あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と最後の希望 Level03


level-3 「相棒」


「決めたわ!」

 握り拳を作って立ち上がるルイズ。
 勢いで椅子が倒れた、それを屈んで立て直すチーフ。

「チーフ!」

 首が折れそうな勢いで振り向くルイズ。
 目には異様な輝き、確固たる意思が込められている。

「剣を買いに行くわよ!」

 昨日の今日は虚無の曜日、時間は午前で休日である。
 朝起きてからずっと部屋の中をうろつき、部屋の端に行き着くとチーフをちらり。
 また歩き出して端に着くとチーフをちらり、最後には椅子に座り横目でチーフを見つめ続けていた。
 それを何時間も繰り返し、やっと決意したように言った。

「武器ならある」

 背中に背負ったアサルトライフル、そして腰に付いたハンドガン。
 どちらもチーフの世界の武器であり、扱いに精通し彼の技量ならば十二分に扱いこなすだろう。
 予備の弾も十分とは言えないが所持している、しっかり狙いを付けて撃てば百を超える敵でも捌けるだろう。

「前々から思ってたけど、それって何の武器?」

 ルイズはそれが『銃』であると分からなかった。
 話に聞いたのみで実物は見たことが無い。
 話より大分形が違い大きさもかなりあって、それが銃であると辿り着けなかった。
 銃は一部の銃士隊しか扱っておらずサイズはせいぜい短銃か、流線的なフォルムを持つ長銃くらい。

 施条、ライフリングが刻まれていない単発滑腔銃でメイジが注意するほどの武器ではなかった。
 一発撃つごとに手間の掛かる装填、中距離でも命中精度が落ち、威力も極端に落ちる。
 弾道も不安定になるため、確実に当てる為には一定の距離まで敵を近づけさせる必要もある。
 また、当たったとしても頭や心臓など、急所で無い限り秘薬無しでも十分に治せる程度の怪我しか負わない。

 上記等の理由で使い所の難しい武器、という扱いになっている。
 そういった事により、さほど進化せずこの現状を作っていた。
 もっとも、チーフの持つ銃とハルゲニアの銃は性能が違い。
 射程距離や威力は物によっては数百倍、千倍以上にも及ぶ。
 それを知らないルイズは当たり前にさほど強くない武器であると考え思ってしまっていた。

「へぇ、これが銃……、ちょっと貸して」

 チーフの側面に回りこみ、腰や背中に担がれる銃を指で突付きながら見つめる。

「駄目だ」

 貸してくれるよう聞いてくる問いに、チーフはすぐさま拒否の姿勢を見せる。

「どうしてよ」
「危ないからだ」
「いいじゃない! これは命令よ!」

 ビシッと指先をチーフの顔に向ける、命令と言われて従うチーフ。
 ルイズは理解していた、『お願い』では無く『命令』として出せばチーフが従ってくれることに。
 腰からハンドガンを外し、安全装置を掛けてルイズへ差し出す。
 重いぞ、と言って渡すが案の定ルイズの手から零れ落ちる。
 ガキン、と鈍く重い音がした。

「お、重すぎるわよ!」

 銃器としては最も軽いであろうハンドガンで重い、ルイズが如何に非力か理解できた。

「だから言っただろう、重いと」
「こんな使いづらい物より、もっと使いやすいのにしなさいよ!」

 チーフにとっては剣を振るより扱い易い物だが。

「近接武「さあ、行くわよ! 付いてきなさい!」」

 と、話し出す前に廊下へ飛び出していった。





 アクセルを踏み絞り、街路をかなりの速度で走る。

「凄い凄い!」

 おもちゃを買い与えてもらった子供のようにはしゃぐルイズ。
 二人が乗るのは鋼鉄の箱、『ワートホグ』。
 地を掛ける乗り物としては最も早いんじゃないかしら?
 突然『ペリカン』へ行きたいなんて言うから、待っていればこんな物に乗ってきた。

「ほんと、凄い……」

 響きは、先ほどまでの言葉とは違っていた。
 チーフはルイズの呟きと風切り音を耳に、指示された方向へアクセルを踏み込む。
 そして走ること1時間足らず、木々の間から見えたのは白い石作りの街。
 『ブルドンネ街』、王都の一角。
 ワートホグを街の門より離れたところに止める、さすがに堂々と乗り込むことはしなかった。
 こんな物で入り込めば確実に混乱が起きるだろう。
 しょうがないと門まで歩いていく、馬より断然速く到着できたのだから文句は言えない。
 門を潜ると並ぶのは数多の露天や商店、道幅5メイルほどで多数の人々が賑わい通りを闊歩する。

「ちゃんと付いてきなさいよね」

 ズンズンと道の真ん中を歩く、見ると道が少し開ける。
 道行く者たちは羽織ったマントで気が付いたのだろう、ルイズが『貴族』であると。
 そしてその背後について歩くチーフの姿を見て人の波は次第に開けていく、割れた海のように。



「えっと、こっちだったかしら」

 四辻に出る、ルイズは周りを見渡しながら呟いていた。
 狭い路地裏にはゴミなどが散乱していて、鼻に付く臭いが漂っている。

「秘薬屋の近くだったと思うけど……」

 袖で鼻を塞ぎながら目的の武器屋を探しているようだ。

「あれかしら」

 汚い路地裏の一角に剣の形をした看板がぶら下がっている。
 看板がぶら下がっているところに行ってみると、階段があり、上がりきった所にそれらしき店があった。
 上りきって扉を開けるとカウンターの奥に店主らしき男がパイプを吹かし座っている。

「ああ? ここはお嬢ちゃんが……、これは失礼を」

 入るなり店主が吐いた言葉を謝る。
 マントか、あるいは紐タイ留めの五芒星を見たのか。

「それで、何か御用で?」
「剣が欲しいんだけど」
「貴族様が剣を? こりゃあ、珍しいこって」
「いいえ、私じゃないわ。 使い魔に持たせるの」

 ルイズがそう言った時には扉を開けて入ってくるチーフ。

「そ、そちらの方が持たれるので?」

 チーフの異様さに押されたのか声が上ずる。

「ええ、剣の事はよく分からないからそちらに任せるわ」

 腕を組みつつ、胸をそらせた。

「わかりやした」

 鴨がネギ背負ってやってきた、店主は奥に入るなりそう呟く。
 勿論、それを聞き逃すチーフではなかった。

「ルイズ」
「なに?」
「自分で確かめる」
「そ、そう」

 壁に掛けられた武器を見始める。
 手に取り、軽く叩く、その後一度振る、そしてまた元に戻す。
 そこまで試された武器は十振りも無かった。
 一通り目を通す、最後に視線をやったのは樽の中に突っ込まれた武器。
 錆びていたり、刃が欠けている、要は粗悪品の物。
 その中の一つに手を伸ばそうとすると。

「おい、にーちゃん。 俺を手にとってみねぇか?」

 樽の中から声が響いた。
 その声にチーフの手が、店主が店の奥から持ってきた武器の話を聞いていたルイズが、そしてその話をしていた店主が止まった。

「にーちゃん、かなり出来そうじゃねぇーか!」

 カタカタと震える、刀身ほぼ全てが錆びに覆われた大剣。
 突っ込まれた樽の中、周囲の売り物になるかどうかギリギリの品物と同等の剣。

「デル公! てめぇは黙ってろ!」
「もしかして、インテリジェンスソード?」
「ええ、口うるさい奴でして」
「おうおう、どうせそんなガラクタ高値で売りつけようとしてるんじゃねぇか!?」
「なんだと!? これはてめぇなんかより上等な代物だってんだ!」

 カウンターに置かれた剣、眩い宝石が幾つも散りばめられ、鏡のような両刃の刀身が煌く。
 高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が作り上げた名剣、幾重にも魔法が掛かっていて鉄をも一刀両断。
 そういう話だったが、ルイズの興味はインテリジェンスソードに向いていた。

「あんた、名前は?」
「おう、デルフリンガー様ってんだ!」
「へぇ、インテリジェンスソードなんて初めて見たわ……」
「そんなことより、にーちゃん早く握ってみれや! にーちゃんの目に叶うと思うぜ!」

 デルフリンガーと名乗った剣は自分を販促。
 言われるがままにチーフはデルフリンガーを握って樽から引き出す。

「……おでれーた、やるとは思ってたがにーちゃん『使い手』か」
「使い手?」
「にーちゃん、俺を買え!」
「これにする」
「え?」

 即決、ルイズと店主の声が重なった

「そ、そんな駄剣なんかよりこちらのほうが断然──」
「そ、そうよ! そんな錆びだらけの──」
「錆は落とせばいい、それに」

 言葉が止まる、チーフはデルフリンガーを見つめ。

「これはいい武器だ」





 それを店の外から覗いていたのはキュルケとタバサ。
 昼前に起き、『ダーリン』ことマスターチーフに愛に来たのは良いが部屋はもぬけの殻。
 ただ椅子が一つ倒れているだけだった。

「どこに言ったのかしら」

 ルイズの部屋を見渡した後、窓に手を掛ける。
 外に広がる風景を見下ろすと、何か見知らぬの物体に乗って道を行くチーフとルイズが見えるではないか。
 その時すでに、ルイズの部屋に誰も居なくなっていた。
 場所を移し、勢いよく扉を開けた部屋はタバサの部屋。
 壁に背をしてベッドに座り、黙々と本に目を通す、自身より長大な杖を抱えた青髪の小柄な少女。
 部屋に入るなり大声で叫ぶが、一切タバサの耳には入らない。
 本を読む際に入る邪魔な雑音を消すための無音魔法『サイレント』を掛けていた。

 隣で、手振り身振りでタバサに話しかけようとするキュルケにしょうがなくと言った面持ちで魔法を解く。
 話によるとルイズとその使い魔が何処かへ出かけたらしい。
 馬より速い、何かに乗っていたため、馬では追いつけない。
 そこでタバサの使い魔、風竜『シルフィード』で追いかけてほしいと言っていた。
 タバサは少し悩んだ、今日は貴重な『虚無の曜日』、溜まっていた書物を読破するにうってつけだったが。

「わかった」

 無二の親友の頼みでは断れない、後に分かる、その選択は正解であったと。





 ルイズ達を追いかけ、尾行していれば。

「うぎゃあああ!」

 と汚い悲鳴を上げ、投げ飛ばされたのは折れた剣を持った一人の男。
 事はキュルケとタバサが覗き、ルイズとチーフが居る武器屋。
 入ってきたのは4人の無頼漢。

「親父、約束の物は用意出来てるかぁ?」

 店主はそいつらの顔を見た途端、顔を大きく歪めた。

「ふざけるんじゃねぇ! 誰がてめぇらなんぞに金を出すかってんだ!」

 店主は何かしらの理由で金を要求されているが、それを突っ撥ねている。
 まあ、見るからに柄の悪い男たち。

「ああ、そうかい」

 手に持つ鞘に入った剣を飾り置かれた剣に振り下ろす。
 大きな音を立てて、それらは崩れ落ち、床に転がる。
 それを見て切れたのはルイズ。

「これでもまだ、ださねぇってか?」
「店主、出す必要ないわよ」

 「あ?」とにごった声を上げたのは男たち。

「分かっておりやすよ、若奥さま。 こんな屑どもに渡す金など一硬貨すらありやせん」

 分かてるじゃないとルイズは店主に向きなおす。
 そして何事も無かったかのようにカウンターに置かれた剣とデルフリンガーの値段を聞き始める。
 やはりと言うか、無視される男たちは憤慨した。
 一人の男がルイズへと歩み寄る。

「小娘が、大人を舐めると酷い目にあうってのを教えてやるよ」

 伸ばした手が、ルイズに掴みかからんとした時。
 男の手が太い緑色の手に掴まれていた。

「触るな」

 男たちは気が付いていなかった。
 薄暗く、ランプで照らされた室内はそれでもなお暗かった。
 その部屋の片隅、右手にデルフリンガーを握るチーフが居たことに。
 動かなかった故に奇妙な鎧、その程度にしか思っていなかった。

「な!?」

 それを見て驚いたのは男たちのみ。
 ルイズと既に一度驚いた店主は剣の値段を話し合っている。

「若奥さま、そちらの方はおやりになるので?」
「そうよ、あんな平民が束になって掛かってきても負けることは無いわよ」

 自慢げに言うその姿は自信に満ち溢れ、店主に信じ込ませるような風格を放っていた。

「そんなにお強いんで? それならこちらの剣を──」

 背後で起こっている出来事を尻目に淡々と商談を進めていく。

「た、高いわね、立派な家と森つきの庭が買えるじゃない!」
「てめぇ!」

 チーフに腕を掴まれた男は不自然な体勢で剣を振るうが。
 逆に振るわれたデルフリンガーの一撃で剣が折れて男は床を転がる。

「おうおう、思った通り相棒はやりやがる」

 カタカタと喋るデルフリンガーはうれしそうだった。
 一歩、カウンターに体を向けたルイズの背後に立つ。
 ただそれだけだ、ただそれだけで男たちは尻込みした。
 狭い店内では己の不利を悟ったのか、男たちは外に出る。

「出てきやがれ!」

 男たちが叫ぶが、店内から誰も出てこない。
 チーフは店内入り口の前、十分に剣が振るえる位置でただ立つ。





「正解」
「なに? どうしたの?」

 それを遠くから覗く二人、突如言ったタバサの言葉にキュルケは頭をひねらせる。

「あれで正解」

 あれ、店の外から出ない事が最善の方法とタバサは言った。
 一対多数で戦う場合、如何に一対一に持ち込めるかだ。
 同時に襲われるのは非常に危険、同時に対処できない場合は死を意味する。
 その点で言えばチーフの判断は正しい、あの狭い入り口では一人、よくて二人しか同時に入れない。
 さらに、その狭い入り口のおかげで満足に剣を振るえまい。
 入ると同時に殴り飛ばされるのが関の山。
 勿論、相手が遠距離武器、魔法や銃などを持っていない場合に限るが見たところ男たちは杖を持っていないし、銃もなさそうだ。
 故にこの結論に至る。

「噛んでいる」
「そうねぇ、軍隊経験でもあるのかしら」

 キュルケから決闘の話を聞いていたが、実際目にするとでは大分違った。
 タバサの目には動きに無駄が無い、効率を重視した動きに見えていた。

「これは……、知らない」

 小さく、キュルケにも聞こえない声で呟いた。




 武器屋の入り口付近には剣を折られ気絶した男が4人、予想通り殴り飛ばされた。
 そんなことはすぐに忘れ、店主とルイズはこっちにしようと武器を進めてくるがチーフはデルフリンガーを選んだ。

「これから宜しくな! 相棒!」
「本当にそれでよかったの?」
「ああ」

 背中にアサルトライフル、右腰にハンドガン、左腰にはデルフリンガーが付けてあった。

「本当に、本当にそれでよかったわけ?」
「ああ」

 何度も「それでよかったのか」と繰り返すルイズ。
 そのたびに「ああ」と呟く。
 問答しながら軽い金属音を立て、元来た道を戻る。

「いやー、ほんとすげぇな、相棒は」

 デルフリンガーはデルフリンガーでチーフを褒めっぱなし。
 「ちょっと! 五月蝿いわよ!」と怒鳴ると「おっとすまねぇ、うれしくてついな」とカタカタ揺れる。
 所持金ほぼ全てをデルフリンガーにつぎ込んだ、と言うか持ってきた所持金で買える物がデルフリンガーだけだった。
 幾つか欲しかった物があったがここは諦め、帰路に着いていた。
 まさか剣がここまで高いとは思っても見なかったルイズ。

「しかしなぁ、相棒はすげぇ所を渡ってきたんだなぁ」
「行き成り何言ってんのよ」

 いや、なんでもねぇとデルフリンガーは黙る。
 はぁ? とルイズは頭をひねる。

「いやいや、ほんとどうでもいいって」
「言いなさいよ、気になるじゃない」
「だってよ、相棒自身のこと教えてもらってねぇんだろ? なら俺から言えるわけねぇ」

 その言葉に、あ、と気が付く。
 チーフ自身のこと、確かにその強さばかりに目が言ってチーフのことは殆ど知らなかった。
 チーフが左手でコツンとデルフを叩く。

「おっといけねぇ、おらぁ黙るぜ」

 と、雰囲気をかき回した犯人はカチンと黙りこくった。

「………」
「………」

 デルフの一言により微妙な空気になってしまった。

(確かに気になるけど……、今はまだ私の使い魔じゃないし……)

 うーん、と悩むルイズ。
 やはり何も言わず後ろを付いて歩くチーフ。
 そこへ、ルイズの仇敵。

「はぁーい、ヴァリエール」

 と聞きなれた嫌な声。
 ルイズが頭を上げるとワートホグに寄りかかるキュルケとシルフィードに座って本を読むタバサ。

「なななんでツェルプストーがここに居るのよ!」

 食って掛かるように質問を繰り出すルイズ。

「いえね、折角の虚無の曜日なのに学院に居るのもどうかと思って街に来てみたらこんな物見つけて調べてたら、貴女達が現れたってわけ」

 「うそつき」とタバサは心の中でつぶやき、本を読みながらもチーフへ視線をやっている。

「嘘おっしゃい! まさかつけて来たわけじゃないでしょうね!?」
「それこそまさかよ、折角の虚無の曜日に『ゼロのルイズ』を付回してなんになるのよ」

 キィー!とハンカチを噛み千切りそうな勢いで口喧嘩が始まる。

「ゼロじゃないわよ!」
「はいはい、サモン・サーヴァント成功させましたよね~」

 如何にも馬鹿にしたような言い方、ルイズはさらに激怒する。
 タバサはそれを横目に、シルフィードから下りてチーフと向き合う。

「聞きたいことがある」
「何が聞きたい」
「貴方の素性」
「答える必要が見当たらない」
「何故」
「関連性が見当たらない、少なくともルイズとは友人関係でない事は理解出来る」

 青髪の少女ではなく、赤髪の少女であれば友人と言えるくらいの親しさがある。
 だがこの青髪の少女は殆どと言って良い程接点が見当たらない。
 故にチーフは問答を拒否する。

「……目的」
「答える必要が無い」
「何故答えられない」
「その必要が見当たらない」
「何を考えている?」
「君が問いかけてくる意味に付いて」
「答えは」
「警戒している」
「………」

 不審な人物、タバサから見ればそれ以外にあり得ない。
 タバサは視線を鋭く、ただチーフの顔に映る自分の顔を睨むように見つめる。

「……貴方は、力の使い方を知っている。 それをどこで習ったか、教えて欲しい」
「何故」
「必要だから」
「断る」
「何故」
「不要ないざこざを持ち込まれる可能性がある、そうなれば自分だけではなくルイズにも火の粉が掛かる可能性がある」
「……貴方は、一体何?」

 答えを拒否した問いを再度聞いてくることに、この青髪の少女に諦めはないのだと薄々感じたチーフ。

「……軍人だ」
「どこの」
「答えられない」
「その戦い方をどこで」
「軍による育成プログラム」
「……貴方は戻りたいと思わないの?」
「思っている、だからこそ彼女の護衛を務めている」
「貴方が居るべき場所は、遠い?」
「歩いても走っても、恐らくは空を飛んでも戻れないだろう」
「……そんな場所などどこにも無い」

 数秒の沈黙の後に、タバサがそう口を開く。
 それにチーフは指先で示した。

「とても遠い場所だ」

 右手の人差指は、空へと向けられていた。
 それを見たタバサとキュルケは一様に驚きを見せる。

「空? まさかアルビオンじゃないわよね?」
「違う、空の向こう側。 俺が生まれた場所は、夜空に輝く星の向こう側だろう」

 その言葉で再度タバサとキュルケが驚く。

「ちょっとルイズ、本当なの?」

 ルイズはただ一度だけ頷く。

「……見せて欲しい、星の海の人」

 その言葉を呟いて杖を向ける。

「ちょ、ちょっとタバサッ!?」

 その光景に今度はルイズとキュルケが驚く。

「意味がない」
「何してるのよ!?」

 ルイズの問いかけに答えないタバサ。
 その瞳には何かが渦巻いていた。

「見せて欲しい」

 さらに一歩、杖を突きつける。
 殺気、答えないならば強行手段に出るという警告。

「無用の戦いは必要としていない」

 それでも繰り返し、応えないチーフ。

「………」

 途端、爆発したような烈風が吹き荒れ、落ち葉や砂埃を巻き上げる。

「タバサッ!?」
「なななななに!?」

 影を残すかのような飛翔、それは『レビテーション』と『風』を利用した、『フライ』をはるかに超える速度で移動する技。
 レビテーションにて浮き上がった体に、風を任意の方向から当て押し出すもの。
 その速度はフライの比ではなく一気に上空へ舞い上がり、杖を構える。

「離れていろ」

 この言葉の意味に気づいたキュルケは頷き、呆然とするルイズを抱えて走り出す

「ちょっと一体何なのよーーーー……」

 小さくなっていくルイズの叫び声。
 タバサもそれを見届けたのだろう、杖を振るう。
 現れたのは螺旋に渦巻く氷の矢。
 収束していく殺気、狙いは一点、殺す気で掛かった。



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