あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

仮面のツカイマガイ ご奉仕その2

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ご奉仕その2

 『錬金』の授業を担当する教師、『赤土』のシュヴールズは言った。
「では、ミス・ヴァリエール! 貴方には前に出て『錬金』をしてもらいます」
 シュヴールズの前には彼女の二つ名と同じ赤土の山が置かれている。
 それを『錬金』の魔法で別の物質に変えろというのだ。
(ど、どうしよう……!)
 だがルイズは『錬金』はおろか、コモンマジックすら上手く使えない。
 ここは正直にできませんというべきか? だが――
「ほら、『ゼロ』のルイズ! 早くやりなさいよ!」
 意地悪い級友の野次が飛ぶ。ここで逃げるわけにはいかない。
 ルイズ、絶体絶命のピンチであった。

                          ☆

 ルイズがメイドガイ・コガラシなる怪しい男を召喚し、己の使い魔と定めてから数日が経過した。
 このメイドガイ、とにかく怪しい。怪しすぎてもうどこからツッコミを入れればいいのかわからないほど怪しい。
 何せ筋骨隆々とした野性味あふれる大男がメイド服を着ているのだ。これを怪しいと言わずなんというだろうか?
 このような使い魔を召喚したルイズの生活はそれまでのものとは一変した。
 メイド服を着た大男と四六時中同居生活。そんな生活を送る人間が、このハルキゲニアに何人いるだろうか?
 そしてそのメイドガイ・コガラシの仕事ぶりたるや筆舌に尽くしがたいものがあった。
 いい意味で、そして悪い意味で。

 まずはルイズの服装を見てみよう。基本的に自分の面倒は自分で見るのが規則である貴族生徒たち。
 高貴な彼らのこと、同じ服を毎日着るようなずぼらなことはしないが、それでも毎日の服装はだらしないものになりがちである。
 だがメイドガイを呼び出して以降のルイズは違う。パリっと糊のきいた、皺一つ無いシャツ。
 スカートの折り目は0.1サンチ単位で揃えられ、マントはまるで新品のような輝きを放っている。
 いずれもこれはコガラシの仕事ぶりによるものであることは言うまでもない。
 だが、
「メイドガイ・スチーム・アイロンって何よ! なんで手から蒸気がでるわけ!?」
「ククク……メイドガイ超振動クローの応用よ。これでご主人の衣服に皺は残さん」
「だからなんでそんなことができるのよー!」

 次はルイズの部屋だ。必要以上の華美を嫌い、元々調度品の類は少ないルイズの部屋は常にそれなりに整理整頓されていた。
 しかしコガラシが掃除をしだしてから、ルイズの掃除など掃除になっていないことに気づかされた。
 如何な技術の賜物であるか。果たしてどうすればでこぼこの板間が顔の映るほど磨かれたものになるだろう? 
 だが、
「ご主人よ。下着にシミができているぞ」
「えっ!? ええええええ、ななな、なんでそんなことを!」
「メイドガイアイは透視力! いかなる汚れも見逃さない、この目を持ってすれば造作も無いこと。この部屋の掃除もその賜物よ!」
「ま、まさかアンタずっとそのメイドガイアイってやつを……」
「クククク……いかにも。おはようからおやすみまで貴様の暮らしを見つめるメイドガイ。ご主人のことは何一つ見逃さん。
そしてメイドガイアイによれば、そのシミの原因は――」
「ばばばばばばかああああああああああああ!」

 そして食事。これはもともとコック長のマルトーが腕を振るっていたもので。
 ルイズもそれは普通に美味しい食事だと思っていた。
 だがコガラシに言わせればそれはあくまでも凡人の到達しうるレベルの『美味』らしく、
 メイドガイたる彼がその仕事を任せうるに足るものではないらしい。そしてコガラシは不敵な笑みを浮かべて厨房に消えた。
 数十分後、料理人としての常識を粉々に打ち砕かれたマルトー氏の姿が厨房にあった。
 愕然としている彼には申し訳ないが、コガラシの作った料理は彼のものよりも数段上の『美味』であった。
 だが、
「美味しい料理を作るのはいいけれど。その前に――その引きずっているモノは何かを説明しなさい!」
「これか? その辺をふらふらと飛んでいたから生け捕りにしたまでよ。喜べご主人、今夜は生け造だ!」
「きゅいー! きゅいー! た、助けて欲しいの!」
「それはタバサの使い魔よ! 早く返してきなさい!」


 こうしてルイズの生活水準は衣・食・住全ての面において、他の生徒により非常に高い水準のものとなっていった。
 だが、それに比例するかのごとく……。ルイズのストレスは増大の一途を辿っていったのだ。
 今日もまた、ルイズの悲鳴とコガラシの不敵な笑いが木霊する。
「コガラシぃー! あんた何やってんのよー!」
「ククク……知れたことよ。今日も貴様に最高のご奉仕をお届けだ!」

 これは、そんな主従のある一日の記録である。

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 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、16歳。
 ハルケギニアの始祖ブリミルの血筋にして貴族の娘――
 当人はまだ知る由もないが、彼女は四系統のいずれにも属さない始祖の魔法「虚無」を操ることができるのだ。
 故に、彼女の存在を利用せんとするもの、疎ましく思うものから彼女は狙われる運命にある!
 メイドガイ・コガラシは始祖ブリミルが彼女を謎の敵から守るために異界より遣わした伝説の使い魔なのである!
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「うう……」
 席を立ったはいいが、教壇に進むこともできず。かといって戻ることもできない中途半端な位置で立ち尽くす。
 自分が魔法を使ったところで、いつものように爆発するのが関の山。
(ならいっそ、このまま教室中を爆発させて有耶無耶にする!?)
 進退窮まって、そんな不穏当な考えを抱いたその時。ルイズの耳にあの男の声が聞こえた。
『クククク……困っているようだな、ご主人よ』
「!」
 突然聞こえた声、それは聞き間違うはずもない。そう、誰あろうそれは。
「コ、コガラシ!?」
「? ミス・ヴァリエール。何か言いましたか?」
 不思議そうな顔をするシュヴールズ。彼女にはこの声が聞こえていないのか。
 だがルイズが辺りを見回しても、どこにもコガラシの姿は無い。

『クックック、何をキョロキョロ間抜け面を晒しているのだご主人よ。俺はそこには居ないぞ』
(あ、あんた、どこから喋ってるのよ!)
『サンライトイエローのメイドガイヴォイス! 独自の特殊な発声法により、ピンポイントで声を届かせる貴様専用秘話音声だ!
それを使い、俺は今教室の外から貴様に向けて声を発している!』
 このメイドガイのこと、透明化くらいやってのけたのではないかと思ったが、
 どうやら何らかの手段を使って、こちらに声を届かせているらしい。
(私にだけ聞こえてるってこと? でも、私の声はどうやって聞いてるのよ?)
 その手段がどうであれ(このメイドガイが何かを行う時、そこに理屈を見出すのは無意味だとルイズは既に学習している)、
 こちらはそんな離れ業は使っていない。
『メイドガイイヤーは地獄耳。メイドガイたるもの、例え100キロ離れていてもご主人の声を聞き逃しはしない』
(……まぁ、あんたのことだからそれくらいじゃ驚かないけど。それより何の用? 私は授業中よ!)
 意外と言えば意外なことに、コガラシはこちらのやることを邪魔するということは滅多にない。
 むしろ勉強をしていれば茶を淹れたり、お腹が空けば夜食を持ってくるなど親切極まりないほどだ。
 もっとも、そうした『コガラシの性格』と『メイドガイとしての仕事ぶり』のアンバラスさにルイズはほとほと困り果てているのだが。

『状況は見ていればわかる。『錬金』とかいう魔法が使えなくて困っているのだろう?』
(……そうよ。悪い!? どうせ私は『ゼロのルイズ』よ!)
 この男を相手に隠しとおせるとは思わず、ルイズは自分の二つ名を明かす。
 魔法が下手で下手でどうしようもない、何もできない、できることのない『ゼロ』のルイズというわけである。
 屈辱に耐えるルイズを嘲笑うかのようにコガラシは笑う。
『クックック……恥ずかしい二つ名もあったものだな』
(う、うるさいわね!)
『――だがそんなご主人とはいえ、恥をかくのをみすみす見逃すメイドガイではない。俺が力を貸してやろう』
 力を貸す、とはどういうことだ。まさか代わりにコガラシが『錬金』をするというのか?
(あんた平民でしょ! 魔法なんて使え…ない……使えないはずよね?)
 いかにこのメイドガイといえど、さすがに魔法は使えないはず。
 ……やれと言えばなんなくこなしてしまいそうではあるが、それだけはきっと無いはず。無いと思いたい。
 ルイズの心配
『当たり前だ。メイドガイは貴様らの言う『魔法』などという奇態な能力は持っていない』
(そ、そうよね。それだけは無いわよね――って、あんたが奇態とか言うな!)
 かなり聞き捨てならないことを言われ、そのことに文句を言うがメイドガイは取り合わない。

『奇態を奇態と言って何が悪い? この俺にかかれば魔法など使わずとも、あの程度の芸当朝飯前よ!』
(い、一体どうやるっていうのよ)
 あの程度の芸当。シュヴールズが土塊を真鍮に変えてみせたことだろう。
 トライアングルクラスのメイジですら真鍮が精一杯なのだ。それをどうやって再現するというのだ?
『簡単なことよ。貴様が錬金の魔法とやらを唱えて見せる。そして一瞬の隙をついて俺があの土の塊を別の物質に摩り替えるのだ。
クククク……、これで錬金の一丁あがりというわけだ』
 なるほど。それならこの人知を超えた男、メイドガイならば可能だ。
 しかし、問題が一つある。
(で、でもそれってズルじゃないの……)
 そう。これは明らかに反則行為だ。
 たしかな恥はかきたくないが、生真面目なルイズにしてみれば抵抗のあるプランだ。

『努力を怠り失敗するは愚か者の為す事よ。しかしご主人の隠れた努力を知らぬメイドガイではない。
己の労を惜しまぬ努力は報われねばならぬ。報わねば報いてみせようメイドガイ。ご主人の努力の結果を見せ付けてやるのだ!』
 ルイズは毎日のように魔法の練習や勉強をしている。だがその努力の結果は一向に現れない。
 それを、野次を飛ばしている級友たちに見せつけててやりたいと思う気持ちが強いのもたしかだ。 
(ううっ……。こ、今回だけだからね!)
『ククク……了解だ。どうせだ、『珍しいモノ』と摩り替えてやろう』
 意を決し、ゆっくりとルイズは教壇の前に歩いていく。
 それを見守る生徒たちはすでに防御体制をとっている。ルイズがいつ『爆発』を起こすかわかったものではないからだ。
 だがそれは逆に好都合。コガラシの摩り替えがやりやすくなるだけだ。
 事情を知らないシュヴールズは、人の良さそうな顔をしてルイズを待っている。

「――――」
 教壇の前に立ったルイズは杖を振り、『錬金』の魔法を唱えだす。
 しかしそれは完全にフェイク。あるのかないのかわからないルイズの魔力は込められていない、ただの見せ掛けにすぎない。
「『錬金』!」
 そして呪文を完成させたルイズが杖を振り下ろしたその瞬間。
『メイドガイ・フラッシュ!』
 ルイズにだけ聞こえるコガラシの叫びと共に、教室が激しい閃光に照らされる。
 すわルイズの爆発か? と思う生徒たち。しかし一向に、光以外の現象。熱や爆風は起こらない。
 不思議に思い、恐る恐る眼を開ける生徒達は信じられない事態を眼にする。
 教壇に赤土ではなく、それと同じくらいの量の『謎の鉱物』が鎮座していたからだ。

「成功した!?」「ゼロのルイズがか!?」
「やるじゃありませんか、ミス・ヴァリエール! こうも上手く金属を錬金するとは、土のメイジでもなかなかできないことですよ」
 驚きの声を挙げる生徒、そして感嘆の台詞でルイズを誉めるシュヴルーズ。
 たしかに自分でも見事と思えるほどの『錬金』ぶりであった。
 しかしあまりにも手放しで誉めるシュヴルーズに、少し罪悪感が沸いてくるルイズ。
 誤魔化すように謙遜しながら言う。
「あ、あはは。いえ、たまたまです。普段はこんなにあっさりとは」
 あっさりも何も、錬金を成功させたことのないルイズには本物の『錬金』がどんなものかはわからなかった。
 そんなルイズを他所に、シュヴルーズは疑問を述べる。
「で、これは何ですの? なんというか、不思議な感じのする石ですが」
「え? えーっと……」
 たしかに。目の前の錬金物は何なのかわからない。一見して黄金のような貴金属の類ではないことは確かだ。
 黒っぽいような白っぽいような不思議な色をしていて、鉄などとは少し違う感触だ。そしてひどく重い。
 何より『土』のトライアングルメイジのシュヴールズが言う『不思議な感じ』とは一体なんであろうか。
 トライアングルともなれば、普通の人間が感じ取れるものではないことを感じていても不思議は無い。
 考えてもわからない。しかし、わかりませんとも言えない。仕方なくルイズは小声でコガラシに尋ねることにした。
(コガラシ! これ何なのよ?)
 どこか遠くよりコガラシの声が響く。 


『ウラン鉱石だ』


(う、うらん? 何それ?)
 聞いたこともない物質の名前だ。ひょっとすれば、コガラシの居たところから持ち込まれたのかもしれない。
『主に――などで産出され、――として加工される。その利用法は――で、莫大なエネルギーが――であり、――であるが故――よって鉱物資源としての価値は非常に高い。言うなればレアアイテムよ』
 コガラシは意外なほど丁寧に解説をしてくれるが、その内容はルイズにはさっぱりわからない。
 ルイズの頭の回転が足りないのではなく、単純に知らない単語が多く使われているからであったのだ。
 ただ一つ気になることがあった。

(貴重品なのはわかったけど、『ほうしゃせいぶっしつ』って何よ?)
『――が――であり、――が――な物質のことだ』
 やはりなんのことだかさっぱりわからない。だが一つだけわかること、それは――
(よくわかんないけど……ひょっとして危険物?)
 『ほうしゃせん』とか『はつがんせい』がどうのこうのと言うその単語からは何か洒落にならない危険な感じがする。
 ルイズの問いにコガラシはしばし考え込むような沈黙を送り。

『ムウ……………………なに、かえって免疫力がつく』
「つくかバカああああああああ!」
 怒りとともに杖を振るい、『錬金』の魔法を発動させ――ることはできず、『ウラン鉱石』は爆発し、消滅した。
 そしてルイズはやはり爆発を起こす羽目になってしまった。

 爆風の中でルイズは『結局こうして何もかも吹き飛ばしてしまえば楽になるんだ』となんとなく悟ってしまうのであった。

                          ☆

「うー……」
 自室のベッドの上に突っ伏してルイズは唸る。今日もいつものように疲れがどっと肩にのしかかってくる。
 一般的な貴族生徒の負うであろう苦労レベルをはるかに超えた疲れに、もはや一歩も動くもできない。
 その理由は、言わずと知れた今日の『錬金』の授業のせいである。

 あの爆発の後始末では、『ひばく』というやつはコガラシがメイドガイ的な何かを駆使して抑えたらしい。
 聞く限りではメイドガイがどうとかいう次元の話ではなさそうだが、コガラシ的にはたいしたことのない仕事だったらしい。
 それというのも不思議なことに飛び散ったはずのウラン鉱石は完全に『消滅』してしまったからだ。
 コガラシもそれには不思議そうにしていた。ルイズの起こす爆発にはそうした力があるのかもしれない。
 しかし、そんなことはどうでもいい。

「結局今回も失敗……」
 ルイズの爆発でなんだか有耶無耶になってしまった錬金の授業。結局ルイズの錬金は失敗ということになったらしい。
 それでいい。やはり人間正直が一番なのだ。ズルしてはいけない。今回のことは言わばズルへの罰なのだ。
 これからは真っ直ぐに、誰に恥じることのないようにしていこう。そう心に誓うルイズであった。

 ルイズが天と自分とブリミルに誓いを立てた次の瞬間。
「今帰ったぞご主人」
 どこかへ出かけていたコガラシが帰ってくる。
「フム……」
 コガラシはベッドの上に突っ伏すルイズを一瞥し、何事を考え込む。
「どうやらご主人はウランをお気に召さない様子。ならばこれでどうだ『プルトニウム』に『トリウム』……」
 そう言って懐から取り出すのは大小さまざまな怪しい雰囲気の石ころたち。

「…………」
 それを見たルイズは疲れを見せたまま幽鬼のように立ち上がり、無言で杖を振り上げ
「『錬金』『錬金』『れんきいいいいいいいん!!!』」
「ヌオオオオ!? ご主人何をするーーー!」
 そして今日もルイズの爆発が炸裂した。

                                (続く!)

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