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虚無の使い手と不死鳥の炎術士

「終ったんだね、紅麗」
「ああ……終わったよ」
 言葉にすれば短いものだったが、その言葉を口にしたとき少し肩が軽く感じた。
 そう、全て終ったのだ。
 400年に及ぶ火影の妄執も、我が身を焦がし続けた憎悪と狂気の業火も。全ての役目を終えて、己が心は初めて開放感に満たされていた。
 それも可笑しな話だ。
 かつては比類なき力を誇り、異形の力を統べる頂点として君臨していた己が、その強大な力を失って初めて自由を得たのだから。
 此処に至るまで、如何に多くの犠牲を喪ったことか。
 母を喪い、唯一愛した女性を護れず、付き従った忠義の部下の命さえも弄びその力と成した。その生涯は常に血に塗れ、幾百もの骸を築く修羅の業そのものだったが、その宿命の源も既にない。
 あの時は諦めた平穏。今度こそ得ることができるかもしれない、そんな淡い思いさえ抱いてしまう己がいた。

 ――そう思った直後の事だった

「く、紅麗!?」
「下がっていろ薫」
 眼前に突如現れる巨大な鏡面。
 一瞬、心象世界への門や次元界玉が過ぎるが、そのどれとも異なる。それどころか間違いなく何某かの力を秘めるこの鏡は、しかし己が知るどの秘術や魔導具とも異なる代物だった。
 どの道、如何なる効力や意図があるにせよ、迂闊に関わるのは避けた方が良い。
 傍らの薫に離脱を促すが、刻既に遅く……
「う、うわ~!!」
「薫!?……ちっ」
 歳相応の好奇心に刺激された故のことだろうが、鏡に触れた薫はその指先から鏡面の中へと引き込まれていく。
 まさか見捨てるわけにもいかず、薫の腕を掴むが内へと引き寄せる力は予想以上に強い。引き戻す所か、薫の腕を掴む己でさえも徐々にその内へと押し込んでいく。
 事此処に至り、選ぶ手段は一つしかない。――そう覚悟を決め、傍らの薫の瞳をしっかりと捉える。
「……薫。如何なる世に堕ちようと、我等の絆は一つだ」
「へへっ、当然だろ?『兄貴』」
 その言葉を互いに不敵に笑い、そして同時に鏡の中へと飛び込む。
 直後に強烈な眩暈を感じるも、意識を集中し己が自我を保ち続ける。それは『弟』を護りたいと思う、復讐ではない初めての純粋な想いからだった。
 その想いが形を成したのか、

 大丈夫よ、紅麗

 そんな懐かしい声が耳へと響く。
 ……そして、その言葉が失った筈の『炎』を再び灯す。己が魂に宿る力の鼓動を紅麗はたしかに感じていた。
「有難う。また、共に歩む事ができるのだな……紅」
 再び廻り逢えた永遠の伴侶へと万感の想いを込めて呟く。
 しかし瞼に映る彼女の笑顔は、ただ悲しそうに頭を振るだけだった。

 ――いいえ、私は此処までです。今度こそさようなら……大好きな紅麗

 その言葉と共に、彼女の気配は遠くへと遠ざかっていく。
 後に残ったのは紅が灯してくれた炎と、胸を締める寂寥感だけだった。
(ああ。今度こそ然らばだ、紅)
 瞼を閉じて本当の別離を告げる。
 そして、再び瞼を開いたとき、瞳は新たな世界の光を得た。


「……あんたら、誰?」
「それはこっちのセリフだよ、姉ちゃん」


 それが炎術士紅麗、そして火影忍軍小金井薫の新たなる運命の始まりであった。

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