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ゼロの夢幻竜-18


第十八話「深海の宝珠(後編)」

「凄い……!元の世界では噂しか聞いた事無かったけど、『こころのしずく』ってこんなに凄いんだ!」

改めて『こころのしずく』の力に驚嘆するラティアス。
しかし自分の体に起こった変化はそれだけではない。
自分の左手にあるルーンが眩しく輝いていた。
そして体も何故か軽く感じられた。
この軽さなら元の世界にいた同種生物の一つ、ハネッコといい勝負だろう。
全速力で飛べといわれたら今までの速度の倍近い速さで飛べそうだ。
ラティアスは小さく呟きながら先ず様子見とばかりに、割合小さい体と凄まじい速さを利用してゴーレムの周囲を飛んでみる。
その様子はさながら大きな獅子の体を駆け回る鼠といったところだろうか。
流石にゴーレム、もといフーケは我慢ならなくなったのか、ゴーレムの巨体をいかん無く生かして攻撃を行う。
しかしそれらは常に間一髪のところでかわされてしまう。
対してラティアスが自分の『技』であるミストボールを一発試しに放ってみる。
結果は……ラティアスの予想したとおりだった。
当たったゴーレムの左腕の肘から下が跡形も無く消え飛んでいたからである。
使い魔になる前までの自分の力なら、崩す事さえ難しかったかもしれない。
しかしゴーレムとてやられた場所をそのままにしているわけがない。
ほんの少し目を離していた間で、消え飛んだ部分に新しい腕が生えていた。
ならばと今度は角度を変えながら両足に一発ずつ、そして胴体の真ん中に三発喰らわせてみる。
確かに足が?げてゴーレムはその場に崩折れるが、直ぐにまた足を生やしてこちらに向かって来る。
また胴体はよほど頑丈に出来ているのか、表層面ががらがらと崩れただけで風穴が開くわけではない。
更に動きは一時的だが緩慢になるものの、完全に止まるほどのものではなかった。
お返しとばかりにゴーレムはその腕と足を異様なまでの速さで振り回す。
宙返り、捻り込み等、必死に回避行動を取りながらラティアスは低く呻いた。

「『こころのしずく』を使っても上手くいかない!……やっぱり駄目なのかなあ?」
「嬢ちゃん。そいつぁ違うぜ!」

突如喋りだしたのは、何かあった時の為に一応背中に背負っていたデルフだった。
唐突に話しかけられた事で、ラティアスは一瞬ゴーレムの動きに反応するのが遅くなってしまった。
そして右側からもろに喰らったゴーレムの拳で彼女はその場から50メイルほど遠くに飛ばされる。
気を失いこそしなかったが、開口一番ラティアスはデルフに対して文句を言った。

「いきなり話しかけないで下さい!」
「それはいい。それよりも嬢ちゃんさっき随分と弱気な事を言っていたな。良い機会だから教えるぜ。ぶっ壊れた所を再生するっていうのは操り手であるメイジの精神力をかなり磨り減らすことなんだよ。
あんなデカ物、作って操るだけでも結構きついのに動かしながら作り直すのはそれ以上にキツい行為なんだぜ。」

しかしその話の最中でもゴーレムはお構い無しに攻撃を加えてくる。
フーケが本気を出したのか、ゴーレムの一部は今や頑丈そうな鉄に変わっていた。
デルフはそれも意に介せずラティアスに向かって話し続ける。

「精神力は魔力の量と同じような物だ。いつか必ず再生がおっつかなくなる時が来るだろうさ。それにやっこさん、今あのゴーレムの一部を土より固い物にしたろ?
それでおまえさんをしとめようっていう算段なんだろうが、裏を返せばそんな作戦に出なけりゃいけないほど追い詰められてるって事なのさ。
何しろただ土をゴーレムの形にして動かすより、土に『錬金』の術をかけて鉄にしてからゴーレム作って動かす方が、遥かに精神力を使う事になるからな!」

それを聞いたラティアスはふと考える。
ならば今の攻め方を暫く続けていれば道はある。
例え、自分の身を不可視化してフーケをゴーレムから叩き落とした所で、大量に精神力が残っている状態でそれをすれば魔法で対抗されてしまう。
ならばゴーレムの修復に精神力を使わせ、その後如何なる簡単な魔法も使えない様にしてからとっちめたって遅くはないだろう。
再びミストボールの応酬をゴーレムに浴びせる。
するとデルフの言った通り、再生はするものの若干そのスピードが遅くなっている事に気づいた。
この調子で行けば或いは……
ラティアスは更に威力と大きさを増させたミストボールを次々に放った。
その為ゴーレムを中心とする半径50メイルに渡って朦々とした霧が立ち込める。
ルイズ達はその場から大分離れていたところで事の成り行きを見守っていたせいか、それに巻き込まれる事はなかった。
その霧の中をラティアスが高速飛行の状態で飛んでみると霧が段々と晴れていった。
そもそも霧というのは大気中で飽和状態になった水蒸気の事である。
体毛がじっとりと濡れていくのを感じたラティアスは、数回身震いをして水気を一気に落とす。
そして霧の中からゴーレムが姿を現した。
相変わらず一部を鋼鉄化した腕も足もあり、なんてことはない様に立っている。
ただ最初の時に比べるといやに痩身の様子を呈している。
間違い無くフーケの精神力は限界に達してきているようだった。
ラティアスは一旦距離を取り、もう一度出力を上げたミストボールを放とうとした。
しかし……それが出来ない。
如何に集中しても霧を包んだ強烈な旋風は口元から現れる事はない。
まさかもう出せないっていうの?いや!こんな肝心な時に!
呆気に取られるラティアスを前にしたフーケは小さく嗤う。

「ちっちっちっ。最後に笑うのは私のようだねえ。なんだかんだ言って今日はツイてるよ!」

そしてその次にはゴーレムの強力な一撃がラティアスを襲っていた。
彼女は勢いに任されたまま地面に叩きつけられる。
そこは丁度ルイズ達が身を寄せ合いながら集まっていた所の傍だった。
と、その時ルイズが杖を握り締めてゴーレムに向かっていった。

「ご主人様!戻って下さい!」

しかしルイズはラティアスの声に止まる事はおろか振り向きさえもしない。
彼女は何やら呪文を詠唱し杖を振ってみる。
だが起こるのはいつもの様に爆発だけで、それ以上の事もそれ以下の事も起きない。
しかも鋼鉄に変異した部分に向けて打った事が不味かったのか、相手の体にも動きにも全く異変は見られない。

「ちぃっ!邪魔だね!今すぐ潰してやるよっ!」

言うが速いかゴーレムはルイズに向かって鋼鉄化した足を振り下ろす。
だが疾風(はやて)の如く駆けつけたラティアスによって彼女は救われた。
ラティアスに羽交い絞めにされつつルイズは叫ぶ。

「何するのよ!離してっ、ラティアス!」
「危ないじゃないですか、ご主人様!逃げないといけないじゃないですか!」
「逃げるなんて嫌よっ!!」

涙まで付いてきた血を吐くような叫びに、ラティアスは一瞬怯んでしまう。

「何でもかんでもあんたに任せたままで……ゼロのルイズだから何も出来ないって思われたくないのよ!あんたがどんなに凄くても、私……私……何にも出来てないままじゃないっ!!!」

ラティアスがキュルケに勝った時から抱いていた悲痛な感情。
自分は何も成長していない……サモン・サーヴァント、そしてコントラクト・サーヴァントには成功したがそれまで。
使える魔法は相変わらず無しで爆発ばかり。コモン・マジックだって碌に使えるものが少ない。
ラティアスの恐るべき力をあたかも自分の力として考えていた自分は浅はか且つ、傍目に見ても惨めな物だった。
そこに貴族のプライドなぞある筈もない。ルイズはそれが許せなかった。
泣きじゃくるルイズを地面に下ろし、ラティアスは彼女の肩を揺さぶる。

「ご主人様、聞いて下さい!ご主人様の努力は私が一番よく知ってます!ご主人様の気持ちはいつもお傍にいる私が一番よく分かります。
ですから、お願いですからこんな所で無茶なんかしないで下さい!何も考えずに突っ込むなんて勇気でも何でもありません。無茶です!」

しかし話はゴーレムの容赦ない再攻撃によって遮られる。
強烈な地響きがそこにいる全員を襲う。
そしてその時、跳ね上がった小岩がルイズの体を直撃した。

「あううっっ!」

ルイズの体は一旦大きく弛緩し、それからぐったりとラティアスにもたれかかる。

「ご主人様っ!!」

ラティアスの悲痛な叫びが木霊する。
幸い気を失っているだけのようだったが、頭から一筋の血が流れている事は彼女から冷静さを失わせるのに十分な働きをしていた。
ゴーレムは未だに自分達をつけ狙ってこちらに来ていた。
ラティアスは近くにいたキュルケとタバサにルイズの身柄を渡した。

「ご主人様を……ほんの少しの間だけお願いします。」

その申し出にタバサはこくりと頷いた。
それから直ぐに先程呼び出したシルフィードにキュルケと共に乗る。
荷重が少しキツイのか、翼をいつもより大きくはためかせていたシルフィードはラティアスのいる位置より更に高空へと移動した。
これで少しは安心できる。残るは……あのゴーレムだけだ。
ラティアスはゴーレムの方になおり精神を集中させる。
『こころのしずく』を持っているからだろうか力は湧き水のようにゆっくり少しずつ、しかし確実に体の中に流れて来ている。
要はそれをどうやってゴーレムに対して攻撃の術として使うか。
すると……何かが頭の中で見えて来た。いや、厳密に言えば感じた。
ミストボールではない、新しい力の発し方がラティアスの頭にするすると入っていく。
この力は一体何なのだろうか?
兎に角やってみなければどれ程の物なのか想像もつかない。
ラティアスは全身の力を攻撃力に変換してその技……『サイコキネシス』を放った。
次の瞬間、空気が一瞬にして歪み、次いで爆弾が爆発したような見えない衝撃波がゴーレムとその上に乗っていたフーケを襲った。
その勢いは凄まじく、周囲にあった木々は無理矢理捻じられた様にして折られていき、地面には小さいながらも罅割れが出来ていた。
炭焼小屋の窓は一瞬にして全て割れてしまい、小屋自体も大きく傾いでいく。
そしてゴーレムの体も同様に裂け目が出来ていき、ついに全身がばらばらになってあちこちに弾け飛んだ。
高速で飛び散った鋼鉄の塊は地面に衝突するとそのままめり込み、木に衝突すれば枝を、そして幹を悉く吹き飛ばす。
フーケはと言うと、ゴーレムが崩壊する直前にそれの肩から飛び降りていたが、その途中崩壊したゴーレムの体の破片をもろに下腹部に喰らう。
そしてそのまま彼女は炭焼小屋のドアに自分の身を嫌というほど打ち付けた。
そしてそれだけではなく、ドアは真ん中から真っ二つに折れてしまい、彼女はそれと共に部屋の中に押し込まれた。
やがてラティアスの精神力が尽きたのか、『サイコキネシス』は終わりを告げる。
長く感じられた技の発動時間だったが、終わってみれば十秒も経っていなかった。
だがその間に放たれたエネルギーは凄まじい物だった。
ラティアスは全身に脱力感を感じ、そのまま真っ直ぐ地面に墜落する。
最早飛ぶ力も残っていはしなかった。
今の力ではせいぜい人間状態の姿を見せるだけで精一杯だろう。
だが安堵の息は吐けなかった。
小屋からぼろぼろになったフーケがゆらりと現れたからだ。その形相の恐ろしさといったらない。
眼鏡は何処かに吹き飛んだためか既に無く、目は猛禽類のそれと同じ鋭さを持っていた。
後ろで纏められていた艶のあった髪は、ばらばらに振り乱されている。
額と口の端から黒ずんだ血の筋が流れており、破れた服のあちこちにも飛沫血痕が残されていた。
そして彼女は戸枠に寄りかかりながら、左腕で必死に右腕を押さえている。
見ると右腕は肘の先からあらぬ方向に曲がっている。折れているのだ。
そしてそうなっているのは腕だけではなかった。どうやら右足も同じ様になっているらしい。
ただそちらの方は魔法でも使っているのだろうか、立って歩ける状態にはなっていた。
ブーツのヒールがどちらも折れていたので歩きにくそうではあるが。
その様子を見たラティアスは目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。
あれだけやって……新しい技まで覚えて……やっと勝てたと思えたのに!

「もう駄目なのかしら……」
「弱気になるのはちぃと早いぜ、嬢ちゃん!」

ラティアスの微かな呟きに力強い声で答えるデルフ。

「どう……いう事?」
「何の為の俺だよ!おめえさんが今の姿でいる時に、さっきぶっ放した様なやつがもう出せねえって時に俺があるんだろ?人間の姿で戦うのよ!
まあ、『深海の宝珠』改め『こころのしずく』を左手に持ちながら俺を右手に持ちゃあ分かるぜ。今はまだ幻術をやって多少体を動かす事が出来るんだろ?おめえさんよぉ。」

考えていては時間の無駄だ。やってみるしかない。
ラティアスは人間形態に変身して、言われた通り左手で『こころのしずく』を、右手でデルフを持ってみる。
すると驚いた事に体の痛みが消えていった。
ルーンも再び強い光を放ち始める。
剣は今まで持った事も無いのに、まるで腕の延長線上にあるかのように物凄くしっくりとくる印象を与えた。
だが感心している暇は無い。
フーケが懐からこっそりと杖を取り出し、ラティアスに向けたからだ。

「今すぐくたばりな!このおチビ!」

そう叫んでフーケが呪文を詠唱しだす。
ラティアスは一足飛びに走り出し、フーケとの距離を一気に縮める。
勝利の軍配は……ラティアスの方に上がった。
詠唱が完成する直前、ラティアスは最初の太刀でフーケの杖を真っ二つにし、次の太刀でフーケの脇腹辺りを切りつけた。

「ぐあああっっ!!」

フーケは絶叫し、大きく派手な音をたてて再び小屋の中に押し込まれる。
棚の前で血を流しながらぐったりとなるフーケの周りには、衝突で壊れた椅子、割れた酒壜、そして歪な形の薪が散れていた。
その様子をラティアスは呆然としながら見つめていた。

「死んだの……かしら?」
「……いや。胸元が小さく動いてるから死んじゃあいねえが、このぶんじゃ当分の間泥棒稼業は無理そうだな。」

デルフはただただ冷静な意見だけを述べていく。
と、小屋からそこまで離れていない所にシルフィードが降り立った。
ルイズはまだ目を覚ましていないらしく、キュルケにもたれかかっている。
ラティアスは勝った事と中にいるフーケの事について言おうとして……膝が抜けてしまった。
その次に世界がぐるりと一周し、そして急激な疲労感に襲われた直後に意識を失ってしまった。
キュルケはルイズをシルフィードの背びれにもたれさせ直した後で、ラティアスを抱きとめる。
そして恐る恐る小屋の中を覗くと、かなりの血を流しながら様々な物に埋もれているフーケを見つけた。
フーケが死んでいない事を確認し、タバサと共に彼女とラティアスを運び出す。
治療が急がれるルイズ、ラティアス、そしてフーケは徒歩や馬では追いつかない。
森の入り口にいる馬は後で取りに来る事にして、自分を含む5人はシルフィードの厄介になる事になった。
学院に戻る段になってシルフィードは、5人も運ぶ事に嫌そうな態度を示していたが、渋々了承した感じで全員を背中に乗せた。
森の入り口まで来てからキュルケは疑問に思った。
ラティアスのあの力は離れて様子を見ていた彼女でも感じ取る事が出来た。
あんな攻撃の形をとる竜は今まで学習したどんな竜の中にもいない。
一見風魔法の一種にも見えたあの技には、明らかにそれ以上の何かが力として加えられていた。
ならばあれは先住魔法の一種なのだろうか?
ラティアスの特徴や振る舞いからして今までそうだと考えられる要素はごろごろあったものだ。
そうであったとしてもおかしくない。
そして……『深海の宝珠』。
あれをルイズから受け取った後、ラティアスは見違えるように速くなり攻撃力も上がった。
だとすれば、あれはラティアスに対して何らかの力を付与したのだろうか?
しかしマジックアイテムなら、魔法使いにとって良くても悪くても何らかの影響がなければならない。
しかし宝物庫見学の際に受けた説明では、人間の魔法使いが何かに使おうとしても何の役にも立たなかったと聞かされた。
改めて思う。『深海の宝珠』とは一体何なのだろうか、と。


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