あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

悪魔も泣き出す使い魔-mission13


~シャイターンの右腕~
コントラクト・サーヴァントを阻止せよ


青年は夢を見ていた

膝枕に抱かれながら 優しい歌声に包まれる 至福の夢

やがて歌は止み 歌声の主が 青年の名前を呼んだ

… 起きてちょうだい

「どうして?俺はまだ君の歌が聴いていたいよ」

…ロ 目を覚まして

「待って。もう少しこのままでいたいんだ」

歌声を発していたその唇が 青年の口元に近付いた

ネロ …

「キリエ…」


ネロが目を開けると、そこには夢とは違う、男の唇が青い美髯を揺らめかせ、ネロのそれへと今まさに接触しようとしていた。

「ッ!?」
「…!?」

自らに迫る男と目が合うと、一瞬間を置いて、ネロが絶叫しながらそれを撥ね退けた。

「うわああああああああぁぁぁ!!!!!」

それからネロは、激しく鼓動する心臓を必死に押さえながら、夢から起こしてくれた女神に感謝した。
キリエありがとう。マジありがとう。

ネロは雛鳥の様に首を上下左右させ、辺りを見回した。
そこは、「ラ・ガリア」と名付けられた青い薔薇が一面に広がる、ネロが今まで見た事も無いような美しい庭園だった。
夢の中の女神と訪れれば、さぞかし幸せだったであろう。
しかしそこには、青く染めた髪に冠を被せた、おめでたい格好の中年男性と、
無骨な鎧を着込んだ取り巻きが複数居るだけだった。
ようやく意識をハッキリさせたネロは、男たちに左手の指を刺しながら怒鳴り散らした。

「何だお前等は!?人が寝ている間に何してやがる!」

その返答には誰一人として応えようとせず、当の中年男は取り巻きの一人と、何やらボソボソと話し込んでいた。

「王よ。使い魔が目覚めましたな」
「まだ、アレは使い魔候補だ。コントラクト・サーヴァントの直前に避けられてしまった」
「何と?それは危険でございます。ここは下がられよ」
「ふむ、ついでだ。余のモノとなるに相応しいか…。いいぞ、行け」

「王」の側近達が、その全身を覆い隠す程の巨大な盾を構えて、ネロを囲んだ。
「王」の気紛れで急遽編成された、重装甲の鎧を纏った宮廷騎士団。
単体の存在感は、クルデンホルフの空中装甲騎士団を凌駕し、
その姿はネロの故郷、フォルトゥナの魔剣教団が造り上げた、"天使"達と重なった。
ネロは、誰も返事を寄越そうとしない周囲の様子に腹を立て、イライラした調子で叫んだ。

「答えろよ!それとも、俺と話せる程オツムが足りないのか?ああ?」

誰も答えようとはしない。
王の盾となり、無言でネロに立ち塞がる宮廷騎士団の面々。
王は見定めようとしていた。どちらが自分の新しい玩具になるか。
そんな品定めされる様な視線と、先程から無視され続けている状況が、ネロの機嫌を更に悪化させた。

「OK. 今度は寄って集ってレイプしようってか。良い趣味してるぜ糞野朗どもが」

ネロはこれから始まる事を察知し、コートの裏から得物を取り出した。
それに、いち早く気が付いた王は、興味津々といった顔で、初めてネロに声をかけた。

「何だそれは?銃か?面白い形をしているな!」
「ハッ、そうだよ。物分りが良くって安心したぜ。
泣いて詫びるのか、ケツ捲くるか選べよ。好きな"穴"にコイツをブチ込んでやる!」

ネロが懐から出したその銃は、ここハルケギニアでは、見たことの無い形状をしていた。
大型の銃身から伸びた2本の銃口。ネロの居た世界でも有り得ない様な規格から、
その6連装式大口径リボルバーは、ラ・ガリア、「ブルーローズ」の名に相応しいものであった。

騎士の一人が、苦笑混じりにネロに言った。

「銃だと?愚かな。我ら新生の宮廷装甲騎士団にそんなモノが通用する…」

言い終える前に、ネロがブルー・ローズの引き金を引いた。

前の3人に六発。後ろの3人に六発。
ハルケギニアに現存する銃とは、比べ物にならない質量の装薬から、
同時に発射される二発の弾丸は、騎士達の鎧をいとも容易く打ち砕いた。
二発の弾丸は、それぞれがコンマ数秒単位の間隔を空けて標的に着弾し、
一発目は鎧を砕き、二発目はその隙間から生身を貫く。
本日付けで新たに配属された、重装甲の宮廷騎士団は、
ブルーローズの銃声が響くと共に、次々とその場へ平伏してしまった。
銃声が止み、ネロが静かに口を開く。

「あ?何か言ったか?」

急所は外されたもの、大口径の弾丸を同時に二発も食らわされた騎士達は全員、
耳を傾けて挑発するネロに反応する事もできず、
鉄の棺桶となった鎧に包まれながら苦しみ悶えていた。その有り様に「王」は手を叩いて喜んだ。

「ハハハッ!見ろ!あの鎧騎士どもが、あっという間に全滅してしまったぞ!」

ネロはそんな王の笑い声に、怒りの矛先を真っ直ぐ向けた。

「うるせえな糞オヤジ。テメエの口にも詰めてやろうか?」
「ハハッ。このままでは、私も殺されてしまいそうだな…。ビダーシャル!」

ビダーシャルと呼ばれた男が、金色の長髪をなびかせながら、ネロの前に立つ。
中性的な真っ白い肌に、スラリとした体躯。
顔は若いのか年なのか、如何にも年齢不詳といった印象だった。
ネロはブルーローズを構えながら、受け売りの文句を多少アレンジして、
ビダーシャルに向かって吐き捨てる様に言ってやった。

「いいのかオカマ野朗?これから先も、一方的な"殺し合い"ってヤツになるぜ?」

それを言っていた男の顔を不意に思い出すと、ネロの眉間に更にシワが寄った。
クソッ、何で俺の前に現れる中年オヤジは、第一印象がこんな最悪な奴ばっかなんだ!
それから青髪の王が、沈黙を貫くビダーシャルに代わって、ネロに返答した。

「構わぬ。存分にやるがよい」
「ドイツもコイツも余裕たっぷりってか…。気に入らねえな!」

ネロがビダーシャルに狙いを定めて、ブルーローズの引き金を引いた。
銃声は一度しか聞こえなかった。照準もしっかりと前に定めた。
しかし、ビダーシャル目掛けて放たれたブルーローズの弾丸は、
発射されたそのままの速度で、ネロに目掛けて風を切りながら向かってきた。
ネロの頬に熱いものが滴る。
ネロは迫り来る弾丸を、紙一重で避ける事ができた。
そして、ビダーシャルは、穏やかな口調で交渉を始めた。

「異邦の世界から来た蛮人よ。ここは大人しく武器を納めてくれないか?」

その態度はネロを更に逆上させた。

「クソッ!したたかにケンカ売ってんじゃねえ!」

ネロは頬に流れる血を拭い、ブルーローズを納めると、
今度は背中の大剣を左手で軽々と持ち上げ、青い薔薇が咲き乱れる大地に突き刺してみせた。
「レッドクイーン」と呼ばれるその巨大な片刃の剣は、
バイクのアクセルの様なその柄をネロが捻る度に、
轟音を鳴り響かせながら、その刀身を赤い女王の名の如く真っ赤にさせた。
その光景に、王はまたもや興味を注いだ。

「ほうほう。連射できる銃の次は、…炎を吹く剣か!今度の使い魔となる者は、いや面白いな!」
「グダグダ、グダグダ、さっきからウゼエんだよ!コイツが終わったら、次はテメエの番だからな!」
「無駄だ。きっと、それはできないだろう」

ネロはビダーシャルが警告するのも無視し、大量の熱を帯びたレッド・クイーンを肩に担いで、
ビダーシャルに叫びながら勢いよく突進した。

「ブッ壊れろ!!」

レッドクイーンの噴射機構に内装された推進剤が爆発し、
その刃が爆炎を撒き散らしながらビダーシャルに迫った。
しかし、ネロはビダーシャルを斬り付ける事もできず、ブルーローズの弾丸と同様に、
自身も吹き飛ばされてしまった。
気が付けばネロは、ビダーシャルから10メイル程の距離まで吹っ飛び、
「何が起きたのが分からない」といった顔で唖然としながら、舞い散るラ・ガリアの花びらの中、
前衛的なポーズで倒れていた。
その格好が面白かったのか、王はネロを指差しながら笑っていた。

「ハッハッハッハ!凄いぞ!見ろ、あのザマを!アレがどのような威力だったかを、見事に体現しているではないか!」

その笑い声が、ネロの最後の琴線に触れた。
ネロの頭の中で何かが切れた様な音がしたのと同時に、形振り構わずその右手で、
ビダーシャルに掴みかかろうとした。

「ウガァアアアア!!!」
「ッ!?」

どんな攻撃がこようと無表情だったビダーシャルが、今度は目を大きく開き、驚愕の表情を浮かべた。
「"アレ"は何だ?」大いなる意思は何も答えてくれない。
そしてビダーシャルは、ネロの右腕から、何かドス黒い気配を感じ取った。
死の危険を察知したビダーシャルは、咄嗟に精霊の力を用いて騎士達の鎧を剥がし、
鋼鉄の拳を作ってネロに向けて飛ばした。
しかしネロの右腕は、鋼鉄の拳を握り潰し、先住の魔法である反射の壁を引き裂き、
ビダーシャルの首を掴んだ。
それから、エルフが苦しみの表情を浮かべながら、
禍々しい姿を露わにした右腕に持ち上げられている光景が、王の目に飛び込んだ。

「おお…、これは…」
「グッ…悪魔め…!」

異形の光を放つその右腕に、ビダーシャルと王は恐怖と羨望の念を其々抱いた。
腕の持ち主であるネロは、ビダーシャルの首を締め上げながら、王を真っ直ぐ睨み付け、
最後の警告だと言わんばかりに進言した。

「いい加減ブチ切れそうなんだよ…。コイツが死体になるまでに待ってやる。その間にお祈りでも捧げてろ!」

王が、ゆっくりと答える

「構わんぞ。…と、言いたい所だが、その男にはまだ死なれては困るのだ。離してくれないか?」
「ああ?どのツラ下げて物言ってやがる?」

ネロの怒りは収まらない。
それから王は観念したのか、ネロの要求に応え、頭を深く下げて謝罪してみせた。

「分かった。お前には、このジョゼフ一世自らが、これまでの非礼を詫びよう。それで許してはくれまいか?」

それを聞いて、少しばかり頭を冷やしたネロは、苦しむビダーシャルを無造作に投げ捨てた。

「ガッ…!」

勢いよく大地に叩き付けられたビダーシャルは、息も絶え絶えにその場で咳き込む。
ネロはその様子を見ながら、荒い呼吸をどうにか落ち着かせて、自分に向かって頭を下げて見せているジョゼフ王に詰め寄った。

「ちゃんと説明が有るんだろうな?」
「勿論だ」

顔を上げたジョゼフ王は、反省の色も無い、無邪気な子供の様な笑顔でそう言った。


新着情報

取得中です。