あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの夢幻竜-29


ギーシュ・ド・グラモンは何よりも先ず、名誉を重んじる男だ。
父親からよく聞かされている『命を惜しむな。名を惜しめ。』の言葉を胸に、如何なる時も貴族として良く振舞うようにしていた。
グラモン家の末っ子とはいえ、古き時代から軍事面で王室と親交のあった名家の出身という看板を背負うのであれば、そうせざるを得なかったと言える。
だから、アンリエッタ王女から賜った(実際は首を突っ込んだ)任務を、必ずや遂行させると息巻いていた。
例え、それにメイジとしての実力がついて行かなくても、である。
一方、キュルケは一種の退屈凌ぎで一行に途中からついて来た。
ラ・ロシェールの市外に着くまでの間に、ワルドから任務の話を聞いた時は流石に身が締まる様な思いをしたが、軍人としての教育も、魔法使い同士の戦いにおける実力も伴っているのと、友人でもあるタバサがいる事から直ぐに元の気楽な調子に戻った。
任務に関しても、首尾良く遂行する事が出来れば、直接任されたルイズの悔しがる表情も久方振りに見れそうだったからだ。
尤も、そういった顔をしているルイズを弄るのもまた、一種の楽しみでもあるわけだ。
最近周りにはいつも影のように寄り添う(キュルケがそういう印象を持っている)生真面目な使い魔がいるために、そんな機会が無かったのが余計にその楽しみへの枯渇感を煽っていた。
そんなものだから、ワルドから策の一つとしてルイズがラティアスと共に、斥候として先にアルビオンへ行った事を聞かされた時、二人は人目も憚らず酒場で一頻り叫んで唖然とした。
動じなかったのはその時後ろで黙々と食事を進めていたタバサとモンモランシーぐらいだ。
モンモランシーに関しては元々、この一件は予期せずして、しかも香水の一件で破局したギーシュによって半ば強引に巻き込まれたものであった為に、外野がどう動こうとそれが策の一つであるのであれば、慌てる必要は無いと考えていた。
そもそも戦い自体をあまり好まない彼女としては、なるべく無難な道を選び取って任務を遂行出来るなら、それ以上の物は何も望まなかった。
タバサに関しては相変わらずの無口と無表情ぶりを良い意味で発揮しつつ、テーブルの上に置かれた鳥の丸焼きと格闘していた。
ワルドは二人を宥めつつ気さくに「心配する事は無い」と言ってはいたが、要するに一触即発の両陣営の中を先陣切って様子を見に行けと言う事である。
こういう場面ではそういう者が一人は出ないといけないというのは、ギーシュ、キュルケの両名共に分かっていたつもりだったが、いざ自分の知人からそういう役目を行う者が出るとなると、体に走る緊張感には只ならぬ物があった。
その後は特に何が起きるというわけでも無く、5人は食事を取って眠る事となった。

翌朝、まだ朝日が昇って直ぐの頃、モンモランシーはいつもより早く目を覚ました。
大き目のベッドから身を起こし、服を着替えた彼女は顔を洗う為に部屋を出る。
すると反対の方向からキュルケが大きな生欠伸をしながらやって来た。

「お早う。随分眠そうだけどよく眠れたの?」
「ええ。睡眠はたっぷり取らないと美容に悪いのよ~。そう言うそっちはどう?愛しの彼が居なくてぐっすり眠れなかったとか?」
「馬鹿言わないで。愛しの彼ですって?私はあいつが持ち込んだ厄介事に巻き込まれただけなのよ。寂しくも何ともないわ。」

キュルケの冷やかしに、むすっとした表情で受け答えるモンモランシー。
しかしその表情には至極僅かばかりではあるが、「自分の元に帰って来て欲しい」という感情を読み取る事が出来た。

「あなたもルイズと一緒で素直じゃないのねえ。少しくらい縒りを戻す気があるんなら本人に直接言えばいいのに。」
「な、無いわよ、そんなもの!それにあんなゼロのルイズと一緒にしないでよ!それにしても、どうせならギーシュが斥候でアルビオンに行った方が良かったくらいだわ!」
「……あなた、本当にそう思ってる?」
「も、勿論よ!あの色ボケったら、女の子と見れば誰にでも言い寄ろうとするんだから……何よ、疑ってるの?」
「別に?ただあなたの反応が見たかっただけよ。じゃ、あたし先に下に行っとくからね。」
底意地が悪いのね、とモンモランシーは思う。
キュルケはそんな視線などまるで気にも留めず、すたすたと階下に向かって歩いていった。
その場に残されたモンモランシーもそのまま水汲み場まで行こうとする。
が、途中でギーシュのいる部屋を通りがかった時、彼女はその扉をそっと開けた。
中では当の彼が大口を開けながら未だに眠っていた。
さっきは突っかかるような物言いをしてしまうほどギーシュをこき下ろしたが今は違う。
正直、彼に戻って来て欲しかった。
本格的に彼が自分の元に戻ってくるのがまだずっと先になりそうなのは、彼女自身よく分かっていた。
だが、彼女としてはそれでも良かった。
例え何日、何週間、何ヶ月経とうとも……
そんな時、今度はワルドが階段を昇ってギーシュの部屋までやって来た。
何かあったのか、やけに真剣な顔をしている。

「お早う。君はもう起きていたようだな。」
「お早う御座います。あのう……何かあったんですか?」
「うむ。先程桟橋に行って、フネの船長と出航に関しての話をつけてきた。朝食を取ったら直ぐに出発する事になるだろう。」
「ええっ?!」

急と言えば急な予定変更だ。
出発は明日の朝のはずではなかったのか?
モンモランシーは胸に出てきた疑問をそのまま口にする。

「でも『スヴェル』の月夜は今夜ですよ!まだアルビオンはこちらに一番近い位置にいないのでは?」
「その事なら安心したまえ。足りない分の風石はこちらで調達出来た。さ、ギーシュ君を起こさないといけないんでね。そこを少しどいてくれるかな?」

言われてモンモランシーは、自分が部屋の出入り口をと塞いでいた事に気付く。
慌てて退くと、ワルドは小さく『有り難う』と言って部屋の中に入っていった。
その直ぐ後にモンモランシーは水汲み場に向かって再び歩き始める。
しかし、顔を洗う理由が先程とは違い一つ増えていた。

「いやああああっっっ!!寝坊しちゃったぁぁっっ!!」

スカボローの中心近くにある小奇麗な宿。
その一室から爆発の様なルイズの悲鳴が上がった。
朝、日の出と共に出発するとあれほど自分に言い聞かせたにも拘らず、時刻は既に7時を回っていたからだ。
外では既に多くの人達が行き交っている。
今からニューカッスルに向かうとすれば、
ベッド脇を見ると、あれだけの大声を出したにも拘らず、いつもは起こす側に回っているラティアスが気持ち良さげにすやすやと眠っている。
その様子を見て一瞬、何で起こしてくれなかったのよ……と怒鳴りそうになったが、考えてみれば彼女はへとへとになるほど何時間もかけて、昨日の夜自分をアルビオンまで運んでくれたのだ。
しかも深夜でもやっている、それなりの格式を持った宿を探すのに、スカボロー中を連れ回したので食事を取るのも眠るのも大分遅くなってしまった。
起こすべきか。それとももう少し、あと一時間だけでも休ませておくべきか。
個人的には後者を選びたかったが、のんびりしている事は出来ない。
仕方なく、ラティアスを起こそうとベッドから身を起こした時だった。
途端に外が騒がしくなる。
何事かと思って閉めていたレースのカーテンを開けてそっと外を見ると、貴族派の一個中隊が街路を整然と通っていくところだった。
また、隊を形成しているのはなにも貴族出身の者だけではない。
一目で傭兵だと分かる者もいれば、鎖に繋がれた鬼や獣人などの亜人もいる。
幻獣に跨った兵士さえもいた。
慌ててカーテンを閉めたルイズの背に冷たい汗が流れる。
この調子なら貴族派は、数日以内にニューカッスルへ向けて総攻撃を行うだろう。
そうなったら全てがお終いだ。
アンリエッタが思い描いた最悪のシナリオに一直線となる。

「ラティアス!ラティアス、起きて!」

ルイズは未だ呑気に眠っているラティアスを揺り起こす。
ラティアスはやはりまだ眠り足りないのかのっそりと目覚め、寝惚け眼とはっきりと回らない舌でルイズに質問する。

「んー、にゃにごとでしゅか?ごしゅじんしゃまぁ?」
「寝惚けてる場合じゃないわよ。今外を貴族派の兵士達が通って行ったの!急いでニューカッスルに行かないと、貴族派の総攻撃が始まってしまうわ!
ラティアス!まだ疲れているとは思うけどお願い!全速力で私をニューカッスルまで連れて行って!」
「ふぇっ?!わ、分かりましたぁっ!!」

ラティアスは返事一つで眠気を無理矢理すっ飛ばす。
御主人様の命令ならば、眠いだのなんだのとは言ってられない。
先ず、ルイズの着替えを始めとする身支度を手伝う。
それが終わったルイズは一旦階下へ降り、主人に宿代を払った。
朝食に関してはいちいち食べている時間が無いので、思い切って省く事にした。
再びルイズが部屋に戻ってきた時、ラティアスは両手で器用に窓を開けて、主人に出発を促した。

「さあ、行きましょう!御主人様!」


その頃、アルビオン大陸の端に位置するニューカッスル城のホールでは兵士達の召集が行われていた。
召集とは言っても数は300人程度とたかが知れている。
玉砕の覚悟でもしているのだろうか、皆思い思いの事を喋っていた。

「故郷には誰かいるのか?」 「母親と妻と生まれて間もない娘がいるよ。」
「最後に会ったのは?」 「丁度2~3ヶ月くらい前かな?寂しがっているだろうからこの戦いが終わったら直ぐにでも会ってやりたいよ。」

「今日も睨み合いで終わっちまうのかねえ?」 「終わるさ。またこっちに戻って来てお前さんと一杯やる事になるだろうよ。」

「お前、新兵上がりだろ?大丈夫か?」 「大丈夫ですよ!ウチの隊長はあと3人竜騎士を倒したら勲章物だって言ってるような人ですから!」

その様子を遠くから一人の凛々しい青年が見つめていた。
彼こそがアルビオン王家の皇太子、ウェールズ・テューダーその人であった。
今、王家の為に散らんとする兵士達の姿を見る彼の心境は非常に複雑だった。
彼等も、そしてレコン・キスタに与し自分達に向けて刃を向ける者達も、元を正せば同じ国に住む大切な民達である。
穿った考えをするならば、心ならずしてレコン・キスタに与する者達もいるだろう。
そんな彼らを今から討ちに行くというのは、少々心が揺れる事でもあった。
そして思う。自分は自らの地位を自覚するようになった頃から、父である国王ジェームズ1世と共に常に民の為に行動してきたつもりだ。
一体今まで行ってきた執政の何が不味かったのだろうか。
そんな事を考えていると、老メイジのパリーが暗めな顔をしてやって来た。

「どうしたのだ、パリー?」
「はっ!殿下にお伝えせねばならぬ事が御座います。少々申し上げにくい事ではございますが……」
「気遣いはいい。続けてくれ。」
「分かりました。では……先程から『王党派の一兵士として戦う』という若者達が、こちらに来ているのです。」
「それは、一体どういう者達だ?」
「はい、それが……召集年齢を満たしていない者達ばかりなのです。各々に武器を持っていつでも立ち上がる覚悟は出来ていると豪語しているのです。それも平民貴族関係なく。殿下。如何致しましょうか?」

召集年齢を満たしていない者達、つまりは年端も行かない少年少女達という事だ。
自陣が窮地に追い込まれているからといって、戦が何たるかも知らない少年少女達を戦場に出すわけにはいかない。
大体、年若い女や子供を国防という名目を利用して駆り出すなど、軍事作戦行動としては下の下ではないか。
ここで名誉の敗北をして命を落とすのは、今ホールにいる者達と自分だけで十分だ。
そう考えたウェールズはパリーに対し、静かに答えた。

「パリー。私から彼等に伝えてくれ。『諸君等の揺るがぬ忠誠、そして比類無き勇には深く感謝する。しかし、此度の戦において鮮やかに散るのは我々だけで良い。諸君等は直ちに避難し、明日へとその命を繋いでくれ。』と……」
「!……かしこまりました。殿下。」

パリーはそう言うと、一礼をしてその場を後にしていった。
総攻撃はいつ起きてもおかしくない。
後何回その姿を見れるだろうかと思いつつ、ウェールズは兵士達の言葉に耳を傾けるのであった。

ラティアスはニューカッスルまでの道中を、死に物狂いで飛び続ける。
背中からルイズがあまりの速さに喚く声が聞こえてきたが、それすらも無視した。
折角ワルドが自分達を斥候として先に行かせたのに、その任を果たせないのでは意味が無い。
朝食と昼食を食べていない事も気にかけず、ただただルイズから指示された方向に向かって飛び続ける。
そうしてかれこれもう5時間近くは飛んでいるのではないかと思われたその時だった。
目の前に白く美しい外壁を持った城が姿を現した。

「見えたわ!あれがニューカッスルよ!」

組み合わされた尖塔が目立つその姿は、名城と言っても差し支えないだろう。
いかにも御伽噺に出てきそうな外観にラティアスはほうっと溜め息を吐いてしまう。
そんな時、背中からルイズのとびきり嬉しそうな声が聞こえて来た。

「こんな短時間でよくやったじゃない、ラティアス!」

その言葉にラティアスの頬がほんのり赤く染まる。
ルイズに自ら行った事で褒めてもらう度にラティアスは、自分の居場所がまた一つ確立していくかのように思えた。
その時だった。突然城門の右方が轟音を立てて爆発する。
そのあまりの音と衝撃の波にラティアスは一瞬バランスを崩してしまった。

「きゃああっっ!」
「ひゃああっ!」

高度がガクンと下がり、ルイズは危うくラティアスの背中から落ちそうになる。
しかし、すんでのところで彼女は姿勢を持ち直す事に成功した。
徐々に黒煙が晴れていくと、砲撃を受けたその場所は酷く抉り取られていた。
一体何が起こったのか。
それはラティアス達がいる場所より、斜め下方向で白煙を上げている砲門が雄弁に語っていた。

「ああっ、そんな……!!」
「始まってしまったんですか……」

そう。ルイズが予想していたよりも早く、そして自分達がニューカッスルに着く前に、総攻撃の狼煙は上げられたのであった。


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