あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

メイジさんと大きな剣


 『メイジさんと大きな剣』

 春の召喚の儀。そこでルイズは、使い魔としてある”物”を召喚した。

 ――いや、それは本当に"使い魔"と呼んでよいのだろうか、とルイズは今さらながらに自問する。
 たしかに、サモン・サーヴァントの魔法で開いたゲートから現れ、コントラクト・サーヴァントの魔法もしっかりかけることができた。
 対象が生物や魔物の類いでなく、”物体”であったことも、よしとしよう。珍しい例ではあるが、ガーゴイルの類いを使い魔とするメイジがいないわけではないらしいし。
 しかし……まがりなりにも”ご主人様”に対し、この扱いはないのではないだろうか?

 「さぁ、今日のお仕事は終わりですね。では、早速裏庭に移動して模擬戦を始めましょう、ルイズ」
 「ちょ、ちょっと待って。さっき、廊下の掃除が終わったばっかりなのよ!?」
 「あの……私の方は構いませんから、少し休まれてはいかがですか、ルイズさん?」
 「そ、そうね、お言葉に甘え…「甘やかさないでください、シエスタ。この未熟者を少しでも成長させるには、この程度のスパルタ教育は絶対に必要です」 くッ……」

 ……悔しいけれど、確かに"彼"の言うとおりかもしれない。

 あの日――使い魔を召喚したあの春の日、コルベール先生に促されて嫌々契約のための口づけを交わした時に、ルイズは"彼"の本当の姿とこれまで歩んできた人生(と言うか剣生?)のようなものを垣間見ることができた。

 単身で不死身の竜さえ下す英雄と聖なる戦乙女の悲恋。
 "彼"を巡って争う、エゴに満ちた人間たち。
 やがて流れ流れて極東の小さな島国に辿りつき、とある一族に引き取られてからの、安息と充実に満ちた日々。
 コイツはただの剣(いや、神々にすら一目おかれるような聖剣にして魔剣なんだけど)かもしれないが、その歩んで来た歴史は下手な人間よりもずっと重く、哀しく、それでいて誇り高いものだったのだ。

 キスを通じてそれを理解したとき、ルイズの心には、もはや”剣”なんかを召喚してしまったと言う劣等感は微塵もなかった。
 あるのは、ただコイツにふさわしい”主”になってやろうという気高き決意のみ。

 「あら? なんか左手が……アッ! イタイ、イタイ、イタイッッッ!!」

 しかしながら、契約のルーンが自分の方に刻まれると言うのは、いささか予想外ではあったが。

 * * *

 その後、部屋に戻って”剣”に呼びかけると、こちらもおおよその状況は把握していたみたいだった。

 「いささか風変わりな契約ですが、これも何かの縁でしょう。よろしい。ルイズ、貴女をわたしのマスターとして認め、その力になることをここに誓います」

 元より、この世界においては”インテリジェンスソード”と言う代物が存在するため、ルイズも剣と会話することに戸惑いはない。互いの過去を理解したことで、主従は今後ともに歩んでいくことをハッキリと確認できた。
 ……と、そこまではよかったのだが。

 「ところで、ルイズ。わたしは文字通り貴女の剣となり戦うことに否やはありませんが……貴女にも戦ってもらわねばならなりません」
 「ええ。当然ね。私は誇り高きヴァリエール家の三女よ。いつまでも護られているだけだなんて思わないで」
 「いえ、そうではなくて。わたし自身を貴女に振るってもらう必要があるのですが」
 「……へっ?」

 考えれば当たり前の話だが、いかにすごい力を持った魔剣とはいえ、それを使う剣士がいなくては宝の持ち腐れだ。

 剣を使うのは本来平民の仕事だが、そのあたりは妥協してもよい。コイツは自分の使い魔なのだし、使い魔を正しく使いこなすのも主の器量というヤツだろう。
 神代から受け継がれたこれほど高貴で力強い魔剣を振るえば、傍目にも平民の傭兵などとは格の違いは明らかであろうし。
 それに、王宮の騎士クラスともなれば、魔法に加えて剣術の嗜みも身につけることが必須条件だと聞いたこともある。

 「む、無理! 絶対、ぜーーーったい、ムリ!!」

 しかしながら、コイツ――グラムともバルムンクとも呼ばれるその巨大な剣は、なにせ、その全長は153サントのルイズの身長より長いのだ。

 「そうですか? しかし、先程わたしを部屋にまで持ってくる際の手つきは、決して素人とは思えなかったのですが?」

 言われてハタと気づく。そういえば、非力な自分が明らかに自分と同等クラスの重量のあるグラムを、さほど苦労することなくここまで運べたことに。
 いまだって、さしたる苦もなくコイツを持ち上げて会話しているのだ。まぁ、さすがに持ち上げっぱなしだといささか疲れては来たが。

 「ふむ。どうやら、その左手に刻まれたルーンのおかげらしいですね」

 「え? あ、そう言えば、ルーンがご主人様である私の方に刻まれるってのは、どーいうことよ!?」

 「そう言われましても……むしろ、こちらの魔法に関する領域じゃないですか、それは。ともあれ、そのルーンの加護のおかげで、わたしを扱うことができるようですね」

 「た、確かに、使い魔に刻まれたルーンは、使い魔の知力を強化したり、しゃべったり特別な力を付加したりすることもあるらしいけど……」

 後日、彼女に刻まれたルーンが、伝説の”虚無”の使い魔、ガンダールヴのものだと判明するのだが、この時は、結局、"単なる魔法の誤作動"という結論に達したのだった。

 * * *

 そんな顛末の末、魔剣グラムはルイズをマスターとして認めつつ、"剣"としての本能故か、彼女を一人前の剣士――彼曰く、"捧剣士(アナザーワン)"――として鍛えることに熱心だった。
 当初は面倒くさがって聞き流していたルイズも、お約束の3連コンボ(ギーシュとの決闘・フーケゴーレム戦・アルビオン隠密旅行)を経て、自分の未熟さを痛感し、グラムの特訓を受けることを了承する。

 そこまではいい。多少(どころではないが)辛くとも、自分で選んだ道だ。
 幸いにして、その過程で、アナザーワンであった祖母から教えを受けた学院のメイド、シエスタと友人になり、"備前長船長光"と呼ばれる長大な刀を持つ彼女と模擬試合を行うようになってから、ルイズの捧剣士としての実力はメキメキ伸び始めた。
 いくら研鑽を積んでも"ゼロ"のままだった魔法の勉強と違って、自分が努力することで明確な"力"を得ていく感覚は悪いものでは。と言うか、正直非常に気分がいい。
 稽古は苛烈といってもいい厳しさだが、今では平民と貴族という垣根を越えて親友兼ライバルとなったシエスタとの試合も、心を躍らせる。

 しかし―――。

 「どうして、一人前の捧剣士になるために、メイドの修行が必要なのよォーーーッ!!!」

 ……それが"世界"の定理だからだとしか言いようがない。お気の毒様。

 * * *

 その後、捧剣士としての腕を上げつつ、虚無の魔法にも目覚めたルイズは、アンリエッタ女王付きの女官として取り立てられ、初代ビクトリア(最優秀捧剣士)として後世に名前を残すことになる。
 動乱の時代に女王を護り、メイド服を翻して、華麗にそして可憐に戦うルイズやシエスタ(彼女のルイズの推挙で取り立てられた)の姿は、トリステインの双璧として国内外から称えられた。
 また、それを受けて平民・貴族問わず”捧剣士(アナザーワン)”が女の子たちの憧れの職業になっていくのだが……。
 いまこの瞬間、ヘトヘトになりながら剣を振るっているふたりの少女達にとっては、遠い未来の与太話でしかなかった。

 「いきますよ……メイドのみやげ、”五輪燕”!」
 「甘いっ! メイドのみやげ――"白金色の聖譚曲(オラトリオ・プラチナム)"!!」

  • fin-



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