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ゼロの仮面~ナイト・アフター~-02

「では、頼みましたぞ」
「よく分かりませんが……、ミス・ヴァリエールとその使い魔から目を離さなければ良いのですね? それにしても平民を召喚するとは……」
 コルベールと向かい合っていた教師が、ぶつぶつと呟きながらルイズと綾時を追って行く。
 角を曲がった所まで見届け、さて。と、コルベールは学院長室へと足を向けた――、
「ミスタ・コルベール」
「――オールド・オスマン」
 が、いつの間にか目的の人物が背後に立って居た。
 二人は言葉を交わさずに、頷き合っただけで、急ぎ足で学院長室へと向かった。

 困ったなぁ。二つ、夜空に煌々と浮かぶ月を見上げ、僕は溜息を吐いた。
 つい先程の事だ。我がご主人様――ルイズなんたらヴァリエールちゃんに、使い魔とは何かの説明を受けた。最後まで聞き、どうやら雲行きが怪しくなって来たと、僕は思った。
 イゴール氏の話を察すると、どうやら僕はこの世界で何かを成す事を任されたらしい。
 ――ちなみに、ここはまったくの異世界か、もしくは地球とは別の遥か遠い惑星だと考えている。後者の方が確率は高そうだ――。
 しかし何をやれば良いのかは検討も付かない。だから、とりあえずは流れに身を任せようと思ったんだけど……、ちょっと待遇があんまり過ぎやしないだろうか。
 その上、
「リョージ君。こっちだ」
「ああ、はい」
 早速現地人には超警戒されている。
 頼まれた洗濯を夜の内に済まそうと思い、夜の校舎を暫らく歩いた所で、先程の先生――コルベールさんに捕まった。洗濯の事を話したら、場所を案内すると言う事で、ついて来られまでした。
 相当、怪しまれている。
「ここが洗濯場だ。――貸したまえ。手伝おう」
「いえ、結構ですよ」
 やんわりと断る。
 しかし、そうか。と答えただけで帰る様な素振りも見せないコルベールさん。
 どうしたものかな。…………。
「コルベールさん」
「何かね?」
「えー、とですね。……僕は、別に貴方達に危害を加えたりはしませんよ。あの子を取って食べようとも思ってないし」
「――気付いていたのか」
「そんなに敵意を向けられれば、流石に」
「……」
 ……あれ? 会話が終わっちゃったぞ?
「あのー、分かってもらえました?」
「あまり信用出来ないな」
「正直ですね」
 とりあえずルイズちゃんの洗濯物を洗いながらなので、コルベールさんの表情は確認出来ない(彼は背後に立っている)……、ってうわ。これ下着だよ。良いのかなー。
「あー、ちゃんと説明しましょうか? それでも信用出来ないなら、僕にはもうどうにも出来ませんけど」
「……お願いしよう」
「はい。ではまず、さっきから貴方達を警戒させている魔力について。理由は簡単、僕は人間じゃありません。そうだなぁ……、元居た所では『死の宣告者』と呼ばれてましたね」
「『死の宣告者』? 自分を「安全だ」と売っている様には思えない名だ」
 コルベールさんが不審そうに言う。まったくだけど、事実は事実だし。
「そうですね。でも、別に自ら望んで名乗っていた訳ではないんですよ? ただ、僕の親に当たる存在が、死神とか、そう言うモノだったんです。僕の権限は即ち、親である『死』の到来だった。
 ……まあ、今はその心配は無いんですけどね。こっちの月は、僕の知っている月ではないようですから」
「月?」
「ええ。まあ、それは追々。とりあえずさっき漏れちゃった魔力は、ちょっと召喚の衝撃に驚いちゃっただけです。
 普段はちゃんと今の通り、普通の人間同様に振舞えます。無闇に悪用したりする気はありませんよ」
「……ふむ」
 説明している内に、洗濯が一通り終わってしまった。
 とりあえず洗った物を近くにあった籠に入れて、身体の向きを変える。
 コルベールさんは顎に手を当て、少し考えに耽っている様だ。
 数秒程唸っていたが、僕を向いてコルベールさんが言った。
「同じ話をして欲しい人が居るのだが」 
「構いませんよ」
「では、付いて来てくれ」
 今までよりは幾分か優しい目付きになったコルベールさんが、首で僕を促した。
 僕は洗濯籠を持って、彼の背に付いて行った。

「なるほど。大体の流れは読めたわい。ええと、モチヅキリョージ君?」
「はい」
 僕が案内されたのは、この学校の校長先生――正確には学院長らしいけど――の所だった。
 オールド・オスマンと名乗ったその老人にコルベールさんに話したのと同じ内容の話しをして、途中で僕がここの人間ではない事も明かした。
 『死の宣告者』についての説明に関しても、ペルソナ能力、シャドウやニュクス、勿論『彼ら』についても説明した。
 途中からコルベールさんの表情が、疑心ではなく探究心や好奇心に満ち満ちて来ていた事については、敢えて触れなかった。
「俄かには信じ難い話じゃがのう……」
「そうですか? 魔法なんて物も存在している訳だし、それほど貴方達の常識離れした話でもないかと思いますが」
「それもそうじゃが……まあ良い。わし等が幾ら考えても無駄じゃろ。とりあえず君には……」
「失礼します」
 オールド・オスマンの声を遮り、女の人が部屋に入って来た。その手には、何やら分厚い本。それにしても……わーお、美人さんだ。
「例のスケッチの件ですが……」
「おお、ミス・ロングビル。見付かったかの?」
 オールド・オスマンが席を立つ。
「はい。ただ……」
「どうしました?」
 今度はコルベールさんがミス・ロングビルと呼ばれた女性に近付く。
「一応、見付かりはしたのですが、その……、とにかくこれを」
 近くにあった机にミス・ロングビルが本を広げ、ページをめくる。その両脇に立って本を覗き込むエロ親父二人。
 ……僕も行こうっと。
 三人の更に脇から本を覗き込む。古い本なのか、ページが酷く痛んでいた。
「スケッチって、僕の左手のコレの事ですよね? あ、同じ文字ですねー。何て書いてあるんですか?」
 その本のページには、僕の左手に彫られた文字を同じ文字が描かれていた。
 それについての説明らしき文も、長々と。ちなみに日本語ではないのでまったく読めない。
「まさか……これは……」「俄かに信じ難い事態がまたしても、じゃの」
 ううむ。とエロ親父達は二人して唸り、見詰め合い、頷き合う。
 そして僕を見た。
「な、何ですか?」
「もうちょっと話、付き合ってくれんかの?」
「え、ええ。構いませんけど……」
「ミス・ロングビル、お茶!」
「……はい」
 ふんぬ。と、オールド・オスマンとコルベールさんは腕まくりをして、僕を囲んで小さな机に座った。
 ……もう暫らく、ルイズちゃんの部屋に戻るのは遅くなりそうだ。

 結局、僕が開放されたのは明け方、空が白み始めてからだった。
 オールド・オスマンとコルベールさんはまだ話し込むらしく、僕は道も分からないのに部屋から放り出された(ミス・ロングビルはとっくに眠りこけてしまっていた)。
 一応、この時間には起きている筈だから、その辺のメイドに聞けとは言ってくれたものの……。
 それにしても、伝説とは、また話が大きくなってしまったなぁ。
 伝説の使い魔、ガンダールヴ。これこそ俄かには信じ難いが、どうやら本当らしい。
 オールド・オスマンとコルベールさんに武器を持たされた時にルーンが輝き、自分の身体能力が格段に向上したのが分かった。
 彼等は、恐らくそれがガンダールヴとしての力なのだろうと言っていた。
 影を払う者としての、こちらの世界での役割が伝説の使い魔。なんだろうか――――、
「わっ」「きゃあ!」
 物思いに耽っていた為か、周りの状況を掴めていなかった。
 どんっとお互いに何の加減も無く、僕と大量の洗濯物を抱えたメイドさんが激突した。
「っとと。大丈夫? ――って、うわ」
 僕の自分の洗濯物――と言ってもルイズちゃんのだけど――を床にぶちまけてしまった。つまり、汚れた。
「あちゃー……」
「あ、ご、ごめんなさい! 貴族の方に……!」
「いや、良いよ。それに僕は貴族じゃないしね」
 洗濯物を拾うついでに、慌てて謝り出したメイドさんの荷物を拾い集める。
「え? 貴族じゃないって……、ああっ! そんな、お手を煩わせて!!」
 ずどんと僕を突き飛ばして自分で荷物を拾い集めるメイドさん。
 今のはワザとじゃないよね?
「ふう、と。まあ、ごめんね。……これから洗濯? 僕も一緒に行って良いかい?」
「あ、はい、勿論です……じゃなくて! 私達に申し付ければ、わざわざご自分で行かずとも……」
「いやだから、僕がその、君達みたいな立場だからさ」
「え? ――あ、もしかして、ミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「そう、それ」
 まあ! と、洗濯を集める手を止めて、メイドさんが声を上げる。
 なんか既にメイドさんに知られるような事態になっているらしい。わあ、僕って有名人。
「分かりました。こちらです」
 いや、場所は知ってるんだけどね。

「あれ、ルイズちゃん――じゃなかったご主人様。もう起きてたの?」
 メイドさん――シエスタと言っていた――との洗濯を終えてルイズちゃんの部屋の近くまで送ってもらい、さてと向かったら、当のルイズちゃんは部屋の前で友人らしき女の子と話していた。
「あんた、何処に行ってた――」
「これがあんたの使い魔? まあ、ホントに人間なのねぇ」
 何事かを叫び散らそうとするルイズちゃんを押し退け、ずいっとやたらグラマーなルイズちゃんの友人らしき女の子がしげしげと僕を眺めて来た。
 ルイズちゃんやオールド・オスマン達の話を聞いて察したけど、どうやら人間を召喚する事自体珍しい、て言うか前例が無いらしいなぁ。
「ちょっとあんた、人の話をね――」
「流石はゼロのルイズねえ」
「――ッッ! キュルケーッ!!」
 ギャアギャアとルイズちゃんとグラマーなお友達――キュルケ?――が言い争いを始めたので、洗濯物だけそっと置いて、僕は退散する事にした。

 さて。一つ分かった事がある。眠くはならないけれど、どうやらお腹は空くらしい。
 可哀想な声で鳴いている自分のお腹を摩り、当ても無く校舎を散策してみた。
 今頃、ルイズちゃん達は朝食だろうか。
「あ、リョージさん!」
「ああ、シエスタちゃん」
 後ろから掛かった声に振り向くと、シエスタちゃんが小走りで近付いて来ていた。あ、胸が揺れてる。おっきーなー。
 僕の目の前で止まり、にこやかな笑顔を向けて来る。おお、眩しい。
「どうしたんですか? こんな所で」
「うん、ちょっとね。――あのさ、僕がご飯食べられるような場所無い?」
「え? 朝ご飯、まだなんですか?」
「うん」
「それじゃあ、厨房に――」
「リョージーッ!」
 さっきの小鳥の囀りの様な声とは正反対。猛獣の怒号の様な……て言うか実際に怒号を発しながらまたも僕の後ろから足音を響かせているのは――、
「やあ、ご主人様」
「あんたまた勝手にふらふらして! 授業に行くわよ、付いて来なさい! ほら!」
「ありゃあ。じゃあまた今度ね、シエスタちゃん」
「は、はい」
 ルイズちゃんに腕を引っ張られながらも、何とかシエスタちゃんにお別れの挨拶を。
 ああ、何か僕は振り回されてばっかりだな。こっちに来てから。

 ルイズは困惑していた。
 分かんない。分かんない分かんない分かんない分かんない――!
 さっき食堂を出た時にミスタ・コルベールに呼び止められ、何を言われるかと思ったら「リョージ君を召喚した事を誇りに思いなさい」だなんて。
 意味分かんない。何あれ。平民なのに! その上勝手に出歩いてふらふらしてご主人様に自分で着替えをさせやがって。しかもしかもしかも、一回戻って来たかと思ったらまーたふらふらして今度はメイド口説き!
 こんな奴を召喚して何を誇りに思えって? はん。アホか。ハゲの所為で直射日光受け過ぎて頭が馬鹿にでもなってるんじゃないの?
 眉間にシワを寄せながら、ルイズはギリギリと歯軋りをしていた。
 まったく。本当に、笑い話。平民が使い魔なんて。お母様やお父様、姉様達になんて言えば良いのか!
 やっぱり自分のゼロのルイズ。ほら、あいつらまた私見て笑ってやがる。顔覚えたかんな。
「あーもー最悪!」
 ――洗濯は、してくれたけど。




ゼロの仮面~ナイト・アフター~  二話・了

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