あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

スナイピング ゼロ-13



「私が、巫女をするんですか? 始祖の、祈祷書を持って・・・?」
「そうじゃ。これは大変に名誉な事じゃぞ、なにせ一生に一度有るか無いかじゃからな」

 学園長室で、ルイズは椅子に座ったオスマンと向かい合っていた。
午前の授業中、コルベールによる『愉快な蛇くん講座』が行われていた時に、急な呼び出しを受けた。
何だろうと思って行ってみると、『姫殿下の結婚式で巫女の役を受けてほしい』と言われてしまった。
しかも『結婚式が始まるまでに、詔を考えておくように』と来たもんだ。ルイズは困ってしまう。

「でも、私が詔を考えるなんて・・・詩とか苦手ですし」
 困った顔で、オスマンに向ける。
「そう難しく考える必要は無いぞい、なにせ草案は宮廷の連中が推敲するからの。形だけ出来とれば、後は勝手に
直してくれるだろうて」
「そうですか・・・では、引き受けさせていただきます」

 オスマンは大丈夫と言ってるし、姫殿下の頼みだし、やっても良いか。そんな感じで、ルイズはオスマンから国宝である
『始祖の祈祷書』を受け取った。作られてから長い時間が経っているためか、全体的にボロボロだ。破れたりしないよう、
慎重に両手で掴み取る。

「結婚式で友に詔を読み上げてもらえるんじゃ、姫もさぞ喜ぶことじゃろう」
 オスマンは両手を広げて立ち上がり、ルイズの決意を労う。だがルイズは始祖の祈祷書を開いたまま、動こうとしない。
ゆっくりと顔を上げ、ページを指差す。

「あの、オスマン校長・・・ちょっと聞きたいんですが」
「なんじゃね?」
「これって、なんで中身が真っ白なんでしょう?」
 開いたページには、何も書かれていなかった。パラパラとページをめくってみるが、文字が書かれているページは一枚も
見当たらない。

「それはワシにも分からんのじゃ。持って来た者に聞いても『私には分かりません』と言われての」
「そうですか・・・」
 腑に落ちないが、分からないのなら考えても仕方が無い。


「安心しなさい、始祖の祈祷書は持っているだけで良い。何も問題は無いぞい」
「そうですね、では失礼させていただきます」
 ルイズは一礼し、部屋を出た。胸に手を当てて、大きく深呼吸する。

「姫様の結婚に出席か、ヴァリエール家の者として失敗は許されないわね!」
 拳を握り締め、ルイズは教室へと続く廊下を戻って行った。


教室の入口前に辿り着くと、一旦立ち止まった。始祖の祈祷書を服の中に隠し、扉を開ける。

「ヴァリエールです、いま戻りまし・・・あれ?」
 中を見ると、みんな好き勝手に雑談などをしている。教壇にコルベールの姿は無く、黒板には『実習』と書かれている。
自分の席を見ると、セラスとリップが居ない。ギーシュとお喋りをしているモンモランシーに、声をかけてみた。

「ねぇ洪水のモンモランシー、ミスタ・コルベールは?」
 『洪水』と言う言葉に、モンモランシーは眉間に皺を寄せる。
「授業をほっぽり出して、何処かに行っちゃったわよ」
「どこに行ったの?」
「それはボクが説明するよ」
 ギーシュが会話に割って入る。

「君が教室を抜けた後に、ミス・セラスが『私が住む世界では、すでに『愉快な蛇くん』は実用化されてます』と先生に
言ったんだよ。そしたら先生がミス・セラスを連れて、出て行ってしまったのさ。もう一人の使い魔さんも一緒にね」
 そう言うと、ギーシュは薔薇に模した杖を口に挟む。急な事態に、ルイズは困惑する。

「すぐには帰って来そうに無いわね・・・」
「ま、授業が潰れてくれたから有難いけどね」
 微笑を浮かべながら、モンモランシーは言った。ルイズは自分の席に座り、昼食の時間を待つ事にした。
さて、その頃セラスとリップは何処に行ったかと言うと・・・

「えっとですね、私は技術者とかじゃ無いんで、詳しい事は分からないんですよ」
「同じく、私も知らないわ」
 本塔と火の塔の間にあるボロい掘っ立て小屋の中で、二人はコルベールに事情を説明していた。教室でのセラスの言葉を
聞いたコルベールは、二人が『エンジン』に詳しいと勘違いした。だが実際には二人とも知らず、目論見は外れてしまった。
 コルベールは肩を落とし、椅子に座る。

「そうでしたか・・・すいません、つい興奮してしまって」
「いいんですよ、私が誤解されるような事を言ったのが原因ですし・・・」
 コルベールのハゲ頭に噴き出すのを堪えながら、セラスはハゲました。リップはニヤニヤと、口元を歪めていた。


正午を過ぎても、コルベールは教室に戻って来なかった。セラスとリップも、まだ戻らない。仕方が無いので、ルイズは
食堂に向かった。昼食と食後のデザートを食べ、アウストリの広場に向かった。ベンチに座り、始祖の祈祷書を開く。
 周りで他の生徒が遊んでいる姿を横目で見ながら、白紙のページを眺めた。

(姫様の結婚式なんだから、完璧な詔を読み上げなきゃね・・・)

 傍から見ると、明らかに肩に力が入り過ぎていた。リラックスしていれば絵画のように見える姿が、今は台無しである。
初夏の日差しを浴びながら詔を考えていると、いきなり両手で視界を塞がれた。
「だ~れだ!」
 後ろからバカにしたような声が響く、こんな事をするのは学園で一人のみ。相手が誰か分からないほど、ルイズの目は
節穴では無い。

「何か用なの、乳お化け」
「あら、分かっちゃった?」 
 予想通り、正体はキュルケだった。嬉しそうに笑いながら、隣に座る。
「ねえ、それ何?」
「始祖の祈祷書よ」
「始祖の祈祷書って、確か国宝でしょ。なんでそんな物を、貴女は持ってるの?」

「さっき私、授業中に呼び出しを受けたでしょ。あれ、オスマン校長からだったの。それで行ってみたら、姫殿下の
結婚式で巫女の役をするよう言われちゃってね・・・それで、この本を授かったって訳」
「ふ~ん、大役を任されちゃったわね。因みに聞くけど、ちゃんと巫女を出来るの?」
 ルイズは言葉が詰まった、出来ると断言は出来ないが、プライドの所為で見栄を張ってしまう。

「姫様からの願いだもん、やってみせるわ・・・多分」
 ハッキリしない言い方に、キュルケは小さく笑った。
「引き受けた以上、失敗は許されないわよ。もしミスったりなんかしたら、独房に入れられちゃうかもね」
「バ、バカなこと言わないでよ! ヴァリエール家の名に賭けて、必ずや巫女を演じてみせるわ!」
 立ち上がり、ガッツポーズを決める。固く握り締めた拳が太陽に重なり、光り輝いていた。

「なるほど、つまりルイズは詔を考えるのに忙しくて、外出する暇は無いって訳ねぇ・・・」
 そう言うと、キュルケは胸の谷間から羊皮紙の束を摘み出した。ルイズが見ているなか、それをベンチに並べる。
「なに、これ?」
「宝の地図よ」
「宝?」
 確かに、それは宝の地図だった。道や山、家などの絵柄が描かれている。中には、宝の在処を示す×印も示されている。

「なによ貴女、これから宝探しにでも行くつもり!?」
「えぇ、そうよ」
 あっけらかんとしたキュルケの返事に、ルイズは言葉を失う。
「王女様が結婚式を披露してる間、学園は休みになるのよ。生徒や平民の中には、故郷に戻る人もいるみたいね。
因みに私は親と顔を合わすのが嫌だから、宝探しで暇潰しって訳」
 キュルケは楽しげに語る。地図を見つめるルイズは、怪訝な表情を浮かべている。

「これって本物なの? 見るからに怪しげなんだけど・・・」
「そりゃあ魔法屋、情報屋、雑貨屋、露天商、およそ怪しげな店を訪ね歩いて掻き集めたんだから当然よ」
「止めといた方が良いよ、どうせ偽物だ。適当に『宝の地図』を作って売り歩く商人を何度となく見てきたからね、
破産した貴族の二の舞になるよ」
 二人が振り向くと、何時の間にかギーシュが一枚の地図を持って立っていた。


「あら、いたのギーシュ。どう、貴方も宝探しに行かない? 因みにタバサも一緒だけど」
「ふん、宝なんか見つかりっこないよ」
 ギーシュは吐き捨てるように言った。だが、キュルケは気にした素振りを見せない。
「そりゃ見つかる可能性は低いけれど、見つからない可能性も低くは無いわ。もし宝が見つかったら、姫様にプレゼント
したらどう? きっと貴方を見直すはずよ」
「よし、その話のった!」
 即座に意見を翻したギーシュに、キュルケは心の中で舌を出す。そしてルイズに顔を向けた。

「あと、ルイズの使い魔さんも連れて行きたんだけど。良いかしら?」
「私に言われたって困るわ、本人に聞いてみないと・・」
「今どこにいるの?」
「さぁ・・・」


「ええか、ええか、ええのんか~♪」
「リップさん、こんな朝っぱらから・・・んぁ、あん」
 コルベールが退室した研究室の中で、今日も元気に百合の花が咲き乱れていた。


「私は、その案には反対です」
 アルビオンの首都、ロンディニウム郊外。空軍の工廠ロサイスに停泊しているアルビオン空軍本国艦隊旗艦
『レキシントン号』の下で、一人の男が呟いた。両の手を強く握りしめ、顔は青ざめている。
 その男の前に立つのは、アルビオンの皇帝であるオリヴァー・クロムウェル。右隣には秘書のシェフィールド、
左隣にはワルドが立っている。何時もの羽帽子にマントでは無く、右目に眼帯を付け、額にはバンダナを巻いている。

「アルビオンの長い歴史の中で、他国との条約を利用して戦争を起こした例は存在しません。皇帝、貴方は祖国を
裏切るつもりなのですか!」
 『レキシントン号』の艤装主任であるサー・ヘンリ・ボーウッドは、脇目も振らず想いをブチまけた。それほどまでに、
クロムウェルが計画した『親善外交の陰謀』は常軌を逸していた。

「口を閉じたまえ、ミスタ・ボーウッド。これは議会と皇帝である私によって決定したのだ、変更する事は出来ない。
それに君は軍人であり、政治家が決めた事に従う義務がある。それとも何かね、君は文民統制を破る気かな?」
 指揮系統の最高位に存在するクロムウェルにそう言われ、ボーウッドは肩を落とした。
祖国の忠実なる番犬が飼い主に牙を向ける事は、決して許されない。

「アルビオンは、卑劣な条約破りの国として認知される事になります・・・それでも良いのですか?」
 クロムウェルは微笑みながら答える。
「君が気にする事では無い、軍人はただ黙って命令を遂行するのみだよミスタ・ボーウッド。それに考えてみたまえ、
エルフ達との戦いに勝利し、聖地を奪い返した時・・・些細な外交の問題など、誰も覚えてなどいないよ」
 ボーウッドは顔を上げると、クロムウェルにつめよった。

「条約を破り捨てるのが些細な問題ですと、貴方は何を考え・・・うぐッ!?」
 突然、背後から首を絞められる。振り向くと、そこにはワルドの姿があった。左腕で首を巻き、右手には
サプレッサーが装着されたベレッタM9が握られていた。ボーウッドの頭の上に『!』が現れる。
「う、撃たないでくれ・・・ぐわ!」
 バシュッと言う音と共に、ボーウッドは倒れた。だが、撃たれた箇所からの出血は見られない。

「安心しろ、麻酔弾だ」
 ワルドはボーウッドを抱きかかえ、近くに置かれているロッカーに放り込んだ。アイドルのポスターが貼られていたが、
気にせず扉を閉める。スライドを引いて、銃に次弾を装填する。ホルスターに戻し、葉巻を銜えた。

「流石は『不可能を可能にする男』だねワルド君、良いセンスだ。いや、ここは『英雄』と言うべきかな?」
 拍手をしながら、クロムウェルはワルドに話しかける。
「私は英雄などではありません、ただの傭兵です・・・」 
 ライターを着火させ、葉巻に火を付ける。

「子爵、君を竜騎兵隊の隊長に任命する。先頭に立って、レキシントン号に乗りたまえ」
「了解だ大佐、任務を続行する」
 『大佐』と言う言葉に、クロムウェルは首を傾げる。

「うん、まぁ細かい事は任せるよ。因みにボーウッド君は気にしなくて良い、頑固で融通は効かないが信用は
出来るからね・・・所でワルド君、ちょっと聞きたいんだが」
「なんでしょうか?」
 クロムウェルは、ワルドの腰を指差した。そこには細長い布袋がベルトに引っ掛けられている。
バンダナの下の、ワルドの左目が光った。袋の口を開け、中身を取り出す。クロムウェルと横にいるシェフィールドは、
思わず後ずさった。

「あ、貴方・・・なんでそんな物を持ってるの!?」
 シェフィールドの悲鳴にも似た問いに対し、ワルドは楽しげな顔で答える。
「これはワニキャップと言う物で、見ての通りワニの形をした帽子だ。水中で装備すると、敵兵などに見つかっても
怪しまれない特性が有る。単なるマヌケアイテムなどと、侮られては困るね」
 喋りながらワニの帽子を被るワルドに、二人は揃って引いている。勿論、心情的にだ。クロムウェルはハンカチを
取り出し、額を流れる脂汗を拭いた。

「な、なるほど。確かに、良いアイディアだね・・・マネはしたくないが」
「使い方次第では、有効な武器になるわね・・・マネしたくないけど」
 皇帝と秘書がジリジリと、その場から離れていく・・・その時、『ピルルッピルルッ』と言う独特の音が流れだした。
ちょっと失礼、と二人に言い残し、ワルドは左手を耳に当てる。

『私だよ、フーケさ。いきなりで悪いけど、ちょいと体を見てくれない?』
『体?』
 目線を下に向けた、足と足の間を。
『今日も元気だな』
『そこじゃ無いよ、バカ!』
 フーケの大声に、ワルドは鼓膜の心配をする。


『じゃあ、どこを見れば良いんだ?』
『脚だよ、脚』
 視線を脚に移すが、特に変化は無い。
『言い忘れてたけど、アルビオンと違って大陸側にはヒルがいるんだ。知ってた?』
『昼?』
『昼じゃなくてヒル、血を吸う生物のことさ。もし沼や川に入る時が有ったら、虫ジュースを使いな。噛まれた時は、
葉巻をヒルに押し付けるんだよ』
 テキパキと対処法が伝えられる。

『うん、まぁ注意する事にしよう』
『そうしておくれよ・・・あぁそうだ、もう一つ聞きたいんだけど』
『なんだ?』
『貴方、タバコ吸ってないかい?』
『煙草は吸ってない、葉巻は吸ってるが・・・それがどうかしたか?』
 無線機の向こうで、フーケが溜息を漏らす声が聞こえた。

『煙草は体に悪いって事くらい、貴方も知ってるでしょ。悪い事は言わないから、今の内に禁煙しな』
『官能的とすら言える濃厚な香り、この誘惑からオサラバするのは、辛いものがあるんだが・・・』
『肺ガンになって、この世からオサラバしたいのかい?』
 声のトーンを一段下げたフーケの声に、ワルドはビビる。

『分かったよ、これから先はヒルに吸わせる事にしよう』
『そうしな、じゃあ切るよ』
 スイッチを切り、無線機を戻す。ポケットからオロシャヒカリダケを取り出し、口に放り込んだ。即座に、バッテリー
が回復する。


「失礼しました皇帝、相棒の話が長いもので」
「別に謝る事は無いよ、女の話は長いと言うしね、ハハハ・・・」
 適当に返事をしながら、クロムウェルは秘書に流し目を送る。シェフィールドは居住まいを正すと、少し大きな声で
ワルドに状況を伝える。

「では子爵には、このままレキシントン号に乗り込んでいただきます。のちほど風竜を連れてきますので、それまで待機を」
「分かりました、では行ってまいります」
 雨除けのために巨大な布で覆われた戦艦に、フライの呪文で乗り込んで行く。姿が見えなくなると、皇帝と秘書は
赤レンガで出来た空軍発令所に向かった。ロッカーから鼾を響かせるボーウッドを、その場に残して・・・。





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