あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

されど罪人は零と踊る-02


そして余りの馬鹿らしい展開に衝撃を受けた俺は、視界が一瞬暗転、地面という絶望に膝をつく。
どうやら脳のジョウシキウム(俺が考案した常識物質的な物)が不足した事により起こる急性貧血らしい。
そして少女はそんな俺を見下ろし、まるで不遜な貴婦人の様に笑む。

「膝をついてまで私を讃えなくてもいいわよ」
「んなことあるかっ! どうやったらそう見える!? 今迄の会話の流れで俺が君を尊敬するような流れがあったか!? 壮絶に間違ってるだろ、主に人としてっ!」

俺は絶叫して少女を見上げた。少女は相変わらず不機嫌に、まあいいわ、と言い捨てる。うわぁ、こいつ俺の魂の叫びを、まあいいわで流しやがった。
俺はついつい毒ガス咒式を検索してしまう。
毒ガスを吸引しても、まぁいいわ、ですませられるか! ちなみに毒ガスを選ぶのは正面から戦ったら負けそうなので、清く正しい暗殺。わお、なんて素敵に後ろ向き。
催涙ガス、いやマスタードガス。しかし色付きなので却下。でもどうせあの阿呆みたいな咒力で無効化されるだろうな。等々思考していると。

「ルイズが平民を喚びやがった」

と、誰かを卑下するような声が周囲の子供達の方から笑い声があがる。
俺の目は嘲りと嘲笑の視線が収束した地点を辿る。悪意の視線の先には少女と俺が佇んでいる。推察するにルイズとやらはこの少女か。そして俺への表が平民。
その笑声を聴いたルイズは、顔を一瞬しかめ奥歯を噛み締めるような音が聞こえた。

「ちょっと間違っただけよ」

ルイズはそう呟くも、嘲りと悪意は加速していく。例えどんな世界でも、人は変わらない。他人の何かを嘲笑う人間は、自らの脆弱さを他人に押し付けて自意識を保つものだと。

「間違いって、ルイズはいつもそうじゃないか」
「さすがはゼロのルイズだ」

ルイズは、氷の眼で人垣を見る。そして嘆息をつくと、その深い鳶色の双眸が氷点下の視線で俺を射抜き。
『嫌だ、やっぱり、死ぬの怖いよぅ。誰にも、本当、に愛されないま、ま死ぬの怖い、よう』

目眩がした。何故かその瞳を見た俺は、俺を愛して、俺が愛せなかった、そして俺が……何だ、この記憶は?
記憶の混濁か。転位の影響による欠落か、もしくは存在すらしないのか、俺は思い出せない。
俺の迷いやすい思考を断ち切るかのようにルイズは俺に近づく。

「ねぇあんた。……いや、なんでもないわ」

刹那の従順、ルイズの眼に写った光。俺はその瞳に最愛の妹、そして最悪の枷である、アレシエルを思い出す。

『   いで、     わ』

断罪と弾劾の言葉は、時が流れた今も容赦なく俺の心を抉る。
ああ、そうか。こんな状態になっても、俺が目の前のこの子を無視して逃げようとも思わないのは、妹に、アレシエルに似ていたからだ、と。

「動かないで」

その言葉の縛鎖に、俺は動かない。いや、動けない。
俺の眼前に突きだした杖の先に燐光が集まる。そして竜並みの超咒力が収束。ルイズの意識が仮想力場を通り収斂。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

まるで地から沸き立つような詠唱。光に包まれ浮かぶ可憐な美貌は、まるで非人間な迄の美しさを表した。
それは、世界を構成する電磁力、重力、大きい力、小さい力。そして四つの力に分かれる前の、一つの<力>による奇跡の体現。

「五つの力を司るペンタゴン」

振られた杖の起動に残る光の残姿が踊る。
その虚無の光が量子世界の基本単位である、六・六二六○七五五四○に一○の負の三四乗(J・s)と定義されていた。
そして、その作用量子(プランク)定数hを操作し、局所的に変異させる事が可能なら、h=△・△tにより、熱量の不確定性は時間の不確定性に反比例するという理論。

「この者に祝福を与え」

流麗の腕と杖が俺の額の前で停止。白光の軌跡は複雑な組成式を描き、大規模な量子変換を起こす。そして仮想観測空間から現界。
その理論から中間子の熱量が陽子や中性子より大きくなる原理と同様に、存在する時間が短いなら熱量の不確定性、つまり物質の大きさは増大するという原理が導き出された。

「我の使い魔となせ」

正式名称[限定系における、状態力方向の物理神経の観測支持作用による線形分解と作用量子定数変化、及び位相変異における強制作用力試験]により確立された咒式に、淘汰、併合された異能。
咒式では有り得ない物理干渉。俺の前で今行われる超弩級の咒式。それは、まさに科学では到達しえない技術<魔法>という超常現象だった。
紡がれた咒力と組成式の圧力で、動けずにいた俺に魔法使いの顔が俺の鼻先迄近づく。
そして、ルイズの唇が俺の唇に重ねられた。
は? なにそれ? なんで? どして?
余りの前衛的な芸術展開に、思わず口が開いているのを確認。俺はさぞや壮絶に間抜け顔を晒しているのだろう。
そして展開していた咒力の霧散を感じる。
ルイズは俯いたまま制止している。いや、ちょっと振動している。
俯いた顔を俺に向ける。幼さを残す頬梁は僅かに赤みを帯びていた。

「興奮したり欲情したりしないでよねっ!」
「なにその倫理的におかしい照れ隠し!?」
「ほら。あんたいやらしそうな顔してるし」
「おい、そんな軽い接触で大人は喜ばないよ。むしろ脱いで、ついでに犯らし……」

軽口を叩こうとするが、瞬間左手の甲に灼熱が走る。焼けるような痛みに俺は苦鳴を漏らした。
俺は痛みに耐えながら、右手に持った魔杖剣<断罪者ヨルガ>を構える。

「何を、した?」
「何って――」

そして霧散したと思っていた咒力は高密度に集束。それらは円内に変形六角還を無理矢理挿入したような組成式を描く。
蒼久の空に届く程の超巨大組成式が隠蔽されていた。そして改変された物理反応が形骸化。強大で複雑な多重咒式の光が零れ俺に流れこむ。
俺の世界が砕け、意識が、混ざる、捻れ。様々な光景が乱舞する。
アレシエルが数式を書き留めて桃金の髪小さなの少女が小舟の上で泣きクエロだけを助けるためにクエロを殺そうとして羽帽子をかぶった男が微笑み。
棚の魔神となったギギナが死の突っ込みを零と呼ばれジヴの背中が離れ爆発するのを見て二人は悲しみ俺は少女を殺し。

「契約よ」

俺に? 音の波が俺の鼓膜を振動させる、それが意味だと認識出来た。
多少の正気を取り戻し、鎮痛咒式を即座に発動。

魔杖剣の引き金を弾くと、辺りに咒力の光が発生する。痛み止め程度にしかならないが充分だと思いたい。

「あ、あんた貴族!?」

ルイズが驚きながら俺に問う。
咒式の効果で死にたくなる痛みが、狂いたくなる痛みに変わり。俺は苦鳴を漏らしながら問いをぶつけた。

「俺に……何をしたんだ?」
「だから、契約よ。それより私の質問に答えて。あんた貴族?」

契約? 分からないのでとりあえず質問に答えておく。

「一応貴族だけど」

先程の平民発言から察すると、ここは貴族と平民という二極の立場があると推察。
ちなみに俺の爵位は既に結婚詐欺師に売却している、が貴族であるという事実は無根では無いような気がする。というか貴族と言っておく。
そこで右手に長大な杖を持った、眼鏡を掛けた禿頭の男が足音を絶てに現れルイズに話しかける。

「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来たね」

男は太陽の恵みを燦々と浴びた頭部を輝かせ笑む。

「ルーンをスケッチさせてもらって……」

男は何かに驚いたように停止した。その驚愕の視線は只の一点、俺の魔杖剣に注がれていた。

「これを知ってるのか?」

俺は魔杖剣<断罪者ヨルガ>を掲げた。
男は俺の問いに目線を左上に流しながら言う。

「いや、なに。変わった杖だ、と思ってね」

俺は男のその動作と言葉に違和感を感じながら、魔杖剣<断罪者ヨルガ>を鞘に収めた。


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