「ここはマジックワールドのトリステイン魔法学院。今2年生の進級に必要な春の使い魔召喚試験の真っ最中だぜ!」
既に召喚を終えた生徒達は、退屈そうにまだ召喚に成功していない唯一の生徒・ルイズを眺めていた。
彼女は目下20回目の挑戦中だ。
自身の起こした爆発で髪は乱れ服は埃にまみれ、目を血走らせ息を荒げても、まったく諦めないルイズをコルベールは密かに応援し続けていた。
ルイズはなおも大仰な呪文を唱え必死に杖を振るう。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しくそして強力な使い魔よ! 私は心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさいっ!!」
周囲に轟音が響き閃光が溢れる。
周囲はまた失敗かと呆れていたが、ルイズ本人の考えはまったく違った。
(手応えがあった!)
「……ゲホ、ゲホゲホ……ゲホゲホゲホゲホ……!!」
ルイズの確信に答えるかのように、白煙の中から男の激しい咳の音が聞こえてきた。
それと同時に白煙も薄まり、ぼんやりながらその中に3つの人影が見えてきた。そのうちの1つが激しく動いている。おそらくそれが咳き込んでいるのだろう。
「人間!? まさか平民じゃないわよね……?」
「あっ、何だあれは!?」
白煙が視界を妨げないまでに薄まった時、一同の目の前に現れたのは……、
彼女は目下20回目の挑戦中だ。
自身の起こした爆発で髪は乱れ服は埃にまみれ、目を血走らせ息を荒げても、まったく諦めないルイズをコルベールは密かに応援し続けていた。
ルイズはなおも大仰な呪文を唱え必死に杖を振るう。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しくそして強力な使い魔よ! 私は心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさいっ!!」
周囲に轟音が響き閃光が溢れる。
周囲はまた失敗かと呆れていたが、ルイズ本人の考えはまったく違った。
(手応えがあった!)
「……ゲホ、ゲホゲホ……ゲホゲホゲホゲホ……!!」
ルイズの確信に答えるかのように、白煙の中から男の激しい咳の音が聞こえてきた。
それと同時に白煙も薄まり、ぼんやりながらその中に3つの人影が見えてきた。そのうちの1つが激しく動いている。おそらくそれが咳き込んでいるのだろう。
「人間!? まさか平民じゃないわよね……?」
「あっ、何だあれは!?」
白煙が視界を妨げないまでに薄まった時、一同の目の前に現れたのは……、
――GP-01 三悪ツカイマ――
「うむむ……、いったい何事が起こったなり?」
真鍮色の鎧と仮面に身を包んだがっしりした体格の人間……いや、ゴーレムがそう呟いた。困惑を表現するかのように頭部から生える金属棒がゆっくり上下している。
「どうやら事故か何かで、ヒューマンワールドの外に転送されてしまったようでおじゃるな」
真鍮色のゴーレムにそう返したのは、召喚された中で唯一人間らしく見える銀色の部分鎧を纏った女性だった。
「ゲホゲホ……、そうとしか考えられんぞよ! ヒューマンワールドの空気はここまで綺麗ではないぞよ、ゲホゲホゲホ!」
激しく咳き込みつつも女性の発言に同意したのは背の高い鉄色のゴーレム。体の各所から煙を噴出している。
「あれがルイズの使い魔か!?」
「女は平民のようだが、ゴーレムを2体も連れてるぞ! 何者なんだ!?」
ルイズの召喚した正体不明の使い魔に一同がざわめく中、コルベールだけがその存在を示す音――咳に違和感を覚えていた。
(なぜ彼は咳を……?)
コルベールの疑問はもっともだ。
正史においてルイズが召喚した使い魔の故郷・ヒューマンワールドならともかく、ここマジックワールドにおいて常人が咳き込むほど空気の汚染された場所といえば、活火山の火口付近か何年も掃除されていないような埃の溜まりきった場所程度だ。
こんな自然溢れる中に建てられたトリステイン魔法学院においてここまで激しく咳き込むと、本来であれば何らかの病気を疑うのが自然だ。
しかし相手はゴーレム、病気とは考えられない。
(何か気になりますが……、判断材料が少なすぎますね)
現時点では考えてもどうしようもないと思い、唯一の人間と判断した銀色の鎧の女性に声をかける。
「失礼しますミス、私はこの学園の教師コルベールと申します。突然の事で困惑されるのは当然かと思いますが、まずはお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
その言葉に真っ先に反応したのは真鍮色のゴーレムだった。
「人間、コルベールと言ったな? まあ名前がわからねば呼びにくいのは確かなり。我が名は害地大臣ヨゴシュタインなり」
「わらわは害水大臣ケガレシアでおじゃる」
「害気大臣キタネイダスぞよ。コルベールとやら、とにかく状況を説明するぞよ」
「大臣だって!? とんでもない方を召喚したもんだな」
「下手打ったら戦争ものだぜ……」
「という事はあのゴーレムみたいなのも、凄い鎧を着てる人間って事だよな」
3人の発言に生徒達は騒然となり、コルベールも緊張を隠しきれない口調で答える。
「だ、大臣ですか……。それではミスタ・ヨゴシュタイン、ミスタ・キタネイダス、ミス・ケガレシア、率直に言います。皆様方はミス・ヴァリエールのサモン・サーヴァントによって召喚されたのです」
「召喚!? ……率直に言うぞよ、コルベール。……もしやここはマジックワールド……いや、ハルケギニアか?」
「マジックワールドという地名に心当たりはありませんが、ハルケギニアなのは確かです」
「やはりか。マシンワールドほど文明が進んでいないのに世界間転移が可能なのは、マジックワールドの魔法しかありえないぞよ」
「それで、皆様はミス・ヴァリエールの使い魔として契約していただく事になるのですが……」
「……まあいいでおじゃる。どのみちヒューマンワールドに戻ったところで手詰まりなのは変わらぬ。それならばマジックワールドを新たな標的にして、しばらくほとぼりを冷ますのが得策でおじゃる」
「ヴァリエール、だったな? さっさと契約とやらを済ますなり」
3人とコルベールとの会話を眺めていたルイズがおずおずと進み出る。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え我の使い魔となせ」
真鍮色の鎧と仮面に身を包んだがっしりした体格の人間……いや、ゴーレムがそう呟いた。困惑を表現するかのように頭部から生える金属棒がゆっくり上下している。
「どうやら事故か何かで、ヒューマンワールドの外に転送されてしまったようでおじゃるな」
真鍮色のゴーレムにそう返したのは、召喚された中で唯一人間らしく見える銀色の部分鎧を纏った女性だった。
「ゲホゲホ……、そうとしか考えられんぞよ! ヒューマンワールドの空気はここまで綺麗ではないぞよ、ゲホゲホゲホ!」
激しく咳き込みつつも女性の発言に同意したのは背の高い鉄色のゴーレム。体の各所から煙を噴出している。
「あれがルイズの使い魔か!?」
「女は平民のようだが、ゴーレムを2体も連れてるぞ! 何者なんだ!?」
ルイズの召喚した正体不明の使い魔に一同がざわめく中、コルベールだけがその存在を示す音――咳に違和感を覚えていた。
(なぜ彼は咳を……?)
コルベールの疑問はもっともだ。
正史においてルイズが召喚した使い魔の故郷・ヒューマンワールドならともかく、ここマジックワールドにおいて常人が咳き込むほど空気の汚染された場所といえば、活火山の火口付近か何年も掃除されていないような埃の溜まりきった場所程度だ。
こんな自然溢れる中に建てられたトリステイン魔法学院においてここまで激しく咳き込むと、本来であれば何らかの病気を疑うのが自然だ。
しかし相手はゴーレム、病気とは考えられない。
(何か気になりますが……、判断材料が少なすぎますね)
現時点では考えてもどうしようもないと思い、唯一の人間と判断した銀色の鎧の女性に声をかける。
「失礼しますミス、私はこの学園の教師コルベールと申します。突然の事で困惑されるのは当然かと思いますが、まずはお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
その言葉に真っ先に反応したのは真鍮色のゴーレムだった。
「人間、コルベールと言ったな? まあ名前がわからねば呼びにくいのは確かなり。我が名は害地大臣ヨゴシュタインなり」
「わらわは害水大臣ケガレシアでおじゃる」
「害気大臣キタネイダスぞよ。コルベールとやら、とにかく状況を説明するぞよ」
「大臣だって!? とんでもない方を召喚したもんだな」
「下手打ったら戦争ものだぜ……」
「という事はあのゴーレムみたいなのも、凄い鎧を着てる人間って事だよな」
3人の発言に生徒達は騒然となり、コルベールも緊張を隠しきれない口調で答える。
「だ、大臣ですか……。それではミスタ・ヨゴシュタイン、ミスタ・キタネイダス、ミス・ケガレシア、率直に言います。皆様方はミス・ヴァリエールのサモン・サーヴァントによって召喚されたのです」
「召喚!? ……率直に言うぞよ、コルベール。……もしやここはマジックワールド……いや、ハルケギニアか?」
「マジックワールドという地名に心当たりはありませんが、ハルケギニアなのは確かです」
「やはりか。マシンワールドほど文明が進んでいないのに世界間転移が可能なのは、マジックワールドの魔法しかありえないぞよ」
「それで、皆様はミス・ヴァリエールの使い魔として契約していただく事になるのですが……」
「……まあいいでおじゃる。どのみちヒューマンワールドに戻ったところで手詰まりなのは変わらぬ。それならばマジックワールドを新たな標的にして、しばらくほとぼりを冷ますのが得策でおじゃる」
「ヴァリエール、だったな? さっさと契約とやらを済ますなり」
3人とコルベールとの会話を眺めていたルイズがおずおずと進み出る。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え我の使い魔となせ」
「この後、コントラクト・サーヴァントの苦痛に耐えかねたケガレシアとキタネイダスが汚水と黒煙を撒き散らしよったせいで、生徒が全員倒れて学園中の水のメイジがてんてこまいしたんやけど、それはまた別の話や! ブイブイ!」