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ゼロの英雄外伝-イザベラ様の大冒険-前編


 ゼロの英雄外伝 イザベラ様の大冒険


 プロローグ

 まず初めに断っておこう。
 この物語はすべて蛇足から出来ていると言う事を。



 イザベラの朝は早い。
 と言ってもイザベラが従妹のように寝起きがいいと言う訳ではない。放っておくとどこぞの侯爵家令嬢のようにいつまでも寝台のなかでぐずぐずとしている。
 では何故イザベラの朝が早いのかと言えば、それはひとえにガリアの王宮に現れた一人の少年のせいであった。
 神の左手、勇者の再来、アルビオンの奇跡。
 このような世界に呼び出され、成り行きで世界を救ってしまって一人の青年――そう、我らが平賀才人である。
 これまで我が侭放題に育てられてきた王女様は、自分のことをまるで妹のように扱ってくる平民の少年が気になって仕方がないのであった。
 それも無理はないのだ。
 彼女はこれまで一人として対等な間柄で付き合ってくれる相手が居なかったのだから。
 “我が侭な王女”でも“簒奪者の娘”でもない、まるで出来の悪い妹のように“イザベラ”個人に接してくれる相手など居なかったのだから。
 そんな相手に寝起きの物凄い顔を見られてからかわれれば、イザベラでなくともこれまでの寝たい時に寝て起きたい時に起きると言う生活を改めるものだろう。
 そう言う訳で、この日もイザベラはこれまでの生活ではとことん縁がなかった気合と根性とそして真夜中から置き出して用意を整えておいた召使及び騎士一同の涙ぐましい努力によって目を覚まし、

「ふぁぁ……」

 再び、寝た。
 困るのは起床を言い付かった侍女たちである。
 起こせば寝起きのイザベラの癇癪を受けて地獄。
 起こさなくても寝坊したイザベラの癇癪を受けてこれまた地獄。
 八方塞であった。
 しかし今日のイザベラ様お目覚め親衛隊が一人、<名前で選んで即採用>のシャルロットちゃん(九歳)には秘策があった。
 シャルロットちゃんはテーブルの上に置かれた木製の箱から金属の嘴が生えた奇妙の物体を手に取ると、その側面のハンドルを回す。
 ぐーるぐると、ぐーるぐると、両親が「オルレアンの姫君のように美しく育ってくれますように」と願いを籠めた割に、イザベラ御付きのストレスのせいで随分と福々しくなってしまったその手で。

「イザベラーイザベラーイザベラー」

 シャルロットちゃんの腕の動きに連動して箱のなかの円盤がくるくると回り、その嘴からまるで鸚鵡のように聞き知った少年の声を吐き出す。
 以前やたらと輝いている人物が作ったもので“蓄音機”と言うらしい。
 本当に不思議な代物だ。
 魔法の力を一切使う事無く動いているのだと聞かされた今でも、シャルロットちゃんには目の前の箱は古のマジックアイテムの類としか思えない。
 それはともかく今はぐーるぐる、である。

「イザベラーデコーイザベラー」

 がばりとイザベラが身を起こす、ぐるりと視線をシャルロットの方へ向けた。

「さっさとお風呂……」
「既に用意が出来ております」

 このまま普段の調子を取り戻されはかなわない、シャルロットを初めとするイザベラ様お目覚め親衛隊一同は寝ぼけ頭のイザベラをプチ・トロワの浴室へと連れて行った。



 ――かぽーん

 イザベラはゆっくりと薔薇の花びらが散らされた浴槽に雪のように白いその裸身を浸す。
 ふわりと香る甘い香りが満腔を満たし、湯の熱さも相俟ってイザベラはぶるりと身を震わせた。

「失礼致します
「ふぁっ」

 侍女の一人が石鹸の泡をたっぷりと含ませた絹布でイザベラの体を擦る。長年王族の体を清めることを生業としてきた些かトウの立った侍女の手の動きはいくらイザベラであろうと抗い難かった。
 ゆるゆると体を擦るその手付きに、思わず声を上げてしまったとしてもしようがない。
 それを誤魔化すようにイザベラは自らの足を磨いていた侍女を足蹴にした。

「下手糞、もういいよ」
「っ!? 申し訳ありません、申し訳ありません!」

 先ほどもイザベラに酷い目に会わされたシャルロットである。
 何度もイザベラの足蹴を受けてきた筋金入りの侍女とは違い、イザベラ御付きとなってまだ間もない彼女は癇癪を起こした王女を前にしてただ平身低頭することしか出来なかった。
 シャルロットちゃんはふるふると震える、これからどのような折檻が行われるのかと言う恐怖に身を強張らせながら、羞恥に頬を染めて。
 だが予想した“躾”はいつまで経っても来なかった。

「上がるよ、用意しな」

 先ほど自分が叱り付けたことを忘れたかのようにイザベラはシャルロットに言いつけた。
 言われたシャルロットちゃんはまるで子犬のように瞳を輝かせ、他の侍女によってバスタオルで体を拭われるイザベラの後ろに付き従う。
 ゆったりと浴室を横切るイザベラの姿はいつもよりもどこか可愛らしくで、シャルロットはガリアの王宮の広がる噂を思い出した。
 それでもまさか、とシャルロットは思うのだ。
 目の前の方に限ってそのようなこと……

「ちょっと、シャルロット! 何やってんだい!」
「は、はい。ただいま!」

 シャルロットちゃんはその声で現実に引き戻された。
 慌てて控えの侍女から銀で出来た櫛を受け取ると、湯を吸ったイザベラの髪にゆっくりと櫛を入れる。
 美しい蒼い髪、きっと自分と同じ名前のオルレアンのお姫様もこんな綺麗な髪をしているのだろう。
 二人の従姉妹に揃って仕えると言うことが、今のシャルロットちゃんの夢だった。
 ――その夢が間も無く叶うことになろうとは、まさか彼女も予想だにしていなかったのだけれども。





 イザベラの手記 1


 サイトがいなくなった。
 あの馬鹿、ご主人様に無断で何処へ行ったんだい! 帰ってきたらたんまりと鞭をくれてやるから……ね……え?
 サイトは、帰っ、た?
 な、なな、何言ってるのさお父さま!
 嘘なんだろ? 冗談なんだろ!? なんとか言え馬鹿親父!
 わたしに内緒でサイトが帰る筈なんかないだろ、そうだよ――帰る筈なんか。

「いい度胸だね、このイザベラ様を舐めるんじゃないよ!」

 そう言ってお忍びの支度を整える、スキルニルに血を垂らし侍女共に平民用の服を……
 ってなんだいこの薄ぎったいなのは、ふざけるんじゃないよこんな襤褸切れ着れる訳がないだろう。
 頭にきた、ほんと頭にきた。
 丁度庭で寝ていたアタラクシアを無理やりどやし付けて叩き起こす。
 ぎろりと睨みつけてくるアタラクシア、ふざけんじゃないよあんたの餌に牛一頭用意してやってんだこんな時くらい役に立ちな!
 愚図る背中に無理やり乗り込む、驚いたことにアタラクシアは抵抗しなかった。

「ったく、今日は厄日だわ」
「五月蝿いね、使い魔が愚痴愚痴言うんじゃないよ!」

 お父さまを締め上げて吐かせたところによると、ロマリアの法王のところに向かったかもしれないとのこと。

「とんだお姫様もいたものね、一度だけよ? スピノザと会わせてくれたお礼に一度だけ付き合ってあげる」

 とっ、とと、飛んだ、飛んだ、飛んだ!
 凄い勢いで地面が遠ざかっていく、足元では侍女にしたシャルロットって娘が慌てている、いい気味だ。
 あのガーゴイルと同じ名前だから侍女にしてやったと言うのに、いつもいつもぼへーとしたこいつの顔は見飽きたところ。
 ――驚く顔が見たかった。

「いいかいシャルロット、あのガーゴイルが来たら適当にスキルニルと口裏合わすんだよ!」

 シャルロットは人形のようにコクコクと首を縦に振る、その姿に遠い郷愁が胸を走り、わたしは思わずくつくつと笑い出していた。

「本当に、気持ち悪い王女だこと」






「さて、イザベラはロマリアに向かったか」

 執務机に腰掛けた長身の美丈夫、ガリア王ジョゼフにはもはや積年の無能王の面影はない。
 右手にパソコン、左手に判子。かつては無能王と誹られたジョゼフが変態的な速度で政を取り仕切るようになったのはそう最近のことではないのだから。
 当初の「あの無能王に任せておいて大丈夫か?」と言う声も近頃はめっきり聞かなくなった。
 挙句オルレアン王弟家の復位と自分の退位後は次の王の座をシャルロット・エレーヌ・オルレアンに譲ると正式に発表して以来、オルレアン公派の暗躍も随分と下火になった。
 アルビオン出兵からあの無能王は人が変わった、それがガリアに満ちる昨今の噂であった。
 ではアルビオンで何があったのか? それを知る者は居ないが酒が入った者たちは皆様々に憶測をこれまでの無能を誹りと共に吐き出すもの。

 曰く、娘に自分と同じ道を歩ませたくなかった。
 曰く、枕元に今は無きシャルル様がアッー!
 曰く、ロリータに目覚めた。

 一部真実っぽいものがあるが、大体噂はこのような感じである。
 付いた渾名をガリアの変態王と言った。
 もっとも、この二つ名は後世行った荒唐無稽ながらも確実に効果のある政策の数々によって“誉れ高き我らの”と言う言葉と共に呼ばれることになるのだが……

「――よく考えたら世界扉開けるなら、聖地行ったほうが早くね?」

 そんなことジョゼフの知る由もなかったのである。

「ジョ、ジョゼフ。お茶が入ったぞ!」

 いや、この微妙に頬を染めながらエプロン姿で手作りの菓子を運んできたエルフなら知っていたかもしれないが……






 サイトの手記 1


 さって一旦日本に帰るにしてもこれと言って手がかりもないしなー。
 ジョゼフのおっさんの話によると虚無に“世界扉”って魔法があって、それを使えば戻れるかもしれんって話だけど。
 ロマリアの法王にいきなり頼みに行ってもなんだがかなー。
 しょうがない、とりあえず此処はトリステインの魔法の学校にでも行ってみるか。
 毎日アタラクシアが行くときついでに連れて行って貰えばいいしな!
 そう思ってアタラクシアに頼んだら色々と愚図っていたけど結局は快諾してくれた、ツンデレと言うものなのかもしれない。
 アタラクシアの背に乗れば魔法学院まであっと言う間だ。
「うっひゃー、すげぇ」
 この間あったルイズとティファニア、あの二人が世界扉の魔法使えるといいなぁ。


 ――と言うのが一週間ほど前




 そんなことは露知らずイザベラは空の人となった。
 向かうは一路ロマリア――の筈だったのだが。
「うへへへ、嬢ちゃんこんな山道でどぉーうしたのかなぁ?」
「いいぜいいぜ、こんな別嬪なら娼館も高く買ってくれらぁ」
 何故こんな場所で山賊に囲まれているのだろうか?
 まぁアタラクシアが散々自らの上で言いたい放題言いまくるイザベラ様に業を煮やして途中で置き捨てて帰ってしまったのが原因なのだが。
「このガリア王ジョゼフの一人娘、イザベラと知っての狼藉かい!」
 そうは言ってもアタラクシアにとっては知った事ではないし、傭兵崩れの野党共からすれば喜ぶだけ。
 先のアルビオン戦でドットからラインへと成長した精神力で応戦するも多勢に無勢である。
 そんな状態でもアタラクシアへの罵詈雑言を叫び続けるのは器が大きいのか小さいのか……
 そんなこんなしている間に、イザベラは傭兵の一人に組み敷かれていた。
「ちょっと、やめ、離さないかい、離せ!」
「ぐへへへ、まずは味見をさせて貰うかぁ」
 べろんと傭兵の酒と肉のカスで汚れた汚臭を放つ舌がイザベラの頬を舐めた。
 それにゾクリとイザベラが身を震わせた瞬間。
「待ちなさい、悪漢共!」

 天地を貫く、高い高い宣誓が響き渡った。





 イザベラの手記 2


 あーもー糞、この程度のチンピラ共に絡まれるなんてほんとついてない!
 あれもこれも全部サイトのせいだ、帰ったらたっぷり鞭をくれてやろう。
 そんなことを考えていたら盗賊の一人が吹き飛んだ、勇者の代理人キィィィィクと叫びながら金髪の女が現れる。
 女はそのまま次の男に狙いを合わせ肩に背負ったでかい両刃の剣でぶっ叩く、ああこりゃあ真っ二つコースだね。

「やれやれ、まったくミス・ライプニッツは荒っぽいね」

 そんなことを言いながら月目の伊達男が颯爽と登場、ちょっと待ちな王女の玉体に気安く触るんじゃないよ!

「こんの、離し……」
「はは、少しばかり大人しくして貰えないかな美しいお嬢さん」

 必死で抵抗するわたしを押さえつけ、天に向かって高く口笛を鳴らす。
 その音に変人女はこちらを振り向いた。

「オッケ、ジュリオ逃げるわ……」

 最後まで言い切ることなく、最初に蹴り飛ばした男の拳が女の後頭部にめり込んだ。
 どうやら浅かったらしい、と言うか男の方が鈍いのか。
 そのまま男は女の足を掴もうとして……

「キィィウィィィィィ!」

 ――突如来襲したワイヴァーンに頭を齧られた。

「何このカオス……」

 わたしは呆然と呟く――外伝に入っても、この作品は相変わらずカオスだった。






「ふぃぃぃ、いいお湯だ」
 その頃スピノザはお風呂に入っていた。
 土から造型し火炎で固め、青銅のギーシュに錬金して貰った学院全員分の食事を一度に作って未だ余るほど大釜になみなみと湯を満たした風呂。
 元居た世界では池を丸々沸かせば魚達まで殺してしまう為滅多に出来なかったこのような風呂も、この世界なら毎日だって入ることができる。
 だからスピノザはこの風呂を気に入っていた。

 ――本当は「シルフィも一緒に入るのねー!」とか「あらあらスピノザさん、せっかくですから御一緒に」とか「こんの馬鹿竜ーーーー!」とかのお風呂イベントもあったのだが、本筋とは関係ない為に割愛する。

 さてそんな風呂で鼻歌すら歌いだしそうなスピノザの視界に恐ろしいものが過ぎった。
 真っ青な空に映える真紅の肌。あれってまさかとスピノザが思った瞬間にはそれはもう目の前に来ていた。
「ア、ア、アアアタラクシア!?」
「ごきげんようスピノザ、ところで何よそれ?」
 端から見ればどう見てもドラゴン鍋である。
「あ、ああ。お風呂、お風呂作ったんだけど……」
 やたらスピノザがどもっているが逆に考えて欲しい、これはサイトも体験したお風呂に入っていたらシエスタも一緒に……のシチュエーションと瓜二つなのだ!
「ふぅん、わたしも一緒に入っていい?」
「い、いいいや、アタラクシアそ、それはちょっと……」
「冗談よ」
 そう言ってアタラクシアは溜息を付く。
「まったくこっちに来てから余計に人間臭くなっちゃって」
 ぶつぶつとアタラクシアの愚痴が続きそうだったので、スピノザはなんとか話の展開を変えようとした。
「ところで今日はどうしたの? アタラクシア」
「ああ、うちの性悪姫がサイトをどうこうと五月蝿いから引取りにね」
 意外と面倒見のいいアタラクシアであった。
「へぇ、その割には背中に誰も見当たらないようだけど」
「あんまりにもキーキー五月蝿いから途中で捨ててきたわ、帰りに拾ってやれば問題ないでしょう? ところであの馬鹿犬は何処にいるのかしら?」
 そう言ってアタラクシアが首を傾げた途端、学院の寮塔の方角から懐かしい懐かしい爆音が響き渡った。




 サイトの手記 2


 ルイズに会った途端感じるなんとなく懐かしい感じ。
 ううん、何故だろう。ルイズに声を掛けられると逆らえないと言うか、思わず身構えてしまうと言うか。
 具体的には鞭が飛んできそうって言うか、うんちょっと具体的過ぎじゃね?
 それはルイズも同じなのかなんとなく困惑混じりの目で俺を見詰めている。
「ところで世界扉の魔法って無理なのか?」
「無理よ、あの時以来そもそも爆発すら出来なくなったんだもの」
 ルイズの声は寂しげで悲しげで、そして誇らしげだった。
「なんだよそれ、なんとかならないのか?」
「無理ね、何度も試したみたもの」
「そっか……」
 そう言ってみたけど残念そうなトーンは声に滲んじまったのか、ルイズは慌てて俺のことを見た。
「で、でももう一回くらい試してあげるわ。感謝なさい!」
「あ、ああ。あんがとな」
 そう言ってルイズは懐から取り出した杖を握り締め、詠唱を唱え始めた。
「頼む、成功してくれ……」
 俺の祈りも虚しく、ルイズの杖は何も生み出すことなく宙を切った。
「ほら、ね?」
「ああ、無理言ってすまなかった。ありが……!?」
 視界の端に掠めるあれはまさか!?
「あぶねぇっ」
「きゃっ!?」
 ルイズを押し倒して攻撃から庇う、背中の上を通り過ぎていく突風。
 白い仮面の男はルイズを仕留め損なったと分かると脱兎の如く逃げ出して行った――レコンキスタの残党かっ?
「良かった、怪我はな……」
 あ、あれ……掌に感じる柔らかくも生硬いこの感触は……
「こんの、馬鹿犬ーーーー!」








 ワルドの手記


 ワルドです、気づいたら救国の英雄になっていたとです、ワルドです。
 いやそんな精霊勲章とか貰ってもどうしようもないですから、ただ力が欲しいだけですから。
 しかも狙っていたルイズは魔法の力をすべて失って今や平民と変わらないとかどんだけー。
 仕方がないのでガリアのオルレアン公派の者達と繋ぎを取る、ガリアの無能王を利用できないかと考えたのだ。
 どうやら無能王はなんの決まぐれか最近やる気を出しまくっているらしいその原因はやはりあの……
 それは困る、あの無能王には世界に絶望していて貰わなくて僕の取り入る隙はない。
 どうするべきかと考えていたら無能王の使い魔がトリステイン魔法学院に滞在していると言う話を聞いた。
 これは好都合……死ね! 平民がっ! 


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