あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-24


「貴様のその手、よくわからんがどうやら魔法を打ち消すようだな」
起き上がったワルドの第一声であった。
唇が切れたのか、血が流れている。さらには意識が少しばかり飛んでいたのか、片手で頭を抑え、左右に振った。
当麻は返事をしない。わざわざ返答する必要性がないからだ。
ふむ、と黙っている当麻の様子を見てワルドは呟く。
「ならばこちらも本気を出すしかあるまい。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう」
当麻はワルドの言葉に耳を傾けた。幻想殺しによって全ての魔法は打ち消されるとわかったのに、余裕の表情を浮かべている。
つまり、次放つ魔法はそれだけ彼にとって自信があるという事。逆を言えばそれさえ打ち倒せば勝てるという意味だ。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
呪文が紡がれる。当麻は、再び駆けた。それだけの呪文なら、苦戦は必須。ならば先に叩くのみ!
しかし、ここで当麻は一つ過ちを犯してしまった。全ての力を用いて殴ったワルドは、思った以上に距離を離してしまったのだ。
(クソッ! 間に合わねえ!)
自分のミスに舌打ちしながらも、少しでもいいから縮めようと、足を全力で動かす。
その時、ワルドの呪文が完成された。するとワルドの体が、風で霧が揺らぐようにブレたのだ。
あまりの光景に、足を止めた当麻の前でワルドが分裂し始めた。
一人……、二人……、三人……、四人……と別れて、ようやくワルドは元の形へと戻る。
本体を合わせて五人、五人が当麻を囲む。
「分……身だと!?」
「ただの『分身』ではない。風のユビキタス(遍在)……。風は遍在する。風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」
ワルドの分身は、すっと懐から、真っ白の仮面を取り出すと、顔につけた。
「テメエ……まさか!?」

当麻の顔が驚きで支配される。
そう、それは白い仮面の男。フーケを脱走させ、当麻の左腕に大火傷を負わせた男。
かもしれないとは思っていたが、実際に出くわすとやはり驚きという感情が表面に出てしまう。
「いかにも、この私だ」
さらなる絶望を与えようと踏んだワルドが冷たく言い放った。五人は杖を構え、いつでも魔法が放てるようにする。
「言っておくが、一人一人が力や意思を持っているぞ?」
ワルドの質問に、しかし当麻は何も怯える様子がない。普段の日常生活と変わらぬように。
ワルドの眉がピクッ、と動く。この少年、一体何を考えているんだ?
そんなワルドの様子に気付いたのか、当麻は口を開く。
「残り半分もここで終わらせることができるとはな、それに最強であっても無敵ではないんだろ?」
『最強』と『無敵』は違う。『無敵』が戦う前から勝負が決まっているのに対し、『最強』は実際に戦ってみて初めて強さがわかるものだ。
それに、当麻は後々白仮面の男とも戦う予定であった。今こようが、後からこようが関係ない。
そんな当麻の考えなど知らず、ワルドは別の考えを予測した。
即ち、ワルドの事を強くないと思っているからだ。
本当は違う。当麻自身ワルドの事は強いと思っている。思っているが、
それでも負けられない戦いだと、そう思う事で彼は自分を奮い立たせるのだ。
しかし、ワルドはそんな事などわからず、怒りをあらわにする。
「ならばやってみるがいい!」

そう言って、同時に電撃の魔法を放つ。五方向からの放たれた電撃に、当麻は避ける場所もなく、防ぐ手段もないと考えたが、
またしてもその考えは覆される。
当麻はすっと腰を落とすと、片手を高くあげる。幻想殺しの能力を持つ右手を、まるで避雷針かのように。
五方向からといっても、所詮その移動手段は点から発生される直線。たった一つ穴があるとするならばそこしかない。
バチイ!! という爆発音と共に、全ての電撃が当麻の右手へと直撃する。しかし、傷一つ負わずに電撃だけが打ち消されていった。
同時、当麻はバネのように溜め込んだ足の力を、爆発させるかのように跳躍した。
「さすがだな」
ワルドは楽しそうに笑った。たとえ最初の魔法が防がれても、次防げないのを放てばよいのだ。
ワルド達は、一人のワルドに突っ込む当麻に再び電撃の魔法を放った。
さらにいうと、先程とは少し狙いを変える。右手一本に当てぬよう高低差をつけた。
しかし、当麻はまたそれらを纏めて打ち消す方法があった。
当麻は、目の前のワルドの放った電撃を打ち消した瞬間、くるっと体を回転させた。
体の向きが逆転され、距離を詰めていたワルドに背を向ける事になる。同時、右手を再び目の前にへと突き出した。
簡単な事である。一人のワルドへと突っ込んだのだから、彼との距離が短くなり、他のワルド達からは離れるのである。
その距離差が、電撃が当麻を直撃するまでのタイムラグを生み出したのだ。
そして、これにはさすがのワルドも驚きを隠せない。その驚きが、命取りとなる。
既に一人のワルドとは距離がなかったのだ。当麻は再び体を回転させてワルドの目の前に立ったと同時に右手を振るう。
そこでようやくワルドは気付く。自分の置かれている状況に。
しかし、遅すぎた。
当麻は右手でワルドの鳩尾に、拳を入れる。
その瞬間、ワルドが苦痛という名の悲鳴をあげながら、大気の一部と化していった。
「どうする?」
当麻が振り向き、告げる。
「後……四体だぜ?」
ワルドに、初めて冷や汗が流れた。

(トウマ……)
横倒しになった視界。ズキズキと痛む背中。しばらく耐えるしかルイズには方法がなかった。
遠くてうまく聞き取れないが、当麻がなにかを叫んでいる。
唯一聞き取れた言葉は「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!!」だけ。なぜかそれだけがはっきしと聞こえた。
そして、しばらくして聞こえてくる爆発音。当麻は戦っているのだ。あのグリフォン隊隊長であるワルドと。
(トウマ……)
再び名を呼ぶ。
彼女はメイジといった点を除けば、普通の女の子である。体力に恵まれている訳でもない。
タバサやキュルケといった有能な魔術師でもなければ、
上条当麻といった戦い慣れた人間でもない。
だからといって立ち上がらない理由になるといったらそれは違う。
たとえ自分がゼロのルイズであろうとも。
自分の事を必要としてくれた人間がいるのだから。
彼女は立ち上がる。こんな痛みより、何倍、何十倍彼は辛い思いをしているのだ。
目頭に残った涙を手で拭き取り、地面から起き上がる。
すると、当麻は四人のワルドと対峙していた。
ワルドの強さは、折り紙つきだ。どう考えても当麻が苦戦するしかならない光景。
(わたしも……戦わなきゃ!)
彼女は杖を振る。自分の力が役立つ事を信じて。

突如、一体のワルドに何かがぶつかり、表面で爆発した。
ぼこんっ! と激しい音がして、とあるワルドは消滅した。一瞬の出来事に、当の本人でさえ呆気に取られた。
「や、やった……わたしの魔法で」
ワルドも当麻も予想できなかった。まさかここでルイズが攻撃し、消滅させるとは。
しかし、三体になったワルドは、焦る事なく再び笑みを浮かべる。それがなぜなのか、当麻は一瞬で察した。
「ちっ、ルイズ! 逃げろ!」
当麻は叫びながらもルイズの下へ向かう。
え? え? とルイズが困惑している間に、ワルドはいつの間にか散開していた。

たとえ当麻の右手が絶対でも、今まで防いできたとしても、
右手だけで全ての攻撃からルイズを守る事はできない。
三度目の、今度はルイズに向けて、魔法が放たれた。
避雷針にしようとも、同時に防ぐ事も不可能だ。
ルイズの目の前にたどり着いた当麻がやれる事はたった一つしかなかった。そう、たった一つしか……

同時、当麻の背中、左腕、右腕に電撃が襲い掛かった。


ワルドが電撃を放つのをただ見つめていたルイズは思わず目をつむった。それがどれくらいの威力か知っている。だから、
(死んじゃったのかな……)
三方向から放たれたのだ。痛みも感じず死んだに違いない。
しかし、ルイズの上半身に何かが覆いかぶさった。
重たい、と感じる。感覚を持っている。という事は、
(死んでない?)
ゾクリ、とルイズの背中に悪寒が走る。自分は痛くもなんともない。そんな事有り得るのだろうか?
いや、有り得ない。たった一つの展開を除いて……
ルイズは自分の思い浮かぶ展開を必死に振り払いながら目を開ける。見えたのはワルド、そして、
背中や左腕から、線香のような薄い煙りがゆったりと漂り、
服が破かれ、皮膚を広範囲に渡って焼かれていた当麻の姿であった。
「え……」
少年は動かない。そう、ぴくりとも動かない。
心なしか、当麻の体から血の気が引いているようにも見られる。
「ほぅ、主だけを守るとはな」
ワルドが淡々と吐き捨てて近寄ってくる。ルイズは体を小刻みに震えながら、ワルドをキッと睨む。
杖を振り、再び魔法を唱える。
一体のワルドの表面が爆発し、大気へと消え去った。しかし、それだけだ。
「きゃっ」
残り二体のワルドの内、一体のワルドが風の魔法を放って、ルイズの杖を吹き飛ばす。
杖がなくては魔法は使えない。杖を身から離すという事は、メイジにとって命取りである。
「よくやったと言いたいところだが」
「ここまでのようだな」二人のワルドがルイズの目の前へと近寄ってきた。
怖い。ルイズにはわかる。間違いなくここで死んでしまうと。
なぜか金縛りにあったかのように体が動かない。頭では抵抗しろと命じても体が言うことを聞いてくれない。
「いや……、助けて……」
唯一動く場所、口だけで助けを求める。しかし、唯一守ってくれる使い魔は隣で倒れている。

「助けて……、お願い……」
「痛いのは一瞬だけにしてやる」
魂の抜け殻のように繰り返すルイズ。そんなルイズに対して二人のワルドはウェールズと同じ死を与えようと杖を風の刃で覆わせた。
「正直、残念だよ。この手で君の命を奪うと考えると」
そんなワルドにルイズは恐怖する。子供のように怯えて、絶叫した。
「助けて!」(生きてる、のか……?)
電撃を浴び、失った当麻の意識が再び戻った。時間にしてわずか十秒足らずの事。
正常な血の流れがイマイチ感じられない。手足の先は死人みたく異様に冷たい。
「いや……、助けて……」
声が聞こえた。このまま寝たいと思う当麻の考えが一瞬で全否定される。
「……、」
自分は俯けに倒れている。だから自分の意識が戻ったのは誰にも気付かれてない。
ぴくっと人差し指が動く。地面に押さえ付けられた為、心臓の鼓動がはっきしわかるし、肺が酸素を補給してくれる。
これなら、いける。体は、まだ動いてくれる。まだ立ち上がれる。
「助けて……、お願い……」
「痛いのは一瞬だけにしてやる」
聞こえてくる。少女の怯えている声が。
立ち上がらなければ、と思い、起き上がろうとしたが、体が動いてくれない。ピクッと震える程度にしか言う事を聞いてくれない。
(動け……! 動いてくれ!)
歯を食いしばり、背中や左腕から体全身に訴えかけてくる痛みに耐えながらも、手を動かす。
ちょっとずつだが確実に――しかし、
「助けて!」
そんな時間はなかった。
たとえここで寿命が何年縮んでも構わない。
助けを求めているのだから。死なれて欲しくない大切な人だから。
「お、ぉぉおおおおおおァァああああああああああああああ!!」
自分の体に喝を入れるかのように叫んだ。
全身にありったけの力を込めて、一気に立ち上がる。思うように動かない体が、筋肉血管骨格内蔵ありとあらゆる体内の構造期間が悲鳴を叫ぶかのようにビキバキとあがる。
それでも、当麻は倒れない。絶対に、諦めない。
当麻はぼやける視界の中、目の前の敵に目標を定める。
もう一歩踏み込めば当麻の間合いである。相手は目を見開いてこちらを見ていた。なぜ、生きているのか? といった表情で。
そんなの当麻には関係ない。気付くと右手を拳にして、前へ踏み込んでいた。最後の幻想を殺すために。


遍在によって作られた最後のワルドも当麻に消された。それは殴るとは言わなく、ただ触ったというレベルなのだが、それでも消えた。
「貴様ぁぁああああああ!!」
ワルドは目標を当麻へと変える。既にふらついている当麻に、渾身の突きを放つ。心臓にへと、確実に葬る為に。
「トウマ!」
ルイズが叫ぶ。その声に当麻の体は反応した。
もう当麻に残された力はほとんどない。この突きを避ける事はできない。今の位置から移動するのがままならないのだ。
ならばやるべき事は一つ。
縺れる意識、ワルドの杖が心臓を貫くその瞬間、当麻は手を出した。

ガシッと掴む。そのワルドの杖を。避ける事ができない者の、たった一つの解決策。
「な……に!?」
ワルドが再び驚愕に支配される。メイジは杖がないと魔法が放てない。それは杖が掴まれたとしても同じ理屈だ。
ならば、とワルドはもう片方の手で当麻に殴り掛かる。しかし、それも通らない。
ガシッ、ワルドの手首に当麻の左手が完全に握った。彼の左腕全体が火傷を負っている為、とてつもない痛みが当麻に襲い掛かる。
「グッ……」
歯を食いしばり、激痛に耐えながらも、左手を酷使する。絶対に、絶対に離してたまるかと言い聞かせる。
その痛みが幸福にも当麻の意識を元に戻させる。無理矢理体を動かさなくても動いてくれる。
(なぜだ!?)
ありえない。ワルドは目の前の現実を否定する。万に一つ、電撃を直撃して生きていたとしてもこちらの攻撃を防げるわけがない。
そのように手加減してるわけでもなく、また油断しているわけでもなかった。
そうしている間にも、ガシッ、とワルドの足に何かが絡まった。見るとそれはルイズである。
「ル……イ、ズ……!」
振りほどこうにも離れない。ルイズは必死にしがみついている。
「ようやく……戻ってきたぜ」
ワルドの視線が上がる。見れば当麻は獣のように獰猛に笑っている。
「歯食いしばれよ、子爵――――」
当麻は頭をゆっくりとあげる。何をされるか察したワルドは振りほどく力を強めるが、離れる事はなかった。
「――――これがテメェの末路だ」

瞬間。
少年の額が、ワルドの顔面へと突き刺さった。


新着情報

取得中です。