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白き使い魔への子守唄 第15話 月夜を乱す者

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ラ・ロシェール近くの岩陰にシルフィードを下ろしたタバサとキュルケは、
フードつきのマントで顔を隠して街に入りると、女神の杵という宿を取った。
タバサは桟橋へ行き、船の予定を聞いてくると、街の中を探索する。
そしてとある酒場で傭兵達の不審な動きをしていると気づくと、
タバサはシルフィードの所に戻り、そこにはキュルケが待ち構えていて、
タバサが何をしようとしているのか知らないのに、協力すると言い出した。
それがタバサには嬉しい。

   第15話 月夜を乱す者

本来なら馬で二日はかかる距離だが、馬を何度も変えて飛ばしたため、
夜にはもうハクオロ達はラ・ロシェール近くの岩場まで到達していた。
そのおかげでハクオロもギーシュもすっかり疲労困憊だ。
ちなみにルイズとワルドはグリフォンで優雅に飛んできたため、疲労の色は無い。
峡谷にある街を視認できるようになって、ハクオロはホッと一息ついたが、
前方の崖の上で煙が上がっている事に気づいて表情を引き締めた。
「何だ、あの煙は」
四人が急いで現場に駆けつけると、崖の上からキュルケが手を振ってきた。
何でここに。
「何か盗賊みたいなのが待ち伏せしてたから退治しといて上げたわよ」
とキュルケが己の活躍を誇示している後ろで、
タバサは盗賊達がルイズ達を狙っていた事を聞き出していた。
そしてそうするよう依頼してきたのは……。

「ハクオロ。自殺したいなら、飛び降りた方が早いわよ?」
「傭兵を雇ったのは私ではない。というか、共通点は白い仮面しかないじゃないか」
女神の杵にて晩餐を取るルイズ一行とタバサ一行。
そこでタバサから、なぜここにいるのかという事情を聞かされた。
ラ・ロシェールに遊びに来た二人は、傭兵が貴族を襲おうとしている話を偶然入手し、
成敗しに行ったらルイズ達が偶然来て驚いたのなんの。と胡散臭い説明だ。
そして傭兵達から、あの道を通る貴族を襲うよう命令されたという情報を聞き出した。

雇い主はフードで顔を隠した女のメイジと、白い仮面をつけた男のメイジ。
白い仮面をつけた男のメイジ。
白い仮面をつけた男。
白い仮面。

「普通ハクオロを想像するわね」
「というか白い仮面をつけてる男なんてハクオロ以外にもいたのね」
「まったくだ。こんな街中で仮面をつけて歩く男などハクオロ以外にいるとは思えないよ」
ルイズ、キュルケ、ギーシュの物言いに、ハクオロと、なぜかワルドもうなだれる。
しかし唯一タバサは。
「白い仮面はセンスがいい」
ハクオロ含め、みんなはタバサのセンスにツッコミを入れたい気分になった。
なぜかワルドは親指を立てて嬉しがっているが。

女神の杵で夕食を終えた後、ルイズとワルドは桟橋に行きアルビオン行きの船を探した。
しかし出航まで二日あるという事情のため、ラ・ロシェールで足止めを受けねばならない。
そこで女神の杵に宿泊する事になったのだが、ワルドはルイズとの同室を求めた。
「いかん。いくら婚約者とはいえ、まだ早い」
ルイズよりも早く、ハクオロが抗議の声を上げる。
婚約者が同室という状況から、即座にそういう方向に思考が走るのは好色犬だからか。
ルイズもおおいにうろたえて、部屋くらいもうひとつ取ってもいいのではと提案する。
しかしワルドは食い下がり、大事な話があるからとルイズとの同室を決定する。

「う~ん……心配だ。万が一の時は大声を出せと言ってはおいたが……」
ギーシュとの同室で、ハクオロは部屋中をうろうろ歩き回りながら呟いていた。
「ルイズは幼い容姿とはいえ……もう十六歳だし……ううむ」
「少しは落ち着きたまえ」
「ギーシュ、部屋の様子を覗き見る魔法とかはないのか」
「仮面同様趣味が悪いな君は。ところで君の胸元、光ってないかい?」
「うん?」
言われてハクオロは自分の胸元を見たが、光ってなどいなかった。
ただ使い魔のルーンが刻まれているのみである。
「いや、見間違いじゃないか?」
「そうかな」

「心配してくれるのは嬉しいんだけどねー……」
「何か言ったかい?」
「ううん、何も」
窓辺で景色を眺めたまま、ルイズは言った。
急に胸が熱くなり、ハクオロの心配する心が自分に流れ込んで来たのを感じ、
ちょっとまぶたを閉じてみたらハクオロがギーシュに部屋を覗く魔法はないかと訊いていた。
確かにそういう魔法もあるが、自分の場合使い魔のルーンを通じてそれが可能なので、
便利と言えば便利だけれども、やっぱり何だか悪い気がしてしまう。
「それよりルイズ、ワインが入ったよ。二人の再会を祝して一杯やろう」
「……。そうね」
気分を切り替えてワルドとワインを楽しむルイズだが、
婚約は親同士が決めた事と前置きされた後で、改めてワルドは言う。
「この任務が終わったら、僕と結婚しよう」
「け……結婚!?」
突然の再会と求婚。
愛ではなく憧れだけで結婚できるのか? ルイズは動揺し、眠れぬ夜をすごした。
そのせいで寝不足=5クリックと連想し、翌朝ハクオロがワルドに突っかかるのだった。
「貴様、ルイズに5クリックしたのか!?」
「なっ! なぜ知っている!?」
その後、ルイズの弁明で誤解は解けたとはいえ、
恥ずかしい秘密は明らかとなったワルドは深く落ち込んでしまった。

そんなワルドを放っといて、ルイズはハクオロに結婚の相談をする。
「……私、どうしたらいいかな?」
「……。この國ではどうかは解らないが、君にはまだ早いように思う。
 学生の身だし、まだ若いのだから結婚を急ぐ必要は無い。
 愛し合う者同士でも、結婚をするならば機というものを待つべきだ。
 結局、助言はできるが決断を下すのは君だ」
「あんたは、記憶喪失なのにこんな質問するのも変だけど、誰かを愛した事ある?」
「……どうなのだろうな」
いくつかの人影が脳裏をよぎる。しかしはっきりとした姿は解らない。
ただ、ルイズの声を聞いていると、まぶたの裏に黒い翼がちらついた。

結局答えは自分で出すしかないのだと、ルイズは一人で思い悩む。
いきなり結婚と言われても、よく解らない。
二人の姉もまだ結婚してないのに、末っ子の自分がなんて。
でも、どんな形であれ結婚できるだけ幸せかもしれない。
一方の姉は多分、結婚すらできないだろうから。

宿の廊下を歩いていると、本を読みながら歩くタバサとはちあわせた。
そこでルイズは、つい先ほどまで考えていた姉の事で、タバサに相談をもちかける。
とりあえず自室に連れ込み、タバサの母親の病気の件を訊ねた。
なぜいきなり完治したのか。何か特別な治療は行ったのか。
タバサは答えない。
「ねえタバサ、私のお姉様は生まれつき身体が悪くて……。
 だからタバサのお母様を治した力があれば、お姉様も助かるかもしれないの。
 お願い。何があったのか、何をしたのか、教えてくれないかしら」
真摯な頼みに、ようやくタバサは答えた。
「言えない」
「どうして」
「言えない」
「だから、どうして」
「言えないから」
短期なルイズだが、姉のためと小一時間は粘ったのだが、
タバサは「言えない」以外の言葉を忘れた人形のようだった。
とうとう業を煮やしたルイズは、大声で何事かを怒鳴り、部屋を出て行った。
何と怒鳴ったかは後になってから思い出そうとしても思い出せなかった。

タバサとの確執はこれだけで収まらなかった。
昼になって、ワルドがハクオロの実力を知りたいと決闘を申し出た。
だが「戦う理由がない」とハクオロはこれを拒否し、
ワルドから弱虫呼ばわりされるのだが、これに噛みついたのがタバサだ。
「私が受ける」
唐突に放たれたその言葉の意味を解した者はいなかった。
しかしどうやら、ハクオロの代わりに自分が決闘をすると言っているようで、
キュルケやギーシュは大慌てでタバサを止めた。
ワルドは魔法衛士隊の隊長で、風のスクウェアメイジだ。
風のトライアングルのタバサでは勝ち目がない。
だがタバサは一歩も引かず、ワルドは適当にあしらうつもりで決闘を決めた。

勝負は一分も経たずについた。
誰もが目を疑った。
華麗に杖を振るったワルドから距離を取り、素早い詠唱でタバサは風を起こし、
冷気を孕んだ風の威力に吹っ飛ばされたワルドは壁に叩きつけられて、
さらに右腕に凍傷まで負って敗北した。
タバサの魔法の威力は風、風、風、水のスクウェアスペルだった。

ルイズはつきっきりでワルドの看病をしたが、
凍傷が治るには時間がかかりそうだった。
少なくとも明日まではろくに動かせまい。

それが明暗を分けた。


出航まで待てぬとばかりに事は動き出す。
ラ・ロシェールの夜に、二人のメイジが現れた。
一方はフードを深くかぶって顔を隠し、一方は白い仮面をかぶって顔を隠していた。

石の巨大ゴーレムの襲撃で宿は半壊し、ルイズ達は大慌てで逃げ出す。
犯人は土くれのフーケで、どうやら復讐だけでなく、
何らかの目的を持って攻撃をしかけてきたらしい。
ワルドは二手に分かれる事を提案。
キュルケ、ギーシュが足止めしている間に、
ルイズ、ハクオロ、ワルドが船へ向かうのだ。

なぜかタバサの姿はなかった。
宿には最初からいなかったようで、夜更けに外出していたらしい。
騒ぎを聞きつければすぐ駆けつけてくるだろうとハクオロ達は考えた。

ラ・ロシェールの風が冷たく荒れ狂う。
左手に杖を持った白い仮面のメイジの放ったライトニングクラウドで、
すでにシルフィードは落とされ目を回してしまっている。
仮面メイジは屋根から屋根へと飛び移りながら、執拗にターゲットを追いかけた。
「ウインド・ブレイク」
暴風がターゲットの青髪を揺らしたと思った刹那、
彼女の杖から放たれた風の障壁がウインド・ブレイクを巻き上げる。
狙われているのは雪風のタバサだった。
反撃の魔法で氷の槍を飛ばすも、距離があったため仮面メイジは余裕で回避する。
近づこうとすれば逃げ、では無視して逃げてしまおうとすれば追ってきて、
後ろから風の魔法で攻撃をしてくる。
どうやらタバサを倒す事よりも、足止めする事に重点を置いているらしかった。

――このままでは彼の所に行けない。

宿の方角で大きな破壊音がした。すでにしかけられている、急がねばならない。
怒りがタバサの精神力を上昇させ、冷気を孕んだ暴風が仮面メイジを襲う。
尋常ではない速度の魔法を、仮面メイジは予期していたかのように回避。
その立ち振る舞いに、タバサは見覚えがあった。まさか。

よくよく観察すれば、仮面メイジは右手をかばうような動きをしている。
杖を振るうのは左手だが、どこかぎこちない。
左利きではない。
そして仮面メイジは風のスクウェアと思わしき能力。
風のスクウェアスペル。
様々な疑問がタバサの中で氷解する。

こんな奴に構っている暇はない。
冷徹に、街を巻き込むような竜巻をタバサは放つ。
その威力はいくつかの建造物を飲み込みながら、仮面メイジの身体を引き裂いた。
これでいい。
タバサはフライを唱え、宿へと向かった。

宿の前では、土くれのフーケのゴーレムが暴れており、
キュルケとギーシュが応戦していた。
「あの腕輪がなきゃ、あんた等なんてこんなもんさ」
勝ち誇ったフーケの発言だったが、やって来たタバサを見つけるや表情が変わる。
なるほど、とタバサは思った。
かつて戦った時は天照らすものがあればこその勝利。
タバサはキュルケと一緒に戦っても勝てなかった。
同じトライアングルといえど、実力はフーケが上だった。
そう、上だったのだ、以前までは。
だからフーケは、タバサ一人来たところで警戒する必要などない。
新たな獲物に嗜虐の牙を剥けばいい。
そうしないという事は、やはり奴とグルで、決闘の件を聞いているのだろう。
だからスクウェアメイジのタバサを警戒する。
「あの竜巻はあんたのスクウェアスペルだろう?
 あんな大きな魔法を使って、私とやりあう精神力が残っているのかい?」
挑発気味に、しかし探るようにフーケは言ってきたので、
返答とばかりにタバサは先ほど同様巨大な竜巻を放ち、
宿の残骸ごとゴーレムを天空へと吹き飛ばした。
それからキュルケと合流し、ルイズでもワルドでもなく、ハクオロの居場所を問う。
事情を聞いて、タバサは桟橋へと急いだ。

桟橋の長い階段の中途で倒れていたのは、酷い火傷を負ったハクオロだった。
意識はなかったが、彼の持っていたデルフリンガーから事情は聞けた。
仮面メイジがハクオロ達の前にも現れ、
ハクオロはライトニングクラウドを受けて倒れてしまった。
デルフリンガー越しに食らったため命に別状はない。
そして、仮面メイジはワルドが追い払おうとし、ルイズが腕輪を使って倒した。
ルイズはハクオロに駆け寄ろうとしたが、先を急ぐワルドに引っ張られ船へ行ってしまった。
「仮面のメイジの右手は動いていた?」
「あん? いや、どーだろね。杖は左手で使ってたけど、左利きなだけでねーの?」
「そう」
レビテーションでハクオロを浮かすと、治療のため街に連れ帰り、
キュルケに頼んで水のメイジを呼びに行ってもらい、ギーシュには番をさせ、
タバサはすでにしまっている薬屋を無理矢理開けさせて、
火傷に効く薬と、水の治療魔法のためのポーションを買い込んだ。

ハクオロの治療をしている間に、気絶から覚めたシルフィードが戻ってきた。
置いてきぼりにされてだいぶ怒っているようだったが、
タバサは取り合おうとせず、ハクオロにかかりっきりだ。

ハクオロは丸一日寝込み、翌日の夜になってからようやく目を覚ました。
己の面目なさを悔やむハクオロをキュルケとギーシュは慰めようとしたが、
タバサは大事な話があると切り出した。

「あの仮面のメイジの正体はワルド。風の魔法に遍在というものがある」
遍在はメイジ本人を正確に再現するため、
あの仮面メイジが右手を使わなかったのは、
決闘でやられた凍傷がまだ完治していないからだ。
「ワルドは我々を裏切り何事かを企んでいる……という事か。
 まずいな、奴が貴族派だとすると、王党派の懐にまで入り込まれてしまう。
 手紙は当然奪われるし、そうなったらルイズは用済みだ……」
最悪殺されてしまう。
そして貴族派は手紙を公開し、トリステインとゲルマニアの同盟は破棄されてしまう。
貴族派がどの程度の戦力なのかは知らないが、
トリステインのみで戦うにしても、戦い方次第で勝機はあるだろう。
ただし戦争となれば被害はまぬがれない。
どれだけ上策を練ろうとも、必ず死者が出てしまう。
兵以外の者にまで。
それだけは避けねばならない。
「何とかして、アルビオンへ行く方法はないのか……」
「ある。貴方が望むなら」
タバサはシルフィードを使えばアルビオンへも渡れるが危険も大きいと話した。
戦争中の国へ竜一匹で行くのだ。
さらに王党派が篭城しているニューカッスル城の警備をどうするか?
ルイズがいない今、自分達がトリステインからの使者だと証明するのは難しい。
それに任務の内容を知らない、他国の留学生タバサを巻き込んでいいものか。
「貴方とルイズの事情なら知っている。安心していい」
キュルケとギーシュに聞こえないようタバサはささやいた。
「ではシルフィードを借りさせてもらおう」
「私も行く」
「しかし」
「私は貴方の剣。貴方の敵は私の敵」
タバサの奇妙な言を、ハクオロはうなずき受け入れる。
が。
「ちょっとタバサ、それってどういう意味?」
聞こえていたキュルケが疑問の声をかけ、ようやくハクオロもタバサの妙な発言に気づいた。
問おうとして、タバサが短い詠唱、レビテーションだと解ったから、
慌ててベッドに立てかけてあったデルフリンガーを引っ掴む。
「タバ――」
「レビテーション」
窓から放り出されたハクオロは、外で待機していたシルフィードの背中に乗せられると、
タバサも窓から飛び出し、シルフィードの背中に乗った。
キュルケとギーシュの制止の声を聞かず、タバサはシルフィードに命じ飛び立たせた。
「アルビオンへ」



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