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第21話 虚無<ゼロ>のティファニア


ルイズは困っていた。
「皿洗いくらい手伝いな」
とマチルダに言われた。
そんな下々の仕事をと思ったが、自分はこの家に厄介になってる身。
言葉に任せようかとも思った、指輪を取られて不機嫌そうなので頼みにくい。
だから仕方なく皿洗いを始めたのだが……。

「ルイズ、そんなに強くこすっちゃお皿に傷がついちゃうわ」
右隣にティファニアも立っていた。家事は自分の仕事だから一緒にやろうと言ってきた。
それはいい。
「ずいぶんお皿が多いですね。子供達の分……ですか?」
左隣に言葉も立っていた。ルイズがやるなら自分もやりますと言ってきた。
それはいい。
しかし「じゃあ二人に任せていいかしら」と言ったら、
言葉は「ルイズさんがやらないなら私もやりません」と言うし、
そんな風にティファニア一人に皿洗いを押しつけたら悪役になってしまう。
こうして三人一緒に皿洗いをしている訳だが。
(何で私が真ん中なの?)
ティファニアが身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。
言葉が身体を傾ける。たわわな柔肉がルイズの腕に当たって形を変える。
左右からの苛烈な乳房責めを受け、ルイズの脳みそは沸騰寸前だった。
(私はノーマル、私はノーマル、私はおっぱい、私はノーマル……。
 クールになれ、クールになれ、素直クールになられ、クールになれ……。
 うろたえるな、うろたえるな、ウロヤケヌマ、うろたえるな自分ー!!)
言い聞かせる。自らに命ずる。ノーマルで在れ、クールで在れと。
なぜならルイズ・フランソワーズは女の子! 花も恥らうツンデレ乙女!
それが同性の肉袋如きに惑わされてどうするというのだ!
「きゃっ」
「えっ」
ティファニアが悲鳴を上げると同時に左手がやわらかい何かに呑み込まれていく。
それはティファニアの乳房だった。指が吸い込まれる。何この脂肪の塊という名の芸術。
(天の願いを胸革命に刻んで心頭滅却すれば火もまた火とひとつになれば炎となる。
 煩悩退散煩悩退散、煩悩おっぱい困った時は、オラオラ、はしばみ、オラオラ、はしばみ)
頭の中で意味不明の念仏を唱えるルイズ。嗚呼、虚乳コンプレックスここに極めり。

「……ぼんやりしてると、お皿、落としちゃいますよ」
言葉の右手が、ルイズの左手に、伸びて、
薬指の水のルビーの表面を撫で、中指のアンドバリの指輪に、触れ、
ガシャン。
皿が滑り落ちた。
ルイズは慌てて自分の手元を、ティファニアはルイズの手元を見た。
その前に言葉はルイズの左手から素早く手を引いていた。
「……だから、言ったじゃないですか」
「あ、ごめん。ぼーっとして……」
謝ろうとして言葉の方に顔を向けようとして、洗い場から泡だらけの手を引いて、
肘が言葉の雄大な谷間に直撃。
「あんっ……」
熱っぽい言葉の声に、余計慌てたルイズはてんやわんや。
「わっ、痛かった? ごめ……ひゃうっ!?」
慌てて言葉から身を引いたため、隣にいたティファニアの胸に後頭部からダイブ。
「きゃあっ!?」
突然の出来事だったためティファニアはルイズを支えられず、そのまま転倒。
「あっ……」
反射的に言葉はルイズが転ばないよう腕を掴もうとした。
掴んだ。
引っ張られた。
バランスが崩れた。
結果、ティファニアの上に二人分の体重がのしかかった。
「きゅ~……」
倒れた時に頭を『前後』から打って、もうろうとしているティファニア。
思いっきり倒れこみ、ティファニアのおでこに自身のおでこをぶつけてしまった言葉。

その間で、ルイズが挟まれていた。
頭の左斜め後方! ティファニアの左乳房確認!
頭の右斜め後方! ティファニアの右乳房確認!
頭の左斜め前方! 言葉の右乳房確認!
頭の右斜め前方! 言葉の左乳房確認!

ぱふぱふ……などというレベルではない。威力倍増にも程がある。
しかもどちらも威力は極上。
頭を打ったせいで小さく身じろぎするティファニアと言葉、
そのせいで肉のマッサージを受けるルイズの顔。
「お、おお……」
声にならない声が漏れ、それが甘い吐息となって言葉の肉丘を撫でるように吹き抜ける。
「んっくぅ……」
言葉が身をよじる。巨大な肉は面白いほどに形を歪め、ルイズの顔を圧迫する。
「むおおー……」
圧倒的圧力に押され、ルイズは後ろへと逃げる。しかし後ろはティファニアの肉枕。
底なし沼のように沈んでいく。
深いの谷に呑み込まれていく。

(お、おおお、おおちちちちちちち、ち、ちちぶささささ、くにゅうにゅう……)

至高の感触に思考は断絶され嗜好が覚醒する。

虚であるが故に巨に恋焦がれ続けたルイズ・フランソワーズ。
白き肉の奔流に溺れながらも、唇を焦がす程に熱い美酒を貪欲に飲み干す。
女王蜂の発するフェロモンの如き汗の香りは心肺を侵略し理性を四散させる。
まるで生き物のように姿を変えながら這い回る四つの白い球。
それはまさに生き物であり、魅惑の効果を放ち続ける"巨夢の魔法"であった。

(そう、私は伝説を体感した――!)

視界が真っ白い光に包まれる。
それは星の光だった。
意識が天空の頂をも飛び越え星々にまで至ったのだ。
星光の中、ルイズは悟る。

("巨夢"は、此処に在る)

嗚呼、始祖ブリミル。
有難う御座います。

第21話 巨夢のティファニア
完?



「……何やってんだい?」
ルイズ達が盛大に転んだ音を聞きつけて戻ってきたマチルダが、
凶器の域に達した乳房に顔をふさがれ窒息して臨終寸前のルイズを救出する。
実は本気で危なかったルイズだが、息を吹き返した途端、恍惚の表情でこう抜かした。
「もう……死んでもいい……」
「だったら死にな、来世は牛になるよう願うんだよ」
呆れ返ったマチルダは、皿洗いの続きを言葉とティファニアに任せ、
朦朧としたままの精神的な意味で危ないルイズを、言葉が使っていた部屋に運んだ。
そしてティファニアが面倒を見ている子供達に、ルイズが大の苦手の蛙を取ってこさせると、
躊躇微塵も無く蛙をルイズの顔面に乗せてやる。
これこそ魔法学院で得た知識(ゼロのルイズの下らない噂や悪口)の有効活用である。

天にも届くような悲鳴と共に、ルイズはお星様から帰って来た。

一方、足手まといのルイズがいなくなったおかげで素早く皿洗いを終えた言葉とティファニア。
ルイズがいないから何を話したらいいか解らないが、
楽しくお話できたらいいなとティファニアは思う。
「あの、コトノハは――」
「すみませんが、この家を案内してもらえませんか? ウェールズさんにもご挨拶したいですし」
「案内するほど広い家じゃないけれど……コトノハもウェールズと仲がいいの?」
「いいえ、あまり」
共通の話題を見つけたと思った直後に潰された。
それでもめげず、ティファニアは言葉に部屋を案内した。
といっても、台所とくっついてる居間を除けば部屋は二つしかない。
ひとつはティファニアの部屋で、先日まではルイズが使い、今は言葉が使っている。
もうひとつの部屋はウェールズを担ぎ込んで、ずっと彼が使っているそうだ。
「ではルイズさんはどの部屋で?」
「居間の暖炉の前で。私とマチルダ姉さんと三人一緒に毛布で寝ました」
「そう……ですか」
つまらなそうに言葉は言った。
なるほど寝込みに指輪を盗もうとしても、マチルダと一緒なら気づいてもらえる。
(私……何を考えてるの)
視線を伏せ、左手を軽く握った。甲に刻まれたルーンが目に留まる。
(……でも、誠君のためだから……)
ルイズと一緒にいたい。
それ以上に誠と。
それが言葉。

「ところでルイズさんは大丈夫でしょうか……」
「すごい悲鳴だったものね。マチルダ姉さん、いったい何をしたのかしら?」
言い終わるとほぼ同時に家の戸が開き、フードのついたローブを着たマチルダが入ってくる。
ルイズの悲鳴の後、マチルダは心配無用と告げて納屋に向かったのだが、
どうやら旅支度を整えてきたようだ。
「マチルダ姉さん、出かけるの?」
「ああ、港町ダータルネスまでね。夕食はいらない、遅くなるから先に寝てな」
「港町にお仕事?」
マチルダの本業を知らないティファニアの純粋な疑問だった。
暴露してやろうかという意思があった訳ではないが言葉は冷笑し、
それが酷くマチルダの癇に障った。
「コトノハ。余計な事をしでかしたら、いくらあんたでもただじゃおかないよ」
かつて言葉の狂気と凶器に恐怖し屈服した女が言ってのけたのは、
精神的に成長したとかではなく単純に言葉という人間に慣れただけである。
「……お気をつけて」
どうでもよさそうに言葉は見送る。
多分、トリステインに帰る船を調べに行くのだろうと察しながらも。
賄賂を渡して船の片隅に乗せてもらうか、それともひっそりと密航するか。
どちらにせよ、無駄な努力である。

ルイズもマチルダも、アンドバリの指輪が死者を生き返らせると知っている。
だが人の意思を操る事を知っているのは言葉のみ。
港町ダータルネスに着いたら堂々と正面から、指輪で操った兵に船へ案内させればいい。
だから、一応味方の立場にいるマチルダに無駄な労力を負わせる必要はない。
が、ルイズの側にいられては指輪を取る障害となる。
だから行けばいい、港町ダータルネスへ。
マチルダが帰ってくる頃には、きっと誠も生き返ってるだろう。
この家を出て行くまでなんて、待てないから。

事件は昼に起こった。
教会でルイズを裏切った事、レコン・キスタに侵入した時の事を直接聞きたいとウェールズが言い、
どこまで正直に話すかは疑問だが言葉はそれに応じた。
その間、ルイズとティファニアは外で洗濯物をほしていたのだが、
見るからにガラの悪い男達が十数人という数で、それぞれ武器を持ってやって来た。
「何か用?」
強気に出るルイズだが、男達は下卑た笑いをする。
「こいつぁいい。まだ乳臭いガキだが極上の上玉だ。そっちのデカ乳も入れりゃ、大儲けよ」
「あんた達、盗賊?」
「貴族派の傭兵だよ。本隊とはぐれて、満足に飯も食えねぇ有様さ。
 そこでちょっと小金を稼がせてもらおうと思ったが、お前さんりゃを売れば金貨四千はいくぜ」
「貴族派の傭兵?」
ルイズは一瞬、ウェールズと言葉がいる部屋へ視線をやった。
口振りからしてルイズとティファニアをいかがわしい目で見ているようだが、
それはむしろルイズを安心させた。
貴族派にウェールズの居場所が知られた訳ではないようだ。
しかしここで彼等の略奪を許せば、家の中にいるウェールズも発見されてしまう。
この数が相手では"ゼロ"のルイズでは歯が立たない。
ティファニアはハーフエルフとはいえ魔法は使えないようだし、二人ではどうにもならない。
こういう時に頼りになりそうなマチルダは現在留守。
となれば、まだ回復してないながらトライアングルメイジであるウェールズと、
ガンダールヴの力を持つ言葉に頼らねばこの窮地を脱する事はできない。
助けて、と悲鳴を上げれば家の中の二人に声は届くだろう。
しかしそれまでの間に、もし、自分達が捕まって人質にされようものなら……。
いっそ家の中に逃げ込むか?
いや、貴族が卑しい盗賊風情に背を向けたとあってはヴァリエール家末代までの恥!
「テファ、私が囮になってる間に、コトノハとウェールズ様に助けを求めて」
小声で指示され、ティファニアは一歩、前に出た。

ナウシド・イサ・エイワーズ……。

振り向くルイズ。貴族しか、メイジしか持たぬ杖を、ティファニアが持っていた。

ハガラズ・ユル・ベオグ……。

勤勉なルイズは魔法を使えない身の上なれど、学院で学んだ魔法の詠唱はすべて暗唱できる。

ニード・イス・アルジーズ……。

だがこんな詠唱は聞いた事がない。火ではない、水ではない、風ではない、土ではない。

ベルカナ・マン・ラグー……。

でも不思議と、ルイズはこの詠唱を知っている気がした。懐かしいとさえ思う。
脈々と受け継がれてきた血が知っていた。この詠唱は本物だと。
「テファ……?」
問いかけると同時に、ティファニアは小さな杖を振り下ろす。
大気が歪み、男達を包み込むと、霧が晴れるように消えうせる。

「……ありゃ? 俺達、ここで何してんだ?」
「つーか、ここどこよ?」
うろたえる男達に、ティファニアは落ち着いた声で言う。
「あなた達は森に偵察に来て迷ったのよ」
「はえ? そうなのか?」
「隊はあっち。森を抜けると街道があるから、北に真っ直ぐ行って」
「ああ……そうする」
ふらふらと、寝惚けているかのような、あるいは酔っ払っているかのような足取りで、
男達は森の方へと立ち去っていく。
その光景を見て、ルイズは何も言えなくなってしまい、口をパクパクとさせていた。
そんなルイズを見て、ティファニアは恥らうような声で言う。
「か、彼等の記憶を奪ったの。"森に来た目的"の記憶よ。
 この村の事も、私達の事も忘れちゃってるから大丈夫
「せ、先住魔法?」
違うと確信しながらもルイズは問わずにはいられなかった。
先住魔法なら杖は必要ない。だから系統魔法のはずなのだ。
詠唱を聞いてた時に感じていた確信めいた何かを、今はもう感じない。
だから訳が解らなかった。
ただ確かなのは、ティファニアが"記憶を奪う"という魔法を使えるという事実。
(――まさか、虚無?)
一瞬の突飛な思いつき。しかし虚無かどうかよりも、もっと重要な事柄があった。

ルイズの疑問が、次々に氷解した。
この村とティファニアの存在を明かしたくなかったにも関わらず、ここに案内したマチルダ。
土くれのフーケではない、真実の名前とおぼしき名前を明かしたマチルダ。
ハーフエルフを匿っているという事実を知られながらも自信にあふれていたマチルダ。
それはつまり、自分達がここから去る時、それらの記憶を消すという事。

皇太子としての名誉を蹂躙すればウェールズを救えると言ったマチルダ。
それはつまり、ウェールズから皇太子の記憶を奪えばレコン・キスタに特攻などせず、
ただの平民としてこの地で平穏無事に生きていけるという事。

さらにマチルダはルイズ本人には言わなかったが、ウェールズと同じ手段で、言葉を救える。
言葉から誠の記憶、ルケギニアに召喚される前の記憶などを消し去れば、
惚れ薬の時とは異なる形で、忘却という救済の元、精神に安定を取り戻すだろう。

ウェールズを救う方法があると言ったマチルダだ、当然言葉も救えると知っていたはず。
だがそれを言わなかったのはきっと、ルイズが断ると考えたからだ。

ルイズは思い出す、惚れ薬に心を惑わされたままの言葉でいさせてやる優しさもあった事を。
あの事件をマチルダは知らないだろう。
けれどルイズが言葉の思い出や誠も大事にしようとしている姿を見れば、
忘却などという逃げに屈したりはしないだろうと思ったかもしれない。

もしルイズが恋人を喪い、絶望に打ちひしがれたとしたら、
忘却という逃亡に走ってしまうかもしれない。
でも言葉は心を壊しながらも決して手放そうとせず、
その一途さはうんざりすると同時に羨ましくも思う。
心壊れていても、言葉が言葉でいられるのは、その狂愛があるからだ。

でも、ティファニアなら言葉を救えるというのも、間違いなくて。
「その、その魔法で、テファ、記憶を……コトノハの……」
そこまで言い、ルイズは口を閉ざした。
こんな救済、言葉は望まない。
心が壊れる前の言葉こそ真の使い魔であり、その言葉に出会うためにがんばろうと決めた。

できる。
今、ティファニアに頼めば、すぐにでもできてしまう。

「ルイズ? コトノハの記憶を……消したいの?」
困惑気味なティファニアの声に、ルイズは首を横に振った。
「ごめん。違うの何でもないっ……忘れて……」

言葉を救いたいのに、目の前に救う手段があるのに、ルイズはその場から逃げ出す。
残されたティファニアは呆然とルイズの背中を見送っていた。

ルイズと言葉がこの村を去る時、記憶を消さなければならない。
けれどできるなら、友達の記憶は消したくない。
でもルイズは言葉に忘れてもらいたい記憶がある?
その記憶とは、何だろう。
ティファニアは、マチルダとルイズが大事にしていた鞄を思い出した。
あの鞄は言葉の物で、今は言葉の手にあり、言葉はマチルダ達以上に鞄を大事にしている。
つまりあの鞄の中が、きっとそれに関係あるのだろう。
何が入っているんだろう。

家の壁に背もたれながら、言葉は天を仰いでいた。
ウェールズとの話を終え、ルイズとティファニアが洗濯している間に武器を探そうと、
裏庭にある薪割り用の斧を手にとってみたが、ルーンは輝かず武器と判断されなかった。
残念がりながら家に戻ろうとした時に、盗賊達が来た。
一部始終を見た。盗賊達が記憶を奪われ帰っていく様を。
一部始終を聞いた。記憶を消す魔法の存在を。
あの魔法を使えば、言葉は誠の存在を忘れ去り、ルイズの忠実な使い魔となる。
なのにルイズは、一度は頼みかけながらも、それをやめた。
「それでも……私は誠君の、彼女ですから」
ルイズよりもアンドバリの指輪を見つめる言葉。
もし指輪をしているのがルイズでなければ手荒な真似をしていたかもしれない。
「よかったですね、ルイズさん。私がルイズさんの事を好きで」
自嘲の笑みは痛々しく、しかしそれを見る者の姿はなかった。

第21話 虚無<ゼロ>のティファニア


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