あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無を担う女、文珠を使う男-05


第5珠 ~意外なる伏兵~

横島とギーシュが決闘を始めるその少し前。

トリステイン魔法学院の学院長であるオスマンは、召喚の儀の監督責任者であったコルベールと密談を交わしていた。
コルベールが調べた所によると、ルイズが召喚した使い魔に刻まれているルーンは、どうやら「ガンダールヴ」の物らしい。
ガンダールヴとは、始祖ブリミルが従えていた4体の使い魔のうちの1体であり、あらゆる武器を使いこなす事が出来たと言われている。
今となっては伝説の存在であり、記録もほとんどが失われている。今述べた事でさえ、子供向けのおとぎ話くらいにしか載っていない、怪しい話なのだ。

「まだまだ分かっている事も少ないですが、早急に報告書を作成して王宮に連絡するべきかと」
「分かっている事をまとめるのは大いに結構。じゃが王宮への報告は控えるべきじゃとわしは思うがね」
「は? と言いますと?」
「彼の事はわしも幾らかは聞いておる。ミス・ヴァリエールについては、わしも気にかけておったからな。それによると、彼は少々変わっているとはいえ、普通の人間だったと言う事じゃが?」
「で、ですが現に彼は不思議な力を用いて武具を召喚? しております」
「その報告も聞いておる。じゃが、彼はコントラクト・サーヴァントをする前からその力が使えたのじゃろ? ならばその力は、使い魔になって手に入れた物ではあるまい」

ガンダールヴであるかどうかはまだ判断できない、と話を続けるオスマン。
曰く、メイジの実力と使い魔の実力は表裏一体。ミス・ヴァリエールが伝説と呼ばれる使い魔を召喚出来るか、と考えると疑問に思わざるを得ない。
曰く、彼はそもそも伝説どころか、使い魔である事すら信じにくい。忠誠心も無さそうであり、ルーンが刻まれているがために、辛うじて使い魔と判断しているだけである。
さらにコルベールにとって意外だったのは、仮に本物だったとしても、王宮への報告はするべきではない、という話だった。

「彼のような者が伝説じゃったと知れてみい。威厳もへったくれも無くなってしまうわ」
「は、はぁ」
「と言うのは建前じゃ。万が一王宮がガンダールヴなんぞ手に入れたら、愚かな真似をするに決まっておるわい。
君なら良く分かると思うがの。わしはミス・ヴァリエールから使い魔を取り上げるような事はしたくないのじゃ」

結局、件の使い魔については、独自に調査を行い、問題が発見されるまではオスマンとコルベールの二人だけの秘密とする事になった。
そうして、コルベールがオスマンの配慮にいたく感心しているところ、学院長室のドアがノックされた。

「ロングビルです。学院長、お伝えしたい事があるのですが…」

やってきたのは、横島から決闘の事を聞いたロングビルだった。
手短に決闘の件を聞かされたオスマンは、「どうせ大した事にはならんじゃろ。放っておけ」と言い放った。

「何せ、コルベール君からの報告の通りなら、使い魔の彼はドットメイジ程度の魔法ではどうにもならなさそうじゃしな。のう、コルベールや」
「その通りですぞ! 何せ彼はガンダ…」

ロングビルに自分の発見を伝えたく、先ほど決めたばかりの事を思いっきり無視した話をはじめようとするコルベール。
美人である上に独身であるロングビルと、何とかお近づきになりたいが故の事だったが、いくら何でもこれは無い。オスマンがあわてて会話を遮る。

「君は何を言っているのかね。わしが言っているのは、召喚の儀の際に確認された、彼の異常な生命力の事じゃよ」
「あの… ミスタ・コルベール? 今、何を言われようとなさったんです?」

オスマンとコルベールの態度に不審を感じたロングビルがそれを聞き出そうとするが、その目論見は次のオスマンの言葉であっけなく崩れてしまう。

「あー、ミス・ロングビルや。そんな事よりもっと大切な事があるんじゃが」
「え? 何でしょうか?」
「前々から言うておる事じゃが、たまには黒もいいもんじゃぞ」

一瞬、ぽかんとした表情をしたロングビルだったが、素早く辺り(主に足元)を見回す。
1匹のハツカネズミが逃げ去っていくのを確認し、オスマンが話の最中にも関わらず、使い魔を使って自分のスカートの中を覗いていた事に気づく。

「が、学院長!? 今度やったら許さないって言いましたわよね!!」

そう言いつつ、ちょうど手に触れる位置にあった飾り皿を思いっきりオスマンに向けて投げつけ、「ヴェストリの広場へ行ってきます」と出て行ってしまった。
ぶつけられた箇所をさすりつつ、魔法で割れた飾り皿を元に戻すオスマン。

「どうせ減るもんでもなし、そんなに怒らなくたっていいとは思わんかね、コルベール君」
「学院長、あなたは毎日こんな事やってるんですか」

コルベールは、「同意を求められても困ります」というような表情をしている。

「まぁちょうどいい機会じゃ。少し様子を覗いてみるとしようかね。君も興味があるじゃろう。
彼の能力の確認が出来るじゃろうし、ひょっとすると、ガンダールヴかどうかの判断の足しにもなるやもしれんな」

そう言って、オスマンはヴェストリの広場を確認する為に、遠見の鏡を準備したのだった。


一方、現場のヴェストリの広場。
3体のワルキューレを相手に横島が逃げ回っていた。

「いやいやいや、手加減してくれていいから、いや、ほんと」

軽口を言いながらも、頭の中は焦りで一杯になっている。
何合か斬り合って分かった事は、結局今の自分の霊波刀(ハンズ・オブ・グローリー)ではワルキューレを壊すのに時間がかかりすぎる、という事だ。
壊す事に注意を回すと、他の2体への対処がおろそかになる。やはり、もう少し近づいた上で、何とか隙を作って杖を奪うしかないか…
と思っていると、都合の良い事にワルキューレ達の動きが急に鈍った。

チャンス!?

とギーシュに目を向けると、詠唱と共に杖を振っている。
通算5度目の『錬金』。対象は… まさに横島の足元にある1枚の薔薇の花びら。

(た、頼むぞー 効いてくれ!!)

その次の瞬間、ギーシュ・横島ともに掛け声をあげる。

「『錬金』!」
「サイキック・猫だまし!!」

横島の足元よりさらなるワルキューレが生成されるとともに、横島の周囲を強烈な光が包み込む。
手に霊力を纏わせた状態で柏手をうつ、ハンズ・オブ・グローリーの応用技だ。
本来柏手とは場を清める為に行う物であるが、横島はこれを主に目潰し技として使っている。
柏手の音と共に、手に纏った霊力が拡散するのだが、その際に発光する現象を利用するのだ。霊力を使っている為、視覚の代わりに霊覚(霊的な感覚)を使っている相手にも効果がある。
唯一の懸念は、霊的発光現象にすら影響されない視覚をワルキューレ達が持っている事だったが…
幸いにもそれは杞憂だったようで、ワルキューレ達の動きは、まるで目が見えていないかのようにバラバラになっている。

「今だっ! ハンズ・オブ・グローリー 手甲バージョン!!」

ワルキューレ達が戸惑っている隙に、ギーシュへ向かって走りながら、再びハンズ・オブ・グローリーを使う。
だがその形状は刀剣ではなく、右手全体を覆う手甲のようなものであった。
それを確認したギーシュが、自分の側へワルキューレを呼び出そうとしていたが…

「伸びろー!!」

霊力で出来た指部分が、まるで触手のようにギーシュへ向かって伸びる。

「う、うわぁ!! 化け物っ」

触手のような物が横島の右手から生えているのを見たギーシュは、今までの決闘を台無しにするような情けない声をあげて、ぺたりと座り込んでしまった。

「だーっはっはっは。どうだ怖いか…ってちょっと待てっ! 化け物呼ばわりは無いだろ!? これは俺が初めてまともに使えるようになった由緒ある霊能なんだぞ!!」

失礼な事を言うギーシュに、指をうねうねさせながら近づく横島。
がたがた震えながら後ずさるギーシュ。

「そ、そんなの嘘だ! レイノウだか何だか知らないが、そんなおぞましい姿した奴の事なんか信じられるか!!」

パニックになりかけているギーシュの様子を見て、精神にダメージを負う横島。
仕方がないので、ハンズ・オブ・グローリーを解除しようとしたその時、意外な人物が現れた。

「あなた達、いつの間にそういう趣味に目覚めたの… って、フレイム!!」

声の主は、キュルケだった。「キュルケさん、わざわざ俺の為に」と飛び掛ってきた横島の相手をフレイムに任せた彼女は、まだ話が出来そうなギーシュから事情を聞く事にした。

「ふーん。ルイズの使い魔と決闘ねぇ。私はてっきり、あなた達がそういう趣味に目覚めたのだと思ったわよ」
「き、君は何を言っているのだね。そんな事あるわけがないだろう」
「まぁ… それもそうね。さすがに私もあれはどうかと思うわ」

キュルケが横島へちらりと視線を向けると、フレイムの炎に焼かれて煤だらけで倒れている横島がいた。

「そういえば、君はなんでここにやって来たんだい? こんな所、滅多に人も来ないと思っていたんだが」
「さっき爆発音が聞こえたのよね。てっきりルイズが魔法の練習でもしてるのかと思って」
「君も飽きないねぇ。毎日のようにルイズの事をからかってるのは知ってるけど、わざわざこんな所まで出張ってくるなんて」

ギーシュの言葉を聞き、少し沈んだ顔になるキュルケ。

「それなんだけどね。今日はちょっとそういう気分じゃないのよ。あんなルイズからかったって全然面白くないわ。
折角使い魔を呼び出してメイジとして歩き出したと思ったのに、その使い魔をいらない、と言い出すんですもの、もうダメかもしれないわね」
「それは僕も聞いたがね、言うほど悪い使い魔じゃないんじゃないかな」

そう言って決闘前のやり取りから含めて、説明するギーシュ。

「本当にそんな事を言ってたの? 全然そうは見えないけど」
「まぁ何だかんだ言って、彼も使い魔だって事だと思うよ。それなりに腕も立つみたいだしね。正直言って、ワルキューレを合計5体も投入してケリが付かないとは思わなかった」
「でも、本心でそう思ってるなら、ルイズもあんな事言わないと思うんだけど…」
「どうせルイズの事だから、意思疎通も出来てないんじゃないか?
彼女の性格なら、決闘なんて普通は認めないだろうに、ここに現れる気配もないしね。
視覚共有だって出来てないんだろう」
「それは十分あるかもね…」

二人が話していると、そこへロングビルがやってきた。
横島については自分が医務室へ運ぶから、二人には授業へ向かうように、とロングビルが言う。
言われてみれば、そろそろお昼休みも終わる。二人は素直に横島の事をロングビルに任せると、授業の準備へと向かっていった。

ちなみに、途中から決闘の様子を見ていた学院長室では、オスマンとコルベールががっかりしていた。
ドットメイジの作るゴーレムに追い込まれ、ピンチを抜け出したのは武器の力ではない。あげく、目標を放りだして女生徒にモーションをかける。
ただの平民でない事は確かで、その上召喚主がきちんと手綱を取れていないだけに、そのままにしておくわけにもいかない。
問題点を挙げてみて、改めて深くため息をつく二人だった。


新着情報

取得中です。