「勝った・・・」
その視線の先には、真田の御旗。
「勝った・・・!」
その眼に映るのは、武田の勝利。
「御屋形様・・・」
その頭の中に浮かぶのは、信玄の姿。
「我らが・・・勝ちにござりまする!」
その心に満ちるのは、歓喜。
「勝鬨を、おあげなされ・・・!」
その後ろには、若い侍。
「武田が軍師山本勘助!その首、頂戴仕る!」
若い侍が刀を振り上げるや否や、勘助の体が光に包まれる。
侍が驚き、動きが止まった数瞬の後。
侍が驚き、動きが止まった数瞬の後。
「・・・・・」
そこに、勘助の姿は消えていた。
―――――トリステイン魔法学院にて、春の使い魔召喚の儀式がおこなわれている。
そこでは、小さな薄桃色の髪が特徴的な、少女が呪文を詠唱していた。
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・」
「五つの力をつかさどるペンタゴン。我が運命に従いし使い魔を、この地へと召喚せよ!」
瞬間、あたりが光に包まれた。
そこでは、小さな薄桃色の髪が特徴的な、少女が呪文を詠唱していた。
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・」
「五つの力をつかさどるペンタゴン。我が運命に従いし使い魔を、この地へと召喚せよ!」
瞬間、あたりが光に包まれた。
(やった・・・!サモン・サーヴァントが成功した!)
心の中は喜びに満たされた。
しかしその数秒後には絶望へと変化する。
何故なら、そこに現れたのは
傷だらけの鎧を着た、左目に眼帯をした異相の青年だったからだ。
しかしその数秒後には絶望へと変化する。
何故なら、そこに現れたのは
傷だらけの鎧を着た、左目に眼帯をした異相の青年だったからだ。
―――――目を、開く。
(ここは・・・どこだ?)
そこは、明らかに川中島では無かった。
死体は一つもなく、おかしな服装をした、様々な色の髪を持つ少年達。
なにより、それらの後ろには巨大な城がそびえ立っていた。
死体は一つもなく、おかしな服装をした、様々な色の髪を持つ少年達。
なにより、それらの後ろには巨大な城がそびえ立っていた。
「ゼロのルイズが平民を召喚したぞぉ!」
「さすがはゼロのルイズだ!」
突然、大きな声が聞こえた。
「う、うるさいわね!ちょっと失敗しただけよ!」
と、突然あたりが静かになった。
召喚されたものを、改めて認識したからだ。
その姿は、明らかに貴族では無かった。
だが、明らかにただの平民では無かった。
見たことも無い様式の鎧を着、目には眼帯。
その鎧は、幾本もの矢が刺さっており、所々銃弾の跡のような物があった。
召喚されたものを、改めて認識したからだ。
その姿は、明らかに貴族では無かった。
だが、明らかにただの平民では無かった。
見たことも無い様式の鎧を着、目には眼帯。
その鎧は、幾本もの矢が刺さっており、所々銃弾の跡のような物があった。
「ぐ、軍人か!?」
「兵隊を召喚したのか!」
(召喚?一体何のことだ)
勘助には、何が起きているのか全く分からなかった。
そもそも、自分は死んだはずではなかろうか。
あの、若い武士にこの首を取られたはずでは無かったか。
しかし、このまま何もしないわけにはいかない。
とりあえず、この中で一番年をとっている禿頭の中年男性に声をかける。
そもそも、自分は死んだはずではなかろうか。
あの、若い武士にこの首を取られたはずでは無かったか。
しかし、このまま何もしないわけにはいかない。
とりあえず、この中で一番年をとっている禿頭の中年男性に声をかける。
「もし」
その声に、注意深く勘助を見ていた男が答える。
「な、なんでしょうか」
「ここが何所か、お答えいただきたい」
「は、はい。ここはトリステイン魔法学院ですが・・・貴方は?あ、私はコルベールというものです」
「失礼。拙者の名は、武田が軍師。山本勘助と申すもの」
軍師、という言葉に反応したのか、コルベールは眉をピクリと動かした。
「して、ここは一体」
「トリステイン魔法学院よ」
コルベールでは無く、勘助の後ろに立っていた、桃色の髪の少女が答えた。
「とりすていん?聞いたことが無いが・・・」
60近い人生の中でも、聞いたことも無い単語に首をかしげる。
「ちょっと嘘でしょ!?トリステインを知らないの!?」
「こ、これ、ミス・ヴァリエール・・・」
いくら貴族ではないとはいえ、こんな形相をした軍人に対して、不遜の態度をとっているルイズに、内心コルベールが肝を冷やす。
「トリステインは、このハルキゲニア大陸にある王国よ!それを知らない何て・・・どこの辺境から呼ばれたのよ!」
「呼ばれた・・・?」
(ますます、何のことやら・・・。しかし、ハルキゲニア大陸か。もしかすると、ここは中国や、聞いたポルトガルというような、海の向こうの国ではあるまいか)
なるほど、それなら辻褄があう。
あのおかしな色の髪や、服装、そしてこの城。
全く建築様式が異なることなど、海を隔てるほど遠い国ならばおかしくはないだろう。
この国の名前や、大陸の名前など、この勘助が知っているはずもない。
あのおかしな色の髪や、服装、そしてこの城。
全く建築様式が異なることなど、海を隔てるほど遠い国ならばおかしくはないだろう。
この国の名前や、大陸の名前など、この勘助が知っているはずもない。
「して、呼ばれたとはどういうことだ?」
「だから、召喚したのよ、サモン・サーヴァントで。あたりまえじゃない」
ミス・ヴァリエールと呼ばれた少女が答える。
「サモン・サーヴァント?召喚、はて、申し訳ないがこの勘助。何のことやらさっぱりとわかりかねます」
「は?サモン・サーヴァントすら知らないの!?本当にどこの辺境から来たのよ・・・」
少女が、嘆くように言った。
ついで、口をつぐんでいたコルベールが言う。
ついで、口をつぐんでいたコルベールが言う。
「サモン・サーヴァントというのは、使い魔たる存在をこの世界のどこかから呼び出す魔法のことです」
警戒の色を残しながらも、コルベールが説明する。
「魔法?まさか、そんなものが存在するはずが・・・」
魔法とは、いわゆる法力と同じ意味を射すもののはずだ。
そんなものが存在すると信じているほど、勘助は盲目では無い。
―――が。
そんなものが存在すると信じているほど、勘助は盲目では無い。
―――が。
「確かに、川中島からここへと移動したのは確かなようだ・・・それに」
そう。
これこそが、先ほどからずっと感じていた最大の違和感。
軽いのだ。体が。
見れば、腕に力が満ち、頭には剃ったはずの髪が生えている。
若返っているのだ。
知識、記憶はそのままに、体だけが、20前後の姿へと。
これこそが、先ほどからずっと感じていた最大の違和感。
軽いのだ。体が。
見れば、腕に力が満ち、頭には剃ったはずの髪が生えている。
若返っているのだ。
知識、記憶はそのままに、体だけが、20前後の姿へと。
(これが、魔法というものか・・・なるほど、これならば川中島からこの地へと誘うことも、できるやもしれん)
「わかった。これについては信用しよう。だが、何故某がここへと誘われたのだ」
「それは私にはわかりません。しかし、彼女にとって最も必要とされているものを呼び出すのが、サモン・サーヴァントなのです」
「必要?この勘助をか?なるほど、戦でもするというのか」
「い、いえ、そんなことはありません!いや、それよりも・・・先ほど、軍師とおっしゃいましたが・・・」
「いかにも。武田家の軍師だ」
「武田家・・・?それは一体」
「ふむ。某がここを知らぬのと同じように、そちらも知る筈はないだろう。簡単にいえば、この国と同じ。某の居た国だ。武力において、最強と呼ばれる国でもある」
「な、なるほど。一国の軍師を、それも大国の軍師をミス・ヴァリエールは召喚してしまったのか・・・人間の使い魔すら例がないというのに・・・・」
コルベールは頭を抱えたくなった。
が、自分が何をすべきなのかを思い出したのか
が、自分が何をすべきなのかを思い出したのか
「み、ミス・ヴァリエール。この方に契約の儀を行いなさい」
落ち込んで自分を失っていた桃色の髪の少女に、コルベールが呼びかけた。
「え!?」
突然話を振られた少女が、ビクリ、と体を震わせた。
「そ、そんな!平民の使い魔なんて聞いたことありません!これはきっと何かの間違いです!やりなおさせてください!」
まさに、必死、という形相でコルベールに異を唱えている。
(使い魔、というものが何かはわからぬが・・・話からすると、大体従者のようなものであろう。何をそこまで必死になることがあるのか)
「残念だが、ミス・ヴァリエール。それはできないことだよ。これは神聖な儀式だ。やり直しは認められない。絶対に、だ」
「そんなぁ・・・」
ヘナヘナと少女から力が抜けた、が。
すぐに立ち上がった。
すぐに立ち上がった。
「し、仕方ないわ、私が召喚してしまったんだから・・・それに、これと契約しなくちゃわたし、留年だもの・・・。初めてなのに・・・」
「貴族とこんなことができるなんて、普通は一生ないんだからね!感謝しなさい!」
(?一体何のことだ。儀式、だというが。何のことやら)
すると、少女が勘助の顔を両手でつかみ。
その異相の中の唇と、自分の唇を重ねた。
その異相の中の唇と、自分の唇を重ねた。
「なっ・・・!」
勘助がその顔を驚きで染めている。
対称に、少女の顔は朱色に染まっていた。
対称に、少女の顔は朱色に染まっていた。
「グッ・・・」
勘助の表情が苦悶に歪んだ。
見れば、左手に淡い光が走っている。
そして、ルーンがその手に刻まれた。
見れば、左手に淡い光が走っている。
そして、ルーンがその手に刻まれた。
「ふむ・・・珍しい形のルーンだな・・・あとでスケッチさせて貰おう。さて、皆さんお待たせしましたね。部屋へ戻りなさい」
コルベールが契約の完了を確認し、生徒達を教室に返した。
「これで、貴方は正式に私の使い魔よ。これからは、私の事はルイズ様か、ご主人さまと呼びなさい」
ルイズが、何かをふっ切ったようにやけくそ気味に言った。
それの言葉に、勘助がピクリ、と反応した。
それの言葉に、勘助がピクリ、と反応した。
「ご主人・・・だと?」
ギロリ、と片方の目でルイズをにらむ。
ウッとルイズが竦んだ。
だが、怯むも気丈に振舞う。
ウッとルイズが竦んだ。
だが、怯むも気丈に振舞う。
「そ、そうよ!私があなたのご主人様になるの!契約したんだから」
「小娘。口が過ぎるぞ」
「こ、こここ小娘って言ったわね!使い魔のくせに!」
「真実だ。わしから見れば、十分に小娘と言えるだろう」
「また言った!」
「真実を言って悪いこともなかろう」
「い、いい?貴族は名誉というものがあるのよ。命よりも大事な・・・それを、貴方は侮辱したの!」
「侮辱だと?それならば貴様の方だろう。突然拙者をこの地へと召喚し、挙句の果てには僕になれと!この勘助が仕える御屋形様はただ一人。武田信玄のみでござる」
「そんなことは知らないわよ!あなたは私の使い魔なの!」
「そのようなことは知らん。迷惑!某を元の場所へ返してもらおう!やらなければならぬことは山ほどある!」
(そうだ・・・。決戦に勝利した以上、上杉を討伐し、ゆくゆく天下を取るための準備をせねばならん。上杉の脅威がなくなった今こそが、天下を得る好機!)