サーヴァント・オブ・ゼロ 第2話「冥土のメイド、キスをする」
ルイズは覚悟を決めた。
目の前には触れると生命力を吸収されてしまう自らが呼び出した使い魔が倒れている。
正直あの感触は2度とご免こうむりたいが、チェンジは出来ないし、諦めればよくて留年、悪ければ退学が待っている。
そのような事態ばかりは、名門・ヴァリエール家の名にかけて絶対に避けなければならない。
大丈夫、とにかくキスさえしてしまえばいいんだから、こうなったら床に這いつくばってでも、必ずや成し遂げてみせる。
お父様、ちいねえさま、どうかルイズに力を貸してください―――
目の前には触れると生命力を吸収されてしまう自らが呼び出した使い魔が倒れている。
正直あの感触は2度とご免こうむりたいが、チェンジは出来ないし、諦めればよくて留年、悪ければ退学が待っている。
そのような事態ばかりは、名門・ヴァリエール家の名にかけて絶対に避けなければならない。
大丈夫、とにかくキスさえしてしまえばいいんだから、こうなったら床に這いつくばってでも、必ずや成し遂げてみせる。
お父様、ちいねえさま、どうかルイズに力を貸してください―――
「う、ううん……」
と、場に変化が起こった。(周りの人魂の言葉が正しければ)気絶していたメイド?が目を覚ましたのだ。
(おおっ、アイリ様がお目覚めになられたぞ!)
(起きた!アイリ様が起きた!うわーん!)
(号泣すんな、変な奴等だと思われてしまうだろ!)
(起きた!アイリ様が起きた!うわーん!)
(号泣すんな、変な奴等だと思われてしまうだろ!)
今のままでも十分変よ、と一応心の中で突っ込んでおいた。
しかし、この状況に一縷の希望が見出せてきた。
これはあくまで「もしかしたら」に過ぎないが、彼女自身ならあの煩わしい「生命吸収」の効果を封じることが出来るかもしれないのだ。
しかし、この状況に一縷の希望が見出せてきた。
これはあくまで「もしかしたら」に過ぎないが、彼女自身ならあの煩わしい「生命吸収」の効果を封じることが出来るかもしれないのだ。
「ちょっと、そこのメイドっぽい格好の変なの!」
「変なの……もしかしてアイリのことですか?……あ、もしや、あなた様がアイリを召喚なさったのですか?」
「そうよ、わかったらさっさとその忌々しい術を解きなさい!」
「術?」
「変なの……もしかしてアイリのことですか?……あ、もしや、あなた様がアイリを召喚なさったのですか?」
「そうよ、わかったらさっさとその忌々しい術を解きなさい!」
「術?」
(アイリ様、其処のピンピンピンクが言ってるのは、精気吸収のことでさぁ)
(彼女、さっきから必死にアイリ様に何かをしようとしてるんですが、その度にアイリ様のお体に触れては自分の精気を献上してるんです)
(それを、こいつらは何かの術だと思い込んでるようですぜ)
(彼女、さっきから必死にアイリ様に何かをしようとしてるんですが、その度にアイリ様のお体に触れては自分の精気を献上してるんです)
(それを、こいつらは何かの術だと思い込んでるようですぜ)
何やら自分を無視してあいつらで勝手に盛り上がっている。ルイズはイライラしてきた。
それに、あれが魔法ではない?だったら何だというのか、まさか体質だというのだろうか?
ふざけている。もしそのような体質が本当にあるとすれば、触れるたびに危なくてメイドの仕事などとてもやっていけないだろう。
それに、あれが魔法ではない?だったら何だというのか、まさか体質だというのだろうか?
ふざけている。もしそのような体質が本当にあるとすれば、触れるたびに危なくてメイドの仕事などとてもやっていけないだろう。
「申し遅れました、私は『冥土へ誘うもの』アイリと申します。ただ今より、御主人様に忠誠を誓い、一身を捧げさせて頂きますわ」
アイリと名乗ったメイド?は短いスカートの端をつまんでちょこんと頭を下げた。
こちらが契約もしてないのに御主人様に忠誠を誓うなんて、ますます正体が分からなくなってきた。
「冥土へ誘うもの」なんて物騒な通り名?と言い、怪しすぎる。
こちらが契約もしてないのに御主人様に忠誠を誓うなんて、ますます正体が分からなくなってきた。
「冥土へ誘うもの」なんて物騒な通り名?と言い、怪しすぎる。
「冥土?なんだその物騒な呼び名は……こいつ、本当に精霊なのか?」
「いや待て、冥土は冥土でも「メイド地獄」とか言う意味かもしれない」
「それはそれで嫌だな……おいゼロのルイズ、ふざけるのは其処までにしてとっとと契約してしまえよ!」
「もっとも、その調子じゃあ契約完了する頃には干からびてるだろうがな!」
「水にでも浸かって戻してもらえよ!」
生徒達の渦からどっと笑いが上がる。
「いや待て、冥土は冥土でも「メイド地獄」とか言う意味かもしれない」
「それはそれで嫌だな……おいゼロのルイズ、ふざけるのは其処までにしてとっとと契約してしまえよ!」
「もっとも、その調子じゃあ契約完了する頃には干からびてるだろうがな!」
「水にでも浸かって戻してもらえよ!」
生徒達の渦からどっと笑いが上がる。
ルイズは舌を打った。そうだ、いつまでもこんな所でちんたらしてる場合ではなかった。
とりあえず、先ほどの言動からこっちの言う事は聞いてくれそうだ。
とりあえず、先ほどの言動からこっちの言う事は聞いてくれそうだ。
「もう一度言うわよ。その「精気吸収」とやらを解きなさい」
「解く……とおっしゃいますと?」
「物分りの悪い使い魔ね!私が触っても大丈夫なようにしなさいって事よ!」
「解く……とおっしゃいますと?」
「物分りの悪い使い魔ね!私が触っても大丈夫なようにしなさいって事よ!」
(おいおいお嬢ちゃん、無茶を言ってもらっちゃあ困るぜ)
(アイリ様の精気吸収は術じゃない。持って生まれた体質って奴なんだ)
(さっきから何度も言ってるのに分からないとは……まるで知性をかんじませんよ)
「お前達、御主人様に失礼な物言いは止めなさい。……御主人様。申し訳ありませんが、こればかりは生まれ持った体質。アイリにはどうにもできませんわ」
(アイリ様の精気吸収は術じゃない。持って生まれた体質って奴なんだ)
(さっきから何度も言ってるのに分からないとは……まるで知性をかんじませんよ)
「お前達、御主人様に失礼な物言いは止めなさい。……御主人様。申し訳ありませんが、こればかりは生まれ持った体質。アイリにはどうにもできませんわ」
何だというんだ。
生まれ持った体質?自分では解除できない?何を、何を―――
「……けないでよ……」
「はい?」
「……ふざけないでよ!じゃあ私は一体どうすればいいのよ!あんたまで私をよってたかって馬鹿にして!」
「ご、御主人様、落ち着いてください」
「原因を作ったのはあんたじゃない!よくもいけしゃあしゃあと言えたものね!」
生まれ持った体質?自分では解除できない?何を、何を―――
「……けないでよ……」
「はい?」
「……ふざけないでよ!じゃあ私は一体どうすればいいのよ!あんたまで私をよってたかって馬鹿にして!」
「ご、御主人様、落ち着いてください」
「原因を作ったのはあんたじゃない!よくもいけしゃあしゃあと言えたものね!」
(あ~、ダメですぜ、なんでまあ魔女様はこんなDQNの所にアイリ様を行かせたんですかね?)
(ダメ主人を公正させるのも、修行の一環……とか?)
(うっお―――っ!! くっあ―――っ!! ざけんな―――っ!)
(ダメ主人を公正させるのも、修行の一環……とか?)
(うっお―――っ!! くっあ―――っ!! ざけんな―――っ!)
「……ん?あ、待ってください!もしかしたら一つだけ方法があるかもしれません!」
「何よ、方法があるんだったらそれを先に言いなさいよ」
「いえ、何分急なことだったので、アイリもすっかり忘れていて……」
「何よ、方法があるんだったらそれを先に言いなさいよ」
「いえ、何分急なことだったので、アイリもすっかり忘れていて……」
そう言うと、アイリは懐からメガネを取り出した。
どこにでもありそうな普通のメガネだ。アイリはそれを、メガネをかけるのは初めてといった様子で装着した。
どこにでもありそうな普通のメガネだ。アイリはそれを、メガネをかけるのは初めてといった様子で装着した。
「……?あのメイドから流れる魔力が消えた?」
生徒達の一角、燃えるような赤い髪を持つ褐色の少女が、状況の変化に気付く。
先ほどまであのメイド?から、メイジのそれと比べると非常に微弱ではあるが、魔力が流れ出していた。
それがあのメガネをかけた途端、途絶えたのだ。
「ねえタバサ、あなたも今のを感じたでしょ?」
赤い少女―――キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、隣で未だに風竜の陰に隠れ続けている青い少女―――タバサに問いかけた。
先ほどまであのメイド?から、メイジのそれと比べると非常に微弱ではあるが、魔力が流れ出していた。
それがあのメガネをかけた途端、途絶えたのだ。
「ねえタバサ、あなたも今のを感じたでしょ?」
赤い少女―――キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、隣で未だに風竜の陰に隠れ続けている青い少女―――タバサに問いかけた。
「固定化」
「ん?」
「あのメガネをかけた瞬間、『固定化』のような感じがした」
「固定化ねぇ……パッと見、そうとは思えないけど」
「あれは固定化のようで固定化じゃない。もっと別の何か」
「別の何かって……タバサでも分からないの?」
「私にだって分からないことくらい、ある」
「ん?」
「あのメガネをかけた瞬間、『固定化』のような感じがした」
「固定化ねぇ……パッと見、そうとは思えないけど」
「あれは固定化のようで固定化じゃない。もっと別の何か」
「別の何かって……タバサでも分からないの?」
「私にだって分からないことくらい、ある」
会話は其処で中断された。とりあえず、キュルケは再びルイズとあの使い魔の漫才を眺めることにした。
(ふーん……中々面白くなってきたじゃない)
(ふーん……中々面白くなってきたじゃない)
「……御主人様、申し訳ありませんが、私に触れていただけませんか?」
「何を言ってるのよ、そうしたらまた吸い取られちゃうじゃない」
「いえ、今このメガネをかけたとき、アイリの中で何かが変わりました。おそらくは、触れても大丈夫かと」
「本当ね?もし嘘だったら後で承知しないんだからねっ」
「何を言ってるのよ、そうしたらまた吸い取られちゃうじゃない」
「いえ、今このメガネをかけたとき、アイリの中で何かが変わりました。おそらくは、触れても大丈夫かと」
「本当ね?もし嘘だったら後で承知しないんだからねっ」
恐る恐る、ルイズはアイリに手を伸ばし―――触れた。
あの嫌な感じは、しなかった。
あの嫌な感じは、しなかった。
「やればできるんじゃない。まったく、手間かけさせるんだから」
「やはり……おそらくこのメガネには、精気吸収を封じる力があるのですわね……確かに、これなら御主人様に迷惑をお掛けせずに済みますわ……」
「何独り言を言ってるのよ。さ、契約を続けるわ。ちょっと顔を貸しなさい」
「畏まりました。それでは、アイリはどのようにすれば……」
「そのまま動かないでくれればいいわ。……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「やはり……おそらくこのメガネには、精気吸収を封じる力があるのですわね……確かに、これなら御主人様に迷惑をお掛けせずに済みますわ……」
「何独り言を言ってるのよ。さ、契約を続けるわ。ちょっと顔を貸しなさい」
「畏まりました。それでは、アイリはどのようにすれば……」
「そのまま動かないでくれればいいわ。……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
契約の続行―――すなわち、額に杖を当て、呪文を唱え、アイリの唇と自分の唇を……重ね合わせた。
「!?ご、御主人様、一体何を……うあっ!?」
突如全身が熱くなり、アイリは思わず膝を付いた。
(てめぇ……アイリ様に何をしやがった?)
(それよりもアイリ様、大丈夫ですか?)
(アンディ ジョオオーッ 医者だ!アイリ様を医者につれていけぇーっ!!)
(てめぇ……アイリ様に何をしやがった?)
(それよりもアイリ様、大丈夫ですか?)
(アンディ ジョオオーッ 医者だ!アイリ様を医者につれていけぇーっ!!)
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。すぐ終わるわ」
確かに熱さはすぐに引いていった。見ると、左手の甲に謎の文様が浮かんでいる。どうもこれがルーンらしい。
「ふむ……見た事の無いルーンだ。珍しいな……」
なにやら強烈な閃光を放てそうな頭をした教師らしき人物が近寄り、ルーンを観察した。
確かに熱さはすぐに引いていった。見ると、左手の甲に謎の文様が浮かんでいる。どうもこれがルーンらしい。
「ふむ……見た事の無いルーンだ。珍しいな……」
なにやら強烈な閃光を放てそうな頭をした教師らしき人物が近寄り、ルーンを観察した。
「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
そう言い残し、教師は宙に浮き、向こうの方に見える建物の方へ飛んでいった。
他の生徒達も、彼に続いて飛んでいく。
そう言い残し、教師は宙に浮き、向こうの方に見える建物の方へ飛んでいった。
他の生徒達も、彼に続いて飛んでいく。
「ルイズ、お前は歩いて来いよ!」
「あいつ、『フライ』はおろか『レビテーション』さえまともに出来ないんだぜ!」
「精々そのメイドにご奉仕してもらいなさい!」
「あいつ、『フライ』はおろか『レビテーション』さえまともに出来ないんだぜ!」
「精々そのメイドにご奉仕してもらいなさい!」
後にはルイズとアイリ、そして人魂たちが残った。
「で、結局なんなのよあんた」
「はい、先ほども申し上げた通り、私は『冥土へ誘うもの』アイリ。『沼地の魔女』様の命により、あなた様に仕えるべく参上した次第ですわ」
「はい、先ほども申し上げた通り、私は『冥土へ誘うもの』アイリ。『沼地の魔女』様の命により、あなた様に仕えるべく参上した次第ですわ」
(そして俺達は)
(そんなアイリ様の手足となって働く)
(低級霊が一団。名づけて)
(低級霊ブラザーズ!)
(あ、ブラザーズっていっても、直接な血縁関係はないし、俺達以外にもいっぱいいるし、まあ義兄弟みたいなもんだと思ってくれ)
(そんなアイリ様の手足となって働く)
(低級霊が一団。名づけて)
(低級霊ブラザーズ!)
(あ、ブラザーズっていっても、直接な血縁関係はないし、俺達以外にもいっぱいいるし、まあ義兄弟みたいなもんだと思ってくれ)
「あーはいはい、勝手にやってなさい……でも『沼地』?そんなメイジ、聞いたことも無いわ……どこの田舎者よ」
「どこ、とおっしゃいましても……『名も無き大陸』の東部、そこに広がる沼地を統べるお方、それが『沼地の魔女』様ですわ」
「名も無き?この大陸にはちゃんとハルケギニアって名前がついてるわよ。そんな名前、聞いたことも無い」
「はるけぎにあ?こちらも、その様な名前は存じ上げませんが……」
「どこ、とおっしゃいましても……『名も無き大陸』の東部、そこに広がる沼地を統べるお方、それが『沼地の魔女』様ですわ」
「名も無き?この大陸にはちゃんとハルケギニアって名前がついてるわよ。そんな名前、聞いたことも無い」
「はるけぎにあ?こちらも、その様な名前は存じ上げませんが……」
(アイリ様アイリ様、ちょいとよろしいですかい?)
「どうぞ、許可します」
(これは俺らの勝手な推測なんですが……もしかして、アイリ様は別世界に飛ばされちゃったんじゃないんですかね?)
(なんせオレ達の世界とは違い、みんながみんな魔法を使ってますから)
(それに魔女様の力を持ってすれば、別世界へ飛ぶことなど造作も無いんじゃないか、と思います)
「確かに……それならば先ほどまでの一連の出来事にも納得がいきますわ……」
「どうぞ、許可します」
(これは俺らの勝手な推測なんですが……もしかして、アイリ様は別世界に飛ばされちゃったんじゃないんですかね?)
(なんせオレ達の世界とは違い、みんながみんな魔法を使ってますから)
(それに魔女様の力を持ってすれば、別世界へ飛ぶことなど造作も無いんじゃないか、と思います)
「確かに……それならば先ほどまでの一連の出来事にも納得がいきますわ……」
「ちょっと、何主人を置いてけぼりにしてるのよ!別の世界とか何とか、意味分からない」
「アイリにも正直よく事情が飲み込めないんですが……そういえば御主人様、皆さんの後を追いかけなくて良いのですか?」
「んん……まあ続きは私の部屋で聞くわ。ついて来なさい!」
「はい、御主人様の仰せのままに」
「アイリにも正直よく事情が飲み込めないんですが……そういえば御主人様、皆さんの後を追いかけなくて良いのですか?」
「んん……まあ続きは私の部屋で聞くわ。ついて来なさい!」
「はい、御主人様の仰せのままに」
はたしてアイリは、この異世界で生き延びることが出来るのだろうか?
それは、やってみなければわからない。
それは、やってみなければわからない。
to be continued……