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雷撃のタバサ二話-1


「おねがい、お姉さま! シルフィ一生のお願い!! きゅいきゅい!」

トリステイン魔法学院、タバサの部屋ではシルフィードがなにやらタバサに頼み込んでいた。
人間の姿に『変化』したシルフィードは、拝み手でタバサに頭を下げる。頼まれているタバサの方は、困り顔である。
それもそのはず、

「騒ぎを起こした。前の時も」

前回、吸血鬼退治をとらとシルフィードに頼んだところ、実にとらはやりたい放題であった。
家を吹き飛ばし、森の木をなぎ倒し、おまけに幼い少女を惨殺したと誤解されてしまっている。
おかげで、村からは『金色の幻獣』の討伐依頼が届けられ、現在、他の花壇騎士たちが必死になってその凶悪な『金色の幻獣』を捜索中である。

(……ルイズに迷惑がかかるかも)

タバサが躊躇うのも当然であった。
そんな主人の心配も知らず、シルフィードは甘え顔になってタバサにすりよる。

「いいでしょ? ね、お姉さま? きゅいきゅい! シルフィはとらさまとお出かけできるし、お姉さまは面倒な任務をやらなくて済むし。
 そのうえ、とらさまは強い相手と戦えるのだから、すべてまるく収まるのだわ! それに、今回の相手は、お姉さまと相性が悪いと思いますわ! きゅい!」

ぐ、とタバサはつまる。たしかにシルフィードの言うことはもっともであった。
タバサはトライアングル・クラスのメイジであり、妖魔の知識も豊富である。用心深く、頭の回転も速い。
だからこそ、これまでの任務を生き残ってこれたのである。
だが、今回の任務は、相手が悪い。
つい先日、アルビオンから帰還したばかりのタバサにさっそくガリアから命令が来たのだが、そこに記されていた敵の名を見て、タバサはさてどうしたものかと悩んだ。

(『雪の精霊』……相性は、最悪)

『雪の精霊』……雪と氷を操る存在の中では、最上位のものである。
普通の人間では近づけないような高山に住んでいるはずの『雪の精霊』が、なぜかアルデラ地方のエギンハイム村に出現したというのだ。

タバサの系統は『風』と『水』である。その二つの系統を組み合わせた強力な氷雪魔法こそが、タバサの得意とする呪文だった。『雪風』の二つ名な由来でもある。
『火の精霊』に『火』の魔法をぶつけても効果は薄い。同様に、『雪の精霊』に自分の魔法がどれだけ通用するかは、はなはだ疑問であった。
もちろんそんなことはガリアの王女、イザベラも承知の上である。だからこそ『火』のメイジを派遣するべきところを、嫌がらせのために相性の悪いタバサを派遣しようと言うのだ。
その点、スクウェア・クラスに匹敵する炎を自在にあやつるとらであれば、『雪の精霊』が相手でも勝てるだろう。
しばらく考え込んでいたタバサは、やがて決心したように頷いた。

「……わかった。あなたたちに頼むことにする」
「やったのだわ、ありがとう、お姉さま! きゅいきゅい、とらさまに知らせてくる!」

部屋を飛び出したシルフィードに、タバサは溜息をつく。果たしてこれで良かったのだろうか……?

(悩んでも無駄。杖は振られたのだ)

芝居がかった仕草でタバサは『サイレント』をかけた。静寂の世界がタバサを包む。この際、すべての苦情には耳をふさぐつもりである。
タバサは読みかけの本をとりあげると、早速読書の世界に逃避することにしたのであった。



るいずととら番外 『雷撃のタバサ』二話



ガリアの王都リュティスの東の果て、ヴェルサルテル宮殿。ガリア王ジョゼフ一世が政治の杖を振る薔薇色のグラン・トロワのそばに、薄桃色の小宮殿、プチ・トロワがある。
その小宮殿で、年のころ十七ぐらいの少女が、一人ベッドの中でぶるぶると震えていた。
ジョゼフ王の娘、ガリア王国王女イザベラであった。
タバサと同じ青い瞳に青い髪は、ガリア王族の血の証である。

(大丈夫……ちゃんと手紙に書いたもの。『決してプチ・トロワの1000メイル圏内には近寄らないこと』って……)

イザベラは布団にくるまれながら自分に言い聞かせた。
これでもイザベラは北花壇警護騎士団の団長である。花壇騎士に任務を与える際には、必ずプチ・トロワで正式に任務を申し付けるのが通例となっていた。
そこを手紙だけで済まそうというのは、ひとえにイザベラが前回の任務のときに、びびりまくってしまったからである。

(ああ、あの目……ガーゴイル娘のあの目つき!)

その時のことを思い出して、イザベラはぶるぶると震えた。イザベラの知っているタバサは冷静沈着、その青い瞳は落ち着いた静けさを湛えたものであった。そこがまた、イザベラを苛立たせていたのだが……。
しかし、久しぶりに任務を言い渡したタバサの様子はまるで別人だった。
殺気に満ちた凶悪な目の光。ぎらぎらとしたそれは、まるで野獣の殺気であった。
そして、イザベラが「ガーゴイル」とあだ名をつけたほど表情が変わらないはずのタバサの顔に浮かんだ、ぎしりと歯をむき出した笑み。
思い出すイザベラの背筋がぞくりと寒くなる。
命の危険を感じたイザベラは、公然とタバサを抹殺するために、今回『雪の精霊』討伐をさせようと考えたのだった。

(あのガーゴイルだって、今回ばかりはおしまいだよ……! 自分の系統と同じ系統の精霊が相手だもの……!!)

そう考えると、次第に体の震えも落ち着いてくる。イザベラはニヤリと残忍な笑みを浮かべると、ようやくベッドから起きだした。
今日は別の北花壇騎士にも任務を命じなくてはならない。イザベラは着替えて待つことにした。
ようやくあのガーゴイル娘ともおさらばできるのだ、と考えると、イザベラのこころは、どこか高揚さえするのであった。
だからだろう、「北花壇騎士さまがお見えです」と告げた侍女に、イザベラはよくよく確認も取らずに、「通しな」と命令してしまったのであった。
ゆっくりとドアが開いて、北花壇騎士を出迎えようと、イザベラは顔を上げる。

「よう……ちょっと聞きたいことがあってな」

イザベラは硬直した。入ってきた『北花壇騎士』が、ずかずかとイザベラに近づきながら、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべ――

直後、イザベラの絶叫が宮殿に響いたのだった。

遡ること、少し前のことである。

ガリアの上空を、一匹の風竜が飛んでいた。青い鱗の風竜は嬉しそうに、「るーるる、るるる、るーるる、るるるるーるーるーるーるー」と恋の歌を歌っている。
恋に浮かれるシルフィードであった。

(るーるー! とらさまと二人きり! 嬉しいわ、嬉しいわ! とらさまに色目を使うあの邪魔な桃色もいないし。
 大体、人間のクセにとらさまのこと気にして、まったくおばかさんね! 種族が違うのだわ、きゅいきゅい!)

それを言うなら、風韻竜であるシルフィードと、字伏であるとらの種族差も結構ばかにならないはずだが、そこまでは気の回らないシルフィードである。
今はただ、とらと二人きりのデート気分であった。
そんなシルフィードの背中には、小柄な少女が一人座っている。自分の身長ほどの長い杖を抱え、片手に手紙を持っていた。空いた手で『テロヤキバッカ』をかじっている。
もぐもぐと『テロヤキバッカ』を頬張りながら、少女は熱心にその手紙――イザベラの命令書を読んでいる。
るーるー、と歌っていた竜のシルフィードが手紙を読む少女を覗き込んだ。

「とらさま、熱心にお手紙読んで、どうなさったの?」

む、と『テロヤキバッカ』を飲み下しながら、少女は答えた。

「いや、手紙を取り出すときに破いちまってな……まあ、どうせわしには読めねぇから、別にいいか」

少女はくしゃくしゃと紙を丸め、ぽいと口に放り込む。シルフィードが慌てて声を上げた。

「と、とらさま! お手紙食べちゃって、行き先わかるの!?」
「ああ? しるふぃ、おめえ、たばさに聞いたんじゃねぇのか?」
「きーてなーい! もー、とらさま何やってるのー!! きゅいきゅいきゅい!! お姉さまに怒られるー!!」

涙目になって騒ぐシルフィードに、とらは落ち着いた様子でくっくっくと低く笑う。さすがは2000年以上生きた大妖、実に経験豊富であった。

「慌てんな、しるふぃ。こーゆーときは、たばさに命令を下した本人に確認すりゃいいのよ」
「はっ、わかったわ! さすがとらさま! それじゃあ、先にプチ・トロワに向かいます。きゅいきゅいきゅい!」

こうして、風韻竜はヴェルサルテル宮殿に向かって、ぐんとスピードを上げるのだった。
……一方、トリステイン魔法学院では、タバサががっくりと地面に手をついてへこんでいた。

「どうしたの、タバサ……急にがっくりひざをついて。体調でも悪いの?」
「へ、平気……ちょっとめまいがしただけ」

心配そうに声をかけるキュルケに、タバサは手をふって立ち上がる。嫌な予感は的中するものである、という格言をタバサは苦々しくかみ締めているのだった。

(聞かなかったことにしよう)

タバサは深く心に決めた。杖は振られたのである、と呟くタバサを、不思議そうにキュルケが見つめていた。

……はたして、不幸だったのはタバサかイザベラか。
楽しげに空を飛んでいく二匹の幻獣は知る由もない。

「さぁて、飛ばせよしるふぃ。くっくっく……『雪の精霊』か……楽しみだな……!』
「きゅいきゅい! 飛ばすわ、とらさま、ぎゅっと! ぎゅっとシルフィに掴まってね。るーるーるー!」 

お姉さま、安心してー、というシルフィードの言葉が、虚しくガリアの空に消えていった。


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