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割れぬなら……-15



ページをめくる、文字を目で追う。

……手にした本を、読んでる訳ではない。
これは対外的な行動に過ぎない。

自身の使い魔、シルフィードの背中の上で、タバサは思考をめぐらせる。
題目は、賈言羽の思惑について。

自分と同じように、シルフィードの背に乗ってエギンハイムに向かうこの男、一体何が目的なのだろうか?
以前ラドクリアン湖増水の原因を調査せよと命じられた時も、この男は同行を申し出てきた。
断ったら、ご丁寧な事にガリア王直筆の命令書を持ち出してきた。
2度目の同行となる今回の任務では、断られる前に命令書を用意してきた。
こうなっては、いくらなんでも置いて行く訳にはいかない。

正直な話、タバサは賈言羽が邪魔でしかたがなかった。
おしゃべり好きの使い魔が、いつ暴発するかわからなかった。
ほんの少しでも失敗すれば、ガリア王にどんな報告をされるかわかならなかった。
いや、この賈言羽という男自体が、ガリア王からの刺客である可能性も捨ててはならない。

いやしかし……と、タバサは違和感を感じた。

ラドグリアン湖増水は、水の精霊によるものだった。
それを聞いたタバサは、賈言羽に湖底に居ると思われる水の精霊を攻撃すると提案した。
しかし彼はそれを却下し、どんな手段を使ったのかはわからないが、たった1人で湖の水位を戻してしまった。
もしも賈言羽がタバサに殺意を抱いているのなら、水の精霊への攻撃案を却下するだろうか?
元々、人間が精霊と闘うなんて話は無謀な物だ。
タバサ自身に死ぬつもりはまるでなかったが、普通に考えれば人間が瞬殺されておしまいだ。
そんな黙っていてもタバサが死ぬような案を、わざわざ却下した理由は何なのだろう?

まるでタバサを庇っているかのようだ。

つい先ほどのやりとりを思い出す。
賈言羽は確かに汚物を投げられる事を予測していた。
事前に汚れ拭きをタバサに渡しておいて、わざわざ標的になりにいったかのように無防備に前に出た。

まるでタバサを庇っているかのようだ。

そして、イザベラとジョゼフを侮辱するかのような発言。
プライドの高い王女が父親に報告するかどうかは5分5分と言ったところ。
その報告がガリア王の怒りに触れるかどうかは……未知数と言わざるを得ない。
しかしガリア王と直接会談する機会の多い(らしい)賈言羽の発言である事を考えれば、
おそらく笑殺されるのではないだろうか。
ならば先の発言……いや、挑発の目的は何だろうか?

順当に考えれば、きっとタバサにガリア王との不仲をアピールするためだろう。

チラリ、と賈言羽の方に視線を移してみる。
実に無防備な姿で書類とにらめっこをしている。
その気になれば今すぐこの場で殺す事も可能だろう。
無論、そんな事をすれば実家に居る母親がどんな目に遭うかわかったものではない。
あるいは、それを承知の上でこの男は無防備な姿を晒しているのかもしれない。

まるでタバサに無警戒をアピールしているかのようだ。


結論:最大限の警戒が必要


まるで最速で信頼を勝ち得ようとしているかのような行動が、逆にタバサの警戒心を煽った。
単なる被害妄想の線も捨てきれないが、警戒不足で足元を掬われれば、父の仇を倒す機会が永遠に失われる事だろう。
こういう類の人物を無条件で信用しきれる程、タバサは平坦な人生を送ってはいなかった。
なんというかこう……まるで毒蛾のような臭いを賈言羽から感じるのだ。
毒蛾……毒蛾……毒蛾か!!
うん、我が事ながら実に的確な喩え方をしたような気がする。
言葉の意味は良くわからんが、とにかく凄い自信だ。

「タバサ殿、下を」

不意に思考が中断される。
本に意識がいっていなかった事、バレていないだろうか?
たぶん大丈夫だと思うが……残念ながら確認する手段は無い。

気持ちを切り替え、下を確認してみる。
事前情報の通り、そこには複数の翼人達が飛びまわっていた。
木々に阻まれて良く見えないが、喚声や悲鳴、その他戦闘を連想される音が聴こえてくる。
もし住民が襲われているのならば、救助に行くべきだろう。

「降下する」

簡潔に、賈言羽にこれからの行動を伝える。

「私は付近の地形を確認しております。
 明日の早朝までに合流いたしますので、翼人討伐はそれまで引き延ばしておいてくだされ」

「どこに降ろせば良い?」

「翼人から気取られぬ位置……西の端にでも」

「シルフィード。西の端に降下」

きゅい! と元気な返事がくる。
くれぐれも賈言羽の前で人間の言葉を使わないように……と、心の中で付け加えて、タバサは使い魔の背から飛び降りた。


……中略……

原作と全く同じ流れの部分は中略しても良いと思うんだよ。

……再開……

その日の夜、タバサは村長の家の一室で体を休めていた。
賈言羽とはまだ合流していない。
シルフィードが自分を魔法人形だと言われた事に腹を立て、ぎゃーすかぎゃーすか抗議の声を挙げている。

タバサは内心、焦っていた。
賈言羽には今まで使っていた『ガーゴイル』という言い訳は通用しそうもない。
もし村人達からシルフィードの話が出たら、かなり危うい事になる。
最悪、己の使い魔を見捨てる必要に迫られるかもしれない。

「そんな顔をせずとも、他言はいたしませんて」

タバサは後に『心臓が止まるかと思った』と語った。
シルフィードは後に『話し相手が増えたのね、けっこー嬉しかったのね』と語った。
賈言羽が居た。
音も気配も無くそこに立っていた。

「いつから?」

「つい先程より」

「首尾は?」

「下拵えは全て」

そう言いながら、賈言羽は一枚の布をタバサに渡した。
見れば、そこには1羽の蝶が描かれている。
……相応の知識が無ければわからないが、その絵は森の地図である。
蝶の右の羽に書き込まれた黒い斑点は森の輪郭を、左の羽に書き込めれた斑点は、森に仕掛けられている火薬の位置を示している。

「作戦は?」

「焼きます」

そう、賈言羽は答えた。



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