あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの独立愚連隊-07


 朝。いつもより遅い時間にサモンジは目を覚まして、のんびりと毛布をたたんで伸びをする。ボリボリと頭を掻きながら横を見ると、ルイズのベッドからはまだ寝息が聞こえてくるが………今日は休みだということを思い出す。
 そしてルイズが教室を爆発魔法で破壊したことに対する謹慎は今日まで。明日からは授業に出ることになるのだ。
 周囲からの嘘吐き扱いと、キレたルイズの魔法による「暴行」………周囲のルイズに対する目は以前と変わってしまうだろう。
「今日の内に様子を見て、何とかしておかないとまたルイズちゃんが爆発しちゃうかもしれないからなぁ」
 呟きながら身支度を整える。欲を言えばお湯で顔を洗いたいところだが、流石にメイジの力をもってしてもお湯の常備はされていない。シェービングクリームも当然無いため、夜にヒゲを剃り損ねると一日不精ひげを晒すか顔の皮膚の傷を我慢して気合で剃るかの二択。といってもそんなことは気にせず不精ひげを晒すことを選んで部屋から出るサモンジ。その時タイミングよく向かいの扉が開いた。
「や、おはようキュルケちゃん」
「おはようサモンジさん。身だしなみがなっていないのは減点よ」
 早速のチェックにサモンジはたはは、と笑いながらひげをちりちりと撫でる。
「こいつは失礼。ところでキュルケちゃんに頼みたいことがあるんだよ、ルイズちゃんのことなんだけどいいかな?」
「なぁに、朝からヴァリエールのことで頼みごと?」
 不機嫌そうに腕を組んで言うキュルケだが、ルイズのことが心配だったのは確かだ。むしろサモンジの頼みはちょうど良い。キュルケはサモンジの、今日一日の生徒や教師たちの噂、ルイズへの反応をか聞いて欲しいという頼みに不承不承という態度で頷いた。
「まあいいわ。平民の、それもヴァリエール縁の人間の頼みなんて聞くんだから感謝して欲しいわね」
 キュルケの返事にあいまいに笑いながら手を振るサモンジ。そのまま食堂に向かうキュルケと別れ、サモンジは厨房の方へ回る。厨房でワゴンを押すメイドにルイズの朝食を運ぶように頼み、賄いを貰うには早いのでしばらく散歩をして時間を潰そうと中庭に出る。
 時間を潰すのは、厨房の仕事がひと段落して最後の組みが賄いを食べる時間に合わせて食事を用意してもらうためだ。普段はルイズと一緒に行動しているため、ルイズが食事を終えて授業が始まってからサモンジだけ食堂に戻ればいい時間だったのだが。
 授業の鐘を待ちながら適当に歩くサモンジ。そこに横から声が掛けられる。

「おや、サモンジさん。お暇ですか?」
 げ、と内心でこぼしながら振り向いたサモンジの前にいたのは、学院の教師のコルベールだった。
 学院のメイジの中では唯一サモンジに比較的丁寧な言葉遣いで話してくる人物である。もっとも、サモンジとしては、それは本人のお人よしな性格以上に「自分は友好的な人物です」というアピールを意識しているのだろう、と穿った見方をしているのだが。
「いやあいにく。しばらくしたら賄い飯を貰いに厨房に戻るんで」
 そう言って肩をすくめるサモンジ。しかし、コルベールは気にした風もなくにこにこと歩み寄ってサモンジの腕を取る。
「そうですか、では食堂で一緒に食事をしながらお話をしませんかな?なに、たまには賄い以外の食事も良いものですぞ」
 笑顔を浮かべながら食堂へ促すコルベールに、サモンジは愛想笑いを浮かべながらどうするか考える。
 実際のところ、サモンジはこのコルベールという教師とオスマンの事―――要するに学院全体―――を警戒している。
 悪意がある、ということではない。以前オスマンが言ったガンダールヴのとこ、そして破壊の杖などの情報が問題なのだ。
 破壊の杖のことはオスマンにしか直接話していないが、ガンダールヴについてはこの教師も知っているようであった。そして破壊の杖は貴重な宝と認識されるほどの重要なものであり、ガンダールヴに至ってはこの星では伝説と言われるほど重要なモノ。
 となれば、サモンジが中心領域に帰る手段を見つけても彼らは帰還を認めない、あるいは直接的に妨害する可能性がある。そうならないためには彼らに「サモンジは未知の国から来ただけのただの平民」と思わせておく必要がある。
 といっても、そういう結論に至ったのはオスマンの「私はガンダールヴの味方」という一言を聞いてからなのだが。
 すなわち、その前に話してしまった破壊の杖と腕時計のことは少なくとも知られてしまっている。この2つ、そしてそれ以外については極力彼らメイジが興味を持たないよう、知られないように情報を制限しなければならない。
 なおかつ破壊の杖とガンダールヴについてはその価値が低いと思わせることも必要となる。また、ハルケギニアより進んだ技術を知っていると言うのはサモンジにとって大きなカード、いざという時まで秘匿した方が有利だ。宇宙から来た、とオスマンに言った件については「サモンジの故郷の神話」とでも言ってごまかそう、とここまで一気に考える
「はぁ、それじゃあありがたくご一緒させてもらいましょうか」
 表面上だけは愛想良く返事をし、最大限に発する言葉を選びながらの世間話をしつつサモンジは食堂に足を向けた。


「なるほど、この中に横にしても動く振り子のような物が入っていると。いや、それにしてもこれほど小さな物の中にそれほどの仕組みが詰められているとは………」
 嬉々としてサモンジの腕時計について質問を続けるコルベール。その様子にサモンジも警戒を続けるのに疲れて来た。
 最初はやはり破壊の杖、SRM発射筒についての質問だったが、使い方は分かるが作り方は知らないという言葉にあっさり引き下がった。同様に腕時計についても情報を制限したつもりだが、小型で振り回しても時間がずれない時計、とうことで大いに興味を引いてしまった。
「まあ、私も原理を知ってるだけで作り方を正確に知ってるわけじゃないんですってば」
 そう言って肩をすくめるサモンジ。
 迂闊に興味を引いてしまったが、ここまでにしておかなければ。兵器より腕時計に興味がある、というのは彼が技術屋、研究者肌の人間だからだろうが………それでも技術の流出は避けたい。
 腕時計を調べたいので貸してくれ、売ってくれと食い下がるコルベールをのらりくらりとかわし続ける。
「むむむ、まあ仕方がありませんな。長くなっても仕方ありませんしこれで……
ああ忘れるところだった、ルーンのことですが………」
 押し問答に負けて席を立とうとしたコルベールが、思い出したようにテーブルに戻って声を潜めながらサモンジに顔を近づける。その様子に芝居臭さを感じたサモンジは、一瞬硬くなった表情が気づかれてないかと思いながら表情を緩め再び警戒を強める。
 SRM発射筒のような兵器と並んで警戒すべき魔法がらみの事、下手な事を漏らして興味を引くわけにはいかない。
「ああこれですか?あらゆる武器を使いこなすと言っても………そんな感じはありませんな。破壊の杖だって、私は故郷で傭兵やっているときにもあれ使った事あったんで」
 そう言って空っとぼけるが、コルベールもこれにはしつこく食い下がってくる。
「いやいや、ほんの少しでよいから気付いたことなどありませんか?それは本当に貴重なものかもしれないのですよ?」
 そう言ってコルベールはガンダールヴのルーンが伝説である理由や、それがいかに貴重であるかを力説するが、それが余計にサモンジの口を重くしているとは気付いていない。
 これではコルベールにサモンジとの接触を指示した人間―――おそらくオスマンだろうが―――も頭を抱えているだろう。

 サモンジはこの時点でコルベールの目的が、オスマンの指示を受けて自分を探りに来た、というものだと確信した。
 食堂に向かう途中、その時コルベールはサモンジの故郷について「この空のさらに上に存在する世界」と表現した。
 しかし、サモンジが宇宙のことを話したのはルイズ達の他にはオスマンのみ。
 大人で教師のコルベールがそれを聞いたとするならば、その相手は明らかだ。
 そしてサモンジは一昨日の破壊の杖騒ぎでは、オスマンとの話を自分から打ち切って部屋を出ている。
 おそらくオスマンは、サモンジが彼に対して警戒心を強めたことを感づいているのだろう。
 だからこそのコルベールの唐突な食事の誘い………まあ、人選は誤ったようだが。

「ははは、まあルイズちゃんがその、あなた達が信仰しているブリミル様の再来って訳じゃないんですし。まあ関係あるとしてもせいぜい劣化版でしょ、これ」
 そう言って左手のルーンが見えるようにひらひらと振りながらコップの中の水を飲み干すと、音を立ててコップをテーブルに置く。言外に示した話は終わりだ、というニュアンスを示したのだが、コルベールは切り口を代えて食い下がってきた。
「いえ、ミス・ヴァリエールはもしかすると極めて優れたメイジである可能性があります。そのルーンが本物でないと断定は出来ません」
「はいはい、本気じゃないでしょそれ?無理矢理に私のことをを持ち上げようとしないで下さいよ」
 流石に不機嫌そうに答えるサモンジを、しかしコルベールは泳ぎだしそうになる視線を必死で抑えてサモンジを見つめ返す。
 今の言葉はとっさに搾り出したものだと言うことはサモンジにも分かるが、ルイズが優れたメイジの可能性があるという言葉は逃せない。サモンジの魔法の知識はここ2週間ほどの授業分しかない。コルベールの言葉を妄言や嘘と切り捨てるには確信が持てないのだ。
 昨日の一件でどうもヘンな方向に自信をつけた様子のあるルイズ。それを考えれば、サモンジとしてはコルベールの言葉を無視するのは早計ではないか、と思える。
「サモンジさん、昨日の教室が大きく壊れていたのは覚えていますか?」
 頷きながら浮かしかけた腰を椅子に戻したサモンジを見て、手ごたえを感じたコルベールは身を乗り出して言葉を続ける。
「彼女の魔法の失敗は、今までただ爆発を起こすだけで生徒や教師にも大した被害が出たとこはありませんでした。
だからこそ、我々学院の教師も大した問題ではない、ただ魔法が下手なだけ、そう思って見過ごしてしまっていたのですよ。
彼女の、異能を」
 まだオスマンにも報告していない、自分の頭の中だけにある推論を喋りながら形にしていくコルベール。サモンジは彼の語る「メイジの目によるルイズの評価」、異能という評価に我知らず真剣な顔でその言葉を聞いていた。
「そうなのです、彼女の爆発は人の体にほとんど傷を与えないのです。にもかかわらずあのように強力な爆発を起こして物だけを破壊する………昨日、私はあの教室の惨状を見て……死者を覚悟しました。あの爆発は、ラインメイジの固定化のかけられた教室は破壊していたのですから。
砕けた壁、亀裂の入った床と天井………少なくともトライアングルクラスの破壊力の爆発、それほどの威力ながら人だけは無傷。こんなもの、系統魔法では説明できない。彼女は、彼女だけの魔法を行使していると言えるのです!」
 そこで言葉を切ってサモンジの反応を窺うコルベール。サモンジは無言でコルベールの言葉の続きを待っている。
 コルベールは自分の推論が形と確信を備えつつあると感じ、体を乗り出しながら力説する。もうオスマンからの指示は頭にない。自らが望んだ研究者という立場、その知的欲求がサモンジのルーンの正体を、ルイズの規格外の魔法の解を求めている。
 コルベールは場所が食堂であると言うことも、教師と言う立場も忘れて極めて迂闊な言葉をその口から吐き出してしまった。

「ミス・ヴァリエールは既存の4系統以外の魔法を行使している、使い魔にガンダールヴと思われるルーンを刻んだ。
ならば、ならば………彼女こそ伝説の虚無ではないかっぎいああぁぁぁぁぁ!?」

 絶叫が上がった。
 生徒の姿はないものの片づけをするメイドたちの目のある中で、虚無の系統と叫びかけたコルベールが椅子ごとひっくり返る。見る間に蒼白になりながらガクガクと痙攣するコルベールに、サモンジと周囲のメイドが慌てて駆け寄る。
 が、
「あうっ!はおぅ!ひいっ!」
 流れるほどに脂汗を流しながら床の上で激しく腰を………主に股間を天に突上げるかのよう跳ね回るコルベール。
 酷く………近寄りがたい。彼のやせた体とハゲ頭と相まって、悪魔的とも変態的とも言える。
 メイドたちは遠巻きに見ているだけで決して近寄ろうとしない。やがてコルベールの叫びはクライマックスへと昇り詰める。

「のぱぁっ!おごぉ!ぎゅふっ!おふぅ!ぴきぃ!あぎゃ!ひぎぃ!
…………… あ お お お お おーーーっ!!」

 一際大きな断末魔とも言える絶叫と共にコルベールが激しく仰け反り股間をさらに天へと突上げる。
 悲鳴を上げながらさらに距離をとるメイドたちの目の前で、突上げられた股間が盛り上がる。
 さらに大きくなる悲鳴に囲まれて、コルベールの股間の盛り上がりがもぞもぞと異様な動きをし…………服からネズミが飛び出す。どすり、と完全に気絶したコルベールがブリッジのような姿勢を止めて崩れ落ちる。その体の上を走ってネズミは逃げ去った。

 沈黙したまま固まるメイドたち………その内の1人が恐る恐るコルベールに近付き彼の「   」をトレイで突っついてみる。
 ビクンッガクガクッ、と気絶したままのコルベールが激しく震える。
 その反応を見て、サモンジとメイドたちは何が起こったのかなんとなく察した。
 さらに沈黙が続く。
「え~と、そっとしておいてあげようか?」
 沈痛な表情のサモンジの言葉に、メイドたちも沈痛な表情で頷きを返すと何事もなかったかのように仕事に戻っていった。


 学院長室。
 オスマンは杖を振って遠見の鏡の映像を消すと、大きなため息を付きながら背もたれに身を預ける。
「やれやれ、コッペパン君にこのような仕事は荷が重かったかのう」
 言葉通り、コルベールにサモンジと接触するように指示したのはオスマンであった。
 あの破壊の杖の一件、彼はサモンジとの密談の際に「私はガンダールヴの味方じゃ」と平民相手には破格とも言える言葉をかけた。にもかかわらず、昨日の教室爆破の件で事情を聞いた際にサモンジはオスマンに対して砕けた様子を見せなかった。いや、長い年月を生きて、様々な人々の人生を見送ってきたオスマンには解る。あのガンダールヴを宿した平民サモンジは、オスマンを、メイジを警戒していた。

 フーケが連行されてオスマンと密談を始めた時のサモンジは、学院長であるオスマンに気後れせず比較的砕けた会話をしていた。あの時オスマンはサモンジに対して、少なくとも性格は陽気で気楽に構える方であり基本的に友好的な人物と判断していたのだが………一体どの様な心境の変化があったかは解らない。しかし、その変化があったのはおそらくあの密談以降に何かあった、あるいは思いついたのだろうとオスマンは考えている。
 そこでオスマンはコルベールに指示してサモンジから出来るだけ情報を引き出させようとしていたのだ。
 破壊の杖や腕時計といったトリステイン、ハルキゲニアではありえない道具の存在とその使用法と製造方法。
 そして、ガンダールヴの印と思われえる彼のルーンとその力。
 まあ結局のところ、オスマンの見る限りコルベールも最初から警戒されてしまったようでほとんど真新しい情報はなかった。
 しかし、オスマンの脳裏に引っかかることがあった。
 サモンジのことではない。コルベールがサモンジを引き止めるためにとっさにひねり出した「馬鹿げた」推論。

 ヴァリエールの娘は虚無の系統のメイジではないのか。

 馬鹿馬鹿しい、何度も浮かぶその思いをオスマンは苛立たしげに頭を振って考えから締め出す。
 伝説の虚無。それが劣等生のヴァリエール家三女に宿るなど、始祖ブリミルに対する侮辱ですらある………そう思いもう一度否定する。確かに、固定化のかかった教室の壁をドット以下のメイジが魔法の失敗で破壊するなどありえないと思えることだが………だからといって虚無に飛躍するなど論外だ。
 一息ついてオスマンは机に向き直る。ひとまず食堂での騒ぎは後にしてコルベールが戻るまで仕事を片付けることにする。
 考えてみればサモンジがオスマンを警戒するのも、破壊の杖のことを考えればありえないことではない。
 メイジたちの宝でありながら使い方が不明のままだった破壊の杖をサモンジは普通に使った上に、オスマンに詳細を話してしまったのだ。まだ知っていることはないかと尋問、拷問されないか。あるいは拉致されて何かの実験に使われないか、そんな警戒しても当然だろう。
 オスマンはそう自分に言い聞かせると、杖を振り紙にペンを走らせる。そこに一匹のネズミが机を駆け上がって来る。
「モートソグニル、戻ったか………じゃがな、せめて私と感覚が繋がっていることは考慮してくれんか?
………あと、顔を洗って来てくれ」
 普段なら笑顔で使い魔を労うところだが、今日のオスマンはそう言って先程のおぞましい光景と感触を思い出してがっくりと机に突っ伏した。

 食堂の真ん中で虚無などと口走ろうとしたコルベールを止めろと指示されたモートソグニルが潜り込んだ男の下着の中の光景。臭い。そして、モートソグニルが噛み付いたモノの感触と味………
 主人の抱える精神的な苦痛を感じ取ったモートソグニルは、それを少しでも和らげようとオスマンの体を駆け上がり、その頬をペロペロとなめていた。

 洗ってない舌で。


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