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虚無を担う女、文珠を使う男-10


第10珠 ~メイドの危機・前編~

(うーん。それにしてもエレオノールさん、あれでルイズちゃんより11歳も年上なんだよな。
もしかしてそういう家系なのか? くぅ、惜しい、非常に惜しい!
あれじゃクリームがちょっとしか入ってない三食パンみたいなもんじゃねーか)

そんな事を考えながら厨房の手前までやってきた横島は、厨房の出入り口から数名のコックやメイド達が飛び出していったのに気づいた。
何かあったのかな、と思いつつ中を覗いた彼を待ち受けていたのは、皿が落ちて割れる音や、食器棚の扉が勝手に開閉をして音を立てている現場だった。

「ポ、ポルターガイスト現象!?」

あらためて辺りを見回した横島は、マルトーが座りこんでいるメイドを引きずって、自分の方へ向かってきているのに気づく。

「ヨコシマか!? ちょうどいいところに来た!
急ですまねーが、手伝ってくれ。あっちにまだ腰を抜かして動けないやつらがいるんだ!」

マルトーと横島が、腰を抜かしていたコック達を回収し終わる頃には、食器棚から皿が飛び出して宙を舞うほどまでに派手な状況になっていた。
(腰を抜かしているのがコックだと知った横島が「どうせこんな事だろうと思ったよ」とぼやいたのはささいな出来事だ)
この現象を見て、まさか貴族のボンボンどもが何かやりやがったのか? とぼやくマルトーだったが、横島には騒ぎの原因がはっきりと分かっていた。
何故なら、厨房の中で騒ぎを起こしている幽霊の姿を、ぼんやりとだが捉えていたからだ。
その幽霊は、年の頃は六十代~七十代といった感じであり、また古ぼけたゴーグルを首にかけている。
服装は、今日の昼間に街で見た平民と同じような感じであるが、瞳は黒く、若干白髪交じりの黒髪が横島に若干の違和感を感じさせる。
どこかで見たことがあるような… と思っていると、あらかた皿を投げ終わった幽霊がまるで額に流れた汗をぬぐうような仕草をし…

「ふぅ。いい汗かいたわい… 
と、ついつい熱中してしまったんじゃが、こんな事をしている場合では無いんじゃった。
…はて、それでわしは何をするつもりじゃったかのう」

とのたまった。

「ええい、てめーは意味もなくこんな騒ぎを起こしたのか!!」

ボケるにはまだ早いんじゃねーか、と思わずデルフリンガーの鞘でツッコミを入れてしまう横島。
マルトーはまだ危ないかもしれないと思ってはいるのだが、いきなり叫び出して厨房内へ走り出した横島に対しては、茫然とする事しかできなかった。

「げふっ!」
「ただでさえ今日は遠出をして腹が減ってるっちゅうのに、おかげで夕食が遅くなっちまうじゃねーか!!」
「いきなり何をするか… と、おお、横島ではないか!! そろそろ来る頃じゃとは思っておったが、会えて良かったわい」
「へ? じいさん、俺の事知ってるのか? どこかで会ったような記憶… も無いんだが」
「なんじゃ、お主今まで気付いておらんかったのか。わしの名は佐々木武雄。お主も毎日会っているシエスタの曾祖父であり、守護霊じゃ。
もう1週間以上顔を合わせておるというのに、ちっとも気付かんとは、修行が足らないのではないか?」

その名を聞いて、先ほどからこの幽霊に感じていた違和感が解消する横島。
魔法学院でも城下町で多くの人に会うが、ほぼ全員が西欧系の外見である。
幽霊がいるとするなら、やはりブロンドの髪や赤・青等の瞳をしているのが普通だ。
だが、シエスタの曾祖父だというなら話は別だ。何故かは知らないが、シエスタは所謂日系人っぽい姿をしている。その先祖だというのであれば、同様な特徴を備えているのも別段おかしくはない。
そう思ってよく見てみれば、どことなくシエスタの面影があるような気もする(正確には、この幽霊の面影がシエスタに見受けられる、が正しいのだが)

「うーむ。ちと不安じゃが、お主以外に頼める者がいないのも事実じゃし…
仕方ない、この際贅沢は言っておれんな。
横島や、ちょっとわしを手伝ってはくれんか?
シエスタがピンチなんじゃが、わし一人では助ける事が出来んのじゃ」
「シエスタちゃんがピンチ? おい、そりゃ一体どういう事だ?」

「この近辺には、モット伯爵という好色な貴族がいるんじゃがな。
その貴族が今日、シエスタを連れていってしまったのじゃ。
このままでは… ああ、シエスタが一体どんな目に会わされるか…」
「そ、そんな大事な事を忘れるんじゃねー!
って、こうしちゃいられねー。おい、そのモットって野郎はどこに住んでるんだ?」

聞けばモットの屋敷には馬で飛ばしても2時間ほどかかるという。
それを聞いた横島は、胡散臭い目で自分を見ていたマルトーに、厨房はもう大丈夫だという事を伝えると、馬を借りに厩舎へと向かった。
厩舎には、馬の世話をしていた厩番がいたが、「ルイズちゃんの…」と横島が一言二言説明すると、快く馬を貸してくれた。
彼がルイズにこき使われている事は、いまや魔法学院に勤めている平民達にとっては周知の事実だったのだ。


馬を飛ばしてモット伯の屋敷へと向かう最中、佐々木は簡単な作戦を考えていた。

「横島や。さっきは言わなんだが、モットはトライアングルクラスの水メイジとの事じゃ。
力技でいっても、返り討ちにあうのがオチじゃ。
それに万が一上手くいったとしても、後々面倒な事になるだけじゃから、ここは一つ芝居を打つのじゃ」
「芝居?」
「そうじゃ。屋敷についたら、ワシは中で適当に暴れる事にする。
お主は頃合を見計らって入ってきて、『シエスタを連れて来た事が原因』というふうに説明するのじゃ。
よいな?」
「…おお! じいさん頭いいなっ!
つまり俺はGS…ってこっちじゃ何て名乗ればいいんだ?」
「そのままGSで良いじゃろ。かれこれ60年ほどこっちにいるんじゃが、いわゆる霊能力者には会った事がないんじゃ。
じゃから、お主が何と名乗ろうが、『霊能力者はそんな呼び方はしない』などと言われる事もあるまいて。
まぁ、ここではよっぽど珍しい力なんじゃろうから、うさんくさがられるじゃろうが…
実際に問題が起これば、そんな事はささいな問題じゃ」

こんな感じでシエスタ救出作戦を考えていた二人は、学院を出発してから2時間ほど後、モット伯の屋敷へと到着した。
夜も遅くなりつつあり、門は固く閉じられていたが、幽霊である佐々木には当然関係がない。
何事も無く門をすり抜けた佐々木は、そのまま館の中へと向かった。
一方置いてけぼりをくらった横島は、門の側の小さな建物へと向かっていた。

「すんませーん。モット伯爵様に用があるんすけど、取り次いでもらえませんかねー?」

呼びかけに答えて扉を開けたのは、なめし皮の鎧をつけた、横島より頭一つ分くらい背が高い男だった。
武装した男が出てきた事で、少し腰が引け気味になっている横島を一瞥した男は、

「伯爵様はお疲れだ。
貴族様の使いというのでもなければ、また明日、出なおして来るんだな」

と言って、すぐに扉を閉めようとする。

「わっ。ちょ、ちょっと待てって。このままじゃ伯爵様が幽霊にとり憑かれて、大変な事になっちまうぞ!」

ここで躓いては計画が全ておじゃんになってしまう、と横島が慌てながらそう言うと、その男は、怪訝な顔をして口を開いた。

「は? 幽霊? 何をばかな事を。
そんな突拍子もないことを言ったところで、信じられないな」
「そりゃ実際に見ないと信じらんねーかもしんねーけどよ、これが本当の話なんだって。
一回騙されたと思って、屋敷の中に案内してくれればいいからさー」
「ああ、もう分からん奴だな。ダメだって言ったらダメだ。帰れ帰れ」

と二人が小屋の入口で言い合っていると、奥から男を呼ぶ声が聞こえてくる。
どうやら、カードか何かで遊んでいる最中だったらしい。
扉を開けた男がそれに応えて奥に引っ込むと、代わりに皮の鎧もはちきれんばかりの体格をしている、スキンヘッドの男が出てきた。
その男が、静かに横島を睨みながら、

「痛い目にあいたく無かったら、さっさとここから立ち去るんだな」

と一言だけ、ドスを効かせた声でしゃべった。
その迫力に、がくがくとひざが震えだす横島。
そこで男は、横島にも見えるように右拳をぐっと握りしめる。

「口で分からんなら、体で分からせるが?」
「げっ! そんなの当たったら痛いって!
どうかここは一つ落ち着いて…」
「…どうやら、本当に痛い目にあいたいようだなっ!」

脅すだけではびくつかせるだけでしかない、と思った男は、とうとう横島を盛大に殴り飛ばそうとする。

「ひ、ひゃああ!」

だが、その大きな体に見合った大ぶりな動作で放った一撃は、何とも情けない叫び声をあげさせるだけにとどまった。

「ほ、本当に殴るやつがおるかい!
こういう時は
『ほう、脅しに屈しないとは見かけによらず根性があるようだ。良かろう、話を聞いてやろうではないか』
とか何とか言うのがスジだろうが!!」

続けて、あまりに自分に都合の良い事を言い出した横島の言葉を聞き、小屋の奥から3人の男たちが、肩を回したり指をほぐしたりしながら出てきた。

「なかなか面白い事言うな、兄ちゃん」
「カードばっかりやってたんじゃ、体が鈍っちまうわな。たまには運動でもしてみるか」
「げっ。い、一対四なんて卑怯だと思わんのかー!」
「わりぃな、これも仕事なんだよっ!」

たちの悪い笑みを浮かべながらそういう男に(絶対仕事とか関係ねー)と思う横島だったが、それでどうにかなるわけでもなく。
佐々木と別れてからそれなりに時間もたち、これ以上こんなところでもたもたもしていられない。
かくなる上は文珠を使っちまうか? と思いかけた横島だったが、その時背中に背負っている長剣の事を思い出した。

「おおっ! そういや、今の俺って武器の達人だったよな?
っちゅうことは、もしかしてこんなふうにびくつかなくてもいいんじゃ?」

そう言って、背中の長剣、デルフリンガーを抜き放つ横島。
その途端、体のすみずみから力が湧きだすような感じを覚える。

「おっ、相棒、おしゃべりの時間かい? 買われてからずっと鞘に入れられっぱなしで、俺は寂しかったよ」
「こいつら片づけて、シエスタちゃん助けだしたらいくらでもしゃべってやっから、今はちょっと黙ってろよ」
「そりゃ残念。ま、相棒ならこの程度の人数、さっくり片づけちまえるわな」

男たちは横島が長剣を構えた為に、一度足をとめる。
いくら相手は一人とは言え、武器を持つ相手に素手で立ち向かうほどうぬぼれてはいない。
各々、腰や背に備えていた剣を抜き、横島から隙を引き出そうとする。

「のんびり剣なんかとおしゃべりなんかしやがって、なめてんのか!?
インテリジェンスソードのようだが、そんな錆だらけの剣1本で一体何が出来るって言うんだ!!」
「てめ、誰がボロ剣だっ…」

デルフリンガーが叫んだのを合図に、男たちが一斉に横島に斬りかかった。
しかし素の状態でさえ、ギーシュのワルキューレ3体の攻撃を避ける事が出来る横島だ。
その上、今はガンダールヴの力の影響もある。
ただの男が振るう剣を見切る事など、造作もない事だった。

「もしかして俺って天才? 剣が止まって見えるぜ!」
「おいおい、相棒。自分に振り下ろされている剣が止まって見えるんなら、逆に危ねーんじゃねーか?」
「だー いちいち言葉の綾に突っ込むんじゃねーっつうの」

デルフリンガーと軽口を叩きあいながらも、前にいた男の懐へ潜り込む横島。
斬り返すにしても、受けるにしても、明らかに不利な体勢になる横島だったが…
振るわれる剣の根本にデルフリンガーを合わせたところ、男の剣はあっけなく折れ、砕けた剣先が回転しつつ床に突き刺さった。
剣が折れるほど強く叩きつけていた男は、そのまま前につんのめり、危うく自らの首をデルフリンガーの錆にするところであった。

「え… う、うわっ!」
「おい、大丈夫か!? くそっ! 近づくのはまずい、一旦離れろ!!」

迂闊に近づくのは命取りだ、と気を引き締める男たち。

「剣を使って敵をなぎ倒す俺。くぅ、これだよ、これこれ。
この格好いい雄姿をシエスタちゃんに見せてやれねーのが残念だ」
「よっ、相棒、格好いいさね! 代わりに俺様がばっちり見ててやるから、思いっきり暴れちまいな」

一方横島は、「女の子を助けに来た」という久しぶりにおいしいシチュエーションも手伝い、感極まっている。
以前なら調子に乗った横島に、誰かしらがツッコミを入れるのだが、あいにくここにいるのはデルフリンガーだけ。
どうやら彼は、使い手である相棒の言動に、わざわざ水を差すつもりは無いらしい。

「わーっはっはっは。てめーら、まだやるっちゅうなら止めはしねーが、覚悟はしとけよ?
さっきは無事だったが、今度もそうだとは限らねーぞ」
「ふん。距離をとればこっちのもんだ。
いくら剣の腕が良くたって、こいつには敵うわけがねーからな。観念しやがれ!」

真中で構えていた男は、そう言うと懐に手を伸ばし、やけに旧式の銃に見えるような物を取り出した。

「知ってるか? これは銃って言って、弓矢みたいな武器だ。
近距離なら、これに勝る武器はねー。
ここまでやってくれたんだ、無傷ってわけにはいかねーが…
抵抗をやめるなら、これで撃つことだけは勘弁してやらー」

だが、拳銃の銃弾さえも連続してはじき落とした経験がある上に、シエスタ奪還に向けてテンションの上がっている横島に、この脅しは意味をなさなかった。
TVに出てくる武術家のように、やってみろと格好つける横島。
一呼吸後、やけに軽い発砲音と甲高い金属音。
そして、デルフリンガーによって防がれた銃弾が地面に落ちる音。

「おでれーた。長い事生きてきたが、銃弾を防ぐのに使われた事なんて、初めての経験さね」

普段目にする事のない事態に、一瞬動きが止まる男たち。
そして、その隙に銃を撃った男へタックルをかます横島。

「よっしゃー、これでチェックメイトだ!
てめーら、こいつの命が惜しかったら俺の邪魔すんじゃねーぞ。」
「ひ、人質を取るなんて卑怯だぞ!」
「うっせーわい。昔の人が言ってた言葉を知らんのか? 『勝てば官軍、負ければ賊軍』ってな!」
「…なぁ相棒。俺様もそう思う、実にそう思う。だけどな、さっきまでとギャップが大きすぎるとも思うんだよ。
さっきまでの『格好いい雄姿』ってのはどこにいっちまったんだか。
今となっては、この場にそのシエスタっちゅうのがいなかった事に感謝するこったね」

こうなってしまっては、さすがにどうしようもない。
男たちは、人質をロープで縛った上で屋敷へ向かう横島を、ただ見送るしかできなかったのであった。


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