あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Zero ed una bambola   ゼロと人形-34


 キュルケは暇を持て余していた。暇つぶしにルイズでもからかおうと考えたがその姿は見えない。仕方がないので何か面白いものはないかと学院をうろついていた。
 ふらふら歩いていると彼女の目に珍しい組み合わせが目に付いた。タバサとアンジェリカである。
 それを目にした瞬間、キュルケは目を輝かせ二人に歩み寄る。

「珍しい組み合わせじゃない。何してるのかしら?」

 キュルケは面白いものを見つけたと言わんばかりの笑顔で、タバサの背後から頭越しに彼女の手に持ってる紙切れを奪い取った。

「えーと……これ何?」

 これは何の冗談かと思わずタバサに聞く。

「ルイズの書置き」

 タバサは端的に答えた。その返答にキュルケは絶句する。

「読んであげて」
「え?」

誰にとはキュルケは聞かない。目の前のアンジェリカと目が合った。彼女はそれに気づくとニコリと笑った。キュルケはゆっくりとその文字を読み上げる。


アンジェリカへ

 しばらくの間、ここを留守にします。姫殿下より承った大切な用事なのであなたは連れて行けません。
 いつ戻れるかはわかりません。わたしがいない間、体調が悪かったり何かあったら学院長を頼ってください。今回の件は学院長には話が通っているはずです。
 それからアルビオンに行っていることは他の誰にも言わないように。特にキュルケとかには言っちゃはダメだからね。
  ちゃんといい子で待ってるのよ。


 書置きを読み上げたキュルケが顔を上げアンジェリカの様子を窺う。そこには顔に不安を浮かべ、落ち着きを失ったアンジェリカの姿があった。
 キュルケにしてみればアンジェリカをこのままにしておくのは面白くない。ルイズの代わりに彼女の世話をするのもそれはそれで面白そうなのだがそれよりも面白いことが思い浮かんだ。

「追いかけましょう」

 唐突にそう宣言するキュルケ。もはや関係ないとその場から立ち去ろうとするタバサの襟首をつかんだ。

「普通に馬で追いかけたんじゃ絶対に追いつけないわよねぇー」

 もったいぶった言い方をするキュルケにタバサは眉をひそめ、キュルケを見上げる。まるで本題を早く言えと言わんばかりに。
 それを察したキュルケは再度告げる。

「だから、馬じゃ追いつけないのよ」
「……」

 それがどうしたとタバサの視線が雄弁に語る。キュルケは溜息を一つ吐いた。相変わらず察しが悪いこの友人に少し呆れてしまう。
 アンジェリカのほうもキュルケが何を言いたいのか理解できていない様子だ。

「馬じゃ追いつけないの」
「それで?」

 さすがに、キュルケが何を言わんとしているのかタバサは分かっているのであろうが、あえてキュルケに言葉の続きを促しているようでもある。

「だーかーらー、あなたのシルフィードなら追いつけるでしょう?」

 だから乗せてねとこれで何度目か知れないキュルケのお願い。それにタバサは短く、一言で返す。

「準備」
「え?」

 それ以上何も言わず黙って窓に向かい口笛を吹き、己の使い魔、シルフィードを呼ぶタバサ。思わずキュルケは抱きついた。 

「ありがとう!だからあなたって好きよ」

 照れ隠しの表れか、タバサは抱きつくキュルケを乱暴に引っぺがし、外で待っていると告げた。
 二人のやり取りを不思議そうに見つめていたアンジェリカであった。キュルケはそんなアンジェリカを連れて、部屋へ外出の準備をしに戻るのであった。



Zero ed una bambola   ゼロと人形



 シルフィードの背に乗った三人は空を飛んでいた。目的地も分からぬままやみくもに飛んでいると言うわけでない。
 タバサはルイズがどこへ行ったのか、大体の見当はつけていた。ただそれは彼女自身が確信を持っているわけではないため、先ほどからキュルケが何度も確認をしてくる。
 何度目か分からないキュルケの問いかけにタバサは適当に答え、視線を手元の本へと落とした。
 その後も空を飛ぶシルフィードの背でタバサは本を読み、キュルケは一方的に御喋りをし、アンジェリカは眼下の景色に目を奪われていた。その手に白い布をかぶせた棒状の何かを持ちながら。
 しばらくするとタバサは本を読むのを止め、キュルケたちに一言降りると告げ、シルフィードをゆっくりと降下させ始る。
 彼女たちが降り立った先には一頭の馬がいたのだ。その馬はどこかで見覚えがある。キュルケがそう思い考えに耽っているとシルフィードが一言鳴き、馬もそれに答えるように一声鳴いた。
 キュルケがその馬が学院で見かけた馬であると結論付けた時には、タバサは馬の手綱を牽き馬を何処かへ連れて行った。
 それに釣られキュルケはシルフィードの背から降り、その行動を見守った。

「お行き」

 短くタバサは呟くと馬の尻を軽く叩いた。馬は振り返ることなく学院の方向へと走り去っていった。
 走り出した馬を見届けたタバサはキュルケを再びシルフィードの背に乗るよう促す。
 再びシルフィード空へと舞い上がる。タバサは何やらシルフィードに指示を与える。頭を杖で軽く小突き、行く先を示したのだ。

「ねぇ、あっちは確かラ・ロシェールよね? なんであっちに行くの?」

 キュルケが疑問をぶつけた。それも当然である。先ほどのタバサの行動からどうしてラ・シェールへ行くなどという理由が分かるものか。

「聞いた」
「は?」

 意味が分からない。聞いたと言われてもあそこには馬以外に誰もいないのだから。キュルケが間抜けな声をあげたのも、ある意味当然である。
 聞いた……つまりタバサは馬に聞いたとでもいうのだろうか。ありえない。まさかタバサは何か悪いものでも食べてしまったのだろうかとキュルケは本気で悩み始めた。

「お馬さんがそう言ってたんですか?」

 これまで景色を楽しそうに眺めていたアンジェリカが唐突に口を開いた。キュルケは馬と人間が話せるわけがないと口を開こうとした瞬間、彼女は見てしまった。タバサが首肯するのを…。
 キュルケは混乱する。馬と人間が話せるはずがない……それなのにタバサは馬と話をしたという。
 何ということだ。一体何が彼女をこうしてしまったのだろうか。果たして医者に彼女の頭を正常に戻すことができるのだろうか。例え彼女がどうなろうとも決して見捨てたりはしない。友達なのだから……。
 一人思考の渦に飲み込まれたキュルケはタバサの言葉を聞き逃していた。

「シルフィードが聞いてくれた」
「そうなんですか。シルフィえらいね」

 アンジェリカに褒められ嬉しいのか、一言鳴いて応えるシルフィード。その声にようやく我に返ったキュルケはタバサを抱きしめた。

「タバサ大丈夫。あたしはあなたの友達よ。ラ・ロシェールには良いお医者さんがいるから診てもらいましょうね?」

 突然抱きしめられたタバサはモガモガと必死にキュルケの抱擁から逃れようとする。しかし、キュルケは決して手放さない。
 アンジェリカはその様子を微笑ましく見守っていた。
 その様子を見ながら彼女は考える……大切な―――さんに自分は抱きしめて貰ったことはあっただろうかと。
 目を閉じ思い出そうと試みるも彼女は思い出すことはできない。大切な楽しいことはいつも忘れてしまうのだ。

「アンジェちゃん大丈夫?」

 未だもがくタバサを抱きしめたままキュルケが心配そうに声をかけてくる。

「はい、大丈夫です。あの、ラ・ロシェールってどんな所ですか」
「ラ・ロシェールがどんな所かですって? いいわ、教えてあげる。あそこはね……っとタバサ逃げないの!」

 キュルケの注意が逸れたのを見逃さず、タバサはようやくキュルケの腕から逃れることができた。

 先ほどに比べ賑やかになった三人。それを落とさぬようシルフィードは気を使いながら、港町ラ・ロシェールへ向かい、風を切って飛び続ける。



Episodio 34

Dove ando`?
あの人はどこへ?


Intermissione



 死を覚悟していた。だが死にたくはなかった。けれども体は動かない。
 泣きたかった。でも泣けなかった。泣く力があればまだ生きていられそうだったのに、もはや泣く気力さえも残ってはいない。
 痛みは無かった。いや正確には痛みなどもう感じられない、感覚が麻痺していたのだ。
 怖かった。死ぬのが怖かった。誰にも看取られぬまま朽ち果てるのが怖かった……。
 会いたかった。大切な家族に会いたかった。
 でも諦めていた。いつかこういう日がくると思っていた。だから仕方がないと半ば諦めていた。
 意識が段々と薄くなってきた。怖い、とても恐ろしい。大声で喚きたくなるほどに恐ろしい。
 脳裏に浮かぶのは妹……テファニアの笑顔。テファテファテファテファテファ……ああ、あの子ががいれば怖くは無い。手を伸ばせばすぐに届きそうなのに……。
 考えることさえも苦痛になってきた。闇が心地よい。このまま身を委ねてしまおうか。そうこのまま眠り、闇に身を任そう……。


 激しい痛みに目を見開けばそこは空だった。背中から感じる生き物の暖かさ。それは何かに運ばれていることを示した。
 『何か』を確かめようと体を起こそうと試みるも激痛により、それは適わない。
 激痛―そう、先ほどまで感じていなかった痛みを感じるのだ。そしてようやく気付く。側に誰かがいることを……そしてその者が彼女に応急処置を施したのだ。

「生きている。私は生きている」

 零れ落ちた言葉と涙。生きている事への安堵。死への恐怖。両者が入り混じった慟哭を彼女を生かした者は黙って見守る。
 ロングビルが落ち着きを取り戻すのにそう長い時間は掛からなかった。そして彼女は己を助けた人間の顔を見ようと体を動かそうと試みた。

「だめ。じっとしてる」

 その行動を制止したのは少女の声、それもどこかで聞き覚えのある声だった。

「あ、あなたは……」

 ロングビルは認識した。いま自分は風竜の背に乗せられているのだと。目の前の眼鏡をかけた少女。ロングビルは相手を知っていた。それもそのはず、彼女を助けたのは学院の生徒、タバサだったのだ。
 驚きのあまりに声が出ない。聞きたいことは幾つもある。何故ここにいるのか。何故自分を助けたのか。何故……。
 幾つもの疑問が頭をよぎる。だがそれが言葉として出ることは無い。タバサはロングビルをじっと見つめ口を開いた。

「あなたには聞きたいことがある」

 それは相手を心配する声ではない。まるで尋問をするかのように硬く、冷たい声。
 それを聞いたロングビルは乾いた笑い声を上げた。タバサは眉を顰めるもそれを無視し、話を続ける。

「質問に答えれば助ける。嘘をついたり答えなかったらここから落とす」

 飴と鞭。彼女には選択肢など残されていない。彼女は生きなければならないのだ。例え泥水を啜ってでも。


 そしてタバサはロングビルに幾つもの質問をぶつける。裏の世界の、彼女が知り得ぬ情報を得るために……病んだ母親を助ける一筋の光を求めて闇を彷徨う。

 妹のために殺す。妹のために生きる。鏡合わせの二人の姉。似ているが似ていない二人の心。血で血を洗う戦いは母を思う少女によって終止符が打たれた。


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