あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-10


薄暗い森の中。深夜と言うこともあり、不気味な雰囲気が漂っている。
そこに二つの人影があった。一人は息も荒々しく、疲れているようである。
もう一人の方はと言うと、疲労している片割れを黙ったまま見つめていた。
「…なんでわたしを助けたの?あんたは誰?」
『土くれのフーケ』こと怪盗フーケは、自分を助けた謎の人物を睨む。お尋ね者である自分を助けるぐらいだ。
何らかの考えを持っていることは間違いないだろう。
「お前の力が必要だからだ。『土くれ』。――いや、マチルダとでも言った方がいいのかな」
黒マントの主が発言すると同時にフーケの眉が動く。マチルダ…マチルダ・オブ・サウスゴーダ。とっくに捨てた自分の本当の名前。
それを知っているこの男、一体何者なのか。
「答えを聞こう、『土くれ』よ。我々と共に行動するか、それとも――」
「ここで死ぬかって?」
フーケは男を睨み続ける。何をするのかは知らないが、自分には関係の無い話だ。
第一、もう貴族なんかに未練は無い。普段のフーケなら、そう叫んでいただろう。
だが…
「やるわよ」
男の口元が微かに動く。笑みを浮かべているようだ。フーケがここまで素直に反応するのが、少々意外だったのか。
「目的も何も聞かずに参加するのか、『土くれ』。お前の望みはなんだ?」
ざわざわと木立が風に揺れる。フーケは男を睨んだまま、静かに、低い声で言った。
「借りを返したい奴がいるのよ」


晴天。
学院を震撼させた事件も一応は終息し、生徒たちもいつも通りの生活を送っていた。
キートンはと言うと…オスマンに茶会の相手を申し込まれていた。
離れにあるお気に入りの場所で共に話そう、というのがオスマンからの伝言である。
伝えたのはコルベール。話によると、コルベールもまた呼ばれているらしい。

何か、あるんだろうな・・・
キートンはそう思いながらも、コルベールと共に茶会の場所へと急ぐ。
ルイズも当然のことながら、その場に居合わせていたため、キートンに対して強く注意をした。
曰く、「ヴァリエールの使い魔として失礼な行為は慎むべし」とのことだった。
どうやら、キートンの手癖の悪さにいい加減気付いてきたらしい。
「ところで、なんで私が呼ばれたんでしょう?」
キートンはコルベールに尋ねる。オスマンからは茶でも一緒に、と前に言われたことがあったが、予想よりも早く招待されたため、少し驚いていた。
「さあ…。例のフーケの話かもしれませんが。大丈夫ですよ、オールド・オスマンはお優しい方ですから、そんなに緊張なさることはありません」
コルベールはそう返しつつ、キートンと世間話をしながら歩いていった。

「おお、ここじゃ、ここじゃ」
オスマンお気に入りの庭園は見事なものだった。色とりどりの美しい花が咲き、庭園を彩っていた。
コルベールとキートンが椅子にかけると、給仕が茶を持って来た。
「まずは二人とも、招待に応じてくれてすまんな。こうやって、ゆっくりと話す機会がなかなか無いものだからのう」
オスマンは茶を飲むと、キートンの方を見る。単なる世間話をするために呼んだ…という訳でも無いようだ。
「私もいろいろとお聞きしたいことがありまして。この…手の、刻印のこととか」
オスマンは一瞬、鋭い目つきをしたが、すぐに柔和な顔に戻る。やはり、これは何かあるんだろうな…。
キートンは手の甲を見ながら思った。

のどかな風景の中、ざわざわと心地よい風が流れる。
「…以前、ルイズと話したときに、一つの国のことが気になりまして。ゲルマニアという国なんですが」
キートンが茶を飲みながら話す。オスマンとコルベールは静かにそれを聞いている。
「ゲルマニア…という言葉は、私の世界にもありまして」
「どういうことかね」
オスマンが怪訝そうに口を開く。冗談だと思った。キートンという男は、この世界の住民ではないことはわかっている。
だが、ゲルマニアという言葉がキートンの世界にもあるというのは、さすがにすぐには信じられなかった。
「正確には、ある歴史家が書いた書物の通称なのですが…。この世界の国々は他にどんなものがあるのですか?」
「アルビオン、ガリアなどがあるが…」
キートンの顔色が変わる。この世界に来てから、何かがおかしいと思っていた。ルイズという名の少女。身分の違い。ゲルマニアという国。
そして、今しがた出てきたアルビオン、ガリア。
この世界はやはり、現代との何らかの関係があるのか?

「説明してもらえるかね、キートン君」
オスマンが口を開く。このキートンという男、やはり何かを知っている。自分達が知らないことを――
キートンは重々しく語りだした。
「アルビオンは…私の世界にある国の古名です。ガリアは旧地名の一つですが」
そこまで言うと、溜め息をつく。
「正直、こうまでなると、パラレル・ワールドか何かだと思ってしまいますよ」
オスマンとコルベールは顔を見合わせる。キートンの発言は彼らからすると、理解の域を超えているものだった。奇妙な共通点。
偶然の一言で片付けるには、あまりにも出来すぎているというものだろう。
「キートンさん。そのパラ…とは、一体何ですか?」
コルベールは不思議そうにキートンに尋ねる。…心なしか、目が輝いている。
未知なるものに興味を抱いているのだろうが、コルベールが思っている以上に事態は複雑である。
まして、電気が通り、自動車が走り、近代兵器を用いて戦争を遂行する。そのような常識など、異世界ハルケギニアの人間には理解できないだろうから。

「わかりやすく言えば、一本の線が通っているとします。ですが、その線はよく見ると途中で枝分かれしていたり、複雑にからみあっています。枝分かれしているものを個々の世界…、別世界に例えれば」
「しかし、それではまるで御伽噺のようじゃが」
「……私のいた世界では、魔法は存在しませんでした。何よりも、機械が存在していましたから」
「きかい???」

キートンは、自分が知っている限りのことを二人に話した。自分の職業、家族、過去。
オスマンとコルベールは始終難しい顔をしていたが、キートンの真剣な話しぶりから、半信半疑ながらも信用することにしたのである。
怪盗フーケを追い詰めた手並みの良さから、平民とは違うことは既に理解していたが…。
「ところで、キートン君」
オスマンは咳払いをすると、キートンに話しかける。
「ミス・ツェルプストーが学園の方々に言いふらしているようなんじゃが…。君は、軍に所属していたのかね?」
「はぁ…。もう退役していますが」
「うむ。成る程、成る程。通りで、フーケの時に落ち着いておると思ったわい。一兵士とは思えんが、それなりの役に就いていたのじゃろう。先日、誘拐されたミス・ヴァリエールを君が救出したことは、わしの耳にも入っておるからの」
オスマンはそこまで言うとティーカップに手を伸ばし、茶を飲む。一息つくと、コルベールに向かって、頷いた。
コルベールもまた頷くと口を開く。
「キートンさん。実は、今週のラーグの曜日に生徒達を連れて、2リーグ先にあるエマール遺跡へと見学に行くことになっているんです。そこで、貴方は教師達の補佐に就いてもらいたいんです」
「ちょ、ちょっと待ってください」
キートンが驚いたように声をあげる。
「いきなりそう言われましても…。遺跡には興味がありますが、私はこっちの世界では資格も何もありませんし…」
「まあま、落ち着け。キートン君。実はのう…」
オスマンは溜め息をつくと、話を続ける。困った顔をしており、どうやら悩み事を抱えているらしい。

「ミス・ツェルプストーが君の事を言いふらしたのは、さっきも言った通りじゃ。それに加えて、例のフーケの大捕り物で君の名前と顔が学園中に広まっておる。生徒達の興味が君の方に向いておるんじゃよ」
「私の授業の際にも、私語が増えている有様でして…」
「うむ。興味が広まっておる以上、隠し通せるもんじゃない。そこで、今回の遺跡見学で生徒達との対話を受け持ってもらいたいのだ。そうすれば、少しは落ち着くじゃろうしな。なに、心配することは無い。報酬も払うからの」
これは、さすがに断れないか…
キートンは決心する。遺跡を調べれば、元の世界に戻る方法も見つかるかも知れない。
この世界と現代とでは妙な関連性がある。そう信じずにはいられなかった。


「わかりました。やらせて頂きます」



茶会からしばらくの時間が経過した。エマール遺跡に行くことになったキートンだが、まだ質問していないことがある。
それは左手の甲にあるルーン文字だ。ルイズに召喚された際に付けられた使い魔の証…なのだそうだが、先ほど二人に話したところ、明らかに表情が変わった。
これはきっと何かがある、そう感じたキートンであったが―――。

「このルーン文字…、ガンダールヴと刻まれているようですが」
「…君は、その文字が読めるのかね?」
「一応は。先ほども言った通り、考古学を教えていましたから」
オスマンとコルベールが顔を見合わせる。二人はキートンがガンダールヴの刻印を解読出来るとは思っていなかった。
ガンダールヴが歩んだ歴史までは知らないにしても、見かけによらず博学なキートンに驚いていたのである。
「元軍人であったり、学者でもあったり。君は何者なのかね?」
オスマンは溜息混じりに言う。隣のコルベールはコルベールで興味深そうに聴いていたが。
「まぁ、よかろう。ここまで来た以上、一々隠しておっても仕方が無かろうしな。君には知る権利があるだろう」
そこまで言うと、オスマンは静かに語り始める。
ガンダールヴとは過去に現れた偉大な英雄。始祖と呼ばれる存在が用いたといわれる伝説の使い魔。
その実力は千人の敵をも軽く殲滅したと言われるもの。

「冗談でしょう」
キートンが声をあげる。いくらなんでも、そんな化け物みたいなものがいる訳が無い。
少なくとも、現代にはそんな人間の規格外のモノがいるはずが無いのだ。
まして、そのガンダールヴに刻まれていたというルーン文字が、自分に刻まれたなど。ガンダールヴという存在は、北欧神話の中だけのはずだ。
「我々も君が本物のガンダールヴだとはさすがに思ってはおらんよ。本物が目の前にいたら、それだけで震えが来るじゃろうしな。だが、万が一ということが…」
「ルイズを誘拐犯から救出したのも、フーケの時も軍隊時代の経験ですよ。英雄の再来だなんて」
「まあまあ、落ち着け落ち着け。ガンダールヴがどうとかと言って、別に君の待遇を変える積もりは無いし、他の連中に言いふらすという訳では無い。それに、君は元の世界に帰りたいのだろ?」
オスマンがそこまで言うと、キートンは下を向く。
「…私には家族がいるんです。父と母がいますし、娘も…。大切な友人も、向こうに、私の世界にいるんです。ただ―――」
「ただ?」
「あの子を…ルイズを、放っておけないと言いますか。そういったのもあるんです。彼女は意地っ張りで、強気で、それに少し、恐いところがありますが…」
キートンが顔を上げる。
「本当は、とても優しい子です。誘拐犯にさらわれた時でも、私の身の心配をしてくれましたから」
オスマンとコルベールは、やはり、自分達の目が間違っていなかったことを確信した。
ガンダールヴ云々以前に、この人物に任せても、問題は無いだろう。

「では、今日はここまでにしておこうか。二人とも、長々と話をしてすまなかったな。キートン君、では、遺跡の件は宜しく頼むよ」
オスマンはそう言うと、席から立ち上がり、さっさと帰ってしまった。コルベールもまた、残っている仕事があるらしく、キートンに一礼すると、去って行った。
「遺跡か……」
後に残されたキートンは一人呟く。自分が元の世界に戻る為の手がかりが少しでも見つかれば良いのだが―――。
今は、それに賭けるしかない。

「何の話だったの?」
昼食を終えたルイズがキートンに話しかける。どんな理由でキートンが呼ばれたのか、知りたいらしい。
「エマール遺跡って知ってるかい?」
「ここから少し離れた所にある小さな遺跡じゃない。なんで、あんたが知ってるの?」
「今度、その遺跡に皆が行くことになったらしい。僕には、引率みたいな事をしてくれって、学院長に依頼されてね」
ルイズが驚く。この声を例のキュルケ、タバサの二人が聞きつけたらしく、すぐに近付いてきた。
キュルケはすかさず、キートンの腕にまとわりつく。
「な・ん・の・は・な・ししてるの?お二人さん」
「ちょっと!誰の許可得て、人の使い魔にくっついてんのよ!」
「別にいいじゃない。減るもんじゃなし。それよりも、何の話よ」
「あ、ああ。実は、今度…」
キートン、とルイズが叫ぶ。どうやら、キュルケがキートンとくっつくのが余程に気に入らないらしい。
キュルケもそのことを当然自覚している為、わざとくっつくのである。
二人がいがみ合うのを見て、遺跡の見学が予想以上に大変になりそうなのは、火を見るよりも明らかだろう。
キートンは、少し気が重くなった。タバサはそんなキートンを察してか、一言。
「頑張って」
慌てて振り向いて、彼女の顔を見る。心なしか、笑っているように見えた。


「お呼びですかい」
真っ暗闇の小部屋の中に一人の大男が入ってくる。一目見ただけで、凶悪な性格なのだろうと思えるその顔。
首筋には巨大な傷の跡があり、片目は潰れているのか、眼帯を付けている。
大男はどっかと椅子に座ると、ワインをぐっと飲み干して、目の前にいる黒マントの男に話しかける。
「別に世間話がしたくて呼んだ訳じゃないんでしょう、旦那。今度の仕事はなんで?」
「お前は優秀な殺し屋だそうだな?」
大男は、大口を開けて笑うと、目の前の男を見る。
「当たり前でしょう。仕事してからは、長いんでね。このドレは頼まれたら、何だってやりますよ」
「ならば、一人の男を始末してこい、ドレ。詳細はそこの女に聞け」
そう言うと、黒マントの男はテーブルに金貨の詰まった袋を置き、さっさと部屋から出て行った。


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