あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔王

春の使い魔召喚儀式によって呼び出されしは、異世界の魔王。
嗚呼、嗚呼、あらわれたるソレのなんとおぞましき事か、それは一方的な蹂躙。
強大な力の恐怖に弱者はただ絶望し、服従するのみ。
この日、ハルケギニアに魔王が降臨した。
だがその悲劇を語り継ぐものは誰一人としていない……。


           『使い魔王』……悲劇の幕が開ける。


ルイズは、人生で一番幸福だった。
本人すらあきらめ掛けていた春の使い魔召喚。
その晴れの舞台で、生まれて初めて魔法が成功したのだから。
煙が晴れていく中、段々とあらわになるシルエット。
それを見ていくうちに、ルイズが魔法を召喚させたことに驚いていた群集のざわめきが別のものに変化していく           
そして、ルイズの小さな体が震える。ついさっきまでの幸福は、絶望へと姿を変え、そのあまりのギャップはルイズの人間らしい心を完全に奪い去っていた。
その、なんとおぞましき姿であることか――

角。これはいい、とてもいい。

長く尖った耳。エルフを思わせるそれは恐ろしいが、それがいい。

見たことも無い、本来の役目を果たせそうに無い、黒いレンズの眼鏡。これもまあ、いいだろう。

高級そうなマント。これだってマイナス要因ではない。

そう。問題は、「使い魔」という言葉から連想する幻獣や動物では無い、亜人であるということを飛び越えて……







マントと黒い眼鏡の他には、パンツしか纏っていない貧相な体つきのおっさん(ハゲ、角付き)ということだ!!


「ミ、ミスタ・コルベール……?」
辛い現実に打ちのめされたルイズは、最早叫ぶ気力すらなくかたわらの半ハゲに声を掛ける。
「なんだね? ミス・ヴァリエール」
「もう一回……もう一回、召喚させてください」
普段のルイズからは想像も付かないほど暗く、切実な願いのこもった声。しかし、そんなことがこの伝統ある使い魔召喚儀式で許されるのだろうか?
「駄目です」
駄目だった。ルイズは荷馬車に乗せて売られていく子牛のような表情で召喚したおっさんに近づいていく。
「どうした少女よ、サインでも」
ルイズは悟りを開いた修験者の表情で呪文を唱えると、呼び出したおっさんを無理やり屈めさせてキスをした。
(さよなら、綺麗だった私。お母様、お父様、エレオノール姉さま、ちいねえさま。ルイズは汚れてしまいます)
涙が小さな雫となって地面を濡らします。それを見ていた女子学生たちもルイズの体を張った行動に感動して涙を流しています。
「美少女がオレにキスしたよっ! しかも感きわまわって泣いてるよぉ! 良かった、こっちに来て本当に良かったぐぁ! ぐぁああああああ!」
痛みに転げまわるおっさんをルイズが冷たい目で眺めながら言葉を掛ける。
「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
「つっ、使い魔だと、魔王に向かって」
ルイズは自分でも驚くほど冷静にその言葉を聞くことが出来た。
「ふ~ん、そう魔王なの。大丈夫……大丈夫、全然OKよ」
懐から取り出したのは、乗馬用のムチ。
「貴方の変態も、虚言壁も、私がきっちり調教して治してあげるわ。このご主人様の愛のムチでね!」
おっさんは、ほとんど裸です。つまりムチはとっても痛い。
(こ…この世界のガキはしつけがなっとらんな…、逃げてきたとはいえ魔王だぞ、コラ…。目にもの見せてくれるわ!!)
おっさんは左手に力を溜め、無防備に使い魔心得を説いているルイズに向けて解き放つ。

「ファントムクラッシャーー!!」

外野。気の毒すぎてとっても突っ込めねえよ状態になっていた中、コルベールただ一人が危険を察知して、それが間に合わないことに焦燥していた。
あの長い耳、格好は確かに変態だがエルフ、あるいは知られざる先住魔法の使い手かもしれない、と。
そして、生徒を目の前で失う恐怖にさらされたコルベールは見た。
魔王と名乗ったおっさんの左手から――

何も出てこなかったのを。
外野の特に男子は、腹を抑えて笑い死に寸前である。
「何ソレ!? 技!? 技の名前!?」
にこやかにルイズは、ムチを振り上げる。
「いや、ちょっと待って、出るんだよ? 本当はファントムクラッシャー出るんだよ。あっ、ほらツノ、ツノ生えてるだろ、引っ張っても取れないぞ、やってみるか?」
どこかの獄長じみたムチの一撃が命中して、おっさんのツノはどっか飛んでった。
「取れるじゃない、ねぇ?」
ルイズの顔は笑っている。顔は笑っているが目が笑ってない。所謂、殺ス目という奴だ。
「あっさり取れた…、知らんかった…あっさり取れるんだ…。イヤ、待ってよ。痛、痛いっ」
(くうぅ~ツノが装飾品だったとは…。ファントムクラッシャーも出ないし…大気の違いだろうか…? このままでは殺されるっ!! ああ、証拠…証拠…)

ガタガタ、ガタゴト

「おんどりゃーーーー!! あるぞ証拠!!」
おっさんは魔界から持ってきて、すっかり存在を忘れていた手提げかばんをルイズに突きつける。
「何よ? くだらないものだったらその黒い眼鏡割るわよ」
「ダ、ダメだよ! 割るなよ、このグラサン高いんだよ!」
それを聞いたルイズは、再びムチを振り上げ――
「ごめんなさい、調子にのってました。この中に証拠が入っていますから、もうムチで叩くのはマジで勘弁してください」
おっさんは土下座しながらかばんを開いた。
「……何? このサルっぽい生き物……」
「魔界に生息する「サルッポイ」という動物で、オレのペットだ」
「まんまじゃない。そんなのでごまかされるとでも――」
かばんに入っていた。体長1メイルほどのサルっぽい生き物が突然、殴りかかった!


おっさんに。
「早く開けれや! ハゲ!!」
「喋った!」
驚くルイズを尻目にサルはおっさんに鉄拳制裁を加える。
「本当に使えねーヤツだな。このクソ魔王は!」
「ごめん」
おっさんボロボロです。
「でもコレで信じて貰えたかな? オレが魔界から来た魔王だって……」
ルイズはステキな笑みを浮かべている。
「さっさとこの子出してれば、あんたなんかと契約しないですんだのよね? てか、私が呼んだのはこの子じゃない? この子よね? 何、何であんたが使い魔になっているわけ? こうなったら死んで詫びなさいよ、契約やり直すから」
半分くらいは本気の目でおっさんに死を強要するルイズ。
おっさんは恐怖に震えて漏らしてます。
「っサ、サル助けてくれよ」
サルは、ふう、やれやれだぜ、と肩をすくめるとルイズに一言。
「姉ちゃん。オレ、おっぱいぼいんぼいんが好きなの。そのつるぺた洗濯板が奇跡的に成長したら出直してきな」



「うふ、うふふふふふふふ、うふふふふふふふ、ふふふふふ、うふふふふふふふ。ご主人様に暴言を吐くなんて……どこまでも楽しい使い魔ねっ!」



「えっ、オレじゃないよ。サ、サル~てめえ何、言ってんだ~~!」
サルはもう居なかった。
外野の生徒たちに混じってこっちを見ている。
「うそ」
本当です。
「ちょっと、助け、だ、誰か助けて~」
この後、ルイズの調教のおかげでおっさんは立派にマゾに目覚めて、それなりに幸せに暮らしたそうな。
ただ生涯、自分は魔王だと名乗るのはやめなかったらしい。
サル? サルは、キュルケのところに転がり込んでよろしくやった後、巨乳を求めて旅立っていきましたよ。
ルイズの実家でペットになったり、どこぞのハーフエルフの所でペットになったり、うまいことやってるだろう。きっと。

           『使い魔王』……完。

(「黒いラブレター」(第22通)より魔王)



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