あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-5

 広場に戻ってみると
 朝の時と同じ仁王立ちで待っているルイズの姿があった。
「そのポーズ好きなのか?」
「好きも嫌いもないわ、そんなことで誤魔化さないで。
 これでもう2度目よ、私を待たせるの」
「まだ2度目じゃねぇか」
「口答えしないの、昼ごはんも抜きにして欲しいのかしら」
 朝食を取って少しは落ちついているだろうと思ったが、相変わらずのご様子だ。
 しかし、巧はそれで動じる事はなかった。 

 そうやって威張ってられるのも今のうちだ。
 あの禿頭がお前を呼び出すまでのな。
 せいぜい油を絞られるんだな。

 巧は知らない。
 午後からの丸半日をバイクの解析にあてるため、一日分の職務を午前中に終わらせるべく
 コルベールが今、馬車馬の如く働いている事を。
 巧は知らない。
 そんなコルベールはルイズに説教をする事などとうに忘れてしまっている事を。
 巧は知らない。
 巧の生殺与奪は、これからもルイズの手の内にある事を。

 巧は知らない。  

 使い魔の夢


 これは巧が召喚された夜、別の場所で起きた話。

「これは『土くれ』だ、『土くれ』の仕業だ!」
「違う、ゴルゴムの仕業だ!」
「お前達がついていながら何をしていた!役立たずどもが!」 
 ボンクラ貴族共の叫び声が屋敷の敷地内に響き渡るのを聞きほくそ笑む。

「狂乱なんて大層な名前がついてたから、
 もっと禍々しい色をしてると思っていたのだけれど」
 手にもっているのは白で縁取られた銀色の輪。
 怪盗『土くれ』のフーケが領収した今夜の獲物。
 名前は『狂乱の環』。
 その右手の窪みに開放の錠を挿した時、青白い光を放ち、
 身に着けた者の全身を鎧で覆う。
 その鎧を纏った者は、何者も及ばない絶大なる力を得ると言われている。

「いたぞ、あそこだ!」
「『土くれ』め、今日こそ捕らえてくれる!」   
 賊の知らせを受けた魔法衛士隊が駆けつけて来た。
「毎度毎度、ご苦労様な連中だね。じゃ早速」  
『狂乱の環』を言い伝えの通り、腰に巻き開放の錠を挿す


「何も起こらないじゃないか」  
 光など放たれない。鎧など出てこない。
 まぁいい。
 そんなものに頼らなくても自分にはこれがある。
『錬金』で作り上げた30メイルの巨大ゴーレム。 
 繰り出す拳は城壁をも砕き、
 そそり立つ巨体は火竜のブレスをも通さない。
 いつものように衛士隊を蹴散らし、貴族の屋敷を後にする。

「冗談じゃないよ、ハズレクジだなんて」
 手の中の輪を忌々しげに睨む。 
 たまに掴まされるのだ、言い伝えだけの嘘っぱちの紛い物。あぁ腹立たしい。
 その手の好き物に適当に吹っ掛けて、ヤケ酒の代金でも捻り出してやろうか。
 お得意様の顔を思い浮かべようとして、ふとそうすることは躊躇われた。


もしかしたら。
 これまでありとあらゆるマジックアイテムを盗んできた自分にはわかる。
 今回盗み出したこれはそのどれとも似つかない『何か』がある。
 その『何か』を引き出さない内に手放してしまうのは惜しい。
 では『狂乱の環』を使用するためにはどうすればいいのか。固有のスペルが必要なのだろうか。
 それとも独自の儀式のようなものをしなければならないのか。
「ま、面倒だけどさ」 
 そのために調べる事は幾らでも出来る。資料や古い文献には山ほど触れる事ができる。
 そう、自分はもう一つの顔を持っているのだから。

 フーケは知らない。
 環が狂乱の名を冠する由縁を。
 鎧を纏ったが最後、
 身に着けた者をその強大すぎる力で魅了し、文字通り『狂乱』させてしまう事を。


 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 ミセス・シュヴルーズの授業中で『錬金』を唱えたはずだったのに。
 またやってしまった。使い魔にも知られてしまった。 
 私が『ゼロ』と呼ばれる理由。

「おい、何ボーッとしてんだ。さっさとやらねーと日が暮れちまうぞ」
「うるさいわね。あんたもきびきび働きなさいよ」
 今、ルイズと巧は授業の途中でめちゃくちゃになった教室を片付けていた。
 と言っても、実際に新しい窓ガラスや重たい机を運び込んだり、
 雑巾で煤だらけの教室を磨いたりの作業の大半は巧一人がやっている訳だが。


 それにしても。
「結構手馴れた手つきじゃないの」
「ま、色々とな」
「色々って何よ?」 
「何かある事に大掃除しようって奴がいてな。
 そいつに付き合っている内に慣れてった」
 妙に懐かしそうだったこいつが気に入らなかったので、少し意地悪な質問をした。
「彼女だったの?」
「バカ言え、男だ」
 と言って会話を切った。本当に素っ気無いんだから。

 けど、無愛想と口が悪いのを除けば、こいつは召使としてはギリギリ合格だろう。
 洗濯、掃除もそこそこできるし、言われた事はなんだかんだでやってくれる。
 元いた所では周りの平民達にも頼りにされていたんじゃないかと思う。
 それに比べて私は何なのだろう。
 メイジでありながら、火、水、風、土、いずれの系統魔法も使えない。
 杖を振れば必ず何かを爆発させてしまう。
 今、使い魔と2人残って教室の後片付けをしているのもそのせい。
 使える魔法の数も、魔法の成功率も 『ゼロ』。
 みんなにバカにされて付いた二つ名は『ゼロ』のルイズ。
 そんな私なんかより、こいつの方が……


「なぁ、こっちの机も拭いてくれ」
「わかったわよ、ちょっと待ってて」
 普段のルイズなら命令しないでと言い返しただろうが、
 今の気分ではそうすることができなかった。
(私が出来るのは机を拭く事位……あっ!)
 注意が逸れ、段差に足を滑らせたルイズ。
「おいっ」 
 咄嗟に巧が手で支えていた。 
「大丈夫か」
「う、うん」
 ルイズの安全を確認して、巧は手を離した。

 知りたくなった。
 こいつ、私のことどう思っているんだろう。
 怒ってばっかだし、ご飯だって抜きにしたし、よく思われてないのは確かだ。
あちこちフラフラしてるのは私から開放されたいと思っているからなんだろうか?
 それなら私なんて放っておいて頭を打ってのびてる内にでも逃げ出せばいいのに。
 よく解らない。こいつがわからない。
 疑問がつい口に出てしまった。
「ねぇ、何で助けてくれたの?」
 こんな掃除だって殆ど役に立ってない、威張ってばかりで魔法も『ゼロ』の私なんかを。


 答はすぐに返ってきた。
「お前は俺のご主人様だからな、一応」
 巧はルイズの目を見つめていった。初めて見る真剣な眼差し。
「あ」
 何を弱気になっていたのだろう。
 そうだ、自分は『ゼロ』とはいえこの男のご主人様なのだ。
 だからこの男も不器用ながらも使い魔として忠誠を誓っている訳だし。
 てゆーか私貴族じゃん。何で自分を平民と比べてしょげてたんだか。
 急に恥ずかしくなってルイズは慌ててそっぽを向いて言った。
「い、いまさらそんな事に気付いたなんて、ホントに駄目な使い魔なんだから。
 まぁいいわ。大方片付いたみたいだし、行くわよ」
「何処にだよ」
「食堂よ。頑張ったから昼食抜きは無しにしてあげる」

 ほとんど元通りになった教室を後にする。
 時間は昼休み前、アルヴィーズの食堂に向かうのは、
(それに平民とは言え使い魔を呼び出せたんだから、
 そうね、一応『ゼロ』なんかじゃないわ、私)
 変な形で自信を取り戻したご主人様と
(こいつが怪我なんかしたら、後々うるさいだろうし
 禿頭の説教が後回しになっちまうからな)
 どこまでもマイペースな使い魔だった。

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