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Brave Heart-02



「何が起こったというのだ……!」
伝令からの報告を聞いたボーウッドはわなわなと震えた。
タルブの草原に降下させた竜騎士達が村を焼いた後で、
突如として、その異変は起こったのだという。
どこからともなく聞こえてくる、笛の音色。
それを聞いた瞬間に、ドラゴン達が暴れだした。
ドラゴンだけではない その戦場にいたあらゆる動物達が、
その笛の音色に操られるようにして、兵士達を襲ったのだ。
竜騎士は先ほどまで乗っていたドラゴンの炎で焼かれた。
馬は主を振り落とし、蹴り飛ばした。
それはまさに、地獄絵図としか言い様が無かったそうだ。
今現在、笛の音色こそ止んではいるものの、兵士達の士気は下がっていた。
ぎゃあぎゃあとうるさい総司令官ジョンストン殿には眠っていただいている。
「だが……艦隊への被害は微量だ。どうとでもなる」
誰が吹いた笛だか、魔法だか知らないが、
吹き飛ばしてしまえば、どうにでもなる。
甲板に出たボーウッドはそう考えながらも悔しく思った。
何故、我が真の主たるアルビオン王家の末裔がいる国を、
焼かねばならないのか、と。

森の片隅で、女性が一人息を荒げていた。
赤い帽子と服に身を包んだ白い髪の女性。
金属で出来た笛を握る右手には、紫の手袋の上からでも分かるほど、
ルーンが眩い光を放っていた。
「コレの力は……ちょっとばかり、デカすぎる……ねぇ」
自身の右手を睨みつけながら彼女は呟く。
本来なら、彼女と同種族で虫に似た姿のものだけを操る笛の音は、
ルーンの力によって、人と亜人以外の生物を操ることが出来るようになっていた。
だが、この力は強大すぎるためか制限が付けられているようだった。
他者の支配下にある生物をその意思に逆らって操る場合には、
彼女の体力を削るのである。
意識が途切れないギリギリで笛の演奏を止めて、息が整うのを待つ。
この場所は、彼女を、彼女の主を受け入れてくれた場所だ。
何としてでも守り抜いてみせる。
そう考えている自分に気がついて、自嘲するような微笑みが彼女の顔に浮かぶ。
壊すために生まれてきた存在のはずだった。
何かを守るために震える心なんて、持ってないと思っていた。
それでも今、守りたい、と思っている。
そんな自分がおかしくて、彼女は紫に彩った唇を歪めて笑った。

「アル!」
「アルさん!」
聞きなれた声のする方を慌てて振り向いた。
「テファ、それにシエスタ? どうしてここに!」
「アルが心配になったの。ね、早く避難しましょ?」
星のように輝く金色の髪をした主が、彼女の手をぐいと引く。
「こ、こんな所にいたら、アルビオンに襲われてしまいます!」
黒髪の少女が、心配そうに彼女を見つめてくる。
「大丈夫だよ、このくらい。あんたたちも戻ってな!」
丸い色眼鏡の下の細い目で、二人を見据えると叫ぶ。
「おい、居たぞ!」
「笛を持ってる……あいつか!」
運悪く、アルビオンの兵士達が現れ、彼女達に剣と杖を向けた。
「……あんたらが声を出すからお客さんが来ちまったじゃないか!」
かばうようにして二人に背を向ける。
「さっさと行きな!」
「させるか!」
火のメイジらしい男の杖から炎が飛び出る。
それはアル、と呼ばれた彼女に当たり、爆発を起こす。
「やったぞ! ……え?」
討ち倒したと思い、歓喜の声を上げた男は一瞬何が起きたか分からなかった。
煙の中から伸びた赤い紐状のものが男の首に絡みつき、締め上げた。
うげぇ、と醜い声を上げて男は倒れる。
煙が晴れた先には、女が未だ立っていた。
少々服が焼け焦げているものの、ピンピンしている。
「ヒィ! ば、化け物!」
「それに見ろ! あっちの女を!」
「な、何でエルフがこんなところに!」
先程の爆風で、彼女の主、ティファニアの頭部を隠していた帽子が飛んでいた。
あらわになった彼女の尖った耳を見て兵士達が後ずさった。
「……シエスタ。テファを連れて逃げな。私もすぐに行く」
「は、はい!」
その耳を恐れることもなく、シエスタはテファの手を引いて逃げ出した。

「さて、人間共。私を化け物だと言ったね?」
にたり、と笑って挑発する。
「それじゃあ、その化け物の姿を、見せてやろうじゃないか!」
頭部からは赤と紫の縞模様の帽子が消え、
こめかみの辺りから悪魔じみた角が生える。
上半身は血のように赤く形だけは人間に近い。
腕は死人のように青白く、顔ほどもある大きな手はグロテスクだった。
何より不気味なのは、赤と紫の縞模様に彩られた
まるで蜘蛛の腹部のような下半身である。
「私の名は……」
地の底から響くような声で化け物になった女が自身の名を告げる。
「……アルケニモン!」
「う、うわあああああ!!」
メイジの杖からは火の玉が、風の刃が、襲ってくる。
彼女はそれを交差させた両手で防ぐ。
「ふん!この程度かい!」
決して小さくはないダメージだが耐え切れない程ではない。
「スパイダースレッド!」
両手の甲の宝石から赤い糸が無数に飛び出し兵士達を襲う。
「ええい、落ち着け!たかが一体だ!囲め!」
隊のリーダーらしい男が叫ぶ。
大多数との戦闘はあまり得意ではない。
だが、守ると決めたのは自分なのだから、退くわけにはいかないのだ。
兵士達の向こうに燃え盛る村が見えた。
この村のかつての有力者であったシエスタの曽祖父は、
『命はただそこにあるだけで素晴らしい』と考える人間だったという。
故に、エルフの血を引く主ティファニアも、
異形の存在である自分も受け入れてもらえたのだ。
その居場所を破壊したこいつらを、絶対に許さない。
そう考えながら、戦闘を続ける。
酸性の霧を吹きかけ、赤い糸で動きを封じ、殴り飛ばす。
しかしメイジ達相手ではいささか力が足りない。
「クッ!」
体中に焼け焦げや切り傷を作りながら悔しく思う。
せめて、『彼』のように戦闘向きに作られていたなら、
こんな奴ら相手に苦戦なんかしないはずだ。
「アタシを……守るんじゃなかったのかい……!」
『同じ世界にいるのなら、世界中どっからだって飛んできて
 お前を守る。俺は、そのために生まれたんだからな』
別れの時、そう言った『彼』を思い出しながら、
ぎり、と奥歯を噛み締める。

そんな時、そこにいた全ての人々の耳に聞きなれない轟音が響いてきた。
何事か、と空を見上げれば見慣れぬ形の竜らしき何かか飛んでいる。
あんな竜、ハルケギニアに存在していただろうか?
真っ直ぐ横に伸びた翼は、まるで固定したように羽ばたきを見せない。
アルビオン軍の竜騎士はいぶかしみながらもそれに向かう。
瞬間 白く光る何かが無数に飛び、竜騎士は爆発した。
その光景を見てアルビオン軍は言葉を失った。
アルケニモンは口の端を歪めて何処か嬉しげに叫んだ。
「遅いんだよ、この馬鹿!」


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