あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

プレデター・ハルケギニア-17


再び姿を消した亜人が竜へと飛び掛る。
当然竜にも亜人の姿を見ることはできないが人間よりも遥かに優れた聴力、嗅覚、野生的な第六感で
対応する。

飛び上がった勢いそのままに亜人が竜の頭を真上から貫きにかかる。しかし寸前で竜が首を捻り回避した。
槍が地面に刺さり一瞬亜人の動きが止まった。そこをすかさず竜の横殴りの尾撃が捉えた。

亜人の見えない巨体は数メイルほど宙を飛び背中から樹木へと激突した。

少しよろめきながら体勢を整え亜人が竜を見る。竜も見えない亜人を威嚇するように喉を鳴らす。



「何をしてるの!?作戦は説明したはずよ!」

樹木の陰でエレオノールが声を荒立てる。

「しかし、姿がはっきりと確認できないことにはどうしようもありませんよ!
ましてこんな暗闇では……」

傍らの隊員の言葉通り他の持ち場についている隊員たちも手を出しかねていた。
再び亜人が姿を現さないことには手の出しようがなかった。

エレオノールは歯噛みした。追い求めた者はすぐそこにいるのだ。




ルイズの脳裏は恐怖に染まっていた。あの亜人の姿を確認した瞬間からだ。
脳裏に浮かぶのはハヴィラント宮殿でその身を吹き飛ばされ、切り裂かれ無残に死んでいった兵士たち。

ルイズはその場にへたり込んでしまった。あまりの恐怖に体が動かない。
テファニアと子供たちも黙って目の前で繰り広げられる人外の戦闘を見守るしかなかった。

ルイズたちの目の前で亜人と竜の戦闘が再び開始される。

亜人が少し腰を沈めると樹木の上へと跳躍し枝に飛び乗る。すかさず木々から木々へと素早く飛び移って行く。
竜は亜人が飛び移る音を頼りに首を回す。前足の一撃で音がした木をへし折った。
轟音とともに木は倒れたが亜人が落ちた気配は無い。

周りからは枝の揺れる音が途切れなく響く。
竜が痺れを切らしたかの如くそこら中の木々をなぎ倒していく。

竜が前足を振るう度に木々が倒れ大地が揺れる。

姿を現さぬ亜人に対する怒りか、巨大な咆哮を上げるとともに前足を大きく振りかざし再び木々をなぎ倒しにかかる。

その時だった。木々の間から青白い光弾が竜へと撃ち込まれた。
光弾は竜の前足の中程に命中、爆発音とともに竜の前足は木っ端微塵に吹き飛んだ。

竜があまりの痛みからか絶叫を上げる。暴れまわる竜の尾が木々をなぎ倒す。
その時、もう一度枝が揺れる音が響くと見えない巨体が竜の頭部へと飛び乗った。

飛び乗った勢いそのままに手にした長槍で竜の頭を深々と貫く。
竜は短い断末魔とともに地面へと倒れこみ、大地が大きく揺れた。小刻みに痙攣する竜の体の上に細い電流が走る。
姿を現した亜人は血塗れた長槍を頭上に突き上げると勝利の咆哮を上げた。


「今よ!!」

エレオノールが叫んだ。それとほぼ同時に複数の小さな魔法の眠り雲、「スリープ・クラウド」が亜人へと撃ち込まれた。
亜人は一瞬驚いたように身を固めたが突然の不意打ちに対処できなかった。

スリープ・クラウドをまともに受け、2メイルを超える巨体が竜の体から地面へとゆっくりと倒れこむ。




「い、一体どうなってるの?」

突然、複数の方向から放たれたスリープ・クラウドにルイズが言う。
その時彼女たちの背後で足音がした。複数だ。

姿を現したのはマント姿の魔法衛士だった。

「やったぞ!成功だ!」

ルイズたちには目もくれず魔法衛士たちが倒れこんだ亜人へと駆け寄る。
わけが分からず呆然と眺めていると不意に背後から声がかかった。


「久しぶりね、ルイズ」


その懐かしい声にルイズは俊速の速さで振り向いた。
そこに立っているのはルイズのよく知る人物だった。

「エレオノール姉さま!?」

ルイズもエレオノールも再会するのは久方ぶりではあったがそこに笑顔は無い。
ルイズは困惑、そしてエレオノールはどこかいつもよりも冷たい表情を浮かべている。

「どうして……」
「それはこっちのセリフよ。あなた何でアルビオンなんかにいるの?」

「そ、それは……」

ルイズは姉の問いに思わず俯いた。今の状況を一体どう説明すればいいのか。

「……詳しいことは後で聞くわ。そこで待ってなさい」

そう言うとエレオノールは亜人のほうへと歩いて行った。
亜人は仰向けに横たわっている。その姿を間近で見て彼女は少し安堵したような表情を浮かべた。

「とりあえずキャンプまで運びましょう」

エレオノールの指示に隊員たちが頷いたその時、亜人のすぐそばにいた隊員の首を巨大なトカゲのような手が掴んだ。
見ると亜人が半身を起こして隊員の首を鷲づかみしているのだ。

「なッ!?」

エレオノールが驚愕の表情を浮かべた。スリープ・クラウドの効き目が切れるにはあまりにも早すぎる。



この亜人の必要とする大気と人間の必要とする大気は実は異なる。
彼の装着しているマスクには周りの大気を彼に合った成分へと変換する、言ってみれば解毒機能がついている。
それがスリープ・クラウドの効果を激減させたのだ。



二人の隊員の首を掴んだまま亜人の体が跳ね起きる。隊員の体を空中に持ち上げると驚異的な握力でその首を完全に握りつぶした。
喉ごと首を握りつぶされた隊員たちは断末魔も上げられずに息絶えた。


亜人が二人の死体を投げ捨てると怒りに体を震わせる。
他の隊員がすかさずスリープ・クラウドを唱えにかかる。

しかし亜人の銃が照準を合わせるほうが早かった。銃から放たれた光弾をもろに喰らい数人の隊員が火だるまになり吹っ飛んだ。

「クソッ!」

隊員たちが亜人に向けてそれぞれの魔法を放って行く。火球、氷の矢、ライトニング。
しかし亜人はその魔法を飛び越え隊員たちへと襲い掛かった。

一人の隊員の目の前に着地すると間髪要れずに長く伸びた鉤爪を繰り出す。
隊員の肩口から腰までを斜め一直線に、そのまま返しで腰部を横一直線、そして腰から反対の肩口にかけてを斜めに切り裂き
最後に胸部を横一直線に切り裂いた。

俊速の四連撃で上半身をズタズタに切り裂かれ、その隊員は断末魔の呻きを吐きながらゆっくりと前のめりに倒れた。


「距離を取れ!」

一人がそう叫ぶと他の隊員もフライで後方へと飛んだ。それと同時に亜人が腰につけた円盤を掴み飛翔した隊員へと投擲した。
猛スピードで隊員へと投げられた円盤は空中で隊員の体を真っ二つに切り裂いた。切断面から鮮血と内臓をこぼれ落としながら二つになった隊員は地面へと落下した。
亜人が自身の手に舞い戻った円盤を掴むと残りの『獲物』を見る。

隊員たちの顔は絶望に覆われていた。近距離でも遠距離でも勝ち目が無いことを、彼らの豊富な実戦経験ゆえに悟ってしまったのだ。

「いや……いやよ、こんなの。いやだぁ……」

ルイズは目の前の惨状を直視できずにいた。ただ頭を抱え震え泣いていた。自分自身の召還した者が人間を殺して行く恐怖、罪悪感。
その現実から逃避した。まるで幼いころ、母の叱りから逃げ小船の中で泣いていたように。

亜人の肩から銃が持ち上がり生き残った者たちへと向けられる。受ければひとたまりもないだろう。
エレオノールは歯噛みした。どんなに考えても打開策は浮かばない。逃亡してもたちまちに追いつかれ殺されるだろう。


亜人の銃口に青白い光が点る。その時、不意に琴の音色が流れた。美しい調べが。
エレオノールやルイズが、そして亜人もがその音のする方向へと視線を向けた。


テファニアだ。先程竜に向けて弾こうとした琴を今再び弾き始めた。
彼女の全身からは冷や汗が流れ、体が小刻みに震えている。恐怖に耐えながら琴を弾いているのだ。
そして彼女の美しい歌声が響いた。


ナウシド・イサ・エイワーズ……

ハガラズ・ユル・ベオグ……

ニード・イス・アルジーズ……

ベルカナ・マン・ラグー……


「こいつはまさか……相棒、まずいぞ!耳を塞げ!!」

亜人の腰の剣が鎬を鳴らしながら亜人へと警告する。
しかし次の瞬間、テファニアはいつの間にか手に持った杖を振り下ろした。


杖を振り下ろしても表面的には何も起こらなかった。起こっていないように見えた。


呆然とテファニアに方を見ていたエレオノールだが我に返り亜人へと視線を移した。

そして亜人の様子が妙な事に気がついた。

銃口からは光が消え、まるで呆けたように周りの木々を見回している。
まるで自分がここにいる理由を忘れたように。

彼女は一瞬戸惑ったがすぐに亜人の元へと疾走した。走りながら懐から一本の注射器を取り出す。
そしてその勢いのまま亜人の懐へと飛び込むと亜人の腹部を一気に注射器の針で貫いた。

亜人が腹部を貫かれる痛みで我に返ったか、エレオノールを見ると強力な前蹴りで彼女の体を蹴り飛ばした。
彼女の体は5メイルほど吹っ飛び地面へと叩きつけられた。

ヨロヨロと立ち上がるエレオノールに亜人が鉤爪を伸ばし歩み寄る。
しかし不意にその歩みがふらついた。まるで泥酔者のようにフラフラと体を揺らすと次の瞬間、
亜人の体は前のめりに倒れこんだ。


注射器から注入された強力な眠り薬は亜人を深い眠りへといざなったのだ。
今度はマスクによる解毒も望めないだろう。体内に直接注ぎ込まれてしまった。

亜人が倒れた姿を確認するとエレオノールもまた前のめりに失神した。


遠のく意識の中、彼女の名前を呼ぶ妹や隊員たちの声が聞こえたような、そんな気がした。




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