あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

スナイピング ゼロ-07




 ルイズは泣いていた。ラ・ヴァリエール家の中庭に有る、一つの池。そこに浮かぶ小船の中で、ルイズは毛布を被って
泣いている。母の叱責から逃れたら、何時も決まってここに逃げ込むのだ。そこは、自分の他には誰も近付かないから。
 そんな自分に、声をかける者がいた。年は十代の中頃、羽根付きの帽子を被り、顔は見えない。だが、ルイズには
分かった。親によって許婚と決められた、憧れの子爵様だから。

「子爵様、いらしてたんですか?」
「今日は君のお父上に呼ばれたのさ、あの話でね」
「悪い人ですね、子爵様は・・・」
 涙を拭い、なるべく普段の表情で子爵を見つめる。相手は目前に方膝を付き、ルイズの頭を優しく撫でた。

「ルイズ、君は僕のことが好きかない? それとも、嫌いかな?」
「そんなの、好きに決まっておりますわ。でも、私は小さいから良く分かりません・・・」
 それを聞くと、男は笑った。撫でている手とは逆の手を、ルイズに差し出す。

「ミ・レィディ、手を貸してあげよう。君のお父上には、僕が取りなしてあげるから」
「は・・・はい、お願いします」
 手を取り合い、小船から中庭に降り立つ。向こう側から母や召使達が駆け寄ってくるのが、ぼんやりと見えた。



「・・・・・・・・・あれ?」
 ルイズは自分のベットの上で、目蓋を開けた。時刻は草木も眠る丑三つ時、窓からは双月の光が差し込み、ルイズの
周りを祝福するかのように光り輝かせている。
 棺桶の一つからは、Zの大文字が幾つも連なった声が漏れ出ている。どうやら、セラスはぐっすり寝ているようだ。
壁際に立てかけられた剣からも、小さいながら声が漏れている。まさか剣が鼾をするとは、流石のルイズも『予想外デス』
静かに寝てくれよと思いながら、ルイズはベットから抜け出し窓枠に両腕を乗せると、過去への想いを馳せるのだった。



ルイズが二つの月を眺めている頃、フーケは監獄の中でベットに寝転び脱獄の方法を考えていた。
だが周りには粗末なベットと木の机の他には、何も無い。ご丁寧なことに、食器は全て木製であった。もし収監されたのが
西川寅吉や白鳥由栄であったならば、それでも脱獄できただろう。日本の脱獄トリオなど、フーケが知る由も無いが。

「まったく、女一人を閉じ込めるのにこの物々しさはなんなんだい? 女を敵に回すと恐ろしいって言うってのにさ!」
 そう言って不満を漏らすと、フーケは自分を捕まえた二人の使い魔の事を思い出す。鳥の如く弾丸を操る黒髪の女、
ゴーレムにすら穴を開ける大口径の銃を持つ女。どちらも、ただの人間とは到底思えない。

「たいしたもんじゃないの、あいつらは・・・あん?」
 監獄が並んだ階の上から、音が聞こえるのに気付いた。それは足音、誰かが近付いて来る音。ガシャガシャと拍車の音を
響かせながら現れたのは、長身で黒いマントを付けた人物。白い仮面で顔を隠し、長い杖を握っている。

「こんな夜更けに客人とは珍しいね、悪いけど茶飲み話なら諦めておくれ。ここには茶を飲むための道具も無いし、話す事も
無いんだから。それでも良いってんなら、どうぞ鍵を開けてベットに座りなさいな」
 フーケの挑発的な言葉にも、マントの人物は反応しない。ただ黙って、フーケを見つめている。気味の悪い態度に、フーケは
鉄格子を握り締めて更に挑発する。

「何とか言ったらどうなんだい、変な奴だね。それとも私を殺しに来た刺客様かい、だったら無駄足だったね。どうせ私は
縛り首、遅かれ早かれ地獄行なんだから!」
 両手を広げて降参のポーズを示しながら、フーケは相手の隙を窺っていた。杖が無くとも、体術で相手を倒せるかも
しれない。そのためにも、なんとか油断させて中に引き込まなくては・・・

「私は君と話をしに来たんだよ、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
 いきなり自分の貴族名を喋ったため、体が硬直し顔が蒼白になる。平静を装いながらも、震える声でフーケは尋ねた。


「あんた、いったい何者だい? その名前を知ってる奴は、この世から滅んだと思ってたけど・・・」
「我々はハルケギニアの将来を想い、国境を越えて繋がった貴族の連盟。我々の手でハルケギニアを一つに統一し、始祖
ブリミルが降臨なされた『聖地』を取り戻すのだ」
「バカ言っちゃいけないね、寝言は寝てから言いなさい」
 呆れた顔をしながら、フーケは黒マントの男が言った言葉を一笑した。
小競り合いが続く四国を、一つにする? しかも強力な魔法を操るエルフから、『聖地』まで一緒に??

「そんな荒唐無稽な話、聞くだけ無駄だね。そんなもんに私は興味は無いし、係わる積もりも毛頭無いね」
「『土くれ』よ、お前は選択する事が出来る・・・協力するか、ここで死ぬかだ」
 黒マントの男は、手にしている杖をフーケに向けた。鉄格子越しに魔法の攻撃を喰らったら、避ける事は出来ない。

「そんなのは選択するとは言わないわ、立派な強制よ。協力して欲しいなら、最初から言いなさいよ」
「それは、協力すると判断して良いのだな。では、我々と一緒に来てもらおう」
 そう言うと錠に鍵を差し込み、扉を開けた。外に出ると、フーケを背を伸ばして首をコキコキと鳴らす。

「その前に一つ、聞いときたい事があるんだけど・・・組織の名はなんて言うんだい?」
「レコンキスタ、熱狂的再征服だ」  

 ◇

翌朝、ルイズは何時も通り教室に現れた。後ろには、これまた何時も通りセラスとリップが同伴する。これまで散々に
セラスの魔乳を見ていたクラスメイトも、もう慣れたのか凝視する者はいなくなった。キュルケとタバサを除いては、だ。

 二人はフーケ討伐の日から、セラスとリップを特別な目で見るようになった。理由は、二人が吸血鬼だと分かったから。
帰りの馬車でルイズに二人の正体を問い詰め、セラスとリップが何者かを聞かされた。それは、信じがたいほどの事実。

 こことは違う、別の世界から来たこと ハルケギニアの吸血鬼とは、違う種族であること 太陽の光は大嫌いなだけで、
大敵では無いこと 非童貞または非処女ならば、幾らでもグールを生み出せること 心臓を貫かない限り、死なないこと


 それを聞いて最初こそ二人を恐れたキュルケとタバサだが、ルイズの説明で害は無いと知ると、すぐに態度を元に戻した。
それから学園に着くまで、ハルケギニアと地球の情報交換が始まった。楽しげに話し合う双方を見て、ルイズは安心した。
因みにギーシュもセラスを吸血鬼だと知る一人だが、今の彼はモンモランシーと如何にして仲直りするかで頭が一杯だった。

「ねえ、ルイズ。貴女、その顔どうしたの?」
 椅子に座ったルイズに声をかけたのは、香水のモンモランシーだ。水系統のメイジで、治癒を得意としている。

「顔? 顔がどうかした?」
「いや、なんか目の下にクマが出来てるから気になって。あと、涙の後があるから」
「あぁ、これね。昔の夢を見てる時に泣いてたみたいでね、途中で起きて眠れなくなっちゃって」
 そう言いながら、腕で顔をゴシゴシと拭った。窓辺で月を見たあとベットに戻ったのだが、眠れないため何度も窓辺と
ベットを往復した。そのため、少し寝不足になってしまったのだ。

「そうなの? じゃあ、私の出番って訳ね」
 そう言ってポケットから小さな瓶を取り出すと、机の上に置いた。

「飲み薬に改良した睡眠薬よ、また眠れなくなったら飲みなさい」
「あ、ありがと」
「良いって事よ。寝不足は肌の大敵、女にとって死活問題なんだからね」
 手を振りながら、モンモランシーは自分の机に戻って行く。そこへ、ガラッと扉が開いて教師が入って来た。

「知っての通り、私の二つ名は疾風。疾風のギトーだ、これより授業を始める」
 長い黒髪に漆黒のマントを羽織った不気味な姿に、教室中がシーンと静まる。その様子に満足すると、ギトーは
キュルケに顔を向けた。

「ミス・ツェルプストー、最強の系統は何か分かるかね?」
「『虚無』を含めてですか、それとも除いて?」
「除いてだ」
「ならば『火』ですわ、ミスタ・ギトー」
 キュルケは不敵な笑みを浮かべて、そう言い放った。すぐ横では、セラスが壁に背を預けて座って寝ている。リップは
セラスの太股に頭を乗せて寝ている、言わゆる膝枕だ。


「『風』です。虚無を除いた四系統の呪文の中で最強の系統はどれでしょう、風でした。参りましょう、アタックチャンス!」
「ちょっと待って下さいミスタ・ギトー、キャラ変わってませんか!?」
「と言うのは冗談として、だ。ミス・ツェルプストー、君の得意な火の魔法を私にぶつけてくれないかね」
 当然の爆弾発言に、キュルケを含めた全生徒が目を見開いた。『何を言ってるんだ、このオッサンは!?』と言う想いが、
駆け巡る。キュルケは少し悩んだ後、胸の谷間から杖を抜いた。

「分かりました・・・では」
 笑みを消すと呪文を詠唱し、1メイルほどの巨大な火の玉を作り出した。周りの生徒が机の下に隠れるのを確認すると、
杖を前に突き出して炎の玉を飛ばした。だがギトーは避けようとせず、杖を振るって炎の玉を掻き消してしまった。
それでも風の勢いは収まらず、キュルケまで吹っ飛ばした。杖を懐に仕舞い、ギトーは言い放つ。

「『風』が最強たる理由は一つ、『風』は全てをなぎ払う。『火』も『水』も『土』も、『風』の前では屈しざるをえない。
もしかすれば、『虚無』すら吹き飛ばすかもしれんな。君達の前で試せないのが、ちょっと残念だが」
 椅子に座って不満そうな顔をしたキュルケを見ても、ギトーは気にした素振りを見せない。そこで何かを思い出したのか、
再び杖を握った。

「もう一つ、『風』が最強である理由を見せよう。ユビキタス・デル・ウィンデ・・・・・・」
 呪文を詠唱していた、その時だった。教室の扉が開かれ、妙な格好をしたコルベールが姿を現した。

「どうしたんですかミスタ、今は授業中ですよ」
「ミスタ・ギトー、ちょっと失礼しますぞ!」
 頭を下げながら入ってきたコルベールを見て、教師と生徒の頭に『?』マークが浮かんだ。何故かコルベールはロールした
金色のカツラを被り、ローブの胸にレースの飾りや刺繍などを施しているのだ。まるで、偉いさんを迎え入れるかのように。
 ギトーの隣に立つと、コルベールは重々しい調子で言った。


「皆さんに大事な知らせがあります、そのため今日の授業は中止とします!」
 『中止』と言う言葉に、生徒達から歓喜の声が上がる。ギトーだけは違うが、気付かずコルベールは続ける。
「皆さん、本日は我がトリステイン魔法学園にとって喜ばしい日です。恐れ多くもアンリエッタ姫殿下が、ゲルマニアご訪問
の帰りに、この魔法学園に立ち寄られるとのことです。したがって本日の授業を全て中止し、全生徒と全教師は正装して門に
整列すること!」

 生徒達は授業中止の理由を知ると、一斉に緊張した表情になり頷いた。ギトーも姫殿下では中止も仕方無いと諦め、頷く。
コルベールは目を見張って大声で吼えた。
「諸君が立派な貴族に成長した事を姫殿下にお見せする、絶好の機会です! 御覚えが宜しくなるようにキチンと杖を磨いて
おきなさい。では、解散!」
 そう言ってコルベールが扉を指差した時、頭に乗せていたカツラが床に落ちた。席を立とうとしていた生徒が、くすくすと
笑っている。そこへ本を閉じたタバサがコルベールの焼け野原と化した頭を指差して、ポツリと呟いた。

「ハゲ茶瓶」
 教室が吉本劇場のように爆笑に包まれた、キュルケが腹を抑えながらタバサの肩をポンポンと叩く。
「今の、良かったわよタバサ。ミスタ・ギトー、タバサに座布団を一枚」
 山田君の代理を頼まれたギトーも、口と腹を抑えて悶絶していた。コルベールは沸騰したヤカンのように顔を真っ赤に
させると、大きな声で怒鳴った。

「黙りなさい! ええい黙りなさい、糞蛾鬼どもが! 人の前で大口を開けて笑うとは、貴族にあるまじき行為! 貴族とは
笑う時は顔を背けて、小さく笑うものです! これでは王室に教育の成果が疑われる、オマケにミスタ・ギトーまで笑って!」
「んが~」
「はい誰ですか、人が説教してる時に寝てるのは?」
 犯人はルイズの後ろで眠っている、セラスとリップだった。鼾をかきながら、セラスはリップの頭を無意識に撫でている。
リップは手で顔を擦っている、まるで猫だ。コルベールは顔を引き締め、ルイズに注意する。


「ミス・ヴァリエール、使い魔を起こしなさい」
「はい、今すぐに」
 席を立ち、使い魔の元へ走り寄った。傍らに座り、セラスの肩を掴んで前後に揺する。

「ちょっとセラス、起きなさいよ」
「ぐ~」
「セラス・・・セラス・・・・・・セラスったら!」
「ぐふ、お年寄りがねぇ・・・むにゃむにゃ」
 揺すっても名を呼んでも、セラスが目を覚ます様子は無い。溜息をつくと、ルイズはセラスの耳元に顔を近づける。
その際に膝が頭に当たり、リップが目を覚ました。立ち上がって伸びをしてるのを横目に、ルイズはボソリと呟いく。

「・・・・・・ゴロンボ~」
「は!?」
 瞬時に目を覚ますと、セラスは周りを見回す。他の生徒は教室を後にしており、誰もいない。教壇で腰に手を当てた
コルベールが、二人に説明した。

「ミス・セラスとミス・リップは、ミス・ヴァリエールと行動を共にするように。急いで部屋に戻って襟元を正し、門に
整列すること」
 それだけ言うと、コルベールはギトーと共に教室を出て行った。何が何やら分からないセラスは、ルイズに尋ねる。
「女王陛下が来る」のだと説明を受け納得すると、ルイズの後を追ってリップと共に部屋へ戻って行った。

 ◇

 二台の馬車が聖獣ユニコーンに引かれながら、魔法学園へと伸びる道を進んでいる。馬車の扉には、王女が乗っている
事を示す紋章が描かれていた。そして周囲は王室直属の近衛隊である魔法衛士隊の面々によって、厳重に警護されていた。

 街頭を通っていた平民達からは、歓喜の声が何度となく降り注いだ。馬車が自分達の前を通るたびに、
『トリステイン万歳! マザリーニ枢機卿万歳! アンリエッタ姫殿下万歳!』と、歓声が沸き上がる。だが馬車に乗る
王女アンリエッタと枢機卿マザリーニには、その声を穏やかな気分で聞く事は出来なかった。二人の間には今、政治の話が
取り交わされているのだから。


「アルビオンの王党派は、すでにニューカッスル城にまで追い詰められてしまったそうですね。今は篭城戦だそうですが、
何時まで耐えられるか・・・」
「貴族派は多数のメイジや傭兵達によって、数は圧倒的ですからな。アルビオン王家は、もって数日で倒れるでしょう。
始祖ブリミルが授けし三本の王権のうちの一本が、これで途絶える事になります」
 悲しげな顔で話すアンリエッタとは対照的に、マザリーニ枢機卿は極めて落ち着いている。流石は先帝が亡くなってから、
国の政治を一手に握っているだけの事はある。

「聞いたところによると、貴族派の者達はハルケギニアを統一するなどと言ってるそうですね。そうなると、ウェールズ
皇太子を亡き者にした後は我がトリステインに杖を向けてくるでしょう」
「その通りです殿下、だからこそ先を読み先に手を打たなくてはなりません。もはや成立は間違いないであろうアルビオン
新政府に対抗するためにも、ゲルマニア政府との同盟は必須なのですから」
 同盟と言う言葉を聞いて、アンリエッタは視線を落とした。その姿を見て、マザリーニは慰めの言葉をかける。

「殿下、お気持ちは分かります。好きでも無い男と結納を結ぶ事が如何に辛い事かは、男である私ですら理解できます。
ですが、これも小国トリステインのためなのです。我が国だけでは、アルビオンに対抗する術は無いのですから」
 だが、アンリエッタは顔を上げない。それ所か左手で右腕を抑え、全身が震えだした。様子が可笑しい事に気付いた
マザリーニが肩に手を乗せようとした時、アンリエッタが勢い良く顔を上げた。それと同時に右手からは、一輪の花が
飛び出す。驚く枢機卿に、ゆっくりと右手を差し出す。

「枢機卿、花を引っ張ってみてください」
「花をですか? まぁ、別に構いませんが・・・」
 了承して花を掴み、ゆっくりと引っ張る。するとどうだろう、ハルケギニアに存在する国々の国旗が糸に繋がってスルスル
と伸び出て来たではないか。唖然とする枢機卿に、アンリエッタは悲しそうな表情で問いかける。


「カリオストロ公国大公家の継承者には、世紀の大泥棒が救いの手を差し伸べられました。では私には、救いの手が差し
伸べられるでしょうか。ねえ、枢機卿どの?」
 まるで『茨ーの道も~凍てつーく夜も~、二人で渡って、行きたい~』とでも言いたげなアンリエッタに、マザリーニは
二の句が告げられない。話題を逸らそうと、窓を開いて近くの衛士に声をかける。

「お呼びでございますか、鳥のほn・・・猊下」
「ワルド君、魔法学園には後どの程度で到着するのかね?」
「もうそろそろだと思いますが・・・あ、見えてきました。あちらです」
 マザリーニが窓から顔を出して見ると、遠くに魔法学園の正門が見えた。顔を引っ込めるとアンリエッタに下車の用意を
するよう伝え、球帽を深く被った。


「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下の、おな――――り――――――ッ!」
 魔法学園の正門をくぐった先にある、本塔の玄関前。そこに馬車が止まり、衛士の呼び声で王女が赤絨毯を踏み締める。
それと同時に整列した生徒達が、一斉に杖を掲げた。その中の一人、ルイズの横に立つ二人の使い魔も列に加わっていた。
 リップはマスケット銃を掲げ、セラスはハルコンネンの代わりにデルフリンガーを抜き身の状態で掲げている。

「やっと俺ッチの出番が来たね、こんな時まで部屋に置きっぱなしにする相棒はヒデェ奴だなぁ」
「す、すいません・・・。でも私は剣とか扱えないし、武器はハルコンネンがあるし・・・」
「だったら弾切れの時の保険代わりでも良いから背中に背負ってくれ、そうじゃないと寂しくて死んじゃう!」
「ちょっと二人・・・って言うのは変だけど、静かにしなさいよ。女王陛下を前にして、失礼は御法度よ」

 杖を掲げたまま顔だけを横にして、ルイズが一人と一剣を注意する。姫殿下と枢機卿を真っ直ぐ見つめていたリップが、
クスリと笑った。因みに今日は晴天で時間は昼前、二人の吸血鬼の真上には太陽が輝いている。どうやって日射を防いで
いるかと言うと、リップが右手で銃を掲げ左手で傘を掲げているから。その中にセラスが入ってる、相合傘の状態なのだ。


「あれがトリステインの姫ねぇ・・・うん、やっぱり私の方が美人だわ」
「ちょっと待ちたまえキュルケ、今のは聞き捨てならないね。姫殿下を侮辱するのは、この僕が許さないよ」
 モンモランシーと隣り合っていたギーシュが、キュルケの発言に噛み付く。しかしキュルケは気にする事も無く、セラスの
背中に話しかける。

「ねえ剣さん、貴方は王女と私のどっちが美人だと思う?」
「そんなの、剣の俺には分からねぇよ。そう言う話は、人間さんで勝手に決めてくれ」
「そんなこと言わずに、どっちか決めてみてよ」
 鞘に戻されたデルフを掴み、キュルケはなおも問いかける。少しカチャカチャと音を立てると、デルフは言った。

「ど・っ・ち・に・し・よ・う・か・な・天・の・神・様・の・言・う・通・り・・・うん、キュルケお前が美人だ」
「キャーやったわ、なんか良く分かんないけど私が美人に決定!」
 一人で盛り上がるキュルケに笑みを浮かべながら、セラスはルイズを見た。学園長のオスマンと話をしている女王陛下
に見つめている・・・が、その時ルイズの顔に変化が起きた。何かに驚いたのか目を見開くと、顔を赤らめたのだ。
ルイズの視線を辿ると、そこには羽帽子を被り、髭を伸ばした貴族が立っている。なんだか妙チクリンな動物に跨り、
陛下を警護しているようだ。
 「これはもしや・・・」と思いリップに顔を向けてると、同じ方向に視線を向けている。そしてセラスの視線に気付くと、
右手を握り締めた。何故か親指を、人差し指と中指に挟んでいる。それを見て、セラスはルイズと貴族の関係を理解した。

そして、その日の夜。
部屋で眠る準備をしていたセラスは、ベットに目を向ける。そこにはベットに腰掛け、枕を抱き締めてボーッとするルイズ。
 昼間にロリコン貴族を見てから、ずっとこんな調子だ。このままだと消灯しても幽霊みたいに歩いてタバサに怒られそう
なので、なんとか眠らせることにする。

「マースタ~、もうすぐ眠りの時間ですよ~。ネグリジェに着替えてくださ~い」
 それでも、ルイズは動かなさい。どうしたもんかと考えていると、リップが隣に立つ。そして首に手刀を叩き込もうと、
右腕を振り上げようとした、その時。ドアが、軽くノックされた。


「誰だろ?」リップがセラスに促す、『貴女が出なさい』との事だ。
 ノックは規則正しく、初めに長く二回そして短く三回。何かの合図だと認識したセラスは、棺桶の横に置いたハルコンネン
を掴み取る。放射線マークの絵柄が描かれた弾薬箱から劣化ウラン弾を取り出し、薬室に詰め込む。ゆっくりとドアに
近付き、鍵を開けた。その瞬間、小柄で黒い頭巾を被った少女が飛び込んで来た。

「ちょっと、誰ですか貴女!? 不法侵入者には、誰何を3回して応答が無い場合は射殺する決まりに」
「待って下さい、私は怪しい者ではありません。ちょっと、ルイズに用がありまして」
「え、マスターにですか?」
 セラスが銃を下ろすと、少女は懐から杖を取り出した。軽く振って光の粉を撒くと、頭巾を脱ぐ。そこでルイズが気付き、
ブラウスを着て立ち上がった。

「姫殿下!」
 三人の前に現れたのは、昼に学園を訪問したアンリエッタ王女だった。ルイズが慌てて膝をつくのを見て、セラスも隣
に膝をつく。リップは突っ立っていたが、ルイズに睨まれたため大人しく膝をついた。

「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」





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