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第15話 さようなら、ルイズさん



武器を失ったガンダールヴなど平民の小娘でしかない。
嗜虐の笑みを浮かべるワルドと、残りひとつとなった遍在。
一方、ウェールズとルイズはまだ杖を持っている。

先に言葉を始末し、遍在と二人がかりでルイズ達を殺すか?
雑魚を適当にあしらい、反撃する能力を持つルイズとウェールズを殺すか?

ワルドの選択は、ルイズが決めさせた。
「ワルド!」
チェーンソーを破壊されたため言葉が無力化してしまったと理解しているルイズは、
言葉を守るため、注意を引くべく、ワルドに杖を向け詠唱を始めた。
失敗でも何でもいい、爆発を起こして、起死回生のチャンスを生み出さねば。
そんな動きを見せるルイズを、先に始末しようとワルドは決めた。
「エア・ハンマー!」
空気の塊を叩きつけられ、ルイズは石造りの壁に向かって吹っ飛ばされる。
壁に直撃すれば骨折程度ではすまない、打ち所が悪ければ死の可能性もある。
だからウェールズは、咄嗟にルイズに向けてレビテーションを唱え、ブレーキをかけた。
その隙に遍在がエア・ニードルを唱えながらウェールズに飛びかかる。
ウェールズはルイズの前に立ちふさがり、自らの肉体を盾として守ろうとした。
(さようなら、アンリエッタ――)
死を覚悟した男の背中を、ルイズは頼もしく思うと同時に、悲しくも思った。
自分のせいでウェールズが死ぬ。死んでしまう。
アンリエッタの大切な人を死なせてしまう。
(誰か――!!)
助けて、と思うよりも早く、彼女は来た。

エア・ハンマーで吹っ飛ばされたルイズを見て、言葉に動揺が走った。
裏切ったはずなのに、ああ、どうして自分は、こんなにも。
何とかしなければならない。しかし武器はもう無い。ガンダールヴの力は使えない。
武器を持たず飛び出しても間に合わない、ただの女子高生の力ではどうしようもない。
ウェールズが魔法をかけたのか、ルイズは壁に激突する前に止まったが、
その二人に向かって遍在が飛びかかる。エア・ニードルで杖を凶器として。
手を伸ばしても届かないと理解していながら、言葉は手を伸ばした。
何かを掴もうとして、虚空しか掴めぬ現実に打ちのめされる。
(私は、ルイズさんが殺されるのを、見ているしかできない)
絶望の中、憎しみを、悲しみが上回った。


その瞬間、床から光と共に、剣が飛び出してきた。
正確には生えたと表現すべきだろうか?
石畳を材料に剣が構築され、言葉の前に現れたのだ。

錬金? 土系統の魔法? 誰が? どこから? 何故?

世界を裏切った言葉に味方するものなど、何も無いはずだった。
しかしその女は確かに、言葉のために魔法を行使した。
教会の扉の陰から様子をうかがっていた、フードで顔を隠した女メイジ。
そのメイジの名は、土くれのフーケといった。

虚空を掴むしかなかったはずの手が、魔法で作られた剣を掴む。
左手のルーンが今までにないほど力強く光り輝いた。
感情の昂ぶりに呼応して力を発揮するガンダールヴのルーン。
今、ルーンは言葉の何の感情に呼応しているのか?
憎悪? 悲哀? 激怒?
確かなのは、ワルドへの敵意ではなく、ルイズへの情だという事。

風は烈風。すべてを切り裂く死の刃。
烈風となった言葉は、ウェールズの胸元を今にも貫こうとする遍在を一瞬にして一刀両断した。
かつて居合いを学んでいた言葉にとって、
剣という武器は日本刀ほどでないにしろずっと使いやすい獲物だった。
ノコギリやチェーンソーといった工具に頼っていた自分が馬鹿らしく思えるほどに。
そして、彼女が習得している居合いの真価は初太刀の後にある。

居合い斬り。大道芸として知られるこの技は、素早く抜刀して斬りつけるものだ。
しかし本物の居合いは違う。
抜刀をしての初太刀にすべてを込める一撃必殺の剣というのは間違いだ。
一撃で仕留められなかったら死に体という致命的な隙を作る? そんなもの剣技ではない。
居合いとは抜刀と同時に攻撃する技術であると同時に、
二の太刀、三の太刀を如何に素早く的確に放つかを追求している。
初太刀で相手を倒せなかった場合を想定せず抜刀する居合い術など存在しない。
初太刀でけん制し、二の太刀以降の攻撃で敵を仕留める事が多かったとさえ伝えられる。
刃を止めず、流れるように、様々な体勢から、様々な状況に対応し、臨機応変に敵を斬る。
それがい居合いだ。
だから、言葉は遍在を両断した直後にはもう、本物のワルドに向かって疾駆していた。


「ライトニング――!」
斜めに斬り上げる。向けられた杖を、ワルドの右腕ごと斬り落とす言葉。
悲鳴が上がるよりも早く、身を守ろうとして出された左腕を三の太刀で斬り落とす。
両腕を失ったワルドは、ようやくカエルのような悲鳴を上げてよろめいた。
そのワルドの視界の端で銀光がきらめく。
首筋に鋭い感触。
眼前で酷薄な笑みを浮かべるガンダールヴ。
「死んじゃえ」
ワルドの首筋にあてがわれた剣が、素早く引かれる。
「あ……」
呆けた声を漏らし、一拍置いてから、ワルドの首から噴水のように血が飛び散る。
白目を剥きいて糸の切れた操り人形のように崩れ落ち、鮮血の結末を迎えた。

「こ、コトノハ……」
背後からルイズの声がする。
振り向きたい思いに駆られながら、言葉は眼前の死体に手を伸ばした。
その懐からはみ出ていた手紙、かつてアンリエッタがウェールズに送り、
任務を受けたルイズが回収しにきたそれを、言葉は自らの制服のポケットにしまう。
「コトノハ、大丈夫?」
心配げな、ルイズの声。

世界を、この世界のすべてを裏切ったはずなのに、
ルイズも、そして今手に持つ剣を与えてくれた者も、言葉に手を差し伸べてくれている。
その手を握る資格など無いのに。
「さようなら、ルイズさん」
振り向かずに、別れを告げる。
「裏切ってしまった私は、もう貴女の側にいられません」
そう言って、言葉は誠の入った鞄を取りに行こうとし、教会全体が揺れた。
外が騒がしい。怒声と破壊音が響く。
「始まったか……レコン・キスタとの戦いが!」
ウェールズが言い終わると同時に、教会の天井が崩れる。


ワルドの死は悲しかったが、それよりも言葉とウェールズの無事をルイズは喜んだ。
ようやく話ができる余裕ができたと言葉に声をかけたが、返ってきたのは拒絶だった。
直後、ワルドとの戦いで気づかなかったが、
すでに始まっていたレコン・キスタとの戦いが、教会を襲った。
天井にヒビが入り、破片が落下し出す。小さな石でも、頭に当たれば大怪我をする。
そんな中を言葉はガンダールヴの脚力で椅子を飛び越えて誠の入った鞄を掴むと、
ルイズ達を振り返らず一直線に教会の戸を開け放ち走り去った。
「コトノハ!」
このまま行くつもりだ。レコン・キスタへ、クロムウェルの元へ。
アンドバリの指輪を求めて、独りで。
ルイズを裏切って。
(もう――戻ってこないつもり?)
フーケと通じていた、ワルドと通じていた、という裏切りよりも。
これが言葉との別れなのかという予感が、悲しかった。
「ミス・ヴァリエール、ここは危ない」
茫然自失となったルイズの腕を掴んだウェールズは、
教会が本格的に崩れ出すよりも早く脱出する。
そこはすでに戦場となりかけていた。
言葉の姿を探したが見つけられない。
「ミス・ヴァリエール、君のために船を用意してある。
 手紙は、ミス・コトノハが持っていってしまったが……君は逃げてくれ」
「ウェールズ殿下……」
「君はアンリエッタが心を許したかけがえのない友人。
 僕の代わりに、彼女の支えとなっておくれ」
「……しかし、私は」
ルイズは唇を噛んだ。血がにじみ出るほどに。
任務を果たせず、ワルドは裏切った末に死に、言葉は裏切って手紙を持って逃亡した。
戦いが始まり、足手まといの自分は、やはりアルビオンから脱出するべきなのだろう。
でも。

――裏切ってしまった私は、もう貴女の側にいられません。

あの声は、今にも泣きそうなのをこらえているように聞こえたから。
振り返らなかった言葉。どんな表情をして、どんな瞳をしていたろうか。
レコン・キスタに行って言葉はどうするのだろうか。
誠が生き返ったらどうするのだろうか。
もう帰ってこないのか。
「私の、所に、もう」
頬が濡れた。

第15話 さようなら、ルイズさん



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