あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ご立派な使い魔-01


結論から言おう。
ルイズの呼びかけに、確かにそれは答えたのだ。
宇宙の果てのどこかから、神聖…なのかはともかく、(ある意味)美しく、強大で雄雄しく凛々しい使い魔が、彼女の呼びかけに答えた。

爆発の向こうに見えた姿は、一見すると巨大な異形だった。
ぼんやりと見える輪郭に一抹の不安を覚えつつも、ルイズは思わず快哉を叫ぶ。
「ほら、見なさいよ! あんなに大きくて、立派な幻獣……が……」
その叫びは煙が収まるとともに消えていく。
煙が消えて、その先に見えた姿は、ルイズの想像を圧倒していた。

「た……確かに、ご立派だ……」
「ゼロのルイズが……こんな、ご立派な……」
「ゼロのルイズじゃなくてエロのルイズだろ……常識的に考えて……」

周囲で見守る同級生も、呻くばかりである。
何しろその煙の先に見えた姿は、これはどう見ても、

「……これはエロい」

モンモランシーの呟きが象徴するかの如く。

どう見てもチン○です。本当に有難うございました。

「グワッハッハッハ! このワシを召喚するとは、小娘、命が惜しくないと見える!
 ワシは魔王マーラ! お前達とはモノが違うわな! モノが!」
「……いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

ルイズの絶望の叫びが、トリステイン魔法学院を駆け抜けた。


ご立派な使い魔


「ミ、ミミミミミミミスタ・コルベール! やり直しを! しょしょしょ召喚のやり直しを!
 断固として要求します! 何がなんでも! 私の命に代えても!」
「なんじゃ、失礼な小娘じゃのう」

マーラの渋く低い声を脇において、ルイズは涙目、いや号泣しながら教師のコルベールに食ってかかった。
しかしコルベールは、必死なその生徒の視線から心底気の毒そうに目をそらし、小声で反応する。

「気持ちは……本当によく理解できます、ミス・ヴァリエール。
 出来うるものならば認めてやりたい……私の偽らざる本音ですが……
 しかし、本当に残念なことに、この使い魔の儀式は神聖なものです。やり直しは……
 まことにお気の毒ですが……出来ません」
「で、ででででも! ミスタ・コルベール、いくらなんでも、コレは! コレは!
 まだいっそ平民が出てきてくれた方が! 平民とFirst Kissから始まる二人の恋のヒストリーを紡いだ方が遥かにマシです!」
「……本当にお気の毒だとは思います」

いつもならルイズを囃し立てる同級生達も、この時ばかりは静かなものである。
というより、男は皆、マーラの威容に己の根本的なナニかが敗北したと感じ、小さくなっていた。
そして女は、両手で顔を覆っている者が多い。だがよく見ると、その指の間からちらちらとマーラを見ている。
誰もがこのマーラの姿から目を離せないのだ。それほどご立派な姿なのだから。

「ミ、ミミミミスタ・コルベール? そ、そそそそれじゃ、ここここれとコントラクト・サーヴァントを行え、と?」
「…………」

非常に沈痛そうな面持ちで、コルベールはまたしても目をそらした。

「残念ですが……」

「グワッハッハッハ! 遠慮せずともよいわ、小娘!
 呼ばれたからには遠慮はいらん、さあ! 一発ヤってもらおうではないか!」

マーラの放つ大音声に、ルイズはとうとう顔を向けてしまう。
涙は止まるどころか勢いを増しているが、これはもう、やるしかないようだ。

「あ、貴方は……つ、使い魔になんてなりたくないでしょ……?」
「構わん、構わん。何しろワシは魔王だからのう、ひと時の戯れで使い魔なんぞになるもよし!
 なぁに、幾たびかは、メシアやらに使役されたこともあるこの身よ!
 小娘の使い魔一つ、容易く勤め上げてみせるわ! グワッハッハッハ!」

なんと豪快で男らしく、雄雄しい姿なのだろうか。
これが、こんな形状でなければ頼もしい使い魔と思えたものを……
ルイズは絶望しながらも、コントラクト・サーヴァントの手順に入る。

(もう……もうおしまいだわ、これならいっそゼロのままでよかった……
 ああ、私、こんなモノに……ああああああああ)

そして、ルイズは己の使い魔となるべきモノに顔を近づけていき。

むちゅう、と。

まさにFirst Kissから始まる二人の恋のヒストリー。
運命に魔法をかけて、ナニが突然現れた。

嫌に肉感溢れる音を立てて、マーラの……その、マーラの唇に自らのそれを重ねた。
唇があったのかというと意外に思えるが、ちゃんと顔っぽい部分があるマーラである。

(な……生暖かい……)

心底嫌な感触が伝わってくる。
それは実際は一瞬だったのだろうが、ルイズにとっては途方も無い永遠のように思えた。
嫌なことをしている時って本当に時間が流れるのが遅いからね。

「ぶはー! ぶは、はあ、はあ……こ、これでいいんでしょ! 契約!」
「ぬう、なかなか大胆な契約だわな……むう!」

マーラの左の方にあるアレに、奇怪な紋様が浮かび上がった。
これこそ契約のルーンであり、激しい熱とともに受けるものなのだが、マーラは微動だにしない。

「おお、心地よい刺激ではないか。これで名実ともに、小娘よ、ワシはおぬしの使い魔という訳だな!
 改めて誓おう、ワシは魔王マーラ! 今後ともよろしく頼むぞ! グワッハッハ!」

しかしそう言われたルイズは、マーラから離れ、近くの木によりすがっていた。
そして下を向いて、

「ごえええええ……」
「うぬ、小娘め……第一話からヒロインが吐きよったわ」

「ミス・ヴァリエール……気持ちは、本当に、本当によくわかります……」

コルベールは涙を流しながらそう呟いていた。


「疲れた……もう、何もかも疲れたわ……寝よう、泥のように眠ろう……」

昼の使い魔の騒動から一転、静かな自室でルイズはベッドに横たわっていた。
こんな恐るべき事態になろうとは、誰が予測しただろうか。
あんな……あんなおぞましい使い魔を召喚してしまうだなんて。

「きっとこれは夢。そうよ夢よ。ゼロって呼ばれるのに耐え切れなかった私の精神が、こんな悪夢を作って私を苛んでいるんだわ。
 だから目を覚ませばきっと、まだ使い魔は召喚なんてされてないの。
 そして私はみんなから笑われながらサモン・サーヴァントを唱えて、平民を召喚するの。
 それから紆余曲折あって、第二期が始まったりするのよ。そうよ目を覚ませばそうなる……はずなのに……」
「現実逃避はいかんぞ、小娘。萎えるからのう」
「どうしてあんたは! 私の部屋の中にいるのよ!?」

ベッドの傍に控えるマーラである。
何しろ大きくご立派なので、部屋に入りきるかも怪しかったが、どうにか収まっていた。
しかし冷静に考えれば、一緒の部屋にいる理由がまるでない。

「他の大型の使い魔は、外に寝泊りしてるでしょ!?」
「小娘。ワシは魔王じゃぞ。あんな低級な獣どもと一緒の場所になぞおれぬわい」
「で、ででで、でも! 使い魔なんだからそんなことは……」
「それだけ上等な使い魔ということだわな。誇るがよいぞ、小娘」
「ほ……誇りたくないわよあんたは……」

梃子でも動かない構えのマーラを見て、ルイズはどうにかするのを諦めた。
物理的に動かそうにも、こんなのを触るのは嫌だ。

「じゃ、じゃあ……せめて静かにしててよ、私、もう寝るから……」
「うむ。ワシは寝る前に屈伸運動でもしようかと思うておったが」
「やめて……卑猥な運動はやめて」

身に着けたものをさくさくと脱いで、ルイズは今度こそベッドに潜り込んだ。
脱いだ下着はまだ手の中にある。これを使い魔に洗わせる、というのも、主従を教え込む手段のはずなのだが……

(嫌。絶対、嫌。あんなのに下着を洗われるだなんて、死んでも嫌)

固く決心していたので、明日使用人を呼んで洗わせようと、そう思っていた。
なのだが。

「おお、小娘。丁度良いわ、明日になったらお主の衣類をワシが洗濯してくれようぞ」
「い、嫌! ……じゃなくて、あ、貴方にはそんなの期待してないから!」
「ほほう、何故じゃ? 使い魔というのは、主の雑事を片付けるものではないのか?」
「そ……それは例外のケースよ。普通は主と五感、精神を共有……あんたとはしたくないし、実際してないけど……」
「確かにの」
「そ、それから、秘薬を集める。これは……出来るの?」
「舐めるなよ、小娘。ワシは偉大なる魔王じゃからのう。知識なぞ無限にあるわ」
「そ、そう。安心ね。それから主の身を命にかえてでも守る……これは……まあ、楽勝そうね……」
「うむ、任せておけい」

つまりは、共感の力以外は使い魔として十分にあるのだ、これが。
こんな姿だが。
確かにマーラは、優秀で、強大で、(ある意味)美しい使い魔だったのだ。

「……そ、それだけ出来るんなら、わざわざ雑用なんて頼む必要ないから。
 せ、洗濯なんて、し、しなくてもいいわよ」
「まあそう遠慮するでないわ。普段、夜魔どもに身の世話をさせておると、むしょうに細々としたことがやりたくなるのよ。
 こんな機会は滅多にないからのう……ワシの厚意は素直に受けるがよいわな」
「い、嫌だって言ってるでしょ!」
「グワッハッハッハ、照れるでないぞ」
「誰が照れるか!」

結局、ルイズは朝方近くまで悶々として眠れなかった。
むしろマーラが、魔王のくせに堂々と眠りこけているのを見て、ルイズは唖然とし続けていたのだが。


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