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ゼロの魔獣-27


アルビオンへの隠密行から一週間―。

狂乱の四日は思い出の彼方へと過ぎ去り、呆けたような日常が戻ってくる。

アルビオン王家の滅亡、『レコン・キスタ』の台頭、呉越同舟のトリステイン・ゲルマニア・・・。
政治屋にとっては最高の売り込み時であり、歴史屋ならば「嵐の前の静けさ」と評する動乱期であろうが
とかく一介の学生にとっては退屈な日々が続いていた。

もっとも、あれだけの死闘を繰り広げてきたのだ。何一つ変化が無かったわけではない。
螺旋階段を上るが如く、慎一の周囲にも徐々に変化が見られていた。

先ず、慎一を見る周囲の目が変わった。
ギーシュが大々的に自らの手柄話を語った結果、
『最優秀助演男優賞』 の慎一にも好奇の視線が向けられるようになった。

この頃には、初めの頃の慎一が持っていた、抜き身の刃物のような危険さも薄れており
ギーシュ相手に軽口を叩くような姿も見られるようになっていた。
(まあ、それでも何とは無しの緊張感は漂わせていたが・・・)

そして、その変化の際たるものが、シエスタの接近であろう。
初めは慎一を最も警戒していた一人であった黒髪の少女が、ここ最近、妙に世話を焼くようになっていた。

シエスタの中で大きかったのは、真理阿の存在だ。
友人であり、恩人であった真理阿と慎一が同一人物(厳密には違うが)である事を知った事で
彼女は慎一を強く意識するようになった。

また、慎一が普段、着の身着のまま、些事に無頓着な生活を送っている事も、シエスタの保護欲をくすぐった。
だが、彼女が慎一に執着する理由は、別のところにあった―。

「最近 よく見るわね・・・ あのメイド」

「・・・・・・」

「私とした事が迂闊だったわ
 そうよね 獣を釣るならやっぱり餌付けよね」

「・・・なにが言いたいのよ? キュルケ」

「別にぃ  ただ 何かアンタ
 ここ最近 妙にカリカリしてるかなあって」

キュルケの指摘を受けルイズがガバッと立ち上がる。

「バ ババカ言ってんじゃ無いわよ!!
 なんであたしが 使い魔とメイドのイチャついてるところを見て
 イライラしなきゃいけないのよッ!!」

「言ってないわよ そんな事 ・・・どこ行くの?」

「部屋!!」

「やめときなさいよ 馬に蹴られて死ぬわよ」

「主が自分の部屋に戻って何が悪いのよ!」

言いながらルイズは、ずんずんずんと進んでいく。

道中考える。なぜ自分がこんなにも怒っているのか?
嫉妬なハズはない。 慎一は自分の好みのタイプでは無い・・・と思う。
宇宙が一巡しても、自分と慎一の恋のヒストリーなど始まりはしないであろう事は断言できる。

真理阿・・・そう 真理阿だ!!
真理阿は慎一に全てを捧げるほど、慎一の事を思っていたのだ。
その彼女を体内に宿しながら、目の前の餌にホイホイ釣られるバカゴリラが許せるワケがない。
主として、真理阿の友人として、徹底的に教育してやる!
そういう事にしておこう。 うん。

一方その頃、ルイズの部屋では、史上最強の魔獣が無様にも餌付けされていた。

慎一の辞書に色恋沙汰の文字は無い。
一匹狼の気質である彼にとって、シエスタの甲斐甲斐しさは正直な所煩わしい。
煩わしい・・・ が、豪華な昼飯を棒に振ってまで、冷たく当たる必要は無いんじゃないだろうか?

そんな感じで、今日も今日とて餌付けされていた・・・。

「それにしても いつ見てもシンイチさんの食べっぷりは気持ちいいですね」
「そうか?」
「そうしていると、まるでおじいちゃんが傍にいるみたい」
「そんな年じゃねえ!」

「いえ ゴメンなさい! そうじゃなくて・・・
 ―何ていうか すごく雰囲気が似てるんです

 普段は豪放で明るいのに 時折フッと寂しい目をするところとか」

「・・・そんな目 してたか?」

「してますよ  一人でいる時とか
 まるで ここではない どこか遠い世界を思っているような・・・」

「・・・・・・」

「わたしのおじいちゃん 変な人だったんです
 いつも変わった事を言ってました

 自分は別の世界から来たんだ・・・とか」


「・・・別の 世界?」

慎一のスプーンが止まる。 常ならぬ雰囲気に、シエスタはキョトンとしている。

「なあ シエスタ  ・・・お前の爺さん どうやってこの世界に来たって言ってた?」

「え?   あの・・ 金属の乗り物です 
 ウチの村では『竜の羽衣』って呼ばれてて
 それで東から飛んできたって・・・ 

 それで ・・・確か・・・ 」

「『飛行機』」

「・・・ッ! そうです
 おじいちゃんもそんな事を言ってました  でも なん―― キャッ!?」

突然慎一に両肩を掴まれ、シエスタが悲鳴を上げる。

「そいつは! ソイツは今 何処にある!?」

「シ・・・シンイチさん!?」

「教えてくれ! そいつは・・・ お前の爺さんは生きているのか!?
 その飛行機は 今も飛ぶのか?」

「・・・祖父は 祖父は五年前に亡くなりました
 羽衣は・・・ わたしも村の人たちも 飛んだところを見た事がありません」

「・・・そう  なのか・・・?」
「― あの? シンイチさ ・・・あっ・・」

思わず後ずさりしたシエスタが服の裾に足を引っ掛ける。
とっさに慎一が引っ張りあげた結果、ふたりはルイズのベットの上にもつれこんだ。

「・・・・・・・」
「・・・シン・・・イチ さん?   あ あの・・・」

はからずも押し倒される形となり、戸惑いの声を上げるシエスタを気にもせず。
慎一は改めて、少女の顔をまじまじと見つめた。

無限の宇宙を映すようなつぶらな黒い瞳、漆で塗り上げたような艶やかな黒髪。

何故、今まで気づかなかったのか。
ラ・ロシェールでもニューカッスルでも、他には見た事の無い色。

「・・・黒い髪っていうのは この世界では珍しいのか?」

「えっ? ええ・・・   わたしは おじいちゃん似なんです
 おじいちゃんも 若い頃は黒髪だったって
 きっと 東の方から来た人間だからだって・・・ それで」

シエスタは瞳を逸らし、頬を赤らめながら必死に答える。

『聖地』の更に東、『ロバ・アル・カリイエ』―

まったく別の世界からやって来た、という男の話を信じるよりは
伝説でしか知らない未開の地から来たと、村人たちは結論付けるであろう。

だが、まったく別の世界、『地球』からやってきた慎一には直感的に分かる。
おそらくはシエスタの祖父は・・・。

思索に耽りながら、慎一が無造作にその黒髪をなでる。
シエスタは暫くまごまごとしていたが、やがて覚悟したようにひとつ頷くと、ゆっくり瞳を閉じた。

ぎいっ、という扉の開く音がして、


― 目を点にしたルイズが姿を見せる。



時間が止まった・・・。


「ミ  ミス・ヴァリエール・・・!」
「シ シ シシシンイ  こ これはいった・・・」
「取り込み中だ 後にしろ」

慎一が、顔も向けずにぶっきらぼうに言う。

ルイズの中で、ぷつん、と、決定的な何かが音を立てて切れ――


ド ワ オ オ オ ッ ! ! ! !

― 学院の一室に、巨大な風穴が開いた・・・。


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