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ご主人様は承認せず! 前編

 トリステインの平民ならば、当然知っているだろう!
 巷を騒がす“あの噂”ッ!
 魔力の限り好き勝手! ふんぞり返った貴族が今や、揃って肝を冷やしていると!
 ……『土くれ』のフーケ?
 そうそうまさにその通り! メイジ崩れの盗賊に、貴族の宝が大ピンチ! 愉快痛快我らの土くれっ!
 しかし! しかしだ諸君っ!
 その噂には続きがあるのだっ!
 悪逆非道の貴族の屋敷! 抜き足差し足忍び足! 侵入を果たす謎の人影……ッ!
 始祖をも恐れぬ悪行の確かな証拠を握り締め、寝ぼけ眼の貴族に向かい胸のすくような啖呵を一つ!

「狂った王国を監査するッ!」

 君は見たかっ!? 月光を背に堂々たる、其はイーヴァルディの勇者の再来ッ!
 しかしてその姿はあまりに異様!
 黒蝿のような奇怪なマスク! 腹に巻きたるレザーメイル!
 亜人だ! 魔人だ! 怪人だ! いや、違う!

「かっ、カンサーだ! 仮面カンサーが現れた!」

 惰弱な貴族がその名を呼べば、悲鳴となって双月の夜に響くよりなし!
 モット伯爵! 『波濤』の二つ名を持つトライアングルメイジ! 平民の娘を強引に召し上げて手篭めにしていた好色貴族!
 手近な衛兵に召集を掛けるのが、臆病者の精一杯!
 すると、出るわ、出るわ。槍だの剣だので完全武装した、衛兵、衛兵、また衛兵っ!
 その数、総勢十余人。
 たった一人の“賊”を相手に、形振り構わぬこの醜態っ! もはやそこには誇り高きメイジの姿など影もなし!
 己の勝利を確信し下卑た嗤いのモット伯。絶対絶命の状況に、仮面カンサーは少しも動じず。
 それもそのはず。
 伏兵潜むは窓の外! 月光遮る動く山! 豪奢な寝室に陰を落とすは、体高30メートルに達する巨大な土人形! 凄くデカい! 凄く強い! 凄いゴーレムだッ!
 仮面カンサーに味方する、これが噂の『土くれ』のフーケ。
 盗賊メイジのあまりの技に、茫然自失のモット伯、戦いの中で戦いを忘れた。烏合の衆の衛兵は皆、恐怖のあまりに微動だに出来ず。
 居並ぶ間抜けを見下ろして、ゴーレムの主は厳かに命ず。

「やっておしまい」

 豪腕爆砕ッ! 情け容赦なく振るわれた巨人の拳は、まさしく怒れる神の鉄槌!
 その一撃で、僅か一撃で勝敗は決した。
 後には半壊した屋敷と、全てを失った好色貴族が残るのみ!
 悠々と引き揚げていく仮面カンサー、そして『土くれ』のフーケ! ゴーレムの上で戦友を労う二人の姿。その絆よどうか永遠なれ!
 やがて、賢明なる女王陛下の処分が下り、平民は自由と平和を取り戻しましたとさ、めでたしめでたし――――


「――――っていうのが、俺の聞いた事件の顛末だ」
「ふ、ふぅん」

 マルトー親父は、ほとんど童心に帰ったようなはしゃぎっぷりだった。トリステイン魔法学院食堂のコック長の意外な一面に驚きながら、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは居心地悪そうに相槌を打つ。
 夜闇に紛れて貴族の豪邸に侵入し、悪行の証拠を白日の下に晒す謎の人物が出没するようになって一ヶ月。世間は彼の噂で持ち切り。特に平民からの人気は絶大だった。

 仮面カンサー。

 権威の失墜を恐れる貴族の監視の目もあり、平民達も表立って英雄視したりはしない。
 しかし、どう考えても使い道に困りそうな彼の決め台詞が無理矢理流用されているのをルイズは何度か聞いたことがあった。

『狂った塩加減を監査するっ!』
『狂った賄いの量を監査するっ!』
『狂ったフライパンの温度を監査、って熱っ!? 熱ぅっ!』

 最後のはまずは自分の脳味噌を監査すれば?と思わなくもないが、更に言うならカンサーの活躍を載せた号外は飛ぶように捌けるし、ごっこ遊びで子供達が奪い合うのはカンサーの役だ。
 領民への度を越した搾取や暴行、禁呪とされる魔法についての研究、麻薬や偽金など違法な物品の所持、敵国への密通や利益誘導に至るまで、この一ヶ月に仮面カンサーの暴き立てた犯罪は枚挙に暇がない。

「でも、盗賊は盗賊よね」

 ルイズとしても腐敗した貴族の振る舞いについて許し難いところもあり、仮面カンサーの活躍について認めているところもないではないのだ。
 しかし、やはり彼女は誇り高い貴族だった。仮面カンサーの武勇伝を垂れ流しにしておけるわけがない。悪者になるのは決まって貴族なのだから。

「私が捕まえなくちゃ」

 そして、無能――“ゼロ”の汚名を返上してやる!
 新たな決意を発展途上の胸に仕舞い込んで、ルイズは厨房を後にする。




 ご主人様は承認せず!




 トリステイン王国ッ! 
 一握りの貴族が大勢の平民を支配する、中世ヨーロッパ風味のファンタジー世界にそのの国はあるっ!
 そこでは、ありとあらゆる産業が、貴族だけが使える「魔法」によって支えられているっ! ……「カガク」? 何それおいしい?
 魔法こそ力! 魔法こそ全て!
 魔法が使える貴族に生まれれば、人生パラダイスッ!
 魔法の使えない平民は、一生ヘイコラッ!
 もし、身の程知らずにも平民が貴族を本気で怒らせるようなことがあればっ!

「あ、あなた、殺されちゃう……」(※プライバシー保護のため音声は変えてありますッ!)

 だから、この世界では貴族は絶対の存在! 平民の力は無力! 平民の力は無益!
 それでいいのか諸君っ! 平民はゴミかっ!? 平民は虐げられるだけなのかっ!?
 確かにそうかもしれないっ! ――――だがなっ!

「玖郎玖郎、ああもう玖郎ーっ! あいつーっ! ご主人様に無断でどこに行ったのよぉっ!」

 隠野 玖郎(かくしの くろう)。
 全てはあの日っ!
 名門貴族ヴァリエール家の三女、ルイズお嬢様の魔法でヤツがこの地にやって来たあの日! 春の使い魔召喚の儀式っ!
 伝説はあそこから始まったのだ!




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