あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの魔獣-32


唸りを上げる弾丸が、慎一の左肩の肉を半ば以上削ぎ飛ばす。
その一撃を受け、慎一は直ちに冷静さを取り戻す。
体を丸め、デルフリンガーを盾に機関砲の直撃を避ける。

「ダダダダダダダ!!  無理だッ! シンイチィ!! 折れちまう!?」
「なんだと!! テメエ! それでも伝説かッ!!」

だが無理もない。彼の役割はあくまで対魔法戦を想定した武具である。
近代兵器の弾除けではない。しかも慎一は、デルフの力を活かせる『使い手』ではなかった。

弾丸の隙間を縫って、距離を取ろうと翼を広げる。
その眼前に、サイボーグ風竜の巨大な顔が現れる。

(クッ!!)
思ったときにはもう遅かった。
鋼鉄の壁越しですら深刻なダメージをもたらした振動波が、至近距離で炸裂する。
不快な金属音と空気が破裂する音が全身に鳴り響き、慎一の体を細胞単位で震わせる。
衝撃は数瞬であったが、慎一は全身の自由を奪われ、緩やかに落下していく。
無防備になった標的に、ワルドが左手の照準を合わせる。

「・・・イチ シンイ・・・」
朦朧とした意識の中、慎一は痺れる両翼をバタつかせ、声のする方へと必死で体を伸ばす。

「シンイチイイイーッ!! どいてええええ!?」

因果応報であろうか。
真横から滅茶苦茶なスピードで飛んできたイーグル号のボンネットに跳ねられ、コクピットの防弾ガラスに磔になる。
慎一は歯を食いしばって機体にしがみつき、そのまま横一直線に流されていく。
直後、ワルド銃弾が空を切る。

「殺す気かァッ!? 俺じゃなきゃ死んでたぞ!!」
「文句は後ろを見てからいいなさいよおおお!!」

確かに痴話ゲンカをしている場合ではなかった。
後方から追いすがるバドが、ミサイルの発射体制に入っていた。

「・・・二人がかりでかわすぞ! タイミングを合わせろ ルイズ!」
言いながら、慎一が機体の天井に張り付く。

「そんな事・・・」 
できるわけがない、と言おうとして、ルイズが頭を振るう。
どの道ルイズにミサイルを避ける操縦時術は無い。 慎一を信じるしかない。
メイジは使い魔と五感をリンクさせる事ができる。 できる。 できる。 できるハズだ。

ルイズは大きく深呼吸すると、頭上にいるであろう慎一に意識を集中させる。
エンジン音、空気を切る音、バドの咆哮、ミサイルの飛来音・・・
雑音が徐々に消えていき、聞こえるのは、魔獣の心音と息使いのみとなる・・・。

ミサイルが後部スレスレまで接近してくる。

「今だあアアアッ!!」

魔獣の意識が精から動へと変わる一瞬を捉え、ルイズが思い切り操縦桿を引く。
同時に慎一が全力で羽ばたき、機体を上空へと持ち上げる。
イーグル号が鮮やかなトンボ返りを決め、目標を失ったミサイルが前方へと消えていく・・・。

「なっ!?」
ワルドに驚いている暇は無かった。
眼前から忽然と消えたイーグル号が、頭上から太陽をバックに迫ってくる。

「ワアアァルドオオオォォォ!!!」

叫びながら、ルイズがしっちゃかめっちゃかにバルカンを浴びせる。
弾丸の一発がバドの左翼を貫通し、ドラゴンが恐慌をきたす。
ワルドは暴れるバドを抑えながら、かろうじてイーグル号の体当たりをかわす。
咄嗟に反撃しようと銃口を構え、気付く。 魔獣が乗っていない。

「ここだぜええ!!」

頭上から急降下してきた魔獣が、ワルドの体に取り付いた。
獅子の俊敏さと、熊のパワーを併せ持ち、あらゆる部位から相手を『喰う』事ができる魔獣。
慎一が普通の状態であらば、接近戦に持ち込まれた時点で決着であろう。
だが、被弾によるダメージと、二度に渡る振動波の直撃で、慎一はまともに体を動かせる状態ではない。

ワルドが機械化した左手でギリリと押し返し、銃口を額に擦り付ける。

「決着だな 魔獣 言い残す事はあるか?」
「バカヤロウ! テメエとの決着はとっくの昔についてるんだよおお!!」

瞬間、二人の足元がガクンと沈み、弾丸が慎一のこめかみを掠め、彼方へと飛び去る。
咄嗟にワルドが足元を見る。 バドの様子がおかしい。 何者かが首に巻きついている・・・。

それは、大猿のような尻尾であった。
臀部から伸ばした慎一の尾、その先端に巻き付いたデルフリンガーが
鋼で覆われた翼竜の首の隙間に、深々と突き刺さっている。

「ムンッ!!」
慎一が尻に力を入れ、大猿の尾を一回転させる。
空中でデルフが踊り、次いで鮮血の大輪が咲く、
首を半ば以上切断された半鉄の竜が、機械音を挙げながら落下していく。

「くうっ!」
自由落下に入ったワルドが詠唱を唱える。 たちまち落下が緩やかになり、その身が宙に浮く。
― 慎一は、既に眼前にいない・・・。

「おらあああ!!」
背後から慎一に体を押さえつけられる。
空中戦で、人間が鷹に抗えるはずも無い。
長い尾がワルドの全身を絡め取り、猛禽の鉤爪が左肩を締め上げていく。

「グオオオオオオオオオ!!!!」
「往生際が悪いんだよオオオッ!!」
拘束から逃れようと、ワルドが左の機関砲を乱射する。
慎一が暴れる左腕をがっちりと極め、喰いこませた右足を思い切り蹴り上げる。
銃口のついた肘先ごと、ワルドの左手が肩から千切り取られる。

激痛で精神が乱れ、ワルドが再び落下する。
不屈の精神で、尚、体勢を立て直そうとするワルド、その右手を慎一が捕らえる。

「答えろッ!! ワルド! 
テメエの左手にこいつを付けやがったのは どこのどいつだッ!!」

「・・・・・・・・・」

ワルドは答えず、小声で詠唱を完成させる。
至近距離で発生した真空の刃が、掴まれた自身の手首を切断する。

「・・・ッ!! ワルドオオオ!!!」

ワルドは答えない、ただ、慎一の大嫌いな笑顔を浮かべて落下していった・・・。


― 慎一は追わなかった。 今の彼には、やらねばならぬ事が残っていた。

それに―。
慎一が『箱舟』を見下ろす。 全ての答えは、そこにあるはずだった。

「なっ!? なんだァ!!」
再び戦場へと戻った慎一が、驚愕の声を上げる。

イーグル号が、戦えている・・・。
相変わらず猛スピード且つ変則的な飛行と、滅茶苦茶なバルカン掃射であるが
恐慌をきたした竜騎士隊の中央へと突撃し、着実に撃破していく。

「うおっとォ!!」
流れ弾を避けつつ、慎一はかろうじて機体に張り付き内部へと戻る。

「随分とやんちゃしてるじゃねえか お嬢様?」

「な な なんとか上下左右の打ち分けは覚えたわ・・・
 けど・・・ もう弾がない・・・」

「お前はよくやったさ! 後は姫様のところへ行ってな」
言いながら、慎一がデルフを降ろす。

「お前は留守番だ ルイズを守ってやれ」

「無茶言うな シンイチ 俺は使い手がいねえと・・・」
「ウダウダ言ってんじゃあねえ」

「シンイチ」
再び外に出ようとする慎一を、ルイズが引き止める。

「シンイチ 無茶だけはしないでよ」
「・・・行ってくる」

再び上空へと飛び上がった慎一が、箱舟の甲板目掛け、一直線に降下する。
迎撃しようと機銃を向ける敵兵に、慎一が、千切れかけていた自らの左腕を投げつける。

「久々に暴れてやれや!! ゴールド!!」
投げ込まれた左腕が空中で獅子へと変化し、敵兵の顔面を引き裂く。
そのまま甲板を飛び回りながら、敵兵の混乱を煽る。

慎一が甲板へと緩やかに着地し、ワルドの左腕を、自らの左肩へとあてがう。
直ちに傷口から現れた熊の大顎が左手を縫いつけ、徐々に神経が繋がりだす・・・。

「新たな魔獣を紹介するぜえ!! 『コブラ』だ!!」

くだらない台詞を吐きながら、慎一がジャキリと銃口を構える。
使いようによってはメイジの一個師団にも匹敵するであろう兵器が、最高の舞台で牙を剥く。
直ちに鉛玉の嵐が船上を襲い、眼前の兵士たちがハードなダンスを踊る。

近づく敵を切り裂き、遠くの群れを撃ち殺しながら、凶暴な魔獣が駆け抜ける。
目指すは箱舟の内部・・・。


―と、
突如慎一の眼前で火球が生じ、混乱をきたした兵士たちが消し飛ばされる。
一箇所だけではない、船上のあちこちで、ドワオズワオと核熱が巻き起こり、恐慌を起こす兵士を吹き飛ばしていく。


―いかに混乱し、用をなさなくなったとは言え、たった一人の敵のために、味方を焼き払う者がいるだろうか・・・?
 ましてや、船上にはアルビオンの貴族も多数いたハズである。

慎一は確信する。 これをやったのは、こちらの世界の人間ではない・・・。


「フフ 躾のなっていない部下たちで失礼したね
 ここまでのもてなしは楽しんで貰えたかな? 慎一君・・・?」

慎一の眼前に、聞き覚えのある声を響かせ、一人の男が現れる・・・。

ガッチリとした体躯の恰幅の良いスーツ姿。その上からさらに白衣。
褐色の肌に白髪、分厚い唇に特徴的なサングラス・・・。

「こんなところで再開できるとはな・・・
 嬉しすぎて涙が出そうだぜ

 テメエが黒幕だったかァッ! シャフトオオォ!!」

― かつての十三使徒のひとり。 来留間源三の右腕にして気象兵器のスペシャリスト。
  そして、慎一の母親に直接手を下した男・・・シャフト。

  遙かな異世界にあって、慎一は憎むべき仇との再会を果たした・・・。



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