あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Persona 0-03



 ――我は汝 汝は我 私はイドゥン 私が胸に抱く林檎とは 貴女の胸に宿る不屈の輝きと知りなさい。

「ようこそ、ベルベットルームへ」
「あなたは……」
 長鼻の老人はルイズを歓迎するように腕を広げる。
「再びお目に掛かりましたな」
 掻き鳴らされるピアノの旋律、柔らかくも狂おしいその響きに心を掻き毟られるような錯覚を覚えながらルイズは彼に問いかける。
「あなたたちは誰なの? それに此処は……」
「以前申しましたように此処はベルベットルーム、人の精神と物質の狭間に存在する部屋。私たちは此処で“契約”を果たされた方の手助けをすることをその役割としております」
「“契約”?」
「そう“契約”だ、だが貴女はそれ無しに此処に参られた。故にその運命は私にも見通すことは出来ません」
 イゴールは手を組むと思案げな顔でルイズを見つめる。
「その見通せぬ場所に未知なる何かが眠っているのか、或いは我が主のお導きか、それとも私にもわからない全く新しい“何か”なのか」
 ともかく、とイゴールは続ける。 
「貴女は見事内なる闇を打ち破り“力”に目覚められた――ならば貴女は今宵からベルベットルームのお客人だ」
「こちらをお持ちください」

 ――契約者の鍵を手に入れた。

「貴女が手に入れた“ペルソナ”それは、貴女が貴女の外側の事物と向き合った時、表に現れ出る“人格”
 様々な困難と相対するために自らを鎧う、“覚悟の仮面”とでも申しましょうか」
 そう言うとイゴールはルイズの背後に浮かぶ半透明な影を見た。
「ほぅ、イドゥンでございますか。これはまた数奇なる因縁を感じますな」

 >イドゥン?

「それは此処とはまた異なる場所にて語られる神話に名を残す、女神の一人でございます。
 その娘は永遠を約する神々の林檎の管理者であり、故にこそ敵対する巨人たちによって拐かされた」
「ふーん、でもなんでそんな聞いたことのない神様が私のペルソナなのかしら?」
「さぁて、ひょっとしたら本当に今はいずこかへ御隠れになっている我が主の導きかもしれませんな、ですがお忘れなきよう。すべては貴女の無意識の海より産まれ出でたものなのですから」
 そこまで言って、イゴールはなにかに気づいたように自分の額を叩く。
「おっと長話が過ぎましたな、どうやらご友人がお待ちのようでございます。今宵はこれにて失礼させていただくことにいたしましょう」
「ご利用ありがとうございました」
「えっ、ちょっと待っ……」
 まだ大切なことを聞いていない、そう思ったがルイズの意識は急速に白くなっていく。



 気がつくと、目の前にキュルケの顔があった。
「どうしたのルイズ?」
「い、いやなんでもないわ」
 ぶんぶんと首を振ってぼやけた頭をしゃっきりさせる。
「何か気になるものでもあったの?」
 そう言って不思議そうに聞いてくるキュルケにはこの扉は見えていないらしい。
 しかもキュルケの反応からすると自分がベルベットルームに入っていた時間はほとんど経過していないみたいだった。
「別に、ちょ、ちょっとぼうっとしちゃっただけよ!」
 ルイズの言葉にキュルケは呆れたように溜息をついた。
「貴女が“ペルソナ”を試したいって言うから、こうして付き合ってるんでしょう?」
「そ、そうね、悪かったわよ」
 そっぽ向きながら言った言葉にキュルケは目を丸くする、普段なら憎まれ口が飛んでくる筈なのにここで素直に謝られるとは思っていなかった。
 だがすぐに口元を緩めてくすりと笑った。
 ルイズの話では“ペルソナ”とは仮面と言う意味らしい。
 きっと刺々しい“貴族の誇り”と言う仮面を外した下には、こういう普通の女の子らしい一面もあるのだろう。
「ほらルイズ呆けてる暇はないわよ……フレイムボール!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ――ヒステリービンタ!」
 そう言いながら新しく視界に入ったシャドウに向かって駆け出して行くキュルケと、それを追うルイズ。
 普段腐らせている魔法や新しく手に入れた力を使って戦い、それを磨く。
 日常に飽いた少女と、魔法を使いたいとずっと渇望し続けてきた少女二人は、こんな日常も悪くないと思い始めていた。
 ――その日の翌日、魔法学院の屋上に体の裏表が逆さまのある人物の死体がぶら下がるまでは 
「やったクマ、凄いぞルイズちゃん!」
 だけど今は笑う、手に入れた新たな力と新たな仲間と共に。
 ルイズは生きている。 



 その日、一人の女性と一本の剣が魔法学院の土を踏んだ。

「まったく奇妙な事件だな」
「こんな事件を任されたのが運の尽きだねぇ相棒」
「全くだ、こんなことなら警邏の仕事など引き受けるべきではなかったな」
 軽口を飛ばす相棒にため息一つ。
 使っていた剣を研ぎに出している間の急場凌ぎとして捨て値で買った代物だが、これがなかなかどうして役に立ってくれる。
「しかし分からん、何故ここなんだ?」
「貴族狙いで有名なスリが魔法学院でホトケになってたんだろ? だったら報復か何かじゃなんじゃねぇの」
「それにしてもこれはないだろう」
 そう言ってアニエスは空を見上げた。
 天に向かって聳え立つ火の塔の先端、そこにはもはや人としての原型すら留めないほど破壊された人の死体が引っ掛かっている。
「トライアングルクラスのゴーレムに握りつぶされてもこうはならんぞ?」
「奴さん、よっぽど恨まれていたんじゃねぇの?」
 その言葉にアニエスは苦笑する。
「恨まれていたか、そうかもな。だがそれにしても殺した後で魔法学院まで連れて来て吊るす理由にはならないのじゃないか?」
「さぁね、そこまでは俺っちにもわからんさ」
 そうしてアニエスはもう一度空を眺めると、嘆くように呟いた。
「全く面倒な事件だ、まるで霧のなかにいるみたいに……こんなところでぐずぐずしている暇はないんだがな」
「相棒、あんまり根を詰めるなよ」
 カタカタと鍔を鳴らすデルフリンガーをきつく握りしめ、アニエスは言葉を返した。
「そう言われようと止まれないさ私は、仇をこの手に掛けるまでは……な?」
「そうかい、それじゃあまずは第一発見者の話でも聞きに行くことにしようか」
 口の悪い剣は笑い、女剣士も苦笑しながら歩きだした。
 まるで霧のように捉えどころのない事件へと向かって。



 その日は朝から学院の雰囲気がおかしかった。
 あちこちで囁かれる噂、と平和な学園に満ちるきな臭い匂い。
「でさぁ、火の塔の屋上に……」
「裏返し? うわっなにそれ……」
「しかしこの魔法学院に賊なんて……」
 火の塔の屋上? 魔法学院に賊?
「どうしたのルイズ!? 顔が真っ青よ」
「――なんでもないわよ」
「でも……」
「なんでもないったら!」
 キュルケに怒鳴ってしまってからルイズは自分の言葉に驚いたように唇に手を当てた、怒鳴るつもりなど全く無かったのに胸の奥をチリチリと焦がされているかのよう。
 自分でも何にこんなに苛立っているのか分からず、ルイズは己自身に困惑する。
「ごめん、キュルケ怒鳴ったりして……」
「気にしてないわ、だって貴女が怒鳴っているのは何時ものことじゃない」
「ちょ、ちょっと! い、今聞き捨てならないことを聞いた気がするわよ」
「気にしない気にしない、それより早く食堂に行かないとお昼食べ損ねるわよ?」 
 そんな会話を交わしながら二人はアルヴィーズの食堂へと駆けていく、その背中を見つめる人影が一人。
 どこか寂しそうな眼で喧嘩しながら駆けて行く二人ことを眺めていた。
 一方、そんなこととは関係なくアルヴィーズの食堂では一人の生徒が時の人となっていた。
 青銅の二つ名を持つドットメイジ、ギーシュ・ド・グラモンである。




 事件、事件、事件、皆口を開けばそればかりだ! 本当ならば薔薇の美しさについて語り合いたいところだがお望みならば仕方がない。
 そう、僕は確かに見たよ、見てしまったよ! あのケチなスリが学院の塔に吊るされる決定的瞬間をね!
 暗くてよく分からなかったけど、あれはゴーレムだったのかな?
 最初はトロール鬼やオーガ鬼かと思ったけどどう見てもあの動きは生き物って感じはしなかったね。
 時間は真夜中の、日付が変わるかどうかってくらいかな? そんな時間に何していたのかって? ふふ、愚問だねこの薔薇のギーシュ・ド・グラモンにそんなことを聞くなんて。
 ソイツはまるで影みたいに闇のなかから現れると一息に学院の塔を駆け上っていった、それがあんまりにも速くて最初はフライでも使ってるのかと思ったくらいだよ。
 でも違ったみたいだね、塔の傷からすればアイツはなにかを塔の壁に突き刺しながら火の塔を登って行ったんだ。
 まるで化け物だね、そうでなければ先住のマジックアイテムじゃないかな?
 ほらよくあるだろ? 平民向けの安っぽい小説とかでガリアとかの作った魔法人形が暴走してって、あれさ。
 はは、思いつきで言っただけだけど、推理はいい線いってるんじゃないかな?
 さて僕はこのへんで失礼するよ、愛しい人を待たせているのでね。
 しかし気付いたのが僕だけって他のみんなは何をしてたんだい? けっこうな音がしたから、他に誰か気づいても良さそうなものだったんだけど……


「ああ、五月蠅かった」
「全くね」
 ギーシュが去った後二人は食後のお茶を楽しんでいた。
 噂に夢中の同級生たちは皆食事を終えて出て行ったため、食堂には人影はまばらにしかいない。
 やはりお茶は静かに楽しむものだ、できれば甘いもの――もっと贅沢を言えば大好物のクックベリーパイ……と一緒に。
 そんなことを考えていたルイズはふと自分に向けられた視線に気づく。
 一体どこから? と考えて周囲を見回すとケーキを配っていた平民の少年と眼が合った。
 ハルケギニアでは珍しい黒い髪と黒い眼、どうやって織ったのか分からない青い服を着て、怪我でもしたのかその両手には不格好に巻かれた包帯を付けている。
 少年はルイズと視線が合うと一目でわかるほどうろたえて、そそくさと厨房へと引っこんでいった。
「なにかしら、あいつ……」
 その態度に釈然としないものを感じる、だけではない。
 その少年の姿を見たとたん訳のわからない胸騒ぎが一層強くなった気がして、ルイズはぎゅっと拳を握り締めた。
「ねぇ、ちょっといいかしらそこのメイド?」
「はっ、はいっ。わたしですか貴族様!?」
 通りすがりのメイド――今引っこんでいった少年と同じ黒髪黒瞳の娘……を呼びつけた、メイドはおそるおそると言った感じでルイズに向かって頭を下げる。
「な、何か至らないところがご、ございましたでしょうか!?」
 まるで取って食われそうだとばかりの勢いで頭を下げるメイドの姿が少しだけおかしく、同時になぜか悲しかった。
「そんなに畏まらなくていいわよ、ちょっと聞きたいことがあるだけだから」
「きっ、聞きたいことでございますりゅでしょうか?」
 必死に敬語を使おうとしているらしいが必死すぎて呂律が回っていない上に、使い方がどこかおかしい。
 よほど貴族が恐ろしいのだろう、別に貴族は平民を取って食ったりなどしないのに……
「ええ、さっきケーキを配ってた平民が居たわよね、貴女と同じ目と髪の色をした」
「あ、はい、サッ、サイトさんですね」
「へぇ、サイトって言う名前なのね、アイツは」
「はっ、はい。半月ほど前いきなり学院の厨房にやってきて「給料はいらないから此処で働かせてください」って、身許がよく分からなかったんですけど、料理長のマルトーさんが殊の外気に入ったみたいでそれ以後一緒に働いて貰ってます」
 変わった人ですよねーと引き攣った顔で笑うメイドをよそに、ルイズはその名前を心のなかで反芻する。
 サイト、サイト、サイト――才人?
 ふと浮かんできた奇妙な文字に頭を傾げながら、ルイズはメイドに礼を言った。
「ありがとう、もういいわ」
「はっ、はい、失礼致します!」
 何度も頭を下げながら少年と同じように厨房へと下がっていくメイド、ふと横を見るとすごくにやにやした顔のキュルケ。
「へぇ、ルイズってああ言うのが……」
「いや、あのね、キュルケ」
「確かにそこまで顔が良い訳じゃないけど、悪くないわよね、可愛らしい顔してどこか陰がある感じとか」
「だからね、違うんだって」
「平民と貴族の身分違いの恋、故にこそ燃え上がるって奴なのかしら。うん、いいわね、アリよアリ」
 そこまで言うとキュルケはぐっと親指を突き出し、
「応援してるからね、ルイズ!」
「話を聞けぇぇぇ!」
 食堂に響くルイズの叫び。
 そんな二人を見つめる人影は、一人で黙々とハシバミ草のサラダをほおばっていた。





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