召喚によって現れた目の前のものに、ルイズだけでなく、目撃した者全員が、一瞬固まった。
召喚した張本人である、ルイズの頭の中を巡る、様々な言葉。困惑、恥、怒り、焦燥。それらを一まとめにしても、
この一言以上にはならない。
召喚した張本人である、ルイズの頭の中を巡る、様々な言葉。困惑、恥、怒り、焦燥。それらを一まとめにしても、
この一言以上にはならない。
なんで!?なんでこんなのが!?
そう、ルイズが召喚した使い魔。それはどう見ても、自分より2,3年上程度の、瞳に弱気な光を宿らせた男だった。
「…あのー……」
目の前の男から言葉が発せられる。それは全員の精神的な硬直を解かせるのには効果的だった。
「何で僕、こんなとこにいるんでしょうか?」
「…あのー……」
目の前の男から言葉が発せられる。それは全員の精神的な硬直を解かせるのには効果的だった。
「何で僕、こんなとこにいるんでしょうか?」
途端に湧き上がる、周囲の生徒達からの笑い声。それを全身に浴びたルイズの顔が、たっぷりの湯で茹でられたように
真っ赤になるのには、数秒とかからなかった。
「あ、あたしが召喚したからよ!!大体なんであんたみたいのが出てくるのよ!!?」
「え、あの、そんなの僕に言われても、いったいなにがなんだか…」
「うるさい!黙ってなさいよ!あーもうこんな大失敗して、どうしてくれんのよ!!」
「なに言ってんだよ!『ゼロのルイズ』が失敗するのはいつものことじゃないか」
「そうそう」
「うるさいって言ってんでしょ!!」
また上がる笑い声。自分の支離滅裂な発言を考える事も忘れて、
ルイズは真っ赤な顔に失敗の悔し涙をにじませながら、教師のコルベールに向き合った。
「先生!再挑戦させてください!いくらなんでもこんな平民、あんまりです!」
「それはなりません。平民を召喚するなど、珍しいことではありますが、大事な儀式にやり直しなどはありません」
「でもこんな、情けなさそうで、しょぼくれてて、おどおどしてる平民!こんなの使い魔になんてしたくありません!」
『うるせえガキだなぁ』
真っ赤になるのには、数秒とかからなかった。
「あ、あたしが召喚したからよ!!大体なんであんたみたいのが出てくるのよ!!?」
「え、あの、そんなの僕に言われても、いったいなにがなんだか…」
「うるさい!黙ってなさいよ!あーもうこんな大失敗して、どうしてくれんのよ!!」
「なに言ってんだよ!『ゼロのルイズ』が失敗するのはいつものことじゃないか」
「そうそう」
「うるさいって言ってんでしょ!!」
また上がる笑い声。自分の支離滅裂な発言を考える事も忘れて、
ルイズは真っ赤な顔に失敗の悔し涙をにじませながら、教師のコルベールに向き合った。
「先生!再挑戦させてください!いくらなんでもこんな平民、あんまりです!」
「それはなりません。平民を召喚するなど、珍しいことではありますが、大事な儀式にやり直しなどはありません」
「でもこんな、情けなさそうで、しょぼくれてて、おどおどしてる平民!こんなの使い魔になんてしたくありません!」
『うるせえガキだなぁ』
またしても全員が硬直し、声のした方向を見た。その声を発した本人、たった今ルイズに召喚された青年は、
自分でも自分の発言が信じられないような、驚いた顔で、口を両手で塞ぎ、自分の胸元を見ていた。
「だ、だれがうるさいガキですってぇ!?」
「あ、いや、その、今のは僕だけど僕じゃないっていうか、ていうかちょっと待ってて」
「一体何を待てっていうのよ!?ほんっとあったまきた!!」
「だからちょっと待っててくださいって!モモタロス、ほんと今出るのはやめて!」
モモタロス?出るのはやめて?
まるで自分以外の、いもしない誰かに話しかけるような青年の仕草に戸惑っていると、男はまるで何かに衝突したように吹き飛んだ。
いや、吹き飛んだような動きを見せた次の瞬間、男はバランスを立て直し、顔を上げた。
まるで別人のような、ぎらぎらとした、獣のような光を瞳に宿らせて。
「俺、参上!!」
「……え?」
ルイズが目の前の青年の変貌に驚いていると、いきなりルイズは両の頬を、青年につままれていた。
「い、いひゃいいひゃい!やめれれれ!」
「さっきから聞いてりゃグダグダグダグダ、良太郎をコケにしやがってよぉ。あったまきた?あったまきてんのはこっちだってんだ!
俺の堪忍袋の緒ってやつもてめーが目の前に出てきてからクライマックスに切れっ放しなんだよ!!」
いまいち文章としてまとまってない怒りの言葉を放つ青年。周囲の人間は今日何回目か分からない硬直に見舞われていたが、
やっと目の前の状況を理解したコルベールが、青年に向かって声を張り上げる。
「き、君!ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「あん?」
コルベールの、わずかに上ずった声に反応して、青年はルイズの頬から手を離し、コルベールに向かって歩きはじめた。
青年はコルベールに向かってガンをくれている。召喚直後の、おどおどとした目つきとはまるで別人だ。
コルベールは、青年に対しどう対処すればいいか、冷静になるよう自分に言い聞かせながら、必死に考える。
「き、君。まず少し落ち着いて、だね。私たちの話を」
「必殺」
「え?」
「俺の必殺技パァァァト4!」
自分でも自分の発言が信じられないような、驚いた顔で、口を両手で塞ぎ、自分の胸元を見ていた。
「だ、だれがうるさいガキですってぇ!?」
「あ、いや、その、今のは僕だけど僕じゃないっていうか、ていうかちょっと待ってて」
「一体何を待てっていうのよ!?ほんっとあったまきた!!」
「だからちょっと待っててくださいって!モモタロス、ほんと今出るのはやめて!」
モモタロス?出るのはやめて?
まるで自分以外の、いもしない誰かに話しかけるような青年の仕草に戸惑っていると、男はまるで何かに衝突したように吹き飛んだ。
いや、吹き飛んだような動きを見せた次の瞬間、男はバランスを立て直し、顔を上げた。
まるで別人のような、ぎらぎらとした、獣のような光を瞳に宿らせて。
「俺、参上!!」
「……え?」
ルイズが目の前の青年の変貌に驚いていると、いきなりルイズは両の頬を、青年につままれていた。
「い、いひゃいいひゃい!やめれれれ!」
「さっきから聞いてりゃグダグダグダグダ、良太郎をコケにしやがってよぉ。あったまきた?あったまきてんのはこっちだってんだ!
俺の堪忍袋の緒ってやつもてめーが目の前に出てきてからクライマックスに切れっ放しなんだよ!!」
いまいち文章としてまとまってない怒りの言葉を放つ青年。周囲の人間は今日何回目か分からない硬直に見舞われていたが、
やっと目の前の状況を理解したコルベールが、青年に向かって声を張り上げる。
「き、君!ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「あん?」
コルベールの、わずかに上ずった声に反応して、青年はルイズの頬から手を離し、コルベールに向かって歩きはじめた。
青年はコルベールに向かってガンをくれている。召喚直後の、おどおどとした目つきとはまるで別人だ。
コルベールは、青年に対しどう対処すればいいか、冷静になるよう自分に言い聞かせながら、必死に考える。
「き、君。まず少し落ち着いて、だね。私たちの話を」
「必殺」
「え?」
「俺の必殺技パァァァト4!」
飛んだ。コルベールが、である。
青年のアッパーを受けて、十数メートルほど美しい放物線を描き、コルベールは気絶して倒れた。
「よぉし、これでお仕置きタイム続行だ。……あん?あのなあ良太郎、お前は甘すぎるんだよ!
こういうガキンチョはだな、一発きっつーいお仕置きを食らわせてだな!」
青年がまた、何かがあるように話しかける。ルイズは何がなにやらわからないまま、少しも動かず放心状態になっていた。
「だからよ!大丈夫だって!俺だってちゃんと考えてんだからよ!俺に任せとけって!」
『いやいや、そういうわけにもいかないでしょ』
青年の口から、さっきまでとは違う、とても穏やかな声がもれた瞬間、また青年は吹き飛んだ。
「まったく、女性の扱いを知らない人って、ほんっとやだよね」
優しい声と共に顔を上げた青年は、声と同様、さっきまでとは違って、優しくアルカイック・スマイルを浮かべていた。
どこから出したのか、眼鏡までかけている。
青年はぐったりしたままのルイズに近寄ると、頬にゆっくりと手を当てた。
「ほんとごめんよ。さっきも言ったけど、先輩って女性の扱いを知らないからさ」
「……あ、あんた、一体、なんなのよ」
「いやいや、こっちにもふかーい事情があってね。あーあー、女の子に涙まで流させて」
『涙?』
「え?」
青年の呟きに、青年とルイズが同時に疑問符を上げる。青年もまた、自分の発した声に驚いている。
つまり。
『涙…泣いて涙…』
「え、いや、ちょっと待って、僕の出番こんだけ!?」
『泣けるでぇ!!』
叫びとともにまたしても吹き飛ぶ青年。次の瞬間見た顔には眼鏡はなかった。
「誰が涙を流しとるんやぁ!?悲し涙なんぞ、わいが嬉し涙に変えたるでぇ!」
骨太な声で明るく叫ぶ青年。ルイズは這って逃げようとするが、その前に青年に捕まった。
骨がきしむほどの力で肩をつかんで持ち上げられ、ルイズは青年と真正面から向き合う形になった。
ふと、目を動かして周囲を見ると、みんな状況が理解できていないまま、硬直している。
青年のアッパーを受けて、十数メートルほど美しい放物線を描き、コルベールは気絶して倒れた。
「よぉし、これでお仕置きタイム続行だ。……あん?あのなあ良太郎、お前は甘すぎるんだよ!
こういうガキンチョはだな、一発きっつーいお仕置きを食らわせてだな!」
青年がまた、何かがあるように話しかける。ルイズは何がなにやらわからないまま、少しも動かず放心状態になっていた。
「だからよ!大丈夫だって!俺だってちゃんと考えてんだからよ!俺に任せとけって!」
『いやいや、そういうわけにもいかないでしょ』
青年の口から、さっきまでとは違う、とても穏やかな声がもれた瞬間、また青年は吹き飛んだ。
「まったく、女性の扱いを知らない人って、ほんっとやだよね」
優しい声と共に顔を上げた青年は、声と同様、さっきまでとは違って、優しくアルカイック・スマイルを浮かべていた。
どこから出したのか、眼鏡までかけている。
青年はぐったりしたままのルイズに近寄ると、頬にゆっくりと手を当てた。
「ほんとごめんよ。さっきも言ったけど、先輩って女性の扱いを知らないからさ」
「……あ、あんた、一体、なんなのよ」
「いやいや、こっちにもふかーい事情があってね。あーあー、女の子に涙まで流させて」
『涙?』
「え?」
青年の呟きに、青年とルイズが同時に疑問符を上げる。青年もまた、自分の発した声に驚いている。
つまり。
『涙…泣いて涙…』
「え、いや、ちょっと待って、僕の出番こんだけ!?」
『泣けるでぇ!!』
叫びとともにまたしても吹き飛ぶ青年。次の瞬間見た顔には眼鏡はなかった。
「誰が涙を流しとるんやぁ!?悲し涙なんぞ、わいが嬉し涙に変えたるでぇ!」
骨太な声で明るく叫ぶ青年。ルイズは這って逃げようとするが、その前に青年に捕まった。
骨がきしむほどの力で肩をつかんで持ち上げられ、ルイズは青年と真正面から向き合う形になった。
ふと、目を動かして周囲を見ると、みんな状況が理解できていないまま、硬直している。
ええい、誰か助けてくれてもいいでしょ、この薄情ものども。
思わず心の中でうなるが、それも届くはずもない。
「お前か!?なんぞ悲しいことでもあったんか!?そんならわいにまかせとけ!俺の強さは泣けるでぇ!」
「だから!あんたがわけわかんないことばっかやってるからみんな困ってるんでしょ!」
「おう?わいはさっき起きたばっかやからな、なんがあったんか説明してくれや」
「こんだけやって説明しろってどういうことよ!あんたホントーに最低ね!!」
『あん!?誰が最低だと!?』
粗暴な声とともに青年が吹っ飛ぶ。そして現れた顔は、またしても先ほどの暴力的な青年だ。
「人のことコケにしといてどの口が最低だっつーんだ!?あぁ!?」
『あーもう、ここは任せてくんない?』
優しげな声とともにまた吹っ飛ぶ。
『お前らなんぞにまかせとられんわ!わいがやる!』
骨太な声とともにまた吹っ飛ぶ。
『だから女性の扱いはこの僕が』
『亀公の出番じゃねえ!ここはあいつにきっちりと礼儀ってもんをだな』
『お前らが出とったらややこしくなるわ!』
吹っ飛ぶ。吹っ飛ぶ。また吹っ飛ぶ。その様はまるで笑えない一人芝居だ。どこの町にも、こんな大道芸人はいないだろうが。
そしてその一人芝居が十数秒ほど続いた後、青年は糸が切れた人形のように、ばったりと倒れた。
「え?ちょ、ちょっと!」
ルイズが思わず駆け寄る。なんせ一応とはいえ(非常に不本意だが)自分の使い魔となるものだ。なにかあっては困る。
いや、むしろ何かあってくれたほうが嬉しいかも知れないが。
そんなルイズの思いを知る由もなく、青年はゆっくりと呼吸している。単に気絶しただけらしかった。
「使い魔……あたしの使い魔……」
優雅で、華麗で、強くて、品のある使い魔。自分が欲しかったのは、そんな理想の使い魔。
「どうしてこうなるのよぉぉぉぉぉ!?」
ルイズの絶叫に、答えるものは誰もいなかった。
思わず心の中でうなるが、それも届くはずもない。
「お前か!?なんぞ悲しいことでもあったんか!?そんならわいにまかせとけ!俺の強さは泣けるでぇ!」
「だから!あんたがわけわかんないことばっかやってるからみんな困ってるんでしょ!」
「おう?わいはさっき起きたばっかやからな、なんがあったんか説明してくれや」
「こんだけやって説明しろってどういうことよ!あんたホントーに最低ね!!」
『あん!?誰が最低だと!?』
粗暴な声とともに青年が吹っ飛ぶ。そして現れた顔は、またしても先ほどの暴力的な青年だ。
「人のことコケにしといてどの口が最低だっつーんだ!?あぁ!?」
『あーもう、ここは任せてくんない?』
優しげな声とともにまた吹っ飛ぶ。
『お前らなんぞにまかせとられんわ!わいがやる!』
骨太な声とともにまた吹っ飛ぶ。
『だから女性の扱いはこの僕が』
『亀公の出番じゃねえ!ここはあいつにきっちりと礼儀ってもんをだな』
『お前らが出とったらややこしくなるわ!』
吹っ飛ぶ。吹っ飛ぶ。また吹っ飛ぶ。その様はまるで笑えない一人芝居だ。どこの町にも、こんな大道芸人はいないだろうが。
そしてその一人芝居が十数秒ほど続いた後、青年は糸が切れた人形のように、ばったりと倒れた。
「え?ちょ、ちょっと!」
ルイズが思わず駆け寄る。なんせ一応とはいえ(非常に不本意だが)自分の使い魔となるものだ。なにかあっては困る。
いや、むしろ何かあってくれたほうが嬉しいかも知れないが。
そんなルイズの思いを知る由もなく、青年はゆっくりと呼吸している。単に気絶しただけらしかった。
「使い魔……あたしの使い魔……」
優雅で、華麗で、強くて、品のある使い魔。自分が欲しかったのは、そんな理想の使い魔。
「どうしてこうなるのよぉぉぉぉぉ!?」
ルイズの絶叫に、答えるものは誰もいなかった。