・・では賭けさせてもらおうか、先ほどの勝ち分を含めたチップ全てを」
「はァっ!?な・・・・・・なんだってー!!」
周囲がこれ以上なく沸いた。もはや流れは完全にアーカードにあった。

 ギルモアから汗がとめどもなく流れ始める。
ここにきて全額だと?カード見て上乗せするわけじゃなく、配る前から全額!?わけがわからない。
「どうした?顔色が悪いようだが?」
「ぐっ・・・・・・いえ、少々驚いただけです。本当に、いきなり全額お賭けになるのですか?カードを見てから上乗せしても遅くは――――――」
「必要ない」

 アーカードはギルモアの言葉を途中で切る。意思は固いようだった、一体何故ここにきて全額を賭けるのか。
カードを一切チェンジすることなく叩き出した、さっきのロワイヤル・ラファル・アヴェニューが脳裏に浮かぶ。
ただの運だとは思えない、何かをやっているとしか思えない。

「・・・・・・申し訳ないですが、私にカードを切らせていただいてよろしいですか?」
「別に構わんぞ」
呆気なく了承されて、さらに猜疑心が渦巻く。本当にもうわけがわからない、絶対に勝つ故の自信なのか!?
そもそも圧倒的優位にいたはずなのに、何故今自分は追い詰められているのだ!?


「ギルモア様、少々落ち着いてください」
トーマスが耳打ちをしてくる。そうだ、落ち着け。全額賭けたということはチャンスでもあるのだ。
自分が親なのだ、恐れることはない、ない筈だ。

 ギルモアはカードを切って渡す、だがアーカードは動かなかった。
「どうしました?アーカード様、カードを見てチェンジするかどうか――――――」
「このままでいい」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「えっと・・・その、今なんと仰いました?聞き間違いですかな?『このままでいい』と言ったように聞こえましたが」

「言葉通りだ、このままでいい・・・・・・。この5枚のカードで勝負する」
「な・・・・・・っ!?ですがあなたはそのカードを見てもいないでしょう!」
ギルモアは狼狽し、アーカードにテーブルごしに詰め寄る。

「・・・・・・このままでいい」
アーカードは表情を一切変えず、澄ました顔で言う。


 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

(馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ!!何故見ようともしない!?全額3万エキューを賭けてるんだぞ?どれほどの自信があるというのだ!?)
心底わけがわからない。動悸がどんどん激しくなる。心臓の音が頭の中で響く。胸が苦しい。拭っても拭っても汗が止まらない。
トーマスを見やる、トーマスも不可解な顔で汗を浮かべていた。トーマスでもわからないのだ、一体アーカードが何をやっているのか。

 だが開くのは相手からだ。その上でそれに勝てる役にすればそれで済むはずだ。
「コールだな、では同時に開こうか」
「は・・・・・・はい?同時??」
「私が負ければ最後の勝負なんだ、共にオープンした方が面白いだろう」
「い・・・・・・いえいえ、ルールですからそれは――――――」

 アーカードは大きく嘆息をつき、言葉を遮る。
「カードを切らせてやったではないか、それくらいの融通は利かせろ。それとも・・・・・・必ず私の後にカードを開かなくてはいけない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)理由でもあるのか?」

 アーカードはギルモアの目を真っ直ぐ見据えた。
心の中を覗くような・・・・・・全てを見透かすようなその真紅の眼光。
周囲からもアーカードの提案に賛成する声が聞こえる。最早観念するしか・・・・・・ないのか。


 息をするのもつらい、この少女は一体どこまで見通しているというのか。
目がチカチカする。今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られる、カードを開けたくない。
ギルモアは思わずカードを握り締めた、その瞬間だった。

 カードは小さなイタチのような姿に変わる。
ギルモアがカードを握った痛みで、"先住魔法で変化をしていたエコー"達が思わず戻ってしまったのだ。
手の中でもがくエコーに、ギルモアは反射的に手を離す。客達が呆気に取られていたその刹那、声が響き渡った。

「待つのね!!!」
声の主はシルフィード、手にはイタチの入った籠を持っていた。
「この子は古代の幻獣『エコー』!イカサマなのね!!こんな可愛い子供を人質にとって、カードに変身させてイカサマするなんて断固として許せないのね!!」
「なるほど・・・・・・そういうカラクリだったか」
どこへ行っていたのかと思えば、まさかシルフィードがカラクリを暴くとは思っていなかった。
ギルモアを精神的に追い詰めてから、じっくりいたぶった挙句にボロを出させようと思ったものの、手間も省けた。

 現状を把握し怒った客達はギルモアに掴みかかろうとする。
瞬間トーマスが短剣を抜いて立ちはだかった。客達は思わず怯み、その隙にトーマスは煙幕を張った。
客達は突然の出来事と、見えぬ視界で混乱する。

「さて、いくか」
アーカードの言葉にタバサは力強く頷いた。




「やぁ、トーマス」
「アーカードッ・・・・・・様」

 抜け道を通って出た路地裏で、背後からいきなり声を掛けられトーマスは振り向いた。
そこにいたのは二人の見知った少女であった。
「どうして抜け道が・・・・・・!?」
「風を辿った」
ギルモアの疑問に事も無げに答えたのは、マントを羽織り背丈に似合わない杖を持ったタバサであった。

「シレ銀行の鍵」
さっさと渡せと言わんばかりに、タバサは手を突き出す。
「お嬢さまは王政府の人間ですか?」
トーマスが何とも言えぬような悔しげな顔で言った、タバサはただ頷いて肯定する。
「なぜ・・・・・・一体どうして!どうしてシャルロット様は、お父上を殺した王政府に従うのですか!?」

 アーカードの眉がピクリと動く。タバサの過去の一端を、今トーマスは言ったのだ。
「わたしはもう、シャルロットじゃない」
タバサのその言葉、必死に抑え込むように絞り出した声音、その怜悧な瞳と表情。
奥深くに秘めたる決意を、アーカードは感じた。

「さて・・・・・・大人しくすれば殺しはせんが、どうする?」
トーマスは感じ取る、アーカードの強さを。少女の姿の裏にある、得体の知れない恐怖を。
シュヴァリエというのは虚言ではない。幼いながらも騎士の称号は伊達じゃない、トーマスは覚悟を決める。


「一つお聞きしたいことがあるのですが」
トーマスはアーカードに向かって言った。
「なんだ?」
「あなたは最後の勝負で勝つつもりでした、どのような細工をしていたのですか?」
トーマスは確信していた、アーカードがギルモアとの勝負で何かをやっていたということを。

「あぁ、あれか。・・・・・・気付かなかったか?私が持っていたカードは(・・・・・・・・・・・)エコーとやらに(・・・・・・・)戻っていない(・・・・・・)ということに」
トーマスとギルモアはハッとする。あの時は動転していて気付かなかったが、よくよく思い出せば・・・・・・確かにそうであった。

「あの特別室でお前に言ったろう、"私は私で少々失敬させてもらった"とな。棚を見せてもらった時に、カードを頂いておいた。
 サンクでギルモアがイカサマをしているというのは、既に聞いていたからの。前準備としては当然、備えあればなんとやらだ」

「それにしても・・・・・・私に気付かれずすりかえるなど・・・・・・」
「なぁに、こうしただけさ」
そう言うとアーカードの右手からカードが出てきた。
文字通り手の平からカードが出てきたようにしか見えなかった。

「えぇい!いつまでくっちゃべっているッ!!」
そう叫ぶと、ギルモアはいきなり小型の拳銃を取り出し発砲した。
アーカードを狙うも、射撃の腕もなく命中精度の低い弾丸はタバサの方に向かって飛んでいく。
バチッという音と共に、タバサの顔の前に突き出したアーカードの左腕に防がれる。
アーカードは冷ややかな目でギルモアを睨んだ。
「まったく・・・・・・あんたの血は臭そう、とても臭そうだ、ギルモア」

 次の瞬間動いたのはタバサであった、敵意を見せた相手を制圧する為に呪文を詠唱する。
それに呼応するかのようにトーマスの目が鋭くなり、瞬時に意匠の施された投げナイフを4本。
両手にそれぞれ取り出し、慣れた手つきで投擲した。

 アーカードは撃たれた左手で、投げられたナイフを4本とも難なく掴む。
間髪入れずにトーマスが投げた二射目に向かって、右手に持っていたカードを投げ放った。
どこぞの伊達男が使っていたトランプ遊戯のように、カードは空気を引き裂く。
投擲されたナイフを全て吹き飛ばし弾き、内ナイフの一本はカードと衝突して粉々に砕け散った。
その間にタバサは、『エア・ハンマー』の呪文を完成させる。
空気の槌はトーマスとギルモアをまとめて叩き、二人は壁に向かってしたたかに打ち付けられた。

 呻き声をあげ倒れたままのギルモアと、それでもなんとか立つトーマス。
アーカードは左手で掴んでいたナイフを投げ返そうとするも、タバサがその手を止めた。
「殺す必要はない」
そう言うと、タバサは『スリープ・クラウド』を唱えた。
アーカードが嘆息をつくと同時に、トーマスに青白い雲が包まれる。
すぐにトーマスの意識は昏迷し、ゆっくりと落ちていった。




「随分と甘い措置だな」
「シルフィも甘いと思うのね!エコー達を利用するなんてとてもとても許せないことなのね!!」
ギルモアから銀行の鍵を取り上げた後、眠らせてギルモアとトーマスを宿屋に預けた。
その後すぐに小宮殿に出頭し報告、速やかに任務を終了した。ギルモアとトーマスに関しては一切知らせなかった。

「捕縛の命は受けていない」
「別に、タバサがいいと言うのならば構わんがの」
「・・・・・・お姉さまが許すというなら、しょうがないのね」

 学院へと戻るシルフィードの上、タバサは思索に耽っていた。
「今回はシルフィが大金星だな」
「えっへんなのね!」

 不甲斐ない。アーカードの言う通り、今回イカサマを暴いたのはシルフィードである。
アーカードもイカサマを直接見抜いたわけではないが、結果的には破ったようなものであった。

 まだまだ自分は甘い、もっともっと経験を積むことが肝要だ。
己が果たすべき目的の為にタバサは自戒し、改めて決意した。



新着情報

取得中です。