あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ご立派な使い魔-08


キュルケがルイズの部屋の鍵をアンロックで開けた時、中には誰もいなかった。

「あら?」

もう夜も遅い時間だし、少なくともルイズはいるだろうと思ったのだが。
どうもルイズはマーラを扱いかねている節があったので、マーラがいないというのは一応想定の範囲内ではある。
が、ルイズもいないというのはいささか珍しい気もするのだ。

「せっかくあの御方と一手、手合わせを願おうかと思ったのに。無駄足になってしまったわ」

とうとうやってみる気になっていたらしい。

「入るか入らないかではないわ。入れるのよ。……って、思っていたのだけれど」

ある意味潔いというか。なかなか思いつかない発想だろう。
いずれにせよ思惑が外れて、考え込むキュルケである。

「それともやっぱりそういう無茶はやめろって、運命が言っているのかしら」

運命以前に人間として厳しいところがあるのだが、キュルケは情熱の人だ。
これは少し慎重にならないといけないと、そのまま唇に指をあてて考え込む。
それにしても、

「ルイズとあの御方はどこに行ったのかしらね?」

本当に。
もう夜も遅いのだが、主従揃ってどうしたのやら。
まさかとうとう、ルイズがあの使い魔に手を出したとでも……

「まあ、それは無いでしょうね。あたしですら厳しいものを、あのルイズでは……」

文字通りバラバラになってしまうのは確実だ。
しかし、さて、実際どうなのやら。


「うああああ! このバカチ……バカマーラ!」
「今日の小娘は元気がよいのう」

そのルイズとマーラは、本塔の傍にいた。
ルイズが杖をぶんぶんと振り回すと、マーラのすぐ近くで爆発が起こる。

「やれ、やっちまえ娘ッ子ォ! 俺たちの悪夢の源を消しちめえ!」
「やる、やるわよやってやるわ! やああ!」
「おうおう、もっとよう狙わんと当たらぬわな」

自らの魔法が必ず爆発を生むと知って、それでも魔法を唱えるルイズの姿である。
何故そんなことをしているのかというと、つまりはアレだ。

「あ、あんたを殺して新しい使い魔を呼ぶ! 呼ぶのよ!」
「そんときゃまともに剣握れる使い魔にしてくれい、娘ッ子!」

いよいよ使い魔を正常なものにしようと、ルイズは攻撃を開始したのだ。
実のところ、最初はデルフリンガーでマーラを成敗しようとしていたのだが、所詮ルイズは剣を握ったことなどない。
ふらつくばかりだったし、それに当のデルフリンガーが、

「あ、駄目。俺、あれ斬るの本気で嫌だ……」
「気持ちは……わかるわ」

と。そう言い出したので、他にマーラを倒す手段を模索して、この結果である。
もう使えるものなら何でも使ってやれと、嫌っていたゼロの証すら振るうルイズだった。

「もうゼロでもなんでもいい! 立派なんて呼び名からさよならよ!」
「若さの発露じゃのう。ほれ、まだまだ」

後ろに本塔があることも忘れ、ルイズは杖を振るう。振るい続ける。
どかんどかんと爆発して、なかなか壮絶な有様だった。

「ま……まだよ、まだ……まだわたしのターンは終了してないわ……」
「娘ッ子、もういい、お前はよく頑張ったよ……だから、もう……」
「なんじゃ、もう終わりかのう。これでは準備も整わんわな」

あれから数時間。ひたすら魔法を使い、マーラを爆破しようとしていたルイズだったが、哀れである。
何十、何百回と爆発を浴びせたはずなのに、あのご立派なモノはずっとそそり立ったままで、萎える様子もないのだ。

「小娘程度の魔力では、メギドを何発撃ったところでこんなモノよ。
 未熟よのう、小娘。精進せねばならぬぞ」
「う、うるさいわよぉ……こ、この絶倫……」
「褒め言葉じゃのう。グワッハッハッハ」

それでも意地だけでルイズが杖を振り上げると、それを止める手があった。
ふと気づけば、後ろに青みがかった髪の女の子が立っていた。
その子が、ルイズの腕を押さえているのだ。

「だ、誰よ貴方……?」
「キュルケの友達。タバサ」
「キュルケの……?」
「それ以上はよくない」

淡々と告げるその声に戸惑うルイズだったが、タバサが指差した先を見つめて……

一気に青ざめた。

マーラのたっていた場所は本塔のすぐ近くであって、そこに爆発を集中させたのだから、それはもう。

「あ……やば」

スクウェアクラスのメイジ数名がかけたであろう固定化の魔法も、今となっては面影もない。
壁には巨大な穴が空き、随分風通しもよさそうになっているではないか。

「うむ。ワシもこれは気になっておったが、小娘がいかにも必死じゃったからな。
 あえて口にはせんかったが。しかしワシには無傷でもこの威力、やりおるのう小娘」
「ほ……褒められても嬉しくない……わよ……」

顔が青くなっただけではない。脂汗まで浮かび始める。
その一方、ルイズを止めたタバサはじっとマーラを見る。
それに応えるかのように、マーラはぶらぶらと揺れた。
するとタバサは、顔を背けて、そのまま立ち去ってしまう。
どことなく頬を赤らめていたようにも見えたが。

「ありゃ一目ぼれかね、娘ッ子」
「そんな訳ないでしょ。誰があんなモノに惚れるのよ」
「だよなぁ。……まあ、あんなモノ見たら普通は逃げるよなぁ。俺たちゃ、それを相手にしてるんだよなぁ」

自分達の相手にしているモノの強大さを、ここでも実感するルイズとデルフリンガーである。


翌日、学院の教師達は騒然としていた。
本塔が破壊されたのもそうだが、なんとその本塔の中、宝物庫にとんでもないメッセージが残されていたのだ。

「破壊の戦車、確かに領収いたしました。土くれのフーケ、とな。
 見事にやられてしまったもんじゃのう」
「まさか本塔を破壊するとは、フーケは想像以上の手練のようですな」

最近巷を騒がせる怪盗、フーケの犯行声明だったのだ。
その言葉通り、宝物庫からはある宝が消えてしまっていた。
教師達は顔を見合わせてざわめいている。
今の言葉通り、あの本塔の破壊などそう簡単に出来るものではないはずなのだが。

「フーケはトライアングルと考えられていましたが、これはスクウェアにも匹敵するのでは……」
「あの壊れ方からして、どうも錬金で壁を壊したという訳ではないようですね」

この議論を聞いて、教師の一人、ギトーが不快そうに呟く。

「当直の貴族は誰だったんだね。あんなに大げさな破壊活動をされて気づかないとは」

その当直をつとめていたシュヴルーズは、何故か真っ赤な顔をして縮こまっていた。
眠りこけていたという失態を演じたのも事実なのだが、更にあのヴァリエールの使い魔……

「まあまあ、過ぎたことを責めても仕方ないわい。何にせよこの失態はどうにかせねばならん。
 そうじゃろう、ミスタ、ええと……キ……」
「ギトーです」
「そうじゃったな。キト」
「ギトーです!」
「ああ、キト」
「ギトーですと何度言えばわかるのですか! しかも何ですか、キって!
 何故ギから濁音を抜くのですか!」
「いやだって」

オスマンは、後ろの方に控えているモノをちらりと見た。
昨夜あのあたりにいたという、目撃者の生徒。ルイズとその使い魔である。
その使い魔の頭の部分を見て、オスマンはギトーの名前を間違えている。

「ギトーっちゅうか……アレを見るとどうしてもキ……」
「もう結構です! 結構! それ以上は言わないでくださいオールド・オスマン!」

「まあそんなことは置いておいてじゃ。ミス・ヴァリエール、目撃したことを話してもらえんかな」
「は、はい……それは、あの……」

ルイズの目が泳いでいる。
うっかり破壊してしまったので、昨日は慌てて逃げたのだが、フーケがいたとは気づかなかった。
ただ中庭から部屋に逃げるところを誰か教師に目撃されていたようで、こうして呼び出されてしまったのだ。

「フ、フーケは……あの、その、ええと、きょ、強力な……」
「強力な?」
「恐ろしく強力で……凶悪な……ええと、あの……」

と、そこでマーラが一歩進み出た。

「その盗賊とやらは、巨大なモノで壁を破壊したようじゃな」
「ほう、巨大と……」

教師の目がマーラに集まる。
巨大。

「大した突撃力だったようだわな。壁を打ち砕く程じゃ」
「打ち砕く……」

マーラを、見る。

「ついに壁は貫通されて、中を貫かれてしまったようじゃのう」
「貫通……」

マーラ。

「これではいかに頑強な守りも敵わず。呆気なく、中を蹂躙されてしまった訳じゃな」
「中を……」

ごくり。
シュヴルーズ他、数名が唾を呑み込んだ。

「無論、これら一連の動作、全てこのワシには及ばぬがな!」
「確かに」

一同は納得した。
なんか重要なことを見逃した気もするが、アレを見ていたらそんなん、どうでもいいじゃん。
そんな感じである。マーラの言葉にすっかり惑わされてしまったのだ。

「皆さん、フーケの居場所が……」

何故か空気が淀み始めたこの部屋に、新しい声が入ってきた。
オスマンの秘書ロングビルであるが、彼女も入ってきた途端、そこにあるマーラを見て少し固まる。

「……い、居場所が判明しました」
「ほう! 居場所が!」
「近くの森の廃屋のようです」

そこで、再び教師達は相談を始めた。
衛士隊に知らせるべきか、いいやそんな手段ではまどろっこしい。
しかもこの失態を広く知らせるなどと、学院の恥である。
ならば身内で追っ手を出すべし。しかし誰が追っ手となるのだ。

「フーケほどの相手となると、そう簡単には……スクウェアクラスにも匹敵するのですよ」

実力については誤解なのだが。

「捜索隊に志願するものは誰もおらんのかね」

オスマンはそう言うが、やはり誰もがしり込みしているようだ。
その様子を見て、ルイズはピンとひらめくものがあった。

(先生達でも恐れるくらいの相手……それなら、ひょっとしたら……)

剣では、不可能だった。ゼロの自分でも駄目だった。ドットのギーシュも勝てなかった。
しかしフーケという、怪盗の実力なら、あるいは……このマーラを倒すことも、可能なのではないか?

「わ、わたしが志願致します!」

咄嗟に杖を掲げる。
その姿に、教師陣は皆、注意しようとして。
マーラの姿に同時に気づき、声をつぐんだ。

「うむ。ミス・ヴァリエールとその使い魔なら容易いことじゃろう。
 どうやら、気概においてもその使い魔どのを越える程のモノは、教師にもおらんようじゃからのう」

オスマンの言葉に、教師、特に男性陣が頭を下げた。
叱責の言葉だが、確かにマーラには敵うものではない。

「まったく……私がもう30年若ければ、この使い魔どのとも張り合ったものを……」

オスマンの呟きに教師達はおお、とどよめいた。
マーラと、言葉だけでも対抗しようとするものなど初めてである。

「30年前は本当に凄かったんじゃぞ。私とて、こう、老いさえなければ今でも……」
「グワッハッハッハ!」

自慢を始めたオスマンの声を、そのマーラが遮る。

「笑止なり、ご老体!」
「笑止じゃと……」
「男たるモノ、齢を幾つ重ねようともご立派であるべし!
 己のモノを歳のせいにして誤魔化すなどと、不甲斐なしにも程があるわ!」
「ぬ……ぬう!」

オスマンが悶えた。

「他のものを笑えんわな。30年程度……何ゆえに、己の気合で持たせようとせなんだか。
 ご立派の道は他者に与えられるモノにあらず、己のモノで掴み取るべし!
 それを怠って他者を叱責するとは、ご老体。それこそが老いではないか!」
「い、言わせておけば……! 私とて衰えるモノをどうにかしようと色々やったんじゃ!
 じゃが、寄る年波には……」
「喝!」

マーラがずい、と身を乗り出した。

「ワシの見たところでは……ご老体、お主もまだまだご立派への道を歩める余地がある!」
「な、なんと!?」

今度はオスマンが身を乗り出した。

「尽きぬ性欲がその証よ。……む、しかし詳しい話をするにはいささか時間がかかるのう。
 主よ、さっさとその賊とやらを捕獲しに行こうではないか」
「え。あー。はい」

学院長とマーラのやりとりはすっかりうんざりして聞き流していたルイズなので、急に話を振られても困る。
が、ルイズのそのだらしない返事には、オスマンも誰も気にしなかったようだ。

「で、では、使い魔どの、帰ってきたら……」
「たっぷりと伝授してくれようぞ。グワッハッハッハ!」

オスマンの目は、まるで少年のようにキラキラと輝いていたという。


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