あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの軌跡-01


第一話 天使の彷徨

カルバード共和国 東方人街


「どうもありがとう、ジャックおじさん、ハルさん。」
「ああ、また顔みせな。軽くひねってやるからよ」
「次までにはもっとカード強くなって、ジャックおじさんを負かしてやるんだから。
ハルさんの火竜トムヤムクンもまたご馳走してね」
「あらら、私も料理の腕磨いておかなくっちゃね。今度はレンちゃんのパパとママも一緒においで」
「うふふ、約束よ。レン、楽しみに待ってるから。」


 二人に見守られてレンは酒場を出た。
 彼女は気の向くままに大陸を見て回っている。別にこれといった目的はない。今の彼女になすべき事もなければ、なしたい事もまたなかった。


「いらっしゃい、お嬢ちゃん。カルバード見物かい?」
「そうよ、パパとママに連れてきてもらったの。少し見せてもらっていいかしら」
「もちろんさ、かわいいお嬢ちゃんにはこんな帽子なんかどうだい」



 あてどもない旅をしたいわけでもなかったが、かといって旅をやめてどうすればいいかなど見当もつかない。その結果がこの気ままな生活であるのならばこのままでもいいと思っていた。

 なのに、レンはいつも思う。
 ならば何故、こんなにも私は沈んだ気持ちでいるのだろうか。

 鬱々とした気分で数時間、露店を冷やかすことにも倦んで、レンはパパとママの許へと走った。
 街から十数分、鬱蒼と茂る林道のその外れ。魔獣はいても人はいない岩陰に、それは佇んでいた。

「ただいま、<パテル=マテル>」

 キュルキュル、と電子音をたてながら<パテル=マテル>がレンに差し伸べた手。彼女の帰るべき場所。誰にも邪魔されない安息の掌。彼女を包む暖かな鋼の揺り籠。
 それの上で今日街で会った人、おいしい食べ物や買った素敵なアクセサリーの話をするのがレンの日課なのだった。そうすると<パテル=マテル>は喜んでくれるのだ。その巨体を震わせて、煙を吐いて。

「…」

 それがこの数日、つまり<方石>事件後、毎日のようにレンはずっと黙りこくったままだった。<パテル=マテル>が心配気にたてる音にも彼女のいらえはなく、膝を抱えて思考の海に沈むばかり。
 彼女の楽園、鋼鉄の両親の胸の中にいながらレンは自分を見失いかけていた。





 <輝く環>事件。結社<身喰らう蛇>によるリベールの古代文明<リベル=アーク>の復活。
 <方石>事件。<リベル=アーク>崩壊にともなった余震ともいうべき出来事。

 レンは思う。その二つの事件の中で、いや正確に言うならばその時に一緒に過ごした人々のせいで、自分はこんなにも変わったしまったのだと。


 結社にいたときは本当に幸せだった。

 本当のパパとママがいなくても<パテル=マテル>がそばにいてくれた。初めて<パテル=マテル>と精神がリンクしたときはその駆動音が母親の子守唄のように聞こえた。
 日曜学校に行かなくても他の執行者たちがたくさんの面白いことを教えてくれた。気配の消し方や人の殺し方、オーブメント理論に機械工学。
 自分で何も考えなくても教授が素敵なパーティを考えてくれた。お茶会を開いたらいい、と言われたときは楽しみでどきどきして全然寝付けなかったものだ。


だけれども今の私はこんなにも孤独だ。それはきっと一人だからではなくて、今の自分の在り様を是としてないからなのだろう。
 そう頭ではわかっていても心はその答えを拒絶して思考は渦を巻く。そうやって出来た渦は少しずつ形を変え、いつも彼女達の顔を浮かび上がらせるのだ。


 「エステル…ティータ…ヨシュア…」


 彼女の誘いを受ければよかったのに、と脳裏で声がささやく。
 エステルは犯罪組織の一員である私を受け入れようとしてくれた。エステルの恋人であるヨシュアも、その二人の父親、カシウス=ブライトも。
 何回も彼女達を裏切って、騙して、戦って。それでもエステルは優しく私を迎え入れてくれようとした。

 なのに私を抱きしめるその手を振り切って逃げ出した、その挙句がこの懊悩。
 あのときの私には勇気も覚悟もなかったのだ。差し出された彼女の手の中には私が今まで築き上げた価値観も世界観もなく、私はその新しい世界に恐れをなしたのだろう。

 だから耳を塞いで眼を閉じて、パパとママの中に潜り込んだ。私は私を捨てることが出来ずに、今まで私を守ってくれたものにしがみついた。そこに私が必要としているものがないことを知りながら。

 私の世界は歪にゆがんで閉じていて、けれどどうしようもなく空虚だった。




 だからわたしは  ぱぱとままのてのひらのうえで  ひとりさびしくないているのだ






 底の見えない思考の海から這い上がり、レンが冷えきった膝小僧から手を離して顔を上げると、そこには見覚えのある光の扉が浮かんでいた。
 <方石>事件、その星層の中で幾度も見た扉。ただ一つ違うのはそこに描かれた図。星でも月でも太陽でもない、見慣れない奇妙な文様。


 幾ばくかの逡巡ののち、彼女は立ち上がった。
 きっとこれも<リベル=アーク>のアーティファクトが何らかの事象を引き起こしたのだろう。行けば必ず巻き込まれる。


 それでもレンは進む。
 そうだ、私は一人ではない。<パテル=マテル>がそばにいる。

 それに。

 「行きましょう、<パテル=マテル>」


 エステルは言ってくれた。必ず、追いかけて見つけてあげるから、と。








空の軌跡を知らない人のために簡単な解説

 ・レン
 犯罪結社<身喰らう蛇>に所属する。執行者NO.ⅩⅤ。異名は<殲滅天使>

 両親に捨てられ、ある犯罪組織で育てられていたが<身喰らう蛇>に拾われて英才教育を受ける。
 若干12歳ながら戦闘力は並みの兵士を遥かに凌駕している。武器は大鎌。
 巨大兵器<パテル=マテル>を操る。名前からも判るように<パテル=マテル>を本当のパパとママのように思っている。

 <輝く環>事件の際、<身喰らう蛇>の執行者として活動するも、エステル達に敗北した後は結社にも帰らずに姿を消す。
 その半年後の<方石>事件にも巻き込まれ、事態の打開のためにエステル達と一時共闘を図る。
 この時にエステルから一緒に暮らそうと誘われ、アンビバレンツな幼心を見せてくれるがやはり姿を消す。
 このお話はその数日後からのものです。

 ・<パテル=マテル>
 <身喰らう蛇>内の<十三工房>で開発されたゴルディアス級戦略級巨大人型兵器。
 ダブルバスターキャノンが得意技。レンを乗せて空だって飛べる。
 空の軌跡3rdでほんの少しそのスペックが明らかにされた。なんでも数年だか無補給で活動できるらしい。
 そんなことできるの∀ガンダムとかそんくらいだと思う。

  • エステル
 空の軌跡FC SCの主人公。本名エステル=ブライト。
 遊撃士(街の観光案内から料理のレシピ探し、魔獣退治や犯罪結社撲滅まで請け負う住民密着型の何でも屋)

 笑顔爛漫の太陽娘。お人よしで直情径行派。
 新米遊撃士として仕事をこなすうちに<身喰らう蛇>の陰謀に巻き込まれる中でレンと知り合い、彼女を救おうと尽力する。
 まだレンはエステル達といようとはしないが、エステルの生き方、在り様はレンに大きな影響を与えている。



新着情報

取得中です。