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ゼロのMASTER-13


ゼロのMASTER 13

アジトにて

フーケは待機を命じられていた。露見はしていないとはいえ、自分のやったことは、重大な裏切り行為だ。だが、それでも自分は見て見ぬふりは出来なかった。何故だ?
あのキートンという男が憎くて堪らないのではないのか。一度ならず、二度までも自分に屈辱を与えたあの男が。

壁にもたれかかり、考えていると男が入ってきた。例の仮面の男である。

「うまくいったの?」
男は椅子に座りこむが、黙ったままだ。まさか、ばれてはいないと思うが…。
どうやら、誰かを待っているらしい。とりあえず、自分の問題ではないようなので、少しはホッとするフーケだった。
気まずい時間が流れた後、ドアが開けられる。
入ってきたのは男であり、外見からは紳士と言った感じだろうか。
とはいえ、いささか小賢しいような雰囲気をも持っている人物であった。

「やあや、諸君。遅れてすまないね。色々とあちらでも揉めていてね、余も忙しかったのだよ」
ワルドと同じテーブルの椅子に座ると、男はおもむろにワインを飲む。
丸い球帽と緑色のローブを付けている為、僧職か何かを思わせるものの、軽薄な感じでもある。
「閣下。問題が発生したため、ドレを処分しました」
「なんだって?」
閣下と呼ばれた男が怪訝な顔をする。ドレは、様々な依頼をこなしてきた有能な男だ。
それがあっさりと処分されたと言うのだから、すぐには納得できなかった。
「何故だね?勿体ない、昨今あれほど器用な男はそうはいないよ。せっかく、アルビオンの件でも働いてもらおうと思っていたのに」
「"教本"を見て、図に乗っていただけでありましょう。ドレは自尊心が強いので、後々我々の活動に支障をきたす恐れがあります。ご心配なさらずとも、奴の代わりなど幾らでもおります。クロムウェル閣下」
クロムウェル…オリヴァー・クロムウェルはううむ、と唸る。
クロムウェルは謀略関係に関しては、目前の男にまかせっきりだ。自分は報告を受け取るだけであるし、何よりも、己の立場上、下手に動き回って煩い連中に勘付かれてもいけない。
自分が欲しているのは、『地位』だ。今でこそ、自分は閉職に置かれているが、必ず上り詰めなければならない。アルビオン皇帝という地位を。

「ま、まあ、君がそういうのであれば、そうなのだろう。今後も働いてくれよ、ワルド君」
「勿論でございますとも。クロムウェル閣下」
ワルドと呼ばれた男…いつの間にか、仮面を取っていた男は薄く笑いながら答えた。

「お話中、申し訳ありません。閣下、ワルド様」
ドアがノックされたかと思うと、別の仮面の男が部屋に入ってくる。
何かあったのかと尋ねるクロムウェルに、男は淡々と話し始めた。
「監視員からの報告によりますと、見慣れない子供が目撃されたと」
「子供?子供ぐらい、そこいらにいるではないのかね」
(見慣れない、と言っただろう)
フーケは心の中でそう呟く。自分は表情には出ないタイプだが、クロムウェルは勘付いたのか、渋い顔でこちらを見たので慌ててそっぽを向いた。

「報告にあった男と同じく、奇抜な服装をした少年だったとのことです。ゲルマニア国境方面へと走り去ったと、目撃者が語ったそうです」
仮面の男はそう言うと、ワルドの方向を向く。当のワルドは頷くと、男に目配せをする。男は2人に深々と頭を下げると静かに退室していった。
「ワルド君、報告にあった男とは、一体なんだね」
「これは失礼しました、閣下。その男は我々にとって少々面倒な輩でして、排除を計画したのです。先ほどのドレの件もそれでして…」

ワルドからの報告を受けたクロムウェルは目を丸くして驚く。伝説の"ガンダールヴ"らしき者が現れたと聞いたのだから無理もない。
そんなクロムウェルの動揺をなだめると、ワルドはフーケの方向を振り向いた。
「こちらのフーケを苦しめたのも、そのガンダールヴでございます。閣下。ですが、ご安心下さい。既に次の手は打っておりますゆえ」
「ふむ。だが、その子供はどうするのかね。色々と使えそうな気もするが」
「そちらも問題なく進めます。閣下、我らは閣下の御為ならば身を惜しみませんので」
クロムウェルは機嫌よく頷くと、世間話をし始める。当のワルドは薄笑いを浮かべたままであったが。

「ところで、だ。例の部隊の訓練はどうだね」
例の部隊?例の部隊とは何か。フーケは目前のクロムウェルが吐いた言葉が気になった。
どうやら、自分には知らされていないことがまだあるらしい。それほど信頼されているわけではないのか、それとも…。
「そちらの方も滞りなく…」
「うむ、うむ。しかし、素晴らしいモノだね、アレらは!ロマリアの連中が血眼になるのも頷けると言うものだ。我々の常識からは考えられないもの…。なんと素晴らしい!」
興奮した調子で騒ぎ出すクロムウェルであるが、当のワルドは黙ったままであった。
フーケもまた、自分の知らないところで事が動いていることを知った。クロムウェルは兎も角、ワルドは何が目的で、何のために準備を整えているのか。


「単純な男だ」
上機嫌のクロムウェルが去っていった後、ワルドがぽつりと呟く。


蝋燭の灯がゆらゆらと揺れるのをフーケは見つめていた。重苦しい雰囲気ではあるが、目前のワルドは先ほどから薄く笑ったままだ。
先ほどの言葉通り、ワルドはクロムウェルに服従するつもりは、さらさら無いのだろう。
クロムウェル自身がどう思っているのかは知らないが、この男は、ただ己の目的の為だけに動いている。
それが何なのかは、今はまだわからない。
だが、自分はこの男についていくしかないのだろう。

夜の闇はまだ明けない。



所変わって、トリステイン魔法学院。
フーケ騒動の次は爆弾による破壊活動未遂。生徒達の間にも動揺が広がり始め、教師も頭を抱えていた。
そのような中、いつも通り、ルイズとキートンの二人はオスマンの学院長室へと呼ばれていた。

「しかし、爆弾とはな」
オスマンは溜め息をつく。自分の学院が狙われたのだから無理も無い。
明確な破壊活動が実行に移され、それ自体は未遂に終わったものの既に学院中に噂が広がり始めている。
教師達の中に、キートンを遠ざけるべきだという声がある――
苦渋の表情で報告するコルベールを前に、ルイズらも深刻な面もちだ。
シュヴルーズなどはそういった教師らをなだめる側に回ったものの、依然として不満が集まっている。
曰く、あの男が来てから問題続きだ、学院が今後も狙われるのではないかなどの声があがっていると。

爆弾による大惨事こそ免れたものの、それによって植えつけられる恐怖というものは絶大だ。
フーケのときとは違う、はっきりとした「殺意」というものが形となった以上、なんらかの対策を取るべきなのだろう。だが、具体的に如何すれば良いか?
いまさらキートンを放逐するなど出来ない。何よりも、目前の少女がそれを許しはしないだろう。
無論、自分も反対なのは言うまでもないが。

「提案があります」
ルイズが凛とした声で発言する。
「良い考えでもあるかね、ミス・ヴァリエール」
「キートンを私の実家へと向かわせるのはどうでしょうか。今は、皆が落ち着く時間が少しだけ必要なのだと思います。幸い、私の両親も、彼に会いたいと言っていましたから。勿論、私も付いていきます」
「だが、それだと君に迷惑がかかるのではないかね?無理せずとも、我々が彼らの説得を…」
「申し訳ありません、学院長。実は、ルイズと相談済みなんです」
キートンが少し寂しそうな表情で言う。こうも立て続けに事件が起きてしまったのでは、学院自体に迷惑をかけてしまう。

何よりも、行くところの無い自分を迎えてくれたオスマンらに対して申し訳が立たない――
別に、二度と帰ってこないという訳ではない…。ルイズによると、両親が誘拐事件の報告をキートン本人からも聴きたいという話であるため、オスマンもやむなく了承した。


朝、学院から馬車が一つ出て行く。操るのはキートン、後ろに乗っているのはルイズだ。
出発するにあたり、キートンを慕う生徒達やオスマンらが見送りに来てくれた。これは二人にとって幸いなことであったが、それに加え、オスマンから餞別ということでコート(現代のものとは多少外見が異なるが)も送られた。
二人は彼らに別れを言うと、馬車を走らせ始める。目指すはルイズの生家、ラ・ヴァリエール公爵領。


「迷惑をかけて、すまないね」
馬車の手綱を操るキートンが呟く。自分のせいでルイズの学業が疎かになりかねない。
教育に携わる立場として、それを痛感しているのがキートンだ。自分にとって、揉め事に巻き込まれるのは日常茶飯事だとはいえ、後ろにいるルイズにとっては迷惑極まりないだろう。
そう考えたのだが――

「あたっ!」
突然、頭を軽く叩かれた。
慌てて後ろを振り向くと、ルイズが恐い顔をして睨んでいる。
「使い魔の面倒を見るのは、主人の務めでしょ。途中で放り投げるなんて、わたしの性分にあわないもの!
…ちょっと、なんでニヤけてんのよ、まったく!」
ゴトゴトと馬車が揺れる中、ルイズの声が辺りに響いた。


「はじめに言っておくけど、父様と母様に失礼の無いように。周りのものを勝手に動かしたりしないように。姉様達にも失礼の無いように!」
「あ、ああ。わかった。肝に命じるよ」
「…その台詞、前にも聞いたわよ」

ルイズの実家は、それはもう素晴らしいものだった。音に聞こえたヴァリエール家らしく、外装も美しいの一言だ。
ルイズに姉がいたのは驚きだったが。

ただ、屋敷の方から何かを感じる。なんというか、威圧感というか…寧ろ、殺気か?
なんとなくだが、自分がここに呼ばれた訳がわかったような気がするな――

キートンは少しだけ、鬱屈な気持ちになった。


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